コロナ不況

新型コロナ 

手探りの対応 不況を生む
生き残る 国 企業 間違って誕生する 企業
つぶれる 国 企業

もしかして 人類 社会崩壊 消滅
 


3/18・・3/203/21・・・3/24・・・・3/283/29・・3/31・・・
4/24/34/44/54/64/74/84/94/10・・・
4/114/124/134/144/154/164/17・・・
5/1・・・5/15・・・
6/1・・・ 7/1・・・ 8/1・・・ 
 
 

 

●新型コロナ不況でつぶれる国、生き残る国 3/18
新型コロナウイルスは、その致死性をはるかに上回る反応を世界中で巻き起こし、2008年の世界金融危機レベルの不況の引き金を引いた。いくつかの国では、これは政権にとって致死性のものとなるだろう。
日本では、7年に及ぶアベノミクスが振り出しに戻ろうとしている。これまで日本経済を大きく支えた円安は、わずか2週間で約10円も円高へ逆戻りとなった。アメリカで金融恐慌が生じて経済が縮小すれば、日本の輸出減少は決定的なものとなる。株価は下がり、またデフレ経済が戻ってくる。
しかも今回は、もはや日銀と政府に金融緩和や財政拡大の余力がない。それでも、今の野党には総選挙を迫る力はないため、もっぱら自民党内の力学が安倍政権の去就を決めることになる。
アメリカでも株式市場の崩落が起きつつある。それが債券市場に及べば、15兆ドルを上回る企業債務が不良債権化して銀行の貸し渋りを生み、2008年並みの金融不況を起こすのではないか。アメリカには、トランプ大統領の選出に影響力を及ぼした中西部の白人(旧)中産階級も含め、年金資産を株で運用する人々が多い。そのため、株式市場の崩落は再選を目指すトランプにとって致命傷となり得る。
もっとも、それでアメリカ経済の没落やドルの地位喪失が起きるわけではない。リーマン・ショック時と同様に、世界中の企業は決済(その多くはドルベース)のためにドルを求めて狂奔することになるからである。だからアメリカはまた、ドル紙幣をジャブジャブ発行し、ドーピングよろしく経済を再活性化させていくことだろう。
中国は、それより深刻な状況にある。アメリカによる高関税政策、先端技術の移転規制、そして新型コロナウイルスと立て続けに打撃を受けたことで、中国の輸出の約半分を支える外国企業に、「中国で輸出向け生産をすることのリスク」を意識させてしまった。既に中国の輸出は減少しており、これまでの高度成長の「原資」であった貿易黒字は、今年に入り赤字に転じている。習近平(シー・チンピン)政権は、国有企業に政治的な号令をかけることで困難を乗り切ろうとしているが、それでは救いにならない。
中国経済はこれから恒常的に低成長に転ずる可能性が高い。これまでの中国は、その急速な台頭で地域、そして世界の力のバランスを揺さぶってきたが、今度はその停滞が国内、そして周辺地域を不安定化させることになるかもしれない。「一帯一路」も、これまでの勢いを保つのは難しい。
ロシアでは新型肺炎の患者はまだ少ないことになっているが、グローバルな「コロナ不況」で原油価格が大幅に下落。これでは、2024年のプーチン大統領の任期終了までに43兆円相当を使い、インフラ建設などを行うことで景気浮揚と円滑な政権交代を図ろうとした当局のもくろみは狂ってしまう。原油価格の低迷は長く続く。ロシアは長期にわたり、停滞を運命付けられるだろう。
こうした状況では、資本力と財力のある企業や国家が生き延びる。資本主義はもちろん、なくならない。元手を増やして豊かになりたいという、人間の根源的欲望はなくならないからだ。国家資本主義の誘惑に駆られて政府の力に依存する国は、費用だけかさむという非効率な経済にバカを見る。
不況に陥っても、5Gを取りあえずの筆頭に、神の領域ともされる人工知能(AI)、ロボット化、遺伝子工学などの技術を磨いて商品化していくべきだ。金融バブルで虚勢を張ったり、呪文のようなえせ経済理論に頼るより、こちらのほうが元手を確実に増やすことができる。 
 
 

 

●油断していると危ない!?「世界恐慌」に備えるマネー術 3/20
日本の財政は持続不可能な領域に近づいている
私たちは日本で日本円を使って生活しているわけですが、そのお金の大半は、銀行預金になっていると思います。銀行はそのお金を使って日本国債を買っているので、私たちの預金は国債に化けているわけです。銀行内部には「国債」という有価証券はあっても、「現金」はほとんどありません。そしてもし、日本の国債がデフォルトして紙くずになると、どうなるか? 国債を大量に保有する日本の金融機関は倒産し、銀行の窓口に行っても、自分の預金を引き出せないということになります。いくら一金融機関あたり1000万円までの預金保護という法律があっても、取り付け騒ぎになれば、お金を取り戻すことはもはや不可能です。
なぜ中央銀行による国債引受けが禁じられているのか?
日本の国債のほとんどは国内で消化されているから大丈夫、という論調もあります。しかし、いくら国内消化といえども、資金は無限ではありません。国民の個人金融資産が約1800兆円強に対し、すでに国債で1100兆円が使われていますから、残りは約700兆円。毎年150兆円ずつ国債発行で使っていけば、計算上は5年で資金が底をつきます。(実際は企業部門もあって単純ではないですが……)しかし、そういうギリギリの状況になるまで国債を持ち続ける金融機関はあるのか。日銀が国債を引き受ければいいと主張している人もいますが、それは無限にお札を刷ることができるということを意味します。何の裏づけもなく、無限に供給される通貨を信用する人はいるのか。たとえば韓国ウォンや香港ドルが無制限にばらまかれるとしたら、あなたはそんな通貨を持ち、そんな国にお金を預けたいと思うでしょうか。日本人は信用しても、海外の金融機関や機関投資家が信用するとは限りません。日銀が引き受けたとたんに円の信任は崩れ、売られるリスクにさらされます。だからこそ世界中の国で、中央銀行が国債を引き受けることを法律で禁止しているのです。これは長い歴史の中で世界が学んだ教訓です(ただし現在の日銀の金融緩和政策は、市中にある国債を買い戻しているので単純な引き受けではありません)。ただ不安なのが、今の状況を見ていると政府には赤字国債の返済意思はなさそうな点です。通常、借金をしている人が新たに借金をするとき、生活を切り詰め、できるだけ借金を増やさないようにするはずです。しかし日本政府は、「足りない分は国債発行で賄う」体質が当たり前になっています。
国家破綻のシナリオ
膨張を続ける国債の引き受け手がいなくなったとき、あるいはメガバンクのひとつが国債の売却を始めたら、連鎖的に国債暴落が始まるかもしれません。金利は急上昇し、株価も大暴落。その状況で、投資家が投機マネーをほうっておくはずはなく、格好のターゲットとして「日本売り」が進みます。売りが売りを呼び、暴落は加速します。国債を大量に抱える銀行は、国債暴落によってバランスシートが大きく毀損し、新規融資ができず、お金が回らなくなります。預金準備金も不足し、預金の引き出し制限がかかり、さらにパニックになるでしょう。同時に、価値が目減りするであろう日本円を保有する人は減少するため、円が売られ、急激な円安になります。日本は多くを輸入で賄っていますから、円安になれば、生活必需品も含めてほとんどの製品の値段が上がります。今80円で仕入れている燃料や食糧、原材料が、160円になれば2倍の円を払わなければならなくなります。給料が上がるわけではありませんから、1000万円持っていても、500万円の価値に目減りしてしまうということです。国債の引き受け手がいなくなると国家運営ができませんから、日銀法を改正してでも日銀が国債を引き受け、どんどんお札を刷ることになります。すると、インフレになります。インフレが過度に進めばお札はゴミほどの価値になり、新円切り替えによりデノミをするかもしれません。それは悪性インフレを誘発します。なぜなら、価値が切り下げられる通貨を受け取っても意味がないので、売り手は商品の値段を上げるからです。
しかし、日本は世界第3位の経済大国ですから、世界経済も金融も、リーマンショックのときとは比べ物にならないくらいの恐慌に陥るでしょう。IMF(国際通貨基金)が日本に緊急融資を行い、日本はIMFの管理下に置かれます。公務員の人員削減や給与カットも行われ、財閥や特殊法人の解体、公共事業の激減、増税や給付の削減など厳しい緊縮財政が敷かれるでしょう。多くの企業は倒産、失業率は20%を超え、金利上昇とのダブルパンチで住宅ローン破綻者が続出。失業者が街に溢れ、治安は悪化……。しかし、超円安によって、製造業を始めとした輸出産業が息を吹き返し始めます。さらに、株安・円安・債券安のトリプル安となれば、外国人投資家から見れば絶好のバーゲンセールです。アメリカ、ロシア、中東、中国から、機関投資家だけではなく個人富裕層も含めて、日本を買いまくるようになるでしょう。少しずつお金が動き始め、日本経済が回復していく。破壊と創造の名の通り、社会はいったん崩壊し、多くの国民が犠牲となり、そこから新生日本が始まる……。
起こるか起こらないかではなく、備えておくことが重要
これほどの事態が起こる可能性は限りなく低いとは思いますが、ゼロだとは言い切れません。実際、今から74年前の1946年、日本で起こったことなのですから。日本は敗戦による賠償金支払いと、戦費調達のために発行した国債の償還ができず、日銀による国債引受をさせました。結果は誰もが予想したとおり、悪性のインフレが起こり、デフォルトに追い込まれました。政府は預金封鎖(引き出し制限)やデノミを行った結果、国民は文字通り路頭に迷い、生活は困窮を極めました。ちなみにIMFのシナリオは、お隣の韓国で、1997年に実際に起こったことです。2013年にはキプロスで預金封鎖が実施されました。
個人は備えなければならない
これらの非常事態が、起こるかどうかは別として、可能性があるのならば、できる範囲で備えておく必要があるということです。だから「日本は大丈夫」と論じている人はとても無責任に感じます。なぜなら、有事への対応を考える機会を奪ってしまうからです。いたずらに危機を煽ることを奨励するわけではありませんが、「日本は破綻しないから大丈夫」と思った瞬間に思考停止し、何も備えようとしなくなるからです。「地震が起こるかもしれない」と思えば災害対策グッズや食料品の備蓄などをして備えますが、「ない」と思えば備えないでしょう。私たちは、命ある限り生きていかなければなりません。そして、生きるにはお金が必要です。住むにも、食べるにも、移動するにも、お金がかかります。しかし会社の非常事態に、会社は従業員に何かしてくれるのか。国家の非常事態に、国は個人に何かしてくれるのか。何もしてくれないかもしれない可能性もあるわけです。そんなときでも生活が破綻しないように、私たち個人は武装しておかなければなりません。そのためのテキストは、書店にいけばたくさんありますし、オールアバウトマネーにもたくさんあります。あとは、やるかやらないかではないでしょうか。 
 
 

 

●新型コロナ 「記録的な世界不況ほぼ確実」 国連事務総長 3/21
国連のグテレス事務総長は十九日、新型コロナウイルスの感染拡大について記者会見を開き、「記録的な世界不況はほぼ確実だ」との見解を示した。「一致団結が必要な人間の危機だ。国レベルでは対処できない」と述べ、貧困国への感染対策や経済支援を例に、日米欧の先進国と新興国でつくる二十カ国・地域(G20)の協調的対応を求めた。
ニューヨークの国連本部からビデオ回線を通じ会見したグテレス氏は「われわれは空前の事態にあり、もはや通常のルールは適合しない」と各国の結束を要請。世界同時不況を招いた二〇〇八年の金融危機との違いを「金融分野への資本注入だけが答えではない」と述べ、幅広い貧困国対策の重要性を繰り返した。
国際社会が新型ウイルスへの対応を誤れば、貧困や格差の問題を悪化させかねないと警鐘を鳴らした。  
 
 

 

●新型コロナ恐慌を切り抜ける投資戦略! 3/24
新型コロナウイルスのパンデミックにより、金融相場は大荒れです。そして世界的な自粛ムードにより、経済も停滞傾向です。そこで今回感じたことを「投資」の観点からお伝えします。 
インデックス投資の落とし穴
資産運用の手段として、インデックスファンドなど投資信託の積み立ては、あまり信頼できないと改めて感じました。というのも、長年コツコツ積み上げてきた利益も、今回のような暴落が起きれば一瞬で吹き飛ばされるからです。今からちょうど8年前に「インデックス投資だけでは勝てないと私は断言する」というコラムを書いているので、あわせてご覧ください。むろん積み立てのメリットは、「相場が高いときには少しだけしか買わず、相場が安いときには多く買える」ため、平均取得単価を下げる効果がある点です。そして相場が回復したときには、暴落時に買ったものは、確実に利が乗ることになります。だから、まだまだ現役時代が長い人にとっては、資産が増える期待はあります。しかし老後を迎え、お金が必要となり、投信を解約・現金化しなければならないタイミングが、今回のような暴落相場だったら? お金が増えているどころか、減っているかもしれません。すると、お金を引き出せずガマンするか、損を覚悟でなくなく解約することになります。自分の老後はどんな相場になっているかは誰にもわかりません(ただし米国株は今後も上昇期待はあると考えています)。
相場に影響されず、資産運用するには?
だから私は自分の運用は、不動産・太陽光・節税商品(idecoなど)を中心にしており、個別株は「高配当銘柄」「株主優待銘柄」をメインにガチホ(ガチンコホールディング:相場に関係なく長期保有)し、貸株対象の銘柄は貸株に出してプラスの手数料が得られるようにしています。たとえば不動産は、どんなに不況になっても自然災害が来ても、住まいが不要という人はいないからです。太陽光発電も、固定価格契約なので相場の動きとは無縁です。とはいえ、万が一富士山が噴火するようなことがあれば、火山灰が空を覆って発電しないということが起こるかもしれませんが……。節税商品もしかりで、支払う税金が減ればより多くのお金を残すことができ、これも本人の能力には関係なくメリットを受けられます。また特に、インデックス積み立てをよいとする人によく見られますが、「低コストのインデックスでコツコツ積立投資する」ことが「目的」になっており、利益確定という発想がない人が少なくありません。含み益では、ガム一つも買うことはできません。含み益は砂上の楼閣に過ぎず、利益確定しなければ本当にお金が増えたことにはならないのです。だから私も、金融商品ではFXと仮想通貨のトレードをしていますが、利が乗れば確実に利確することを心掛けています。
今から積み立てを始めるのはアリかも
私は積立投資にはネガティブな立場ですが、いまから始めるのはよいように感じます。アメリカも欧州もまだ感染者数がピークアウトしていないため、さらなる下落余地は十分あります。しかし、いずれは感染者数は減り、パンデミックの終息宣言が出る日が来るでしょう。すると、自粛ストレスからの解放で一気に経済が動き出し、恐怖におびえていた投資家もリスクオンムードとなり、相場が急上昇する可能性があります。個別株やFXであれば、トレンド転換を確認してから出動するのが定石ですが、毎月1回の積み立てでは出遅れてしまいかねません。ならばいまから積み立てを始め、回復した時に利益確定するというシナリオは十分検討に値すると思います。実際、J-REIT(不動産投資信託)は大幅下落で分配金利回りが上昇し、魅力が高まっています。もちろんこの状況ですから、ホテル系や商業施設系は大きなダメージで、今後分配金が減る可能性はあると思います。東京五輪が中止や延期ともなれば(そうならないことを祈っていますが)、その影響は長期にわたる可能性はあります。しかし破綻しない限り、いずれは下げ止まる日が来ます。オフィス系リートは今回の騒動で「リモートワークをやってみたら意外にいけるじゃん。大きなオフィスいらないのでは……」と気づく企業があったとしても、それが大きな趨勢になるとも思えません。自粛ムードとはいえ物流は一部地域を除き止まっていない(欧州でも物流は止めない国が多い)ので、物流施設系リートも底堅いと思います。また、不景気になれば給料も減るから高い家賃を払えないと引っ越す人はいたとしても、前述の通り住まいが不要な人はいませんから、住居系も手堅いでしょう。というわけで私は今回、定期預金1本だった確定拠出年金の一部をスイッチング(預け替え)し、毎月の積み立ての一部もETF系に変更しました。ほかにも運輸・交通銘柄、日経225、NYダウ、原油、金など大幅下落している銘柄がありますが、これらはまだ底が見えません。そのため、いつ出動するかタイミングを狙っているところです。2008年のリーマンショックのときと同じく、暴落時は仕込みのチャンスですからね。 
 
 

 

●お肉券、お魚券に「族議員批判」 農水相「受け止める」 3/27 
新型コロナウイルスの感染拡大で生産者が打撃を受けたことに対応するため、自民党が打ち出した「お肉券」「お魚券」構想に批判が相次いだことについて、江藤拓農林水産相は27日午前の閣議後会見で、「国民の方々の反応はわかっている。十分に受け止めている」と述べた。支援の対象を林業などほかの農林水産品に広げて検討していく方針だ。
これまで訪日客の需要が多かった和牛は、ウイルス問題で訪日客が減って需要が落ち込み、価格が大きく下落している。江藤氏は「全国のと畜場の倉庫に和牛の在庫が積み上がっており、これ以上入らない」とし、「生産から流通、消費の流れを何とかする施策は必ず必要になる」と述べ、生産者への支援の必要性を訴えた。
訪日客の急減に加え、政府の自粛要請で外出が減り、他の高級魚介類や果物などの需要も減っている。メロンや国産マグロなどの価格も低下しており、自民党内では和牛に続き、魚介類を対象とする商品券を発行する案も打ち出された。同党内で関連業界をバックにした部会が競い合うように商品券構想を打ち出す様子に、ネット上では「族議員批判」が相次いでいる。
仮に商品券の制度を導入しても、実際の発行までには時間がかかり、江藤氏が訴える当面の在庫解消対策につながるかはわからない。肉や魚など商品ごとに商品券が乱立すれば国民に分かりづらくもなる。江藤氏は、「公金を使うので、財政規律上許してもらえる範囲内でやらなければならないので、工夫をしている」とも話した。 
●コロナ不況はGAFAへ追い風となるか 3/28
コロナウイルスは、病だけでなくリーマンショック超えの世界同時不況をもたらしています。その煽りを受けるのは、デジタル界の巨人ことGAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)も例外ではありません。この4社の株価も落ちています。しかしながら、マイナスの要因ばかりではなさそうです。むしろ今回の新型コロナウイルスにまつわる騒動は、GAFAにとって追い風となる、そんな意見もよく見られます。各社が現在どのような状況に置かれ、どのような対策を行っているのか取り上げます。
存在感を増すGoogle
最前線をひた走っていたGoogleも、コロナウイルスの魔の手には逃れられず、2月下旬から3月半ばにかけて、30%以上も株価が削られました。しかしながら世界的に多くの人が自宅に籠もっているため、Googleはかつて無い規模のトラフィックを扱う事になっています。例えば子会社Youtubeでは、通常時、回線速度にゆとりのある場合、自動的に高解像度で配信を行うようにしていますが、あまりにトラフィックが増大したため、高速回線でも標準解像度での配信に固定を行いました。(手動で高画質に切り替えることはできます)また、アメリカのトランプ大統領が、国民への情報発信に頼ったのもGoogle(アルファベット)でした。検査を必要があるのか、ないのか、判断を手助けするためのツールを、アルファベット傘下のVerifyが開発中であることをツイートしています。(なおトランプ氏がGoogleとアルファベットを混同したため多少混乱がおきました)
またオンラインビジネスツールとして有名な「G Suite」やオンライン会議ツール「Hangouts Meet」の有料機能を無料開放することでテレワークを支援し、経済状況の改善に貢献しています。更に検索結果の信頼性向上や、8億ドル(約800億円)相当にも渡る企業・組織・医療従事者への支援策等、この危機的状況において存在感を非常に大きくしています。株価下落においても、決して悲壮感は漂っていません。
苦境に立たされるApple
GAFAの中で、一番コロナウイルスの影響を被っているのはAppleかもしれません。先日記事にも書いたとおり、期待されていたiPhoneの新機種は発売延期の危機に立たされています。多くの製品が中国で製造されており、主要な開発者は中国とアメリカを行き来していました。滞っているのは新製品の開発だけではありません、これまで製造していたiPhoneが壊れた際、多くの場合新品との交換で対応しています。1個1個の故障原因を調べるより、そのほうが安価だからです。しかしながら、もちろんそれらの代替品も中国で製造しています。現在中国の一部では、工場が閉鎖され、物流も滞ってしまっているため、多くの部品がAppleStoreに届かない状態です。そしてそのAppleStoreも、全世界的に休業を余儀なくされています。しかしながら経営が傾くというほどではありません、Appleの市場規模はもともと世界一を争えるレベルです。株価の下落も、Googleと同じく3分の1程度に収まっています。
そして数字としてはまだ出てきませんが、多くの人が家に籠もることで需要が高まる産業に、App Storeも含まれていると言っていいでしょう。ダウンロード数の推移を見ると、ゲームアプリは50%、動画配信等のエンターテイメントアプリは25%、教育用アプリは150%、ビジネスアプリはなんと220%もの増加を記録しています。もちろん旅行用アプリ等、ダウンロード数を落したカテゴリもあります。しかしながら、全体的には大きくプラスに転じていることは疑いようもないでしょう。Appleも悲観するほど影響を受けているとは言えません。
コミュニケーションを支えるFacebook
Facebookは、Amazonのようにハードウェアで成り立ってきた企業ではなく、ソーシャルコミュニケーションで成り立っている企業です。多くの国でロックダウン(都市封鎖)が行われている今、Facebook、Instagram、messenger、WhatsApp等、多種多様なアプリが、人々のコミュニケーションを支えています。また、信頼できる情報を優先的に配信し、デマや悪意のある情報を遮断する上でも、率先して情報管理を行い、ソーシャルメディアの王としての存在感を強めています。ただし、もちろん良いニュースばかりでもありません。Facebook等のSNSは、利用者からの支払いではなく、企業からのマーケティング費用で賄われています。この世界的な不況に際し、多くの企業がマーケティング費用の節制に努めてしまっている今、利用時間の増加に比例するほど売上が上がっているわけではないでしょう。コロナ騒動が収束後、V字ができるかどうかは、世界経済の状況に左右されます。
急激に需要が高まったAmazon
今回GAFAの中で一番必要とされている企業は、Amazonでしょう。多くの国で買い占め騒動が起き、ロックダウン(都市封鎖)も起きている今、ネットショップの需要なかつて無いレベルで上昇しています。そのネットショップで世界一の座につくAmazonは、むしろ高まった需要に対応するための戦いを迫られています。例えばフルフィルメントセンターや倉庫の労働者の不足に対し、急遽10万人以上の雇用計画を発表しました。アメリカの失業率が歴史的な数値を記録する中、それに逆行する動きです。
更に配達ドライバーが不足しているため、「Lyft」という配車アプリと提携し、ドライバーがAmazon配達員として働くことができるようにしました。観光客激減の影響を受けていた運転手に対しても、メリットのある提案です。
そしてストリーミングサービスのAmazonPrimeの需要が高まっていることは言わずもがなですし、多くの接続者増加を見るオンラインゲームや、ビジネスサービスのサーバを支えているのもAmazon(AWS)です。今回の騒動で王者を選ぶなら間違いなくAmazonでしょう。
ただしAmazonも笑顔になれる訳ではありません。多すぎる生活必需品の注文に対し、そもそもの製品を作る工場が停止しているため、少なくない供給が止まってしまっています。
また、多くの人がAmazon倉庫で働いているため、集団感染とも戦わなければいけません。すでにアメリカ11箇所のAmazon関連施設で発症者が確認されていますし、日本のフルフィルメントセンターでも感染者が出てしまいました。多くの施設では保健所と連携して営業を再開していますが、未だ予断を許さない状況です。
GAFA株は「買い」なのか?
確かに、これら多くのプラス材料にも関わらず、GAFAの株価は下落しています。これを一時的なものと見るのであれば、たしかにGAFA株は買いなのかもしれません。
しかしながら、アメリカは現在世界で最もコロナウイルス感染者が多い国です。そして半数近くは経済の拠点ニューヨークで確認されています。医療制度は残念ながら優れているとは言えませんし、人々がどこまで協力的になれるかも問われています。食料品だけではなく銃器まで買い占められている今、決して楽観視できる状況ではありません。
そういった状況で、民間企業の先頭に立って戦わなければいけないのがGAFAです。もはやGAFA無しでビジネス・コミュニケーション・物流は成り立たない国がアメリカです。最後まで戦いを強いられることでしょう。それを考えると今GAFAの株を買うのは博打のようにも見えます。
もちろん私も含め世界はGAFAや、国家・人類がウイルスに打ち勝つことを望んでいます。どうかこの危機に、世界全体で勝利することができますように。 
 
 

 

●新型コロナ不況になぜ1人20万の給付金が必要なのか 3/29
新型コロナウイルスの感染拡大による経済的な影響が広がる中、「反緊縮」を訴える市民グループの経済学者らが緊急提言を出した。現状を「消費増税・新型コロナショックで、非常に深刻なデフレ不況の危機」として、1人当たり20万円の給付金支給、消費税の停止など計55兆円規模の財政支出を政府に求める内容。発表3日目の24日にはウェブ上で賛同人が2万人を超えるなど、反響が広がっている。
提言は、政府の財政支出を拡大して社会サービスや雇用を拡充するよう求める「反緊縮」運動を進めている「薔薇マークキャンペーン」(代表:松尾匡・立命館大経済学部教授)が22日、公式サイトに掲載。松尾氏のほか、森永卓郎・独協大教授など経済学や社会学の研究者ら16人も名を連ねている。  
●コロナ不況深刻化/需要を確実に支える政策を 3/29
新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済と国内経済の減速が鮮明に数字に表れ始めている。政府が26日に発表した3月の月例経済報告は、国内景気の判断を3カ月ぶりに引き下げた。景気の冷え込みを政府がようやく公式に認めたことになる。
「緩やかに回復」という希望的な文言が残った2月の経済報告とは一転して、今月の経済報告からは「回復」の文字が消えた。その上で「足元で大幅に下押しされており厳しい状況にある」として、景気への危機感を強くにじませる内容となった。
一般の感覚からすれば、こうした判断は遅すぎると言えるのではないか。いま最も必要なのは、現在の日本経済が緊急事態に陥っているという正しい現状認識である。あらゆる政策を総動員し、政府は深刻化するコロナ不況を乗り切る必要がある。
昨年10月の消費税増税は予想通りに消費の大幅な減退を招き、そこへコロナ禍が襲いかかった。東京五輪・パラリンピックの延期も決まり、五輪開催に伴う内需の拡大は当分は当てにできない。新型コロナの感染拡大が長期化する恐れも否定できない。
中小企業の景況感に注目したい。信金中央金庫がまとめた1〜3月期の全国の景気動向調査では、景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス19.3に落ち込んだ。前期からの悪化幅は、リーマン・ショック時の2009年1〜3月期以来だという。
政府与党が各業界から緊急経済対策のとりまとめに向けて意見を聞いた会合では、さまざまな要望が出された。厳しい実情を訴える現場からの切実な声を受け止め、きめ細かな対策の実現に政府は全力を挙げてもらいたい。
現在の状況は緊急事態であり、こうした場合に経済政策が戦力の逐次投入であっては効果が薄い。国の財政を預かる財務省からは消極的な声も出ようが、需要を確実に支える思い切った財政出動は不可避だろう。
20カ国・地域(G20)首脳が緊急テレビ会議を開き、この事態に対処するため5兆ドル超(約550兆円)を世界経済に投入すると明言した意味は大きい。主要国が協調して回復を目指すとなれば、日本も財政出動がしやすい。
安倍内閣の経済政策アベノミクスの最大の目的は、雇用環境の安定だった。大規模な金融緩和や財政政策によって、事実上の完全雇用の状態にまで達した。コロナ不況の長期化で企業倒産や業績悪化による失業増を招くような事態は避けたい。
リーマンショック時には金融緩和と財政出動がうまくかみ合わず、雇用の安定を損ねた。結果として自殺者の増加を招いた失策を忘れてはならないだろう。教訓を生かして生活困窮者や中小企業への支援を急ぎ、この経済危機を乗り切りたい。 
 
 

 

●コロナ危機 は、過去の不況とどこが違うのか? 3/31
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行がすでに示している徴候があるとすれば、以前からメディア業界で起こっていたトレンド、すなわち強者が弱者を駆逐する状況がさらに加速しそうだということだ。
新型コロナウイルスの騒ぎが起こる前から困難に見舞われていたメディア企業にとって、いまの状況はダーウィニズムを強化するものでしかない。世界が景気後退に向かい、恐慌になる可能性もあるなか、すでに起こっていた業界の統合が急速に進むだろう。投資家のウォーレン・バフェット氏が、ドットコムバブルが弾けたあとの2001年にバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)の株主に宛てた手紙で述べたように、「潮が引いてはじめて、誰が裸で泳いでいるのかがわかる」のだ。支払期限の延長やレイオフの断行など、メディア企業やベンダーの深刻な状況を示す徴候が、今後ますます見られるようになると企業の幹部らは予測している。
新型コロナウイルスがもたらした生活の変化に合わせてメディア消費が大きく変わるなか、収益の多角化に乗り出したばかりのパブリッシャーは、とにかくその取り組みを続けるしかない。サブスクリプションビジネスを手がけている企業は、提供しているコンテンツの種類に応じて価格構成を見直すことが必要になるだろう(旅行やスポーツのコンテンツに大きく依存しているところは特にそうだ)。また、これから経済的に厳しくなる多くの顧客に寄り添う必要がある。筆者は、米国や欧州で話を聞いたメディア幹部から、「不確実」という言葉を何度も耳にした。状況があまりに速く変化するため、1週間前に話したことがほとんど当てはまらなくなっていることも多い。英国最大の民間放送局であるITVは3月23日、2020年の業績見通しを取り下げただけでなく、3月や4月の業績見通しを示すことすらできなかった。さまざまな業界の広告主から支払期限の延長を次々と求められたからだ。
メディア企業の幹部らは、事態が収束するまでどれくらいかかるのかをなんとしても見極めたいと考えている。そこで筆者は、過去の不況の経験から現在の(新型コロナウイルス感染症の)パンデミックの影響に活かせる教訓があるとしたら、どのようなものかをさまざまな人に尋ねた。もちろん、直接的に比較するのは簡単ではない。ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)のアドバイザーであるリシャド・トバコワラ氏は、2001年のアメリカ同時多発テロ事件と2007年〜2009年の金融危機を足し合わせて「2倍した」ようなものだとたとえた。つまり、いまの危機的状況は、ほとんどの人がこれまでのキャリアで経験した比較的期間の短い不況ではなく、世界恐慌に匹敵するものになるというのだ。
情勢が不確実になると、広告主が反射的に支出を抑えようするのはよくあることだ。だが、ホスピタリティ産業や旅行業界が不調に陥り、消費支出の落ち込みが予想されるいまの状況は、計り知れない影響を広告にもたらすだろう。eマーケター(eMarketer)は2020年の世界全体の広告支出予測を、以前に発表した金額より2.85%低い6910億ドル(約74兆円)に修正した。しかも同社のアナリストは、2020年後半にはこの金額がさらに下がる可能性が高いと述べている(カンターメディア[Kantar Media]によれば、2009年には世界の広告支出が12.3%減少した)。
英国を拠点とする独立系マーケティングコンサルタントのピーター・フィールド氏は2008年当時、クライアントに対して、可能であれば広告支出を一定の水準に維持するようアドバイスした。「支出を維持していれば、購入できる広告枠が増え、SOV(シェア・オブ・ボイス)が増えることになる」とフィールド氏は述べた。前回の不況をうまく乗り切ったブランドは、「感情に訴える販促活動を幅広く行うことに徹し、広告戦術に溺れることがなかった」とフィールド氏は指摘した。
たとえば、英国の菓子メーカーであるキャドバリー(Cadbury)は2007年、チョコレート製品の「キャドバリー・デイリー・ミルク(Cadbury Dairy Milk)」を売り出すために、「ゴリラ」がドラムを叩く有名なCMを放映したり、かなりの金額をかけてブランドキャンペーンを展開したりする一方で、全体の広告量を減らした。その結果、最大のライバルであるマース・インコーポレイテッド(Mars, Incorporated)のチョコレート製品「ギャラクシー(Galaxy)」から市場シェアを奪うことに成功したと、(2010年のIPAエフェクティブネス・アワードのエントリーにおいて)キャドバリーは述べた。マースは同じ時期に、宣伝活動を増やしていた。
もっとも、こうした事例を知ったところで、苦境にあえぐCFOが気持ちを変えることはないだろう。世界経済がほぼ停止状態にあるなか、彼らが考えているのは支出を切り詰めことだけだ。S4キャピタル(S4 Capital)のCEO、マーティン・ソレル氏は、多くの企業が現在直面している脅威を考えれば、この特別な危機のさなかにマーケティング予算を使い続けるというアイデアは「まったくもってナンセンス」だという。従業員の健康に影響が及ぶ可能性を考えればなおさらだ。
「私が(企業のリーダーと)話をした限りでは、誰もがいまは長期的なことは考えられず、短期的なことに集中するだけだと述べていた。そのあとのことは予測できない」と、ソレル氏は述べている。
状況が次々と変わるため、メディア企業は対応に十分な時間を割くことができていない。それでも、筆者が話を聞いた業界のベテランたちから得られた重要な教訓がひとつある。それは、このような状況もいつかは終わるということだ。メディア業界で働きはじめてまだ10年ほどしか経っておらず、キャリアのなかで不況を経験したことがない人にとっては、特に心に留めておくべき話だ。ただし、再び「ビジネスが正常になる」時期がいつやって来るのかはまだ見当もつかない。いまは健康に気をつけて、安全に過ごすことを心がけよう。
新型コロナウイルスの危機をやり過ごすには
ピュブリシスの元最高成長責任者で、40年近いキャリアを持つリシャド・トバコワラ氏は、世界経済の嵐をやり過ごすためのアドバイスをクライアントに提供している。その彼が、いまの危機をなんとか乗り切りたいと考えるメディア業界のリーダーに伝えているヒントを筆者に教えてくれた。
何かができることを見せる:「ブランドにとってもっとも避けたいのは、自分たちが恐怖に囚われ、何をすればいいのか途方に暮れていると思われることだ。危機のなかでただじっとしていれば、『あの会社は一体どうしたんだ』といわれるようになる」。
誠実さを見せる:「世界中の人々が誰を信頼すればいいかわからなくなっている。したがって、誠実さが必要だ。何か発言するのではなく、何か行動を起こそう」
共感を示す:「従業員も顧客も、これまでとは大きく異なる状況に直面している」。
インスピレーションを与える:「誰もが塞いだ気分になっている。楽観主義になり過ぎないようにしながら、どうすれば人々に希望を与えられるのかを考えよう」。
弱い面も見せる:「我々も混乱し、恐れている(と伝えてみよう)」
数字は嘘をつかない
新型コロナウイルスによる状況が悪化するなか、人々がニュースサイトに釘付けになっているのは当然のことだろう。
米DIGIDAYが報じているように、こうしたトラフィックの急増が、パブリッシャーがいま喉から手が出るほど欲している収益に必ずしも結びつくわけではない。広告主の多くが、デジタル広告を購入する際に新型コロナウイルス関連のキーワードやトピックをブロックしているのだ。パブリッシャーは、ペイウォールの向こう側に置くべき記事を決めるにあたって、難しいジレンマに陥っている。
とはいえ、トラフィックは「かなりの量」に上っている。そして、トラフィックの増加はどのようなものであれ、パブリッシャーにとってより多くの製品を宣伝するチャンスだ。チャートビート(Chartbeat)は、3月16日〜18日の3日間に同社のネットワークで確認された800億件以上のページビューを前週の3日間と比較し、詳しく分析した。その結果を紹介しよう。
1日に公開された新型コロナウイルス関連の記事の数は、3月19日に9万件を突破してピークを迎えた。
新型コロナウイルスの記事がすべてのパブリッシャーのページビューに占める割合は、3分の1に達した。
新型コロナウイルスの記事のエンゲージメント時間は、平均でおよそ40秒だ。これに対し、すべての記事のエンゲージメント時間は平均35秒超に過ぎない。
新型コロナウイルス関連記事への検索トラフィックとソーシャルトラフィックの変動パターンはよく似ているが、パブリッシャーサイトへのトラフィックは検索よりソーシャルのほうがわずかに多かった。通常であれば、ソーシャルトラフィックの量は、ダークソーシャル(メール、アプリ、インスタントメッセージ、またはサイトへのリファラーデータの送信が許可されていないほかプラットフォームやウェブページからのトラフィック)を含め、検索トラフィックとほぼ同じになる。
それでも、記事のエンゲージメント時間は、FacebookからのトラフィックよりGoogle検索からのトラフィックのほうが長かった。実際、Facebookからの平均エンゲージメント時間は2月25日を境に減少している。 
●コロナ不況でマンション価格崩落が始まる、リーマン級ならどこまで下げるか 3/31
2月12日と3月2日の本連載で、新型コロナショックを契機にした日本経済の景気後退と株価下落の予想として、筆者は2つのありそうなケースを提示した。
「小悲観ケース」ではITバブル崩壊による2001〜02年並みの景気後退、また「大悲観ケース」ではリーマンショック級の2008〜09年並みの景気後退のケースを示し、「すでに日経平均株価指数で1万9000円程度への下落が視野に入っている。さらに深刻化してリーマンショック級の不況になった場合には1万5000円前後まで覚悟すべきだろう」と書いた(「新型コロナ不況で株安はどこまで進むか、リーマン級なら1万5000円視野」2020年3月2日掲載、2月末執筆)。
その後の事態の展開は、大悲観ケースの到来を示唆するものとなっている。世界経済にとってとりわけ重大なのは米国での新型コロナウイルス(COVID-19)の感染爆発だ。2月末の前回原稿の執筆時点では米国での感染者はまだ極めて限定されていたが、「米国でもCOVID-19を含む形で米国疾病対策センター(CDC)の検査が今後進展する結果、潜在していた同感染者が多数発生するかもしれないというリスクもある」と述べた。
そのリスクは予想以上に劇的に顕現化してしまった。感染者数の激増で、米国では非常事態宣言や都市封鎖が実施されたが、3月26日時点で米国の累積感染者数は、感染爆発の震源地である中国やその最大の飛び地とみられるイタリアを一気に抜いて世界最多となった。第2次世界大戦後としては初の「世界パンデミック・リセッション」の到来である。
筆者は昨年来、クレジットサイクル(信用循環)の観点から2020年中に米国経済の景気後退が始まる可能性が高いと予想してきた(「米国の次期景気後退入りは2020年、最大4割の株価下落に要警戒」2019年7月19日掲載)。
もちろんCOVID-19の感染爆発が景気後退の契機になるとは、当時は誰も予想し得ないことだったが、米国経済は長い景気拡大が続いた結果、信用(債務)が伸びきり、株価は割高となった脆弱な局面をCOVID-19に襲われたのだ。
3月24〜26日の株価の大反発で「株価は底を見たのでは?」と思う方々も少なくないかもしれない(直近底値、日経平均は1万6358円、S&P500は2192)。しかし2月後半頃から始まった急速な実体経済の後退を示す経済データはこれから公表される。
すでに3月26日に発表された米国の新規失業保険申請件数(週次データ)が、328万人と1967年の同統計開始以来の桁違いの増加(悪化)になったことは序章にすぎない。それらが公表されたときに改めて市場が再びショックにさらされることを覚悟しておくべきだろう。
3月26日のニューヨーク市場では失業保険件数の突出した悪化にもかかわらず、株式の売りポジションのショートカバーで値を上げたが、今後は公表される景気と企業業績を見ながら株価水準の当面の落ち着きどころを探る不安定な展開が続くだろう。
もっとも景気の底打ちと回復は感染爆発がいつどのように終息に向かうかという経済・金融にとっては全く外在的な要因に依存している。またリーマンショックや1990年代の日本のバブル崩壊と違って、目下のところ主要国の金融システムに不全や麻痺が生じていないことは不幸中の幸いである。
米国を含む主要国が懸命に取り組んでいる治療薬やワクチンの開発に成功すれば、その後は金融危機型の不況よりもV字型の回復もあり得る。しかしそうでなければ長患いになる可能性も十分にある。
割高圏まで上がっていた都心のマンション価格
投資家の観点から見て、次に起こる重大事はマンションなど不動産価格の下落である。市場流動性の高いREIT(リート:不動産投資信託)価格はすでにパニック的な急落を起こした後、ある程度反発して荒い値動きとなっている。
しかし現物不動産としてのマンションなどは、流動性が乏しい分だけ下がるときも上がるときも、一般企業の株価やREITに3カ月から6カ月程度遅れて変動することが分かっている。今回は東京の中古マンション価格を対象に、今年年末までにどの程度の下げが予想されるか考えてみよう。
まずその前に、これまでのマンション価格の推移を見てみよう。図表1に示したのは、「不動研住宅価格指数」として公表されている中古マンション価格の推移(東京)とマンション賃料指数(東京)(アットホーム株式会社)の推移だ(以下それぞれ「マンション価格指数」「賃料指数」と呼ぶ)。
マンション価格指数(赤線、左メモリ)は1990年代のバブル崩壊後10年余りかけて半値以下に下がった。2004年頃までマンション価格指数は構造的な売り圧力で景気の波とはほぼ無関係に下落トレンドをたどった。銀行の不良債権処理による担保処分などが続いたためだろう。
その後2005年からマンション価格は景気の波に強く同調した上下動を続けている。直近の2019年10〜12月の水準はその前の底値(2012年)比26%高だ。
一方、賃料指数(黄線、右メモリ)はマンション価格ほど変動せず、2019年10〜12月の水準は2012年の底値比7.8%上がっているだけである。
値動きの大きい住宅価格と値動きの安定的な賃料という関係は、日本に限らず米国を含む世界の不動産市場で一般的だ。資産のファンダメンタルな価値は、その資産から得られる将来にわたる所得(不動産の場合は純賃料)の現在価値の合計である。この金融論の原理から考えると、これはやや奇異なことだ。なぜそうなるのだろうか。家賃は賃借人の所得から支払われる。家賃をローンで賄う人はいない。そして家計所得の変化は緩慢なので家賃の変動もおのずと限定される。しかし住宅を購入するときは、自己居住の場合も、投資目的の場合も、自己資金で足りない金額をローンで賄う。
その結果、ブームのときは価格が高くなっても「もっと上がる」という期待で買ってしまう人が続出する。一方、不況下では、ローンの返済ができなくなり担保として売られるケースや、借り入れができなくなる人が増えてマンション価格は賃料以上に下がる。その結果、価格はファンダメンタルな価値から乖(かい)離し、ブームのときには割高な水準まで上がり、不況下では割安な水準まで下がるのだ。
そこで賃料指数をマンション価格で割った値(筆者はこれをPRR:Price Rent Ratioと呼んでいる)を計算し、PRRの長期的な趨(すう)勢からの乖離でマンション市況の割高・割安を判断することができる。そのPRRの推移も図表1に示した(青線)。PRRを見ると、2013年以降、マンション価格の上昇が賃料の上昇を大きく上回った結果、東京を中心に不動産ミニバブルが起こった2006〜07年以上にマンション価格は割高となっていることが分かる。
マンション価格はどの程度下がりそうか
さて、今回のパンデミック不況で東京のマンション価格はとりあえずどの程度下がるだろうか。マンション価格を左右する要因としては、景気動向、株価動向、マンション業界の需給などが考えられる。
そこで2005〜19年の期間について、既述のマンション価格指数(東京)の前年同月比変化を対象(被説明変数)に回帰分析をしてみよう。その際の要因(説明変数)としては、(1)景気動向指数(CI、一致)(内閣府)、(2)日経平均株価指数(前年同月比)(6カ月のタイムラグを設定)、(3)東京のマンション在庫件数/月間成約件数(東日本不動産流通機構、REINS TOWER)(12カ月移動平均値)の3つを選んだ。
各変数について説明すると、マンション価格の変化が景気動向と相関するのは直感的にもお分かりいただけるだろう。またマンション価格が数カ月のタイムラグをもって株価の変動と相関するのは、資産としての代替性が株式との間にあるからだ。例えばブーム期には値が上がった株式を売って現金化し、それでマンション購入するような行動がよくみられる。
マンション需給としては月間の在庫件数を月間成約件数で割った比率(在庫・成約比率)を変数にした。マンションの売れ行きが好調のブーム期は相対的に在庫が減ってこの比率が低下し、逆にマンションの売れ行きが不振の不況期には在庫が増えて上昇する。つまりマンション価格と負の相関関係がみられることを確認済みである。ただしこのデータは月次のバラツキが大きいので12カ月移動平均値を変数として採用した。
回帰結果は、いずれの要因もマション価格指数の変化と有意な関係があり、説明度を示す決定係数は0.73と高い。これは上記3つの変数でマンション価格指数の変化の73%を説明できることを意味する(回帰分析で得られた推計式は末尾補注参照)。図表2にマンション価格指数の変化の実績値(濃い青)と推計値(薄い青)を示した。推計値が実績値によく沿っているのがお分かりいただけるだろう。さらに回帰分析で得られた推計式を使って2020年12月までの予測推計を試みた。予測の想定として、前回原稿での「大悲観ケース」の想定とほぼ同様である。つまり、景気動向指数は今年6月までにリーマンショック時の底値と同じ水準(64)まで下がり、12月末には80まで回復するとしよう(図中の黄色点線)。
日経平均株価指数は6月末に1万5000円まで下がり、12月には1万8000まで回復するとしよう。成約・在庫比率はリーマンショック時のピーク20.4倍まで上がり、12月には17.0倍(2019年のほぼ平均)まで戻ると想定しよう。
マンション価格指数(前年同期比)の予測推計値は赤線で示した通り、今年後半に前年同月比で約4.4%下落して、12月末は4.0%前後の下落率となる。「なんだ4%程度の下落か、たいしたことない」と思うのは早計だ。
レバレッジを効かしたマンション投資を再び増やす時期は?
まず景気動向として「今年6月末に底を打って回復に向かう」というのは比較的楽観的なV字回復シナリオだ。感染爆発の終息が長引き、景気の底打ちが遅れれば、下げ幅はそれに応じて広がっていく。
ちなみに上記の景気後退の底が今年の6月ではなく12月になった場合は、マンション価格指数の下落(前年同月比)は12月時点で6.4%となる(赤の点線)。
また当然ながら、マンション価格は個別性が高く、指数の下落が年間4%でも、ほとんど価格の変わらない物件もあれば、10%以上下落するものもある。さらにローンの返済が滞った場合など担保処分の場合は売り手が売り急ぐので、価格は平均よりずっと下がる傾向が強い。資金繰りに行き詰まったマンション・デベロッパーが在庫処分に動く場合は、新築でも当初の公式価格から20%程度のディスカウントがざらに出てくる。
筆者の資産形成に関する著書を読まれた方はご存じだろうが、筆者は本業のかたわら個人投資家として1998年から東京都心の物件を中心に金融レバレッジを効かしたマンション投資を始め、長期保有を原則としながらも2007年からは前掲図表1のPRRの波を参考に保有物件の入れ替えを行ってきた。
2013年のピーク時には7つの物件(区分所有)を保有していたが、2016〜18年の価格高騰時に3物件を売却し、残債も全額返済、キャッシュ残高を積み上げた。おそらく今年の夏場以降に顕著となるマンション価格下落局面では、再び金融レバレッジを効かしたマンション投資を増やす計画である。 
 
 

 

●NY株が続落、新型コロナ不況の深刻化懸念強まり 4/2
1日のニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルス感染拡大を受けた景気悪化懸念が強まり、続落した。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日比973・65ドル(4・4%)安の2万943・51ドルで取引を終えた。
米ホワイトハウスの新型コロナ対策チームが前日、新型コロナ感染による米国の死者数が10万〜24万人に達する可能性があるとの試算を公表。また、米サプライ管理協会(ISM)が1日公表した3月の米製造業景況指数が49・1と前月から1ポイント低下し、好不況の分かれ目となる「50」を3カ月ぶりに下回ったほか、景気の先行きを示す新規受注指数が2009年3月以来の低水準となったことで、不況が深刻化するとの懸念が強まった。  
 
 

 

●コロナ不況は怖いが、日本経済が昔より危機に強くなっている理由 4/3
少子高齢化による労働力不足で需要が安定
日本は、少子高齢化で労働力不足の時代を迎えている。物(財およびサービス、以下同様)を作る現役世代の人数が減っているのに、物を使う人(すなわち総人口)は減っていないので物不足となり、「若者は失業しないで働ける」時代になっているのだ。高齢者の消費が労働集約的な医療や介護に偏っていることも、労働力不足の一因である。もし自動車を購入する若者が増えても、自動車は全自動ロボットが作業を担う部分が多いので労働力不足になりづらい。しかし、介護はどうしても人手に頼らざるを得ず、介護が必要な高齢者が増えれば介護士不足になる。労働力不足になると、不況になりにくい。たとえば輸出が激減して輸出企業がリストラを実行しても、失業者がすぐに次の仕事を見つけられるので、彼らの所得と消費は落ち込まないのである。リーマンショックのときには、輸出企業をリストラされた人が失業して「所得がないから消費できない」ために個人消費が減って、景気をさらに押し下げたが、少子高齢化がさらに進んだ今は、そうした事態が起きにくくなっているのである。
高齢者の所得と消費の安定が寄与
高齢者は、所得が安定しているため、消費も安定している。主な所得は年金だろうし、貯蓄も「毎月一定額を取り崩す」場合が多い。したがって、消費者に占める高齢者の比率が上昇していくことで、個人消費の増減の波は小さくなっていく。加えて、高齢者向けのビジネスに従事している労働者の所得も安定しているので、彼らの消費も安定している。高齢者が増えれば、そうした労働者も増えていくわけである。極端な場合として、現役世代が全員高齢者の介護に従事している世界を想像してみれば、景気の波はゼロである。もちろん実際には他の仕事も存在しているわけだが、方向としてはそうした世界に近づきつつあるわけで、景気の波は小さくなりつつあると考えるべきであろう。
「海外は不景気」でも輸出が減りにくい現状
新型コロナで海外経済も大きな打撃を被っているため、日本の輸出も激減し、日本の景気に大打撃を加えそうである。しかしそれでも、従来の輸出よりは海外経済に振り回される度合いが小さくなっているようだ。「海外の景気が良いときには輸出数量を大いに伸ばしてもうけよう」というのが筆者のイメージする輸出企業であるが、どうも最近は「地産地消」を目指す輸出企業が多いようである。海外の景気の波や為替レートに一喜一憂しなくて良いように、輸出は控えめにして、現地生産で現地の需要変動に対応する。国内で労働力が集まりにくいので、海外で現地生産をせざるを得ない面もあるのかもしれない。そうだとすると、経済に占める輸出のウエイトが下がり、輸出が増減しにくくなり、「輸出が激減して国内景気が悪化する」ことのインパクトが縮小しつつあることになろう。
新型コロナの感染拡大が半年で終息なら 速やかに回復する可能性もあるが…
以上のようなことを考えれば、「同じことが10年前に生じていた場合と比べると、経済への打撃は相対的に小さいはずだ」といえそうである。これは明るい材料である。新型コロナによる自粛などが半年程度続いたとしても、流行が終息すれば消費は元に戻り、景気も短時間で元に戻ると期待される。高齢者も公務員も多くの一般企業のサラリーマンも、特に所得が減ったわけではなく、自粛疲れをしているため、消費のリバウンドが期待できるからである。もっとも、一部の人に集中している打撃を和らげることは絶対に必要である。最重要なのは、倒産の回避である。短期間で需要が回復したとしても、その間にたとえば行楽地の施設が倒産してしまっていれば、需要が回復できない事態にもなりかねない。加えて、失業してしまう可能性のある非正規労働者や売り上げが激減してしまう自営業者の救済策も必要であろう。彼らの多くは「自粛という国策」の犠牲者なのであるから、手厚く所得を保障することなどが必要であろう。その意味では、今回行われる予定の政府の経済対策には期待している。その理由については拙稿「コロナ経済対策の『収入減世帯への現金給付』に大いに賛同できる理由」をご参照いただければ幸いである。
以上、今回は、需要面のみから今後の日本経済の行方について論じた。供給面についてもサプライチェーンの寸断などを心配する人は少なくないようだが、生産設備が物理的に破壊されてしまう地震などとは異なるため、新型コロナの感染拡大が終息すれば、生産体制は比較的容易に戻ると考えて良いだろう。政府の資金繰り支援策などによって部品メーカーの倒産が回避されれば、という条件付きだが。上記にかかわらず、当然ながら日本経済が大打撃を被る可能性は皆無ではない。新型コロナが短期では終息せずに猛烈なスピードで感染拡大が続き、日本人全員が外出禁止になる可能性などが考えられるが、そうした場合については本稿では考慮していない。その点は、ご了承いただきたい。 
●PIMCO、ディフェンシブ投資推奨 コロナ不況「短期だが深刻」 4/3
米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO、ピムコ)は2日、新型コロナウイルスに伴う不況は「短期だが深刻」になるとの見方を示した上で、ディフェンシブ投資を推奨した。
世界経済は今後半年から1年以内に回復に向かう見込みだが、前例のない危機に見舞われていることから、回復が始まっても企業倒産は高止まりで推移するほか、コロナ感染が再び増加する恐れもあると指摘。「前例がない以上、現在展開する世界的な景気後退(リセッション)に適した戦略は存在しない」と述べた。
その上で「こうした不確実性が高い環境では、従来と同様、ディフェンシブ投資に集中する」と表明。具体的には米国債に加え、割安とみられるエージェンシー住宅ローン担保証券(MBS)や高格付け社債などへの選好を推奨した。一方、低格付けのクレジット商品や新興国市場には注意が必要とした。
米連邦準備理事会(FRB)を含め世界各国の中銀による政策対応が下支えになるほか、危機前の米経済は底堅いとし、経済が深刻な「恐慌」に突入する可能性は回避できると指摘した。 
 
 

 

●NY株ダウ360ドル安、雇用者数急減でコロナ不況への不安募る 4/4
3日の米国株式市場は反落し、ダウ平均株価.DJIは360ドル値下がりした。3月の雇用者数が大幅に落ち込んだことで、新型コロナウイルス不況への不安が強まった。
3月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月から70万1000人減と、前月の27万5000人増からマイナスに転じた。新型コロナを受けた外出制限措置などが経済活動の停滞につながり、米経済のリセッション(景気後退)入りを示唆した。
ジャニー・モンゴメリー・スコット(フィラデルフィア)の主任投資戦略部長、マーク・ルスキーニ氏は「投資家は指標の悪化を予想していたとはいえ、この日の雇用統計によって非常に厳しい現実を突き付けられた」と述べた。
S&P総合500種指数.SPXは2月中旬に付けた高値から約27%下落。時価総額にして7兆ドル相当が吹き飛んだ。市場では国内総生産(GDP)予想の下方修正が相次いでおり、モルガン・スタンレーは今年の成長率がマイナス5.5%と、1946年以来で最大の落ち込みを予想した。第2・四半期は38%ものマイナス成長を見込む。
TDアメリトレードのストラテジスト、マイク・タービー氏は「現在の状況でV字回復は期待できない。まだ主要な問題を克服できていない」と語った。
業種別ではエネルギー株.SPNYが1.3%安。トランプ米大統領は3日午後、ホワイトハウスで国内石油企業の幹部と会談し、新型コロナの発生やサウジアラビアとロシアの価格戦争によってもたらされた石油価格の急落について協議した。
個別銘柄では、娯楽大手ウォルト・ディズニー(DIS.N)が3%安。必要不可欠な人員を除き、米国の全部門の従業員の一時帰休を19日に開始すると発表した。新型コロナの世界的流行でテーマパークが閉鎖されるなど、事業に大きな影響が出ている。
一方、電気自動車(EV)メーカーのテスラ(TSLA.O)は5.6%高。スポーツ用多目的車(SUV)「モデルY」の生産と出荷を計画を大幅に前倒しして開始したと公表した。
ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を3.53対1の比率で上回った。ナスダックでは2.73対1で値下がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は115億7000万株。直近20営業日の平均は157億5000万株。  
 
 

 

●コロナで内定取り消し続発 学生「一方的すぎる」企業「仕事ない」 4/5
新年度が始まり、多くの企業で新入社員が会社生活をスタートさせた陰で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済状況悪化を理由に、企業から採用内定を取り消された学生がいる。政府は内定取り消しを回避するよう企業側に求めたが、中小企業からは「経営努力では追いつかない」との悲鳴も上がる。一方、行き場を失った人を緊急採用する動きも広がっている。
「訳が分からず、今も信じられない思い」。兵庫県内の大学を3月に卒業した男性(22)は、悔し涙を見せた。
4月から働く予定だった東京都のデザイン会社から内定取り消しの連絡があったのは、3月中旬。面接や内定者研修でも会った役員から「コロナ不況で受注は半分以下。業績が改善したら、すぐに連絡する」と謝罪された。すぐには意味が理解できず、耳を疑った。
新人にもすぐに担当を任せるなど、小規模な会社ならではの魅力を感じ、内定をもらった4、5社の中からこの会社を選んだという男性。他に内定をもらっていた飲食チェーンの会社で5月から働くことが決まったが、「飲食業もコロナ不況で先は暗そう」と不安げな表情を見せる。「中国での新型肺炎のニュースを、どこか人ごとかと思って見ていたのに…」
同じく3月に大阪府内の大学を卒業した神戸市の女性(22)は、関東エリアの旅行関連会社に4月1日付で入社予定だった。会社から3月中旬に電話があり、「仕事が軒並みなくなったので、入社時期を9月あたりにずらしたい」と告げられた。「一方的すぎる。納得できない」と訴え、7月1日付での採用が決まったものの、「自分の人生をないがしろにされた気持ち。もう信じられない」と就職活動を再開した。複数の内々定をもらい、「今度こそはどんな会社かじっくり見極めたい」と話す。
経営側も頭を悩ませる。神戸市内の加工会社は3年前に、約8年ぶりに採用を再開した。受注増による人手不足に加え、技術者の高齢化も理由だった。今年も既卒者ら3人を採用したが、3月から受注が減少。「うちのような小さい会社に来てくれてありがたいとは思いつつ、このままでは4月中は覚えてもらう仕事もない」と嘆く。
内定を取り消された学生を採用する動きも出ている。神戸市は3月25日、1年間の任期付き職員100人の募集を始めた。モスバーガーを展開するモスフードサービスや、スーパーのライフコーポレーションなど大手も、緊急採用に取り組んでいる。 
●日本が絶対コロナ不況から脱却するたった1つの方法 4/5
今回は、日本が絶対デフレから脱却するたった1つの方法をお教えします!もし今このデフレ続きの日本をどうにかしたいなぁ〜とか、何か経済対策を考えなきゃなぁ〜とか、お肉券とかマスクの配布とかいろいろ考えたんだけどどれもしっくりこないよぉ〜と感じているそこのあなたに、とっておきの秘訣を教えちゃいます!
結論 とても簡単です
結論から言うと国債を発行してお金を使います。これだけです。驚きました?ヘキサもびっくりしました!でもこれだけだと具体的にはどうしたら良いんだよ?って言われる方もいらっしゃるので、これからどのくらい国債を発行したらいいのかとか、なぜ国債を発行したらいいのかということを解説していきたいと思います。
そもそも国債とは?
そもそも国債とはどういうものなのでしょうか?国債とは、国が発行する債券の「国庫債券」の略語で、いわゆる国の借金と言われています。じゃあ、国の借金である国債は誰から借りているのでしょうか?正解は、日本国債のほとんどは日本円建てで借りられている、つまりほとんど日本国民から借りているのです。一部海外の方が保有していますが、それもほぼ全て日本円建て。外貨建てではありません。だから、日本国民が日本政府に貸しているお金ということになりますね。「じゃあ借金ってしたらまずいんでしょ?いつか返さないと…」って思いますよね。ただ、日本政府には、子会社のような連携した組織として日本銀行(日銀)があります。日銀はお札(日本銀行券)を発行できる権利を持つ日本で唯一の機関です。つまり、その日銀が子会社にいるということは、日銀がお札を刷って返却すればいいのです。なぜなら日本国債は全て円建てだから。円を発行できる力がある機関、しかも今の時代は兌換銀行券(通貨の発行量が金によって決まるシステムのこと)ではなく不換銀行券、つまりお金を発行する限界量なんてないわけです。そんな日銀が「円が発行できないから借金返せませ〜ん!信頼がなくなってお金が借りれなくなったので債務不履行で〜す!デフォルト(財政破綻)しちゃった〜テヘペロ(´∀`*)」なんてことは理論上ありえないわけです。(もちろん、これは変動為替相場制だからできることです。変動為替相場制なので他国の通貨の発行量に合わせてお金の量を買うなり調節するなりなんてことは全く必要ないからです) なので、最終的には政府の借金は日銀が肩代わりすれば円建てなら万事解決!「でもやっぱり借金は良くないよ…」と思う方もいらっしゃると思うのですが、そこはお金に関する認識をもう一度考えていただきましょう。
どのくらい国債を発行すればいいの?
じゃあ、一口に国債を発行しようといってもどのくらい発行すればいいのでしょうか?これの参考となるのがGDPです。GDPとは国内総生産の略で、1年間のモノやサービスの総額のことです。GDPの内訳は、ウルトラざっくり説明すると
GDP=家計+企業+政府+海外 です。
家計の使ったお金、企業の使ったお金、政府の使ったお金と輸出入の差額の合計でGDPを求めることができます。しかし、海外の輸出入は日本においてはそんなに多くないし、誤差の範囲として今回は考えないものとすると、GDPは「家計」と「企業」と「政府」の使ったお金の合計と考えられます。GDPが大きい数字ほど、みんながお金を使ったということで、経済成長してどんどん豊かになっているという目安になり、GDPが小さい数字ほどみんながお金を使わずに、経済は衰退してどんどん貧しくなっているという目安になります。じゃあ今の日本のGDPはいくらでしょうか?2019年の日本のGDPはおよそ536兆円です。
別の記事でも解説していますが、GDPは6割以上が消費で成り立っているので、消費の罰金である消費税が2019年の10月に増税、つまりより厳罰化して、消費がめちゃくちゃ冷え込みました。その結果、2019年の10月〜12月の3ヶ月のGDPは年率換算で-7.1%とめちゃくちゃ落ち込みました。つまり、年間で考えると、およそ38兆円分GDPが下がったという計算になります。消費が落ち込むというのは、家計がお金を使わないということ、そして企業は本来入ってくるはずだったお金が入ってこないので、設備投資や消費に回せないと、家計も企業もどん底な訳です。
GDPが下落するというのは、経済が衰退していることですね。ここでもう一度GDPを見てみましょう。GDPは家計と企業と政府の支出金額の総額ですね。ということは、GDPが落ちて経済が弱っているときにお金を出せる存在は政府しかいないのです。こんな時代に正義の味方になれるのは政府だけの大チャンスってわけ。政府は、インフレ率を限界としながら、理論上は国債を無限に発行できる、つまりGDPを元に戻すことでデフレを元に戻すことができる存在は、政府の国債しかないのです。ただ、38兆円というのは、消費税増税によって下がってしまった経済を元に戻す、つまりインフレ率0%にするためのやり方であり、インフレ率2%にするにはまだまだ遠い数字です。さらに、2020年1月から始まったCOVID-19の世界的な感染と自粛要請、自粛ムードによる大規模ナイト経済活動のストップがこの記事を執筆している4月まで(ってかまだまだ続きそう)ガッツリかかっています。2020年1月〜3月のGDPは2020年5月発表なので、本記事執筆時点ではまだ数字は出ていませんが、経済活動は大幅にストップしているので、ヘキサはさらに-10%くらいになってしまっているのではないかと思います。
なんならもっと下落していそう……
つまり、仮にインフレ率0%に戻すだけで単純計算で536兆円の18%分、約96兆円の支出が必要となります。さらにインフレ率を2%にするには単純計算ですが100兆円以上の国債の発行が必要だと考えています。これは「事業規模」ではなく「国債発行額」です。事業規模にしたらザックリ約200兆円くらいでしょうか。というか、「事業規模」なんてかさ増しにしか過ぎない数字のマジックですから、国債発行額、真水の経済対策と呼ばれているものが100兆円必要という主張です。
どんなことに使えばいいの?
ただ「100兆円も使え!」っていきなり言われてもなかなかそんな大金、いざ渡されると使い道に困りますよね。宝くじに高額当選した時にも「その日から読む本」があり、お金の使い方に関するアドバイスもあるくらいですから。ってか一生に一度でいいから高額当選してみたいわ〜 そこでいくつか使い道を考えてみました!
1 現金給付
日本国民はざっくりと1億2000万人います。国民1人あたりに10万円現金給付をすると約12兆円ですね。つまり1人あたりに20万円給付だと約24兆円、1人あたりに30万円だと約36兆円分になります。これから考えると1人あたりに20万円くらいが妥当じゃないかと思いますね。つまり約24兆円の出費ですね。余談ですが、国民民主党の玉木代表が、自身の動画で過去に現金と商品券がどのくらい利用されたのかを調べた動画を上げていましたが、現金であれ商品券であれ利用率は約32%だと統計の結果が出ています。つまり、現金だから貯蓄に回るとか、商品券だからみんな使うとかそういうことはないみたいですよ。それなら商品券よりもどんな商品とも交換できて印刷の手間が不要で安上がりな日本銀行券という最強の商品券がいいに決まっていますよね。まあお金持ちにも貧乏人にも高齢者にも子どもにも1人20万円って、それはどうなんだ?って言われそうですが、やはり即効性もあるし、累進課税制度で収入の高い人は後で税金で回収できると考えます。逆に対象を限定してしまうと、給付対象者の申請だったり、給付対象者を選ぶ作業が必要になるので、給付の時間がかかってしまいます。これは給付までに時間が遅れてしまいます。給付金を受け取る間まで耐えられない人を救うことが一番大切なのではないでしょうか?
2 消費税廃止
消費は日本の経済の6割を占めており、日本経済のエンジンですね。そして消費税というのは消費にかかる罰金であることは前にも書きました。ということは、消費税を減税することは、消費に対しての罰を緩和すること、すなわち経済を回すエンジンになることですね。現金給付で最低限安心できる金額が手に入っているのであれば、消費税が減税されれば消費しようと思えば消費が活性化されそうですね。消費税はよく逆進性で、貧乏人ほど負担する割合が大きい税金だと言われています。ということは、裏を返せば減税したときに恩恵が大きいのは収入が少ない人ということですね。ただ、疑問点は2つ。1つ目は駆け込み買い控えが起こること。これは一瞬はそうなりますが、長い目で考えれば消費の活性化に向かうと考えられるし、一旦は落ち込んでもその反動で一気に経済が回ることも考えられます。2つ目は、減税するための手間が大変…これは確かに重要な問題です。そこで、消費税0%、実質的な廃止がいいと考えます。0%であれば、消費税という枠を消すなり非課税ボタンを押すなりと、設定が減税に比べて比較的簡単で負担が少ないということがあります。また0%というインパクトが、経済を回すんだという強いメッセージにもなります。タダは最強!はっきりわかんだね。ということで、消費税を0%にするには、その分約20兆円の国債の負担が必要と考えられます。
3 自粛をお願いした企業への補填
経済活動を止めるということは、お金で生活している日本国民(ほぼ全ての日本国民)にとって収入が減るということだし、企業の利益が減るということです。したがって、放っておけば何人もの大切な命がコロナではなく自殺という形で亡くなってしまいます。さらに、自殺まで行かなくとも、プレッシャーから家庭崩壊等、大きなリスクやストレスによって今まで当たり前だったものが失われるリスクが大きく増えます。なので、企業には「きちんと利益を保障するから、心配しないでゆっくり休んで!」という強いメッセージを残すことができます。コロナで亡くなる方がメインで報道されていて、確かに亡くなった方の命は重く受け止める必要がありますが、このままでは木を見て森を見ず、コロナで亡くなった人ばかり見て自殺等で亡くなる大切な命がより増えていく一方です。自殺大国日本、これはなんとしてでも食い止めねば……!と思います。およそ5兆円くらい?
4 フリーランスの方への給料保証
企業ばかりに目を向けていると、個人事業主のことをついつい置いてけぼりにしてしまいがちです。個人事業主も大切な日本国民であり経済を共に動かす仲間です。個人事業主の命も守るために、利益の保証はする必要があります。これはもう言い値でいいと思います。およそ5兆円くらい?
5 生産者の方への追加給付
こういう緊急事態、外国からの輸入も難しくなり、日本の中でも物の移動が難しくなっているので、食料も不足すると考えられます。そこで、農業や水産業、畜産業等食べ物の生産や加工に関わる人やそれを運送する人などに積極的に補償をして、より美味しいものをより多く届けていただかないと、完全に自給自足をしている方以外全員飢えます。これはまずい。食べ物の値段も異様に値上がってしまいます。およそ10兆円くらい?
6 マスクや紙の製造業への投資
食べ物だけではありません。感染対策のマスクやアルコール消毒液、トイレットペーパー等の紙類を積極的に生産していただくための投資はとても大切なことだと考えます。布マスクを配るという案も考えられますが、布マスクは目が粗く、一般的なウイルスはすり抜けてしまい、効果が全くないと言われています。やっぱり目が細かくてウイルスを通さない紙マスクや手を清潔に保つアルコール消毒液の方がよっぽど大事ですね。余談ですが、給食当番の布マスクは、感染症対策ではなく、唾液等が食品に入ることを防ぐという役割なので、用途が全く異なるということを付け加えておきます。約5兆円くらい?
7 医療施設への投資
日々感染症の最前線で戦う意志や看護師、そして1997年橋本龍太郎政権の緊縮財政のスタートから今まで減らし続けてきた病床の数や医療スタッフの数、そして保健所の数や隔離施設等々、あきらかに足りていません。こういうところには少しずつ投資して、1997年から失ったこれらのものを時間をかけてゆっくり取り戻した方がいいと考えています。(早すぎると医療スタッフの質を問いたくなるので。) 約20兆円くらい?
8 光熱費等の肩代わり
やっぱり自粛は要請されているわけですから、それの代わりと言ってはなんですが、電気代や光熱費、水道代などは自粛に必要な経費ですよね。たしかに支払いを先延ばしするというのもあるのですが、それはその事業をやっている方にお金が回らないってことになってしまうし、結局は家庭に無理矢理借金を押し付けているようなものなので、ここは思い切って負担しちゃいましょう!約5兆円くらい?
9 その他事業
それ以外にも手をつけるべき箇所はたくさんあると思います。新しい施設を作ったり休校していても授業を受けられるようなオンラインシステムを整備したり等々やることは山積です。ということで、ここにあまりを投入!およそ5〜10兆円くらい?
使う上で大切なこと
ここにあげた9つのものは全て例えばの話です。実際は様々に議論されるでしょうし、こんなこと意味あるの?とか、これもやらなきゃダメでしょ?とかいろいろ言いたいことはあると思います。もちろんこれだけではないですし、様々なアイデアがあると考えられますし、様々な可能性を検討する必要もあると思います。ただ、唯一大切なことは、1つだけではなく、いろいろな方法を組み合わせることです。1つの方法だけでは、いくら国債を発行したとしても使い切ることも難しければ、効果はある一定のものしかないと考えられます。また1つだけではメリットもデメリットもどちらもあります。だからこそ、いくつもの可能性を組み合わせることで、デメリットは別のメリットで補うことであったり、メリットの相乗効果が生まれるなど、同じ額の国債発行でもより多くのメリットが生まれる可能性があるからです。つまり、「減税だ!」とか「現金給付だ!」とか言っていますが、それだけではなく、「どっちもやろうよ!」というスタンスが大事なのではないかとヘキサは思います。
よくある質問
そんなに国債を発行しちゃって大丈夫?
はい、大丈夫です。むしろこれくらいしないと日本が大変なことになります。経済が回らず、このコロナショックと呼ばれる経済危機が終わった後には国民が総貧困化していると考えられます。ハイパーインフレへの懸念ですが、ハイパーインフレとはインフレ率13000%以上のことを言います。つまり、現在のGDPが突然130倍になる、つまり単純計算で7京円が突如政府から投入されたらそうなりますが、そんなことはあり得ませんよね。というか、投入しようと思えばできるのですが、まともなパイロットは自ら事故をしにいきませんよね?それと一緒です。こんな引き締め国家が突如7京円支出しますか?5000兆円でも非現実的すぎるし、なんなら数億円数兆円をケチってる世界ですから。まずあり得ないでしょう。やはりインフレ率を見ながら国債を発行し、過度なインフレにならないように見守るしかないですね。適正なインフレ率は2〜3%と言われています。その範囲内でコントロールすることはできます。
「市場に出回るお金の量を調整すればいいということだから、国債発行というアクセルと徴税というブレーキを使い分けて、安全運転になるようにコントロールしようということだね。」
そのためにも様子を見ながらフレキシブルに税率を調整することも大事だと思いますし、税金は大切な役割を担っています。税金には経済のブレーキという大事な役割があるので、これは景気が過熱しているのであれば重要な選択だと思います。
でもプライマリーバランスの黒字化が大切でしょ?
プライマリーバランスの黒字化とは、税収内で支出することですね。健全財政といえば聞こえがいいですが、政府が黒字になるということは、その逆にいる民間(家計や企業)が赤字になるということですし、この不景気にプライマリーバランスを黒字化する意味は全くありません。景気が過熱すればプライマリーバランス黒字化は自然と達成されるものなので、プライマリーバランス自体を目標に定めているところがおかしいですね。プライマリーバランスの黒字化というのは経済成長にブレーキを強くかけているということを意味しますので、それは景気が良いときに行うものですよね?と思います。

日本が絶対デフレから脱却できる国債を発行するというたった一つの方法を紹介しましたが、いかがだったでしょうか? 
 
 

 

●コロナ不況で家計破綻しないための防衛策 4/6
新型コロナウイルスのパンデミックにより金融相場は大荒れで、世界的な自粛ムードにより経済も停滞傾向です。そこで今回感じたことを「家計」の観点からお伝えし、これから起こりえる状況にどう対処すればよいかを考えてみました。 
個人は複数の収入源を
仕事に関して言えば、自粛ムードがこのまま続けば、コロナ不況で「解雇・内定取り消し・早期退職奨励」「倒産・廃業」の流れは、多くの産業に波及すると思われます。すると、経済的困窮者が増加し、別の意味で死人が出る可能性があります。そのため個人の備えとしては、スキルアップも必要だけれども、やはり副業を含め複数の収入源を持つことが必要だと感じました。私も講演系の仕事は激減(というか、ほぼゼロ)しましたが、このような書く仕事を持っていたため継続できています。また、少人数の勉強会は続けていますし、オンライン会議アプリのzoomを使ったセミナーなどは、今花盛りになっています。ほかにも太陽光発電所からは売電収入(日照が良くなり収入も増えている)が、不動産からは家賃収入が入ってきますし、電子書籍は何もしなくても収入になります。今回、ある意味強制的にやらされた(せざるを得なかった)感のあるリモートワークですが、この経験を通じ「自分にも自宅にいながら何かできそう」と感じている人は、少なくないと思います。そこで私がおすすめしているのは、「オリジナルコンテンツの発信」です。今は、ブログやSNSなどで自分のメディアを持ち、いつでもどこでも情報発信してブランディングすることが可能です。そのコンテンツが周囲から「面白い」「役に立つ」と思ってもらえれば、お金になる可能性もあります。
支出の見直しを
収入が減るなら支出を抑えなければなりませんが、固定費はそう簡単ではありません。なぜなら、収入の増減に関係なくかかる費用だからです。家賃の値下げ交渉、住宅ローンの借り換え、スマホの格安業者への変更、固定電話の廃止、NHK受信契約の解除、新聞購読の廃止、年会費や月会費がかかるものの解約、公共料金や税金の前納割引や口座振替割引など、まだ手を付けていないものがあれば、これを機会に検討してみてはいかがでしょうか。わが家でもこれらを全部実行しましたが、たとえばスマホ料金は夫婦で月2万5000円ほどかかっていたのが、今は3回線で月1万円未満です。また、今とても苦しいのはお店をやっている人です。そこで家賃負担が重いならば、家主に値下げをお願いしてみはいかがでしょうか。「契約なので更新までは安くできるはずはない」と思っている人もいるかもしれませんが、買い手と売り手の双方が合意すれば、途中での変更も可能です。大家の方としても、今退去されたら次のテナントが決まるかどうかわからず、賃料が入ってこないので困るという人は少なくないはずです。そこでたとえば1年間だけとか、期間限定で値下げをお願いしてみるのも一つの方法です。
常に備える姿勢を
災害備蓄の重要性が再び認識されています。今回のコロナウイルス騒動でも、東日本大震災直後と同じような買い占めの動きが広がり、ドラッグストアなどでは今だに開店前から長蛇の列です。日本では、首都圏直下型地震や南海トラフ地震など、自然災害の脅威は常にありますので、やはり常に備える姿勢が重要です。わが家でも震災後に方針を見直しました。家を新築する際、設計時から家の中央に納戸を配置し、ティシュペーパーやトイレットペーパー、ミネラルウォーターなど、6か月分のストックを持っています。カセットガスコンロのボンベ、カップラーメンといった保存食の在庫なども、防災セットとは別に余分に持っています。食品は消費期限があるので、古いものから消費し、消費した分を追加で購入するようにしています。車のガソリンも、燃費が悪くなるのを承知で、タンク容量の半分を下回ったらすぐに満タンにします。仮に停電が起きても、車ならエアコンが使えるし、スマホの充電もできるからです(車の中にも懐中電灯を入れています)。さすがにマスクはそれほど必要性を感じませんでしたが、1箱(50枚程度)は常にあるようにし、残ったら次のシーズンに持ち越していたので、とりあえず今のところは何とかなっています。災害はいつやってくるかわかりません。今さら感はありますが今回を教訓に、それぞれの家庭で防災対策を再び見直してみてはいかがでしょうか。 
●コロナ不況下で、安倍政権が“増税派”の日銀委員を推すことの愚 4/6
日銀人事だけは間違えなかった安倍政権が、最後の良心をも失おうとしている
安倍晋三と小池百合子。二人は、「日本で一番パニックを起こしている人間」の座を奪い合っているのか? 安倍首相の自粛要請に続き、小池都知事も「首都封鎖」にまで言及、外出を控えろと命令口調だ。新型コロナウィルスは、未知の病原体なので警戒は必要だ。だが、そのやり方が不味すぎる。恐怖に打ち勝たなければならない時に、恐怖を拡散してどうする?安倍や小池に限らず、為政者たちから伝わってくるのは不安と無責任、それでいて「権力を行使してみたい」という欲求だけだ。小池都知事は記者会見まで開いて、都民の週末の外出自粛を要請した。近隣の県も東京への移動を控えるよう呼びかけた。要請だの、呼びかけだの、見るからに自信がない。イベントの中止を求めながら補償をする気もない。17年前、あまりの規制と役所の縦割りで、「レインボーブリッジが封鎖できない」ことをテーマにした映画が大ヒットした。小池都知事はいつのまに法的問題を解決したのか。橋一本止められないのに、東京都封鎖なんて可能なのか? そんなに東京と他の県の接触を断ちたいなら、まずは都営線を封鎖してみてはいかがか。率先垂範もできない人間に権力を握らせた現実を、有権者は反省すべきだ。
新しい日銀委員に、政府が推す人物の問題とは?
現在、日本が何とか持っているのは、日本銀行の金融政策が不十分ながらも機能しているからである。12年前のリーマンショックの時、当時の日本銀行総裁の白川方明は、明らかに日本経済を、日本人を殺しに来ていた。首相の麻生太郎の無能と合わさり、文字通り日本人は地獄に落とされた。それに比べれば現在の黒田東彦日銀総裁に不満はあっても、少なくとも白川時代よりは遥かにマシであるのは間違いない。これまで安倍内閣は、アベノミクスによる景気回復によって支えられて、憲政史上最長政権となった。問題だらけの政権運営だったが、それでも日銀人事だけは間違えなかった。先日も「安倍内閣最後の良心」として、エコノミストの安達誠司氏を日銀委員に推した点を、最近の私では珍しく激賞した。そして本当に「最後」になってしまったようだ。6月で任期が切れる布野幸利委員の後任に、政府は中村豊明氏を提示してきた。布野氏はトヨタ出身、中村氏は日立出身。日銀委員には「枠」があり、産業界枠の交代である。その枠の正当性はともかく、それでも中村氏が人畜無害であるなら許せもしよう。ところが、中村なる人物、このデフレ下でさらにデフレを悪化させた前科があるのだ。8%消費増税が行われようとする前の平成24年8月6日、中村氏は参考人として呼ばれ、経団連税制委員会の企画部会長として発言している。ここで中村氏は「デフレ下であっても増税を推進すべし」と言い切っている。その結果は、アベノミクスが腰折れ、当初の劇的な回復は失われた。経済的知見に著しく欠ける不適切な人物だ。
コロナ不況のなか、“増税派”の委員でいいのか
この点について、NHKから国民を守る党(会派名はみんなの党)の浜田聡議員が3月24日の参議院財政金融委員会で問いただしている。これに対する政府(内閣府審議官)の答弁は、「8年前の発言は経団連の代表としての発言であり個人の見解ではない。本人にヒアリングしたところ、今後は日銀の中に入れば税制に関して発言する気はない」とのことだった。これに浜田議員は畳みかけ、「アベノミクスを推進する黒田総裁は自分はいわゆるハト派だと発言しているが、中村氏もハト派か」と聞くと、「アベノミクスには賛成する」との答弁だった。完全に言質を取った! 増税に賛成したのはポジショントーク。これからはイエスマンに徹する。ふざけているのか?野党は当然反対だろう。問題は与党だ。自民党内には、消費税を下げろとかゼロにしろとか、威勢のいいことを言う議員がいる。当然、「政府が増税派を日銀委員に推す」など、反対だろう。ならば、造反してでも反対票を投じ、筋を通すのだろう。 「自分が信じる正論を提言しました。でも上司に反対されました。今後も頑張ります」では、出来の悪いサラリーマンだ。サラリーマンでもマトモな人は、本気で上司の過ちを正したいときは、辞表を胸に提言する。自民党議員の地位に恋々としながら正論を言ったフリなど、見飽きた。別に、離党しろとも言わない。どうせ造反もできないだろう。ならば、「安倍内閣が増税派を日銀委員に推そうとしている」という悪事を問いただすべきだ。それもできないなら、二度と生意気なことを言うな。コロナ対策でも「景気対策に和牛券」などと冗談のような政策が飛び出している。すると今度は「魚介類を」と声があがる。何のことはない。業界団体が「自分だけは助けてくれ」と補助金代わりのバラマキを嘆願しているだけだ。今や自民党は、かつての民主党にも劣る低能だと認識すべきだろう。
日銀委員一人の一票は、日本の運命を左右するほど重い
そんなことより、日銀委員一人がどれほど重いのか。一票で日本の運命を左右しかねないほど重い。日本の金融政策、ひいては経済政策を決めるのは、日銀政策決定会合だ。この会合は原則として年8回開かれる。参加者は、総裁1人、副総裁2人、委員6人。全員が対等の1票である。現在の構成は、黒田総裁の金融緩和賛成派が7人、生ぬるいとして反対している所謂リフレ派が2人である。賛成派の内訳は、日銀プロパーで面従腹背の雨宮正佳副総裁とリフレ派の若田部昌澄副総裁を含んでおり、他の4人は黒田総裁の賛成派である。リフレ派の1人として安達氏が入れ替わりに入り、賛成派の1人に中村氏が入る。中村氏は国会答弁の通り「イエスマン」として過ごすだろうが、安倍内閣で初めて明確な増税派の手先が日銀入りする事実は大きい。もはや安倍内閣には、押し返す力が無いのだ。過去の歴史を振り返っても、日銀の意向で政権や日本の運命が変わった例は多い。あの小泉純一郎首相も、政権末期には金融緩和を止められた。以後、回復軌道にあった景気は後退、続く第一次安倍内閣は不況を引き受けざるを得ず、短命政権で終わった。第二次安倍内閣でも、消費増税8%で苦しむ日本経済を救ったのは、ハロウィン緩和である。この時は、5対4の薄氷の勝利だった。1人の重みわかろうか。中村委員案、否決すべし! 
●東京五輪延期とコロナ不況 4/6 
ついに東京五輪延期が正式決定され、来年7月の開幕が決まった。五輪が戦争で中止になった例はあるが、延期は史上初めてのケース。世界中で新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が大流行しており、止むを得ない措置だ。3月末に米国のコロナ感染者数が13万になり、イタリアではコロナによる死者が1万人を超え、共に世界最多を記録。今や米国とイタリアが新たなパンデミック(世界的大流行)の中心地になっている。
世界の感染者は70万人を超え、今後は貧困国での感染拡大が危惧されている。貧困国では内戦や気候変動で人道危機が生じ、医療崩壊が深刻化しているためにコロナ感染拡大に伴って、弱い立場の難民や女性・子どもが甚大な被害を受ける可能性が大である。先進国は貧困国における健康危機の克服に対して国際協力すべきだ。
先進国においてもコロナ不況が深刻化しており、巨額の公的資金を投入して緊急経済対策を講じている。米国は経済対策法案を成立させ、GDP(国内総生産)の約1割に当たる2兆2千億ドル(約237兆円)を投入して、家計への現金給付や企業支援を行い、11月の大統領選に向けて、景気悪化の長期化回避を図っている。
日本政府もGDPの約1割に相当する56兆円規模の緊急経済対策を検討している。国民への現金給付、中小・零細企業への資金繰り支援強化、また外国人観光客激減で打撃を受けた観光・旅行業への支援として「プレミアム付き旅行券」の発行や業績不振企業を対象にした1社200万円の給付金も検討されている。
コロナ不況は全業種に深刻な影響を与えており、企業倒産や従業者解雇などに対して的確に支援体制の強化を図る必要がある。しかし緊急経済対策のための財源として赤字国債の発行が検討されており、次の世代に大きな負担を与えることも事実だ。
3月29日の北海道新聞朝刊に「旅人(あなた)を待つキモチ」と題する全面広告が大々的に掲載された。広告を出したのは、「大自然体、北海道」アライアンスメンバー(ハマノホテルズ、万世閣ホテルズ、十勝川温泉第一ホテル、知床北こぶしグループ、ホテル大雪グループ、トーホウリゾート、鶴雅グループ)であった。
広告は「今、旅は『必要』『火急』とはいわずとも、その社会的役割は『重要』だと思います」で始まり、中略、「私たちはただ、ココロの密閉を解くために旅へ出る人が、安心して日常から離れ、心地よくお過ごしいただくため、ホテル内の万事に手間を惜しまず、お待ちし続けます」と呼びかけ、五つの手間(消毒強化、空調管理、接触感染防止、お客さまの体調不良への速やかな対応、従業員の体調管理)を詳しく説明している。
ホテルキャンセルが相次ぐ中、公的支援に頼るだけでなく、アライアンスを組んで「人間にとっての旅の重要性」をアピールする広告は高く評価できる。 
 
 

 

●「新型コロナウイルス」関連倒産状況 4/7
4月7日、安倍首相は7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)へ改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて、初めて「緊急事態宣言」を発令した。
「新型コロナウイルス」(以下、「新型コロナ」)感染拡大を受け、企業ではテレワークの実施や休業、サプライチェーンの影響をみて操業の一時停止を発表するなど、「新型コロナ」は企業活動にも影響を与えている。
「4月7日18:00現在で、倒産は19件。弁護士一任などの法的手続き準備中は23件で、経営破たんは合計42件まで増加した。
「新型コロナ」関連の経営破たんは、東京都と北海道の各5件が最も多く、23都道府県に広がっている。業種では、宿泊業12件(倒産5件、法的手続き準備中7件)、飲食業6件(同3件、同3件)、食品製造業5件(同2件、同3件)、アパレル販売など、インバウンド需要と消費者対象の小・零細企業が圧倒的に多い。
経営破たん企業は、サービス業や小売業だけでなく、原材料の仕入に支障を来し倒産に至るケースが発生するなど、全産業へ広がりをみせつつある。先行き不透明感が増すなか、「新型コロナ」の影響による経営破たんは、経営基盤の脆弱な零細・中小企業を中心に、さらに増える可能性をあり、懸念される。
2月以降、「新型コロナ」関連の倒産は19件発生した。都道府県別では、最多は東京都6件。次いで、北海道と兵庫県が各2件、福島県、茨城県、新潟県、大阪府、広島県、岡山県、山口県、福岡県、沖縄県の各1件。倒産形態別では、破産14件、民事再生法5件。業績が厳しいなかで経営を維持してきたが、「新型コロナ」の影響が追い打ちをかけ、事業継続を断念したケースが大半を占めている。  
 
 

 

●工場閉鎖やロックダウンが深刻な不況を招く 4/8
ドイツのコンサルティング企業であるローランド・ベルガー(Roland Berger)は2020年3月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う産業界への経済的影響をまとめた最新レポートを公開した。レポートでは経済の早期回復の望みは薄く、予測を超える深刻な不況に陥る可能性もあると指摘しており、同社が前回(同年3月12日)発表したレポートと比べて、さらに厳しい経済的な見通しを示している。
レポートでは産業分野のうち「自動車」「物流」「機械・エンジニアリング」「建設」「石油・ガス」などを取り上げて、それぞれの業界への経済的影響を予測している。
自動車業界ではサプライヤーの需要が減少することから、業界全体で大きな経済的な損失を受けると予測される。一方で、中国で新型コロナウイルス感染症の感染拡大に歯止めがかかりつつある現状を鑑みると、中国の経済回復によって売り上げ減少を2020年内に補完できる可能性もあるとしている。
物流業界では世界各地での工場閉鎖を背景に、海上輸送の需要が減少し業界全体で収益が減少すると予測される。また都市のロックダウンに伴う需要減少が、物流業界全体のキャッシュインフローをさらに減少させる恐れもある。ただ、事態終息後の反動によって需要が一時的に増加し(キャッチアップ効果)、減少分の収益を補完できる可能性もある。
機械・エンジニアリング業界は2018年以降、業界全体での注文量が減少傾向にある。この状況に新型コロナウイルス感染症の影響でプロジェクトの中止が相次ぐことで、収益がさらに大幅に減少する可能性がある。一方で、リードタイムが長期化しやすいプロジェクトを実施している企業では、キャッシュフローは比較的安定した状態に保たれると予測される。
建設業界では新築や改修プロジェクトの進行が遅延することによって、建設資材の需要が減少し、業界全体のキャッシュフローが悪化すると見込まれる。今後、労働者の解雇などの対応策が順次実施されていくと予測されるが、一方で、事態終息後には需要が大幅に増加すると考えられる。このことからレポートでは、2020年を通してみると業界全体の経済的損失は限定的なものになるだろうと指摘する。
石油・ガス業界では飛行機や自動車を使った移動需要が減少していることから、燃料の消費量が低下し、石油・ガスの余剰量が増加、石油・ガス価格は今後さらに低下していくと見込まれる。ただ中国での経済回復が進むことで、需要もある程度回復していくものと考えられる。
ローランド・ベルガーは新型コロナウイルス感染症への対応策を考える上では、事態終息後の対応も視野に入れつつ「短期資金繰りの悪化をどのように乗り切るか」「ロックダウンの期間中のコスト管理をどうするか」「事態終息後にどのように事業を再開していくか」といった諸点を検討する必要があると指摘する。  
●新型コロナ関連の倒産42社 7割は観光・飲食関連企業  4/8
新型コロナウイルスの感染拡大の影響による売り上げの減少などで、破産などの法的手続きをとったり、事業を停止したりした企業は合わせて42社に上ることが民間の調査会社のまとめでわかりました。
民間の信用調査会社帝国データバンクによりますと、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による売り上げの減少などで経営が行き詰まり、1000万円以上の負債を抱えて破産などの法的手続きをとり倒産した企業は、8日正午までに19社となりました。
またすでに事業を停止して弁護士に対応を一任するなど法的整理の準備に入った企業も23社に上っています。
業種別にみますと、外国人旅行者のキャンセルが相次いだ宿泊やレジャー施設など観光関連の企業が18社、外出の自粛で売り上げが落ち込んだ飲食関連の企業が13社と続いています。
調査した会社は「緊急事態宣言が出て外出自粛の動きは一層強くなる。感染拡大に歯止めがかからなければ中小企業の資金繰りは厳しくなるおそれがある」と話しています。
また先月末までの昨年度1年間に1000万円以上の負債を抱えて法的整理によって倒産した企業は8480社で、2年ぶりに前の年度を上回り、負債の総額は1兆2187億円になりました。 
●新型コロナ破綻45件 7日まで、19年度倒産は11年ぶり増加 4/8
民間調査会社の東京商工リサーチが8日発表した全国企業倒産件数によると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う企業の破綻が7日までに45件にのぼることがわかった。政府によるイベント中止や外出自粛の要請の影響で、国内の経済活動は停滞している。2019年度の倒産件数も11年ぶりに増加しており、企業の経営環境は厳しさを増している。
7日までに新型コロナ関連で破綻した45件のうち、法的手続き準備中の25件を除いた倒産件数は20件。このうち2月の倒産は1件、3月の倒産は12件だったが、4月に入ってからは1週間で7件倒産しており、倒産件数の増加ペースは加速している。業種としては宿泊業や飲食業などが多く、19年の台風や消費税率引き上げで手元資金が減少したところに新型コロナによる業績悪化が響き、倒産に至っているという。
19年度の倒産件数は、18年度と比べ6.4%増の8631件だった。前年度を上回るのは11年ぶりで、年度の倒産件数では2015年度(8684件)以来、4年ぶりの多さとなった。「販売不振」を原因とする倒産の件数が前年度から9.5%増えて最も多く、世界的な景気減速が企業経営に影を落としたようだ。
産業別では全10業種の内、8業種で前年度を上回った。新型コロナの影響が懸念される飲食業などを含む「サービス業他」が前年度比6.7%増で最多の2667件と、4年連続で前年度を上回った。「建設業」は同5.9%増の1488件、「製造業」は同7.6%増の1059件、「小売業」は同10.4%増の1236件とそれぞれ11年ぶりに前年度を上回った。一方で「情報通信業」と「金融・保険業」は前年度を下回った。
負債総額は前年度比21.9%減の1兆2647億円と、2年連続で前年度を下回った。1億円未満の負債が6490件で全体の75.1%と、過去30年間の構成比では最も高くなっており、総額としては減少した。
同時に発表した3月の倒産件数は、前年同月比11.8%増の740件だった。負債総額は1059億円と9.1%増加した。  
●新型コロナ倒産45件 元年度倒産は2年ぶり増加、飲食店最多 4/8
東京商工リサーチは8日、3月後半から4月7日までに新型コロナウイルスに関連した経営破綻が45件に上り、25都道府県で発生したと発表した。また、帝国データバンクが8日発表した令和元年度の全国企業倒産集計によると倒産件数は前年度比5・3%増の8480件となり、2年ぶりに増加した。消費税増税に加え、慢性的な人手不足の影響を受けた。感染終息が見えない中、倒産増加に拍車がかかる可能性がある。東京商工リサーチが集計した新型コロナ倒産を業種別にみると、宿泊業が12件と最多で、次いで飲食業7件、食品製造業6件など。展示会や催事などの中止が相次いだことでアパレル業の破綻のほか、中国から原材料が仕入れられず、事業継続できなくなった製造業の例もあった。
一方、帝国データの元年度倒産集計によると、飲食店の倒産は784件(19・3%増)と過去最多を更新した。消費税率10%への引き上げに伴い導入された軽減税率制度により、持ち帰り食品の税率が8%に据え置かれたことで外食離れが加速。さらに、今年3月以降は新型コロナ感染拡大により、外出自粛が広がったことも倒産を後押しした。負債総額は21・6%減の1兆2187億8900万円で、過去20年間で最少となったものの、負債額5千万円未満の小規模倒産は6・7%増の5283件で全体に占める割合は過去最高の62・3%を占めた。帝国データバンクは「4月から改正健康増進法が施行され、国内の大半の飲食店で原則禁煙となったことも打撃を与えている」と指摘。人手不足も深刻な問題で、「飲食店にとっては今後、さらに厳しい状況が続く」としている。 
 
 

 

●コロナ不況は「恐慌以来で最悪」 IMF専務理事 4/9
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は9日、新型コロナウイルスによる2020年の世界不況について「(1920〜30年代の)世界恐慌以来最悪の結果を見込む」と述べた。新興国は感染拡大と経済不況の複合的な危機に見舞われており、債務減免のためのIMFの基金などを拡充する方針も示した。
14〜16日、ビデオ会議を使って開くIMF・世界銀行の春季総会に先立って演説した。IMFは14日には世界経済の成長予想を発表する。ゲオルギエバ氏は従来も、今回の危機について2008年のリーマン・ショックより「はるかに悪い」と述べており、20年に戦後最悪規模のマイナス成長に陥るのは確実な情勢だ。
IMFは1月時点では、20年の世界の成長率を前年比3・3%と見込んでいた。ゲオルギエバ氏は、「(1月時点で)20年に1人当たり国民所得が160以上の国で伸びると見込んでいたが、逆に、170以上の国で減少する見通しになった」とも述べた。
IMFには新興国など90カ国以上から緊急融資の申請が押し寄せており、融資枠の拡大や債務減免措置の拡充で対応を急ぐ。 
●町工場に不況の足音…産官金一体の持久戦が始まった 4/9
新型コロナウイルス不況の足音が、東京都大田区の「町工場」にも近づいてきた。大手自動車メーカーの工場停止を受け、特に自動車関連の加工を手がける中小企業で受注が急減、工場の停止や半休の準備を進める会社も増えている。大田区は区が利子を負担する特別融資制度の拡充を表明、地元の信用金庫には融資の問い合わせが殺到している。産官金一体の持久戦が始まった。
稼働状況見直し
自動車部品のメッキ加工を手がけるメイホー(東京都大田区)の江原弾社長は「お客の工場が止まり4月の受注が急減した」と肩を落とす。6日からは13あるラインのうち1ラインを一部停止した。「今後も各ラインの収支を見つつ週単位で稼働状況を見直す」と言う。例年10億円程度の売上高は「今年は7割程度になるかも」と危惧する。
プラスチック部品の成形を手がけるヤシマ(同)の箕浦裕社長も「当社の売上高の95%は自動車用電池部品。その他の需要も落ち込んでおり、今期(2020年7月期)は売上高が15―20%減少するのは避けられない」とため息を漏らす。
電子機器、制御システムのフルハートジャパン(同)の国広愛彦社長も「案件の打ち合わせが急減しており、下期の苦戦が予想される」と分析する。「しばらくは社員の技術研究などに力を入れるつもりだが、影響が長期化すれば工場の稼働停止も検討しなければならない」という。
限度額引き上げ
大田区を地盤とする信用金庫には、中小零細企業から融資問い合わせが殺到している。城南信用金庫(東京都品川区)の3月の融資額は400億円以上。前年同月は90億円で、4倍以上になった。そのうち約半分が卸・小売り・製造・建設業だ。「材料不足や、自動車関連の発注停止が響いている」(城南信用金庫融資部融資企画課)。
大田区が本部のさわやか信用金庫も同じ状況だ。3月の融資額は344億円で、前年同月(260億円)から大幅に増加した。営業統括部の小橋敏雄部長は「製造業では自動車関連の下請け企業が多く、当面の資金不足を防ぐための問い合わせが多い」と語る。
大田区は新型コロナ騒動の長期化を受け、区内中小向けの「新型コロナウイルス対策特別資金」の融資限度額を500万円から5000万円に引き上げる。返済期間も引き延ばし中小企業の資金繰りを支える考えだ。
7日の緊急事態宣言により都内の外出自粛が強く要請されたが、製造機械を抱える町工場は全社的なテレワーク導入がほぼ不可能。
また大田区のモノづくりは、中小企業や小規模企業が密集する地域性を生かした迅速・緊密な連携が強みだが、新型コロナによって人との接触回避傾向が続けば、その長所も失われかねない。新型コロナの感染拡大が大田区のモノづくりをジワジワと痛めつけている。 
●3月のコロナ関連倒産40件超、さらに増加避けられず 4/9
東京商工リサーチ(TSR)と帝国データバンク(TDB)の民間調査会社2社が8日それぞれ発表した3月の企業倒産件数は、いずれも前年同月比で2ケタを超える増加となった。TSRは前年同月比11・8%増の740件、TDBは同14・3%増の744件。いずれも7カ月連続の前年同月比プラス。新型コロナウイルスの関連倒産は、TSRは7日時点で法的手続き準備中も含め45件、TDBは同日時点で42件。両社とも、新型コロナの感染拡大の影響を受けた関連倒産が今後増えると見込む。
TSRの調査では、前年同月比の増加率は4カ月連続で10%を超えた。TDBでは7カ月連続の前年同月比増は、2008年のリーマン・ショック以降では最長。今後の見通しについて、TDBは「感染拡大が長期化すれば、廃業による取引先減少や消費のさらなる落ち込みが想定される」と予想。TSRは「19年後半から倒産が増えていたところに新型コロナが追い打ちをかける。政府の中小・零細企業への支援が届くのに時間がかかる」と見込む。
19年度の倒産件数は、TSRが前年度比6・4%増の8631件で、11年ぶりに前年度を上回った。TDBは同5・3%増の8480件で、2年ぶりに前年度を上回った。負債総額はTSRが同21・9%減の1兆2647億円で、過去30年間で最少。TDBは同21・6%減の1兆2187億円で、比較が可能な00年度以降で最少だった。 
 
 

 

●新型コロナ危機、1930年代の世界恐慌以来の大不況に=IMF 4/10 
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は9日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により、2020年の世界経済成長率は「大幅なマイナス」となり、1930年代の世界恐慌以来の大不況になるとの見方を示した。
ゲオルギエワ専務理事は、来週開催予定のIMF・世界銀行春季会合向けの準備原稿で、「わずか3カ月前、われわれは2020年の1人当たりの所得成長率が160カ国以上の加盟国でプラスになると予想していたが、今では今年の1人当たりの所得成長率が170カ国以上でマイナスになると予想している」と指摘。今年下半期にパンデミックが終息に向かえば、21年には部分的な経済回復が予想されるものの、「見通しに関しては途方もない不確実性がある。パンデミックの期間を含め多くの変動要因次第で、一段と悪化する可能性もある」と警鐘を鳴らした。
IMFには189カ国が加盟。14日に世界経済見通しの詳細を発表する。専務理事は、パンデミックは富裕国・貧困国の双方に悪影響を及ぼしているが、特に健康保険制度が脆弱で、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)を実施することが難しいアフリカ、アジア、中南米の国々がより高いリスクにさらされていると言及。金融危機時の3倍超に当たる約1000億ドルの資金が流出している上、コモディティー(商品)価格の急落により、新興国や開発途上国は新型コロナ対策として数兆ドルが必要になるとした。
一方で、世界各国の政府が行動を起こし、8兆ドル規模の財政政策と大規模な金融政策が打ち出されたことを評価。将来の経済回復を確実にするために、新型コロナ抑制に向けた継続的な取り組みや健康保険制度への支援、輸出規制の回避などを呼び掛け、「われわれが今行う行動が経済回復の速度と強さを決定する」と強調した。 また金融システムの緊張を減らす一方、賃金に関する補助金や失業給付の拡大、融資条件の調整など「大規模かつタイムリーで的を絞った」措置を提供していくことが重要だと述べた。 
●新型コロナ不況がリーマンショックより扱いにくい深刻な事情 4/10 
新型コロナウイルスによる不況は、リーマンショックより扱いにくく、落ち込みも深刻だ。しかし、感染が収まったときには、不況は急速に回復するだろう。
リーマンショックは単純な不況だった
リーマンショックは、金融システムが傷み、金融仲介機能がまひし、それが実体経済に悪影響を与えて起きたものである。「過去に何度も経験している金融危機の少し大きなもの」であるから対応策はわかっていたし、何より思い切り対策を行えば良かった。
必要なのは、金融仲介機能を回復させることと落ち込んだ需要を回復させることであった。そのための対策として、思い切った金融緩和、金融機関に増資させて政府が引き受ける公的資金注入、減税や公共投資といった需要喚起策などが採用された。
過去に遭遇したものより大きな怪獣が現れたので、手持ちの武器を全部用いて全力で退治した、という感じである。
それと比べると、今回の新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)による不況はとても扱いにくいといえるだろう。「相手がウイルスなので、本気で戦うと人間が死んでしまう」からである。「医学的に、ウイルスを殺そうと強い薬を用いると、副作用で人間まで死んでしまいかねない」こともあるだろうが、ここでは「ウイルス封じ込めのために外出自粛をしすぎると、経済が死んでしまう」という意味で用いている。
政治家にとっては、つらい決断だと思う。自粛が足りずに大流行してしまうリスクもあるが、自粛しすぎて大不況になってしまうリスクもあるからだ。
もしかすると一部の政治家を誘惑しているのは、どちらが事後的に批判を受けないか、という保身の発想かもしれない。自粛が足りずに大流行してしまえば、絶対に批判されるが、自粛しすぎた場合は批判がかわせるかもしれないからだ。
自粛しすぎて経済が大不況になったとしても、「自粛しなければ大流行して大勢が死んでいたはずだ」と言えば、反論は来にくいだろう。だとすると、政治家が保身を図れば図るほど自粛要請は長引くのかもしれない。
現在は、欧米諸国が先に外出制限などを実行している状態なので、どの程度の自粛を行うと何が起きるのか、見当をつけることができる。それが、日本にとっては不幸中の幸いといえるのかもしれない。
新型コロナ不況は需要喚起策が難しい
リーマンショック時は、金融仲介機能を回復させるのと並行して需要を喚起する施策が行われた。例えば、「所得が落ち込んだ人が消費をしないので、減税をした」「企業が設備投資をしないので、政府が公共投資をした」といった内容だ。
しかし今回は、人々が消費をしない理由が「金がない」ではなく「外出できない」であるから、減税をしても現金を配布しても消費を喚起することは難しい。公共投資は積極的に行うべきだと考えているが、これも感染拡大を恐れて政府は及び腰である。
つまり、新型コロナの終息宣言が出るまでは、景気は悲惨な状況が続かざるを得ないのである。
せめて政府は、倒産する企業や失業する労働者の数を最低限に抑え込みながら終息宣言を待つために、金銭的に困っている人や企業に集中的に支援してほしい。消費税を減税しても全国民に一律に現金を配っても消費が喚起されるわけではないのだから、現在の政府の方針はおおむね正しいと思う。
もっとも政府には、しっかりとした規模やスピード感での実行と、せっかく採用した支援策の周知徹底をお願いしたい。支援を受けられるはずの人が、それを知らずに支援を申請せずに倒産したり失業したりすることがないように、政府の広報のみならず、マスコミも協力してほしい。
今回は不況からの回復が早いと期待
明るい材料もある。今回はリーマンショック時と違い、景気の回復も急激なものになると期待されるからだ。
リーマンショック時は、人々の所得が減り、消費が減ったので、景気を回復させることが容易ではなかったが、今回は一部の業種を除いて人々の所得が大きく減ったわけではないので、終息宣言が出ると同時に消費は元に戻るであろう。自粛疲れの反動もあるだろうから、急激な消費の回復が期待される。
あとは、人々が「新型コロナは沈静化したが、外出すると感染する可能性が皆無ではないから、外出は控えよう」と考えるか否かであるが、終息宣言が出たのであれば、過度な懸念は不要であろう。
投資についても、リーマンショック後は多くの企業が銀行の貸し渋りに懲りて、トラウマになり、「借金をして設備投資をするのは嫌だ」と考えるようになっていたので、設備投資の戻りが緩慢であった。
しかし今回は、金融機関が貸し渋りをしているわけではなく、企業が需要の減少や先行きの不透明感から設備投資を手控えているだけなので、終息宣言が出て需要が戻り、先行きの不透明感も消えれば、手控えられていた設備投資が一気に出てくると期待できるだろう。
リスクシナリオとして金融危機の恐れも
一部には部品の入手困難などを原因に生産が再開できない、といった問題を懸念する声もあるが、災害と異なり部品の生産設備が破壊されているわけではないので、影響は短時間でなくなるだろう。
新型コロナの影響で、部品メーカーがすでに倒産してしまっている場合は別であるが、必要不可欠な部品に関しては、製品メーカーが部品メーカーの資金繰りの支援をするなどによって倒産を回避しているはずだと信じたい。
もっとも、リスクシナリオとして、新型コロナ不況から金融危機が起こる可能性は否定できない。メインシナリオではないので、過度な懸念は不要であるが、頭の片隅に入れておく必要はありそうだ。
日本では、倒産が相次いで銀行のバランスシートが傷み、貸し出しに慎重になる可能性があるだろう。海外では、途上国から資金が引き揚げられて通貨危機に発展する可能性、景気悪化で財政赤字が拡大して財政破綻が懸念される国が出てくるかもしれない。そうならないことを祈るばかりだ。 
●アパホテル、コロナ不況でも攻めの姿勢「今は設備投資のチャンス」 4/10
コロナ禍で国内外の往来が途絶えても、営業を止めることは考えていないというアパホテル。創業オーナーでアパグループ代表の元谷外志雄氏に、今の経営戦略を聞いた。
──コロナショックはとりわけ観光業界を直撃している。アパホテルは拡大に次ぐ拡大でこの3月にネットワーク総客室数が10万室の大台を突破しました。突然の大逆風で窮地なのでは?
元谷:確かに打撃は大きい。地域や立地によっては現在も客室稼働率が80%から100%近いところもありますが、全国的に見れば約50%にまで落ち込んでしまいました。一時は45%まで落ち、最近は少し持ち直しましたが、いずれにしろこの稼働率では赤字です。日本よりさらに厳しいのは海外、特に4年前に買収した北米のコーストホテルグループですね。カナダとアメリカで計39ホテルを展開していますが、両国間の往来が全面禁止になったことで、カナダのホテルチェーンのほとんどは休業している。でも、私は「全面休業はするな。ワンフロアだけでもいいから開けろ」と指示しました。稼働率は1割にも満たず、ワンフロアも要らない状況ですが、ヒルトンやリッツカールトンなど、世界に根を張るメガホテルチェーンはそれでもオープンしている。「彼らが開けている間は、赤字でかまわないから営業し続けろ」と指示しています。理由は「ブランド力」を世界に示すため。いま優先すべきことは、赤字回避よりも、自社のブランドを毀損させないことなのです。
アパホテルは東日本大震災の直後も1軒もクローズしなかった。
「一日たりとも休んではいけない。予約がない人も、ウチのホテルに避難する目的であれば受け入れなさい」と話しました。ホテル内にある毛布やベッド、それに食料品をすべて避難された方に提供したことで後々、大きな感謝をいただいた。ひいてはアパホテルのブランド力アップにつながりました。非常時にも冷静であり続け、普段通りを貫けるかどうかが何より重要なのです。
──しかし、この出口が見えない不況の中で続けるのは難しいのでは?
元谷:アパホテルには、赤字でも持ちこたえる十分な体力があります。昨年の決算(2019年11月期)は、売上高が1371億円で営業利益が359億円。毎年、コンスタントに350億円前後の利益を出していますし、創業以来、一度も赤字を出してない。借入金が2000億円から3000億円ぐらいなのに対し、資産は1兆円以上ある。1年や2年、現在のような逆風が続いてもびくともしません。いまの厳しい環境は、むしろ当社にとっては設備投資のチャンスです。現在は超低金利ですし、少々割高でも1万室クラスのホテルチェーンを買収する余力がある。メインバンクには「いい出物があればいつでも買う用意がある」と話をしています。
景気が順風の時はどのホテル会社も追い風なので、雨後の筍のように新しいホテルを建てる。ところが景気が悪化すると一転して経営が傾くホテルが現われる。百花繚乱期から寡占化のステージに入っていくんです。当社の目標は、その寡占化に一番乗りすること。具体的には、客室数の市場占有率で20%を取ることです。当社は今年3月に10万室に到達しましたが、それでもまだ10%に届いていない。並み居る同業他社の倍以上の利益を出している強みを背景に、拡大路線をまだまだ続けていきます。 
●新型コロナ不況で半導体市場は急速に悪化へ 4/10 
新型コロナ感染拡大で景気が急激に悪化するなかでも半導体市場は好調を維持。1世界的な在宅勤務(テレワーク)・在宅講義・在宅診療の急増、2オンライン消費増加、35G促進に向けた動きが継続、により、サーバーなどIT投資が引き続き堅調。半導体製造装置出荷は2月も前年同月比2桁増(日本+15%、米国+27%)。サーバーに利用されるメモリ需要も増加し、価格も上昇トレンド。
しかし、テレワークなどによる特需が継続したとしても、半導体市場は今後悪化に転じる見込み。半導体の最終製品別需要を見ると、テレワーク需要に関連するパソコンやサーバーは3割程度のシェア。過半が家計関連のスマホ、家電、車載向け。これらは世界の多くの都市でロックダウンまたは活動自粛が行われるなかで大きく落ち込み。さらに、失業率の急速な上昇が世界的に広がると見られ、食料品などいわゆる巣籠り消費を除けば、個人消費は今後大幅に悪化する公算大。
スマホや自動車を中心に耐久消費財が今後半減すると仮定すると、半導体出荷はリーマンショック時並みに落ち込む見込み。半導体の製造拠点が集まるアジアにとって大きな痛手に。今後、半導体需要が急減することで、アジア輸出全体も一時的にリーマンショック時並みに30%程度減少する可能性も。 
●プレミアム食事券でコロナ不況打開を 「立ち上がれ福井」設立 4/10
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛で飲食業界は大打撃を受けています。こうした中、県内の飲食業の関係者らが感染が終息した後の経営支援策として県内で使用できる「プレミアム食事券」の企画を発表しました。
「プレミアム食事券」を企画したのは県内で13の飲食店を営む「ぼんた」と食材卸し会社「アルプス」の社長らが中心となって設立した非営利団体その名も「立ち上がれ福井」です。10日は記者会見が行われ新型コロナウイルスの影響で県内の飲食店の多くが危機的な状況の中、感染終息後の経営支援策として1万円で1万1000円分の食事ができる「プレミアム食事券」を販売すると発表しました。4月25日まで「立ち上がれ福井」のサイトから食事券の利用店舗を募り、5月1日から一般の消費者向けに販売を始める予定です。利用期間は今年6月から1年間です。「立ち上がれ福井」では団体の運営資金や参加する飲食店の支援に充てるため賛同する企業などから協賛金も受け付けるということです。 
 
 

 

●吉野家、飲食店受難の中で強さを見せる。 4/11 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大で大打撃を受けている飲食業界。外食チェーン各社も3月の売上を大きく減らすところが出るなど厳しい状況になっています。
その中で牛丼チェーン「吉野家」を運営する吉野家ホールディングス(9861)の3月全店売上高は、対前年同月比100%と前年並みを維持しました。また、他の大手牛丼チェーンも90%台の数字となっています。
感染の収束がいつになるか、景気の落ち込みがどこまで深刻化するか先が見えない中、1コインでお腹を満たすことができ、かつテイクアウト機能を既に備えている牛丼チェーン店の業績に注目してみました。
新型コロナウイルスの影響が本格化した3月
日本では3月に入り、一気に新型コロナウイルスの影響が顕在化しました。3月2日に小中高の一斉休校が始まり、13日には新型コロナ特措法が成立、25日以降は大都市圏で外出自粛要請が出されるなど事態の深刻化が進んでいます。そのため、ホテルや航空、イベント、飲食を始めとした幅広い業界が大きな打撃を受け、多くの上場企業の3月業績は対前年同月比で大幅なマイナスを余儀なくされています。その中で、牛丼チェーン大手の吉野家、松屋、すき家の3月の月次数字が目を引きます。
牛丼3社の2020年3月実績比較
牛丼3社の2020年3月の対前年同月比を見てみましょう。
吉野家(吉野家ホールディングス) 既存店売上高:98.2%、全店売上高:100.0%
松屋(松屋フーズホールディングス) 既存店売上高:94.7%、全店売上高:96.0%
すき家(ゼンショーホールディングス) 既存店売上高:92.2%、全店売上高:92.6%
他の外食チェーンの3月既存店売上高の対前年同月比を見ると、たとえばファミレスのサイゼリヤは70%台、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスは80%台となっています。対して、牛丼業界の上場3社はいずれも90%台を維持しました。かつて”デフレ勝ち組”とも言われ、不景気への耐性がある牛丼業界の強さが発揮されているようです。
全店ベースで前期並みの売上を確保した吉野家
牛丼3社の中では特に吉野家の強さが光ります。吉野家の3月は対前年同月比で既存店売上高は98.2%と若干のマイナスながら、新規出店分を合わせた全店売上高は100.0%と前期並みの売上を確保しました。外食に限らず3月は各業種で軒並みマイナスの数字を計上する企業が多い中で、新規出店分を含んでいるとはいえ、100.0%と前期同等となった吉野家の存在感は際立っています。
前期から成長が続いている吉野家
吉野家は前期(2020年2月期)から業績好調が続いています。特に下期は、2020年2月の特殊要因(2018年2月と2019年2月に2年連連続で実施した大型キャンペーンの反動)を除くと、既存店・全店ともに売上高が対前年同月比で110%近い成長を維持していました。その背景には、超特盛の大ヒットやライザップとのタイアップメニューといった企画の成功があります。それが今期(2021年2月期)最初の月である3月の数字につながっていると言えるでしょう。
コロナ不況下ではステーキより牛丼?
かつて“はやい・うまい・やすい”というキャッチフレーズ※で一斉を風靡した吉野家。このフレーズに象徴されるように、牛丼は並盛なら税込み500円以下で食べられる手軽さがあります。※1994年以降は”うまい・やすい・はやい”となっている。
コロナショックによる景気の後退が確実視される中、1コインで満足感ある食事を提供でき、さらに今後の外食店には必須と思われるテイクアウト機能を既に備えている牛丼店は、再び外食チェーンの勝ち組となるかもしれません。一方、同じ牛肉料理でも、2,000円前後の金額を出してステーキを食べる時代は当分戻らないのではないでしょうか。新型コロナが契機とはいえ、時代の移り変わりの早さには驚かされます。新型コロナウイルスの影響本格化により、今後も多くの企業で赤字転落や大幅減益が予想されます。その中で吉野家を始めとする牛丼チェーン各社の業績及び株価の行方が注目されます。 
 
 

 

●積立投資をやってる人が「コロナ不況」で絶対にNGな行為 4/12 
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、各国の株式市場が乱高下を続けている。米連邦準備理事会(FRB)は3月20日、日銀や欧州中央銀行(ECB)など5中銀を対象に、米ドルの資金供給策を拡大すると発表した。
そうした状況下において、我々が取れる手段はあるのだろか。
学生時代から投資を始め、 投資研究会サークル「KISHU」を創立、20代投資家YouTuberとして活躍を続けるKENさんに、前回のインタビューは今回のコロナショックの影響について、今回は積立投資を続けている20代ビジネスマンに向けたアドバイスと心構えについて聞いた。
初心者はいつ投資を始めるべき?
――ダウが「史上最大の下げ幅、市場◯番目の上げ幅」と連日乱高下が続いています。初心者は様子を見たほうがいい?
KEN:短期的なトレードは、間違いなくやらないほうがいいと思います。長期的な視点でも、まだ少し早い気がしますが、余剰資金のうちのほんの一部であればやってみるのもアリかもしれない。例えば、余剰資金が100万円の場合10万円程度から始めてみるなど、ただし儲けようと考えるのではなく勉強と考えて投資するのが良いと思います。私も初心者の頃、荒れ相場で何度も失敗しましたので、とにかく資金は少額からです。また、信用取引や証拠金取引は、初心者のうちはやらない方がいいですね。
投資信託などの積み立てのほか、金投資もアリ
――KENさんが20代の平均的な日本人サラリーマンだとしたら、老後の資産形成のために何をしますか。
KEN:知識や技術のレベルによって異なりますが、基本的には収入の一部を、毎月同額ずつETFや投資信託で積立をするのがいいでしょう。王道は「S&P500」(米国の株価指数)連動のETFや投資信託ですが、今の金融緩和を見ると、金などの貴金属系を資産の一部に組み込むのも良いと思います。世界的な緩和状態では、金など高いパフォーマンスを出すのではないでしょうか。また、今回の危機でも一部の通貨では通貨危機の懸念が出ています。例えば、韓国ウォンでは、対ドルで2010年来の安値を付ける場面もありました。また、トルコ・リラでは2018年に発生したトルコ・リラショックと同じ水準まで通貨安が進んでいます。そのため、各国中銀がスワップ協定を結び対応していますが、今後の懸念も大きいので各国中銀は金の保有量をより拡大していくと考えています。
積立投資は、暴落時にやめたら意味がない
――いきなり貴金属はかなりハードルが高いかもしれないが、今、日本では年金に頼らず老後資産を作ろうとする若い人が増えています。今回の下落でiDeCoやNISAが含み損になっていますが、どうすべきですか。
KEN:積立投資は、含み損になっても継続するべきです。積立投資で老後資金を作る場合、非常に長いスパンで投資を行うことになります。その中では、今回のようなショック的な暴落には投資を行っていく上でほぼ必ず遭遇することになります。ショックに遭遇すると、積立をやめたほうが良いかと考えてしまいがちですが、積立投資の醍醐味は、下落時(株価水準が低い時)に多く買えることです。その後、株式市場が上昇すれば、下落時に多く買っていた部分の利益が大きく乗ってきます。初心者はもちろんですが、株価の値動きはプロでも正確に当てることはほぼ不可能なので、暴落や今回のようなコロナショックが発生しても積立を止めるのではなく、粛々と続けていくべきだと思います。それが、老後の資産を形成するうえで大切なことです。
証券口座、投資信託でおすすめは?
――では、おすすめできる商品はありますか。
KEN:「S&P500」に連動する投資信託です。S&P500は、アメリカを代表する株価指数で、ここ50年ほどを見ても年率7%前後の高いパフォーマンスを叩き出しています。私が尊敬している投資の神様ウォーレン・バフェットも、自分がなくなった後の資産の管理について妻に「資産の90%はS&P500、残り10%は政府短期国債に投資せよ」と述べているほどです。個人的には、ポイント投資ができることもあって「楽天証券」で毎月のポイント分を積み立てています。楽天は証券と銀行があるので、どちらも作っておくと便利だと思います。他ではSBIも証券と銀行があるので便利かと思います。資金のやり取りが何かと便利ですので。投資信託では「emaxis slim」シリーズ(株価指数や債権指数=インデックス=連動の投資信託シリーズ)がおすすめです。この商品は信託報酬を常に業界最低水準に保つことが公約とされており、他社が信託報酬を引き下げ最低水準が切り下がると、追従して信託報酬を下げる仕組みになっています。インデックスの長期投資では信託報酬部分のコスト削減は投資家にとって非常に大切ですので、常に最低水準を保ってくれる商品は投資家にとって有り難いです。ETFでは、「バンガード・S&P500 ETF」(VOO)などがおすすめです。通常の投資信託と比較して、コストが低い傾向にありますので、自分で注文を出せる人には良いかもしれないです。 
 
 

 

●アメリカでコロナ不況対策の現金給付始まる、4人世帯で3400ドル 4/13 
<奇しくも日本で布製マスク2枚が各世帯へ配られ始めるのと同じタイミングで、アメリカでは早くも銀行口座への入金が始まった>
アメリカで、大型景気刺激策による個人への現金給付が銀行口座に振り込まれ始めた。新型コロナウイルス対策による景気後退を下支えするため、高額所得者以外のすべてのアメリカ人に支払われる。
オンラインバンキングのスタートアップ企業カレントのスチュアート・ソップCEOはウォール・ストリート・ジャーナルに対し、連邦政府のコロナウイルス対策関連法に基づく支払いの「第一派」が、4月10日から顧客当てに届き始めたと語った。ソップによると、これまでのところ、政府からの振り込みの40%は一件1200ドルで、最高は4700ドルだったという。
年収が7万5000万ドル未満のアメリカ人は、最低1200ドルの給付を受けられる。納税申告を共同で行なっている夫婦は、合算した年収が15万ドル未満の場合は2400ドルを受け取れる。17歳未満の子供がいれば、1人につき500ドルが加算される。すべて一回きりの支払いになる。
給付を受けたアメリカ人は、早速、SNSに報告をアップしている。
申請手続きなどは特に必要なく、IRS(米内国歳入庁)が納税記録を見て支払いの手続きをする。納税義務がない人向けには、給付金受給のためのマニュアルをホームページで公開している。それ以外で納税申告をしていない人への送金は数週間から数カ月、遅れることになるという。
〇思いがけず、景気刺激の給付金を受け取った。本当の話だったんだ。これじゃ足りない人もいるだろうけど、一緒に頑張るしかない
〇たった今、1200ドルの給付金を受け取った
〇一回限りの給付金1200ドルを受け取った。これでトイレットペーパーや生理用ナプキンが何個買えると思う?
〇私の銀行口座に直接、政府が給付金を振り込んできた  
 
 

 

 
 
 

 

 
 
 

 

●コロナ不況で地銀に存在感 リスク覚悟の緊急融資 4/16 
新型コロナウイルス感染拡大の猛威が直撃する地元中小企業の資金繰りを支えるべく、地銀を中心にした地域金融機関の緊急融資が活発だ。中小企業の経営危機に歯止めがかからない現状に、地銀各行は「いまこそ存在感を示すときだ」と鼻息が荒い。ただ、不良債権化や企業倒産に備える信用コスト上昇の懸念もある。リスク承知で動かざるを得ないことの背景には、構造不況に苦しんできた地銀側の事情もある。
顧客と接点増やす好機
「地元企業をしっかりと支援していただきたい」。3月中旬、各地銀トップの電話に金融庁幹部からこうした要請が相次いだ。同6日には麻生太郎財務相が民間金融機関に対し、中小企業の資金繰りに対応するよう要望したばかり。中小企業の経営難が問題化し始めた時期だけに、電話を受けたある地銀トップは金融庁の焦りを感じたという。ただ、別の地銀トップは「責任を取らない金融庁は関係ない」と突き放す。すでに多くの地銀が、政府の要請に先駆けて地元企業の資金繰りを支援する融資を拡大しているからだ。取引先に飲食や宿泊など多くの観光関連企業を抱える京都銀行は、2月上旬には特別融資制度の受け付けを開始。4月上旬までに約600件の融資を実施し、返済期限の見直しにも対応する。同様の融資は横浜銀行や千葉銀行、池田泉州銀行など全国の地銀が手掛ける。この状況は「これまで資金需要がなかった顧客との接点を増やす好機」(地銀関係者)でもある。関西みらい銀行は顧客対応をスピードアップするため、各部門を横断する特別チームを設置。販売減に苦しむ企業にビジネスマッチングなども提案する。担当する沢村真人執行役員は「困りごとを抱えた顧客に『役に立つ地銀』と感じてもらうことが重要だ」と強調する。
問われる目利き力
訪日外国人客の減少や外出控えなどにより、地域経済を支える中小企業の資金繰りは急速に悪化している。神戸市の飲食業者は「いつまでこの状況が続くのか。リーマン・ショックどころか、これまでに経験がないほど落ち込んでいる」と嘆く。東京商工リサーチのまとめでは、すでに全国で50件以上の企業が倒産に追い込まれた。それだけに地銀の融資は事業継続の大きさな支えになっている。ただ、感染終息の出口が見えない状況で、地銀にとっては緊急融資が不良債権化のリスクをはらむ。地銀関係者は「融資を断らないといけないケースは当然ある。銀行の目利き力が問われる状況だ」と話す。また、全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)は3月18日の会見で信用コスト増加を指摘。大阪銀行協会の鵜川淳会長(池田泉州銀行頭取)も「信用コストを一定程度予想しながら資金を確保する必要がある」と警戒する。
「動かない訳にいかぬ」
地銀や信金など地域金融機関は長く構造不況にあえいできた。少子高齢化や東京一極集中で地域経済は低迷。日銀のマイナス金利政策によって預貸金で収益を上げるビジネスモデルの見直しを余儀なくされた。地域での存在感が陰り、再編圧力も強まる一方だ。それだけに、にわかに資金需要が生まれたこの現状は、顧客ニーズに応える絶好機となる。ある信金幹部は「不良債権などのリスクはあっても、お客さんのために地元信金が動かないわけにはいかない」と打ち明ける。融資に前のめりになりかねない状況だが、アナリストは「アクセルとブレーキのバランス」を懸念する。営業担当が積極的になり過ぎて、ブレーキ役を担う審査部門のチェックが甘くなるという不安だ。一方、政府は事業者の資金繰りのため、日本政策金融公庫など政府系金融機関を通じて無利子無担保の融資を実施。生命保険各社も積極的な契約者貸し付けを進める。官民を挙げて、中小企業支援は分厚くなりつつある。 「地銀としては当面アクセルを踏むしかないのではないか」。日銀幹部はこう冷静に分析してみせた。地域経済のためにリスクを覚悟でどこまで融資を続けるか。地域金融機関は難しい判断を迫られている。 
●失業者は既に1700万人超、米国襲うコロナ不況の怖さ  4/16 
「すでに充分に不況と捉えられるし、こんな状況はいまだかつてなかった」
プリンストン大学のアラン・ブラインダー教授の言葉を待つまでもなく、新型コロナウイルスによる経済的打撃は日米だけでなく世界中で深刻さを増している。特に感染者・死亡者の人数で世界最悪を更新している米国では、3月中旬からの3週間で約1700万人が新規の失業保険を申請しており、米国という巨船は沈みはじめたかに見える。米JPモルガン・チェースは第2四半期の米失業率は20%に達すると推測しているし、エコノミストによっては2021年になっても9%前後で高止まりすると見る向きもある。
筆者は失業率の動きよりも、失業者の実数を計った方が経済全般のナマの姿を読み取れると考えている。過去の不況を眺めると、例えば2008年からのリーマンショックに端を発する世界金融危機でさえ、米国の失業者は1500万人超だった。今回は1700万人超であり、この数字は今後さらに増えると思われる。今回の不況がいかに深刻であるかが分かる。ドナルド・トランプ大統領は先週、全米で発令されているロックダウン(都市封鎖)が解除された後は、「米経済は(スピードの出る)宇宙船のように上向く」と豪語したが、V字回復する保証はない。楽観的な見方はトランプ氏らしいが、新型コロナの感染者・死亡者がある時期から急に霧消することは考えにくく、各分野で慎重な対応が望まれる。
ましてや今は、ウイルスという目に見えぬ敵と闘っている「戦時」との認識があるはずだ。旅行者の入国が制限され、貿易・商業活動にもブレーキがかかり、民間企業がマスクや人工呼吸器などを製造し、2億人以上がロックダウンで自由な外出もままならない。こうした社会状況が急速に改善し、1700万の失業者がすぐに再雇用されるかどうかの保証はない。ただ米政府はこれまで3回の新型コロナ対策を打ち出してきた。特に3月27日にトランプ氏が署名して成立した総額2兆2000億ドル(約237兆円)という支援法案は米史上最高規模で、驚かされるほどの大判振る舞いである。
何しろ米国の名目GDP(国内総生産)の10%ほどの規模なのだ。トランプ氏にしてみると、コロナの蔓延の一因が自分の初動対応の遅れであったとの指摘を受けているので、景気・経済対策だけは惜しまずに行うとの意図があったとも思える。日本ではどうか。米国から10日ほど遅れた4月7日、過去最大規模となる108兆円の緊急経済対策を発表したのだ。日本のGDP比では約20%で、米国の2倍である。その中核をなすのが所得の減った世帯への現金30万円給付である。
当初、30万円給付という言葉を聞いた多くの方は、「政府から30万円がくる」と思われて歓喜された方もいただろう。だが「生活支援臨時給付金」という名がついた支援の要件は複雑すぎる上に、対象者が絞られていて、貰える国民は2割ほどではないかとの話も出た。しかも自己申告制である。例えば月収25万円の独身者が新型コロナの影響で15万円になっても給付されない。
「半減して年収換算で住民税非課税水準の2倍以下まで減少」という要件に合わないからだ。いかにも「役人らしい縛り」である。これは家計がピンチにある人を救うという目的にそぐわない。108兆円という巨費を割いた割には「使いたくありません」と思われても致し方ない要件である。こうした批判を受けたからか、自民党の二階俊博幹事長が4月14日、2020年度第2補正予算案を念頭に、国民に一律10万円を給付する考えを示した。ただ10万円給付案はすでに野党が提案していて、ようやくきたとの印象を拭えない。
国民がいま求めているのは2枚のマスクでも要件の複雑な自己申告制でもなく、黙っていても送られてくるキャッシュだろうと思う。それでは米国ではどうか。支援法案が成立したことで、実はすでに現金給付が始まっている。米国税庁(IRS)が成人1人につき1200ドル(約13万円)を支給しているのだ。米側の要件をみると、日本よりも簡素化されている。
昨年の年収が7万5000ドル(約810万円)以下という要件があるだけで、キャッシュが政府から給付される。ちなみに17歳以下の子供には500ドル(約5万4000円)が給付される。二階氏は野党が提案したからというより、「米国もやっているから」とのお考えだったのかもしれない。米国で支援法案が成立した3月27日、スティーブン・ムニューシン財務長官は「ほとんどの方は3週間以内に(現金を)受け取るだろう」と述べた。その言葉どおり、IRSは先週金曜(10日)から送金を始めている。
個人の銀行口座情報をIRSに伝えてある人は直接、1200ドルが口座に振り込まれる。口座を政府側に伝えていない人には小切手が郵送される。米国で現金給付が比較的早く、しかもスムーズに始まったことに、多くの国民からは安堵の声が漏れている。ただ食料品を買うと答える現実派も多く、本質的な生活安定化のための給付ではない。米国はこれまで、公衆衛生や感染症対策ではどの国よりも準備ができていたはずだった。
人材や医療技術、疫学的な対応策も講じられているはずだったが、新型コロナウイルスに、医学界も経済界も撃沈させられている。ただトランプ大統領がいま速やかにすべきことは感染者の拡大を抑えて、重篤患者を看病できる医療体制を構築し、新型コロナの抗ウイルス薬とワクチンを迅速に、そして安全性を確かめた上で認可することだ。結果を期待したい。 
 
 

 

●コロナ不況「子ども数十万人死亡も」 国連総長が警告 4/17 
国連は十六日、新型コロナウイルス感染拡大による世界的な景気後退の影響で今年末までに「数十万人」の子どもが亡くなる可能性があると警告する報告書を公表した。各国に対し感染対策だけでなく、子育て世帯への経済支援や学習機会の確保にも努めるよう呼び掛けている。子どもの感染率が相対的に低いとされる中、報告書は「社会経済的な影響」の大きさを指摘した形だ。
グテレス事務総長は報告書に合わせた声明で、教育、食事、安全、健康の各面の悪影響を例に挙げ、「われわれは子どもらへの脅威に今こそ行動を起こさねばならない」と主張。特に紛争地域や貧困国の子ども、障害のある子どもらの保護を訴えている。
国連によると、新型ウイルス対策のため百八十八カ国が全国的に学校を閉鎖。世界で十五億人の子どもが影響を受け、このうち学校給食に頼ってきた百四十三カ国の三億六千万人が、代わりの栄養源を探さなければならなくなっている。 
●原油価格が新型コロナ不況でも上昇する理由 4/17 
4月9日から緊急会合を開いていた「OPECプラス」(石油輸出国機構と非加盟の主要産油国で構成)は12日、日量970万バレルという歴史的な規模の減産で合意した。減産量は世界の通常の需要から見て、約10%程度になる。
キリスト教の国に関してはイースター(復活祭)の休暇を返上してまで行った会合だ。結局、4日間の長丁場となったが、2018年10月時点の生産量を基準に「それぞれの国が23%の生産削減」という方向で進められた。
最終的にはOPEC加盟の13カ国が合計で613.7万バレル、ロシアなどの非加盟の産油国10カ国が364.6万バレル生産を減らすことで合意が成立した。一時はメキシコが自国に割り当てられた40万バレルの減産を拒否、10万バレルにとどめるように主張。話し合いが平行線をたどる中で合意が見送られるとの見方も浮上した。
しかしながら、最後はアメリカのドナルド・トランプ大統領がメキシコの減産分のうち30万バレルをアメリカで肩代わりする意向を示したこともあり、かろうじてアジアでマーケットが開く直前にまとまった。
会議は新型コロナウイルスの感染が拡大している中、テレビ会議システムを使って行われた。OPECプラスの減産は5月1日から有効で、6月末まで2カ月間にわたって行われる。その後、7月1日から12月末までの6カ月間は日量770万バレル、2021年1月1日から2022年4月末までの16カ月間は日量580万バレルと、徐々に減産幅を縮小しながらも、合計で2年間に及ぶ、長期の減産合意を結ぶことになった。
このほか、非公式ながらもサウジアラビア、UAE、クウェートの3カ国は合計で200万バレルの割り当て枠を超える自主的な減産を行うと発表。またアメリカ、カナダ、ブラジルは価格低迷による自然な減少という形で、370万バレル生産を削減することを約束したほか、それ以外のG20国も合計で130万バレルの減産を進めるとした。これだけの量の減産が1回の会合で合意されるのはもちろん初めてのことだ。
もっとも市場の反応は、極めて限定的なものにとどまった。週明け13日にはNY市場のWTI原油先物が早々に1バレル=24ドル台まで買い進まれたものの、早々に息切れ。その後は軟調な相場展開が続き、15日には一時19.20ドルと18年ぶりの安値を付けた。
OPECプラスによる970万バレルの減産合意以外は正式な発表はなく、減産開始の時期などの正確な情報にも乏しいことから、実際にこれだけの大幅減産が順守されるのかといった不透明感が残った。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う航空便の運行停止などの人々の移動の制限、世界的な景気減速の影響などによって需要は日量2000万から3000万バレル減少するとみられている。
よって、これだけの減産が実現したとしても、世界需給は引き締まってこないとの見方が弱気に作用しているものと思われる。
アメリカ内の需給バランスが、極端な供給過剰となっていることも、相場の大きな重石となっている。アメリカのエネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、4月3日までの1週間のアメリカ内ガソリン需要は日量506.5万バレルとなった。3月13日までの週には日量969.6万バレルあったにもかかわらず、わずか3週間で半分近くに需要が減少してしまった格好となる。アメリカは、言わずと知れたクルマ社会である。
新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるために外出禁止例が出され、人々が家の中に閉じこもってしまった以上、自動車の使用も、ガソリンの消費も大幅に落ち込むのは当然の結果だろう。これを受けてアメリカ内の製油所も、稼働を極端に落とさざるをえなくなった。製油所稼働率は3月13日の週に86.4%だったのが、4月3日の週には75.6%まで落ち込んでいる。
製油所が稼働を止めたのは、やはり需要が落ち込んだガソリンを生産する割合の多いユニットと推定される。製油所で生産される石油製品全体におけるガソリン生産の割合は、やはりこの3週間で61.4%から40.9%まで急低下している。通常ならアメリカ人の生活になくてはならないガソリンは、今や極端に言えば「誰も必要としない無用の長物」になっており、在庫が大幅に積み上がる中で価格も急落している。
こうした状況下で割を食うのは、シェールオイルなど、ガソリンを精製するのに適している硫黄分の低い軽質油と呼ばれる原油の生産業者となる。価格下落によって採算割れに陥り、深刻な経営危機に瀕しているシェールオイルの生産業者は、ガソリン需要の減少の影響を、どこよりも大きく受けている。
4月1日には中堅どころのホワイティング・ペトロリアムがアメリカ連邦破産法11条の適用を申請、経営破綻したが、今のような価格低迷が続くなら、シェールオイル業者の破綻が相次ぐ可能性は極めて高いと言わざるをえない。
ではこうした状況下、原油価格はこのまま下落の一途をたどるのであろうか。恐らくその答えは「ノー」であり、相場は意外に早く当面の底を打ち、上昇に転じる可能性が高いと考える。短期的には1バレル=15〜16ドル台まで値を崩すことはあるかもしれない。だが、そうした価格水準は長続きすることはないだろう。以下にそう考える理由を説明したい。
今回のOPECプラスの減産量が、世界市場における供給過剰を解消するには不十分なことは確かだが、だからといってこの先、供給過剰がさらに拡大、在庫の積み増しが加速することもないだろう。
わずか1カ月前に開かれたOPECプラスの会合で、追加減産をかたくなに拒否したロシアと、それに対して逆切れし生産能力いっぱいまでの増産を行う意向を示し、4月分の出荷価格を大幅に引き下げ、価格戦争の引き金を引いたサウジが、ともに日量で200万バレルを超える減産で真っ先に合意したことの意味は大きい。
彼らの姿勢が一変したのは、もちろん自らの行為によって原油市場が急落、WTIが一時1バレル=20ドルの大台を割り込む事態となったことで、危機感が一気に高まったためだ。
今回の減産量が十分でないことは、彼らも重々承知している。もしこれでも売り圧力が衰えず、さらに値を下げるような展開になるなら、躊躇なく追加減産に踏み切るのではないか。
需要が大幅に落ち込む中、小さなパイを取り合って相場を低迷させるよりも、大胆な減産を行うことによって価格を2倍、3倍に押し上げるほうが、結果的に石油収入の増加につながるという計算が成り立つからだ。市場がそこまで踏み込んで考えているなら、20ドルを割り込む水準ではしっかりと買いが集まってくるはずだ。
WTI先物市場が上場されて以降、価格が10ドルを割り込んだのは、1986年4月の1度しかない。1998年にもやはり10ドル割れを試す場面がみられたが、寸前で下げ止まっている。
もし20ドルを割り込んだ水準で買うことができるなら、仮に10ドル割れを試すまでに値を崩すことがあったとしても、リスクは10ドル以下に抑えることができる計算になる。一方でシェールオイルなどのコストの高い油田を中心に生産能力が落ち込む中で、新型コロナウイルスが収束に向かい需要が戻ってくるなら、上昇余地は20ドルや30ドルではきかないはずだ。
1度生産を止めてしまった油田は、稼働を再開しようとしても、すぐに生産量が元に戻るわけではない。需要が回復する局面で生産の回復が遅れる可能性は高く、短期的にせよ深刻な供給不足が生じる恐れは極めて高いとみておいたほうがよい。
半年後にそうした局面がやってくるのか、それとも新型コロナウイルス感染の収束に1年以上を要するのかは、現時点では不明だ。
だが、景気が回復に向かうまでの期間が長ければ長いほど、開発投資が細るために生産の回復に手間取り、供給不足も長期にわたることになるだろう。こうしたリスクとリワード(リスクをとったことによる報酬)のバランスを考えれば、やはり20ドルを割り込む水準は割安であり、もし投資をするなら「買いのチャンス」と考えるのが妥当かもしれない。  
●「世界経済見通し(WEO)」 2020/4 
総括
国際通貨基金(IMF)が前回の「世界経済見通し(WEO)改訂見通し」を発表してからの3か月で、世界は劇的に変わった。感染症の世界的流行というシナリオは、経済政策のこれまでの議論において可能性として取り上げられたことはあったが、それが実際に発生するとどのような状況になるのか、またそれが経済にどのような意味を持つのか、明確に理解していた者はいなかった。私たちは今、指数関数的な感染拡大によって、ほんの数日で感染者が百人から1万人に急増するという厳しい現実に直面している。多くの人命が失われるという悲劇が起き、ウイルスは今も世界中で猛威をふるっている。人命を救うため、たゆみなく努力を続ける医療従事者や救急隊員の方々には心から感謝を申し上げる。
今回の危機は他に類を見ない。第一に、そのショックが大きい。今回の公衆衛生危機とそれに付随した感染症拡散防止措置にともなう生産活動の落ち込みは、世界金融危機を引き起こした損失を凌駕する可能性が高い。第二に、戦争や政治的危機と同じように、今回のショックの持続期間や深刻さについては依然として不確実性が高い。第三に、現在の環境下では経済政策の役割に大きな違いがある。通常の危機では、政策当局者はできるだけ迅速に総需要を刺激し、経済活動を活性化しようとする。一方、今回の危機の大部分は必要な拡散防止措置の結果である。このため経済活動を刺激するのはより困難であり、少なくとも最も影響を受けた産業においては望ましくもない。
本報告書の示す世界経済の予測は、パンデミックの行方、そしてウイルス拡散を遅らせ、人命を守り、医療システムの対応能力を維持するための公衆衛生対策の行方に対するIMFの現在の理解を反映している。この点について、IMFは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に取り組む疫学、公衆衛生、感染症の専門家と多くの議論を重ねることができた。しかしこの予測、パンデミックそのもの、そのマクロ経済への影響、さらには金融市場および一次産品市場のストレスなど、依然として相当な不確実性が存在する。
世界経済が今年、10年前の世界金融危機のときを超える、大恐慌以来最悪の景気後退を経験する可能性はきわめて高い。現在の危機は大恐慌ならぬ「大封鎖」の様相を呈しており、世界経済はこの危機の結果、劇的なマイナス成長に陥ることが予測される。2021年には成長率がトレンドを上回り、部分的回復が見込まれるが、GDPの水準はウイルス流行前のトレンドより低い水準にとどまるだろう。しかも、回復の力強さについては大きな不透明感が存在する。成長率はさらに低くなる可能性もあり、その可能性は高いとさえ言える。世界的流行と拡散防止措置が長引く、新興市場国と発展途上国の経済がさらに深刻な打撃を受ける、金融環境のタイトな状態が続く、あるいは企業倒産や失業の長期化の結果、危機の爪痕が烙印のように消えず、その影響が広範囲に残ることがあれば、成長率が予想を下回る事態に終わるだろう。
今回の危機には、2段階のフェーズでの対応が必要だ。感染症の封じ込めと安定化のフェーズと、それに続く回復のフェーズだ。どちらのフェーズでも公衆衛生と経済の両面における政策が決定的に重要な役割を果たす。隔離、都市封鎖、社会的距離の確保などはいずれも感染拡大を遅らせ、医療システムにサービスへの需要急増に対処する時間を与え、また治療法やワクチンの開発に取り組む研究者のために時間を稼ぐことにつながる。こうした措置は経済活動の落ち込みがさらに深刻化し、長期化するのを防ぎ、景気回復の準備を整えるのに役立つ。
医療システムに十分な能力と資源を確保するためには、医療への支出を増やすことが重要だ。医療従事者の家族への教育扶助や遺族給付の充実など、パンデミックとの戦いの最前線に立つ医療従事者への特別報酬も検討すべきだ。
経済が停止している間、政策当局者は市民が基本的ニーズを満たせるようにし、また感染症が深刻な急性期を脱したら企業活動が回復するように、対策を講じなければならない。それには社会の経済的・金融的なインフラを保ち、労働者と企業、資金の貸し手と借り手の経済的つながりを維持するための大規模かつ的を絞った財政、通貨、金融対策が必要だ。たとえば、非公式経済の規模が大きい新興市場国や発展途上国では、対象を絞った支援を実施するために、新たなデジタル技術を活用してもよいだろう。多くの国の政策当局者が多様な政策を迅速に取り入れ、この未曾有の危機に立ち向かっていることには勇気づけられる。
広範囲にわたる刺激策や、金融システム全体に影響が及ぶシステミック・ストレスを抑えるための流動性対策は、信頼感を高め、金融システムを通じてショックが増幅されるのを防ぐことで需要がさらに縮小するのを防ぎ、最終的な景気回復への期待を高めることができる。この分野においても複数の中央銀行による迅速かつ大規模な行動は重要な役割を果たし、資産価格や信頼感のさらに急激な低下を回避することにつながった。とりわけ重要な点としては、国際流動性を確保するため、主要な中央銀行の間でスワップラインを創設・稼働させてきたことが含まれている。
危機が続く間、そして終息後も、政府や中央銀行の経済への関与が増大するなど、経済の様相は大きく変わるだろう。
強固な統治能力、質の高い医療システム、そして準備通貨を発行するという特権を持つ先進国は、この危機を乗り越えるのに比較的恵まれた立場にある。しかしそのような強みがなく、医療、経済、金融の危機に同時に見舞われている複数の新興市場国や発展途上国は、こうした国に債権を持つ先進国から、また、国際金融機関からの支援を必要とするだろう。
多国間協調が鍵となるだろう。世界中の医療システムを強化するために物資や知見を共有することに加えて、新型コロナウイルス感染症のワクチンや治療薬が開発されたときに、豊かな国も貧しい国も同様に直ちに利用できるように国際社会は協力を行うべきである。また、多くの新興市場国や発展途上国への金融支援を拡充する必要も生じるだろう。巨額の債務返済を抱えている国々には、債務の支払猶予や再編を検討する必要があるかもしれない。
最後に、今回のようなパンデミックの再発を防ぐための対策を、検討する価値がある。珍しい感染症に関する情報交換が活発かつ自動的に行われるようにすること、より早期かつ大規模な検査の実施、個人用保護具の国際的備蓄、重要物資の取引に制限を課さないルールの整備など、グローバルな公衆衛生インフラの改善は、公衆衛生と国際経済の両方の安全性を高めるだろう
悲惨な状況にあっても希望を持つ理由が多く存在する。大規模な感染拡大が起きた国々では、社会的距離を保つための強力な措置が実施されて以降、新規感染者数が減少している。治療法やワクチンの開発が先例のない速度で進んでいることにも希望が持てる。多くの国が実施した迅速かつ大規模な経済政策措置は、経済への打撃が一段と深刻化するのを防ぐことで人々や企業を守り、回復の基盤を整えるだろう。
世界経済が前回これほどの危機に直面したのは1930年代だ。当時は国際的な最後の貸し手が存在しなかったことから、各国は国際流動性の確保に必死になり、その過程で無益な重商主義的政策を採り、世界的不況をさらに悪化させた。今回の危機が決定的に違うのは、IMFを中心とするより強固な国際金融セーフティネットが存在し、すでに脆弱な国々への支援を積極的に実施していることだ。
10年前、2008年から2009年の世界金融危機に際して、IMF加盟国は財政的苦境に陥った国々を支援するための財源を拡充した。IMFは今回も緊急融資の迅速な実行など融資制度を通じて、経済的打撃を抑えるための国家レベルの政策的取り組みに積極的に関与している。また加盟国は10年前に経験したものよりさらに深刻と見られる危機を受けて、再びIMFの財源を拡充するために尽力している。このような取り組みはパンデミックの終息後に世界経済が立ち直り、職場や学校が再開し、新規雇用が増加し、消費者が公共の場に戻るのを、つまり少し前まで私たちが当たり前だと思っていた日常の経済活動や社会的交流を取り戻すのを、大きく後押しするだろう。
要旨
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、世界中で多くの犠牲者が発生し、その数は増え続けている。命を守り、医療システムの対応能力を維持するため、隔離、都市封鎖、そして広範な事業閉鎖によってウイルス拡散を遅らせることが必要になった。このため今回の公衆衛生危機は経済活動に甚大な影響を与えている。感染症の世界的流行によって、世界経済は2020年にマイナス3%と大幅な縮小が予想され、これは2008年から2009年にかけての世界金融危機のときよりもはるかに深刻だ(表1.1を参照)。2020年後半にパンデミックが収束し、拡散防止措置を徐々に解除することが可能になるという想定に基づくベースラインシナリオによると、2021年には政策支援もあって経済活動が正常化し、世界経済は5.8%成長すると予想される。
世界経済の成長予測は、極端な不確実性をともなう。経済への影響はさまざまな要因に左右されるが、それぞれの相互作用を予測するのは難しい。たとえばパンデミックの経過、拡散防止措置の厳格さや有効性、供給の混乱の度合い、世界の金融市場環境の劇的なタイト化の影響、支出パターンの変化、行動変容(消費者がショッピングモールや公共交通を避けるようになるなど)、景況感への影響、一次産品価格の激しい価格変動などだ。多くの国が公衆衛生ショック、国内経済の混乱、外需の急減、国際資本の逆流、一次産品価格の急落から成る重層的危機に直面している。さらに厳しい結果となるリスクは高い。
さらに厳しい結果となるのを防ぐには、効果的な政策が肝要だ。感染拡大を抑え、命を守るのに必要な措置は、短期的には経済活動に悪影響を及ぼすが、長期的には人々と経済の健康への重要な投資となると考えるべきだ。当面の優先事項は新型コロナウイルス大流行の影響を封じ込めること、とりわけ医療支出を増やして医療部門の能力や資源を強化する一方、感染拡大を抑える措置を実施することだ。また経済政策によって、経済活動の減少が人々、企業、金融システムに及ぼす影響を和らげること、不可避かつ深刻な景気後退の傷跡を減らしてその影響が長期化するのを防ぐこと、パンデミックが終息したらすぐに景気回復が始まるよう後押しすることも必要だ。
経済的影響は特定の業界における特に厳しいショックを反映するため、政策当局者は影響を受けた世帯や企業を支援するために対象を明確にした大規模な財政、通貨、金融市場対策を実施する必要がある。このような政策行動は、経済が停止した期間を通じて経済的つながりを維持するのに役立ち、またパンデミックの勢いが弱まり、拡散防止措置が解除されたときに経済活動が徐々に正常化するよう促すのにも不可欠である。影響を受けた国々のなかでも、先進国・地域の多く(オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、イギリス、アメリカなど)では、迅速かつ大規模な財政対応が見られた。新興市場国や発展途上国の多く(中国、インドネシア、南アフリカなど)も、大きな打撃を受けた産業や労働者に対する大規模な財政支援を提供あるいは発表し始めている。経済活動の停止が長引くようであれば、あるいは制限が解除されても活動の回復が弱すぎるようであれば、財政措置は拡大する必要があるだろう。パンデミックやその影響と戦ううえで財政的制約に直面している国々では、外部からの支援が必要になるかもしれない。広範囲にわたる財政刺激策によって景況感の急激な落ち込みを防ぎ、総需要を高め、さらに深刻な景気後退を回避できる可能性がある。ただ財政刺激策の効果が大きくなるのは、大流行が収まり、人々が自由に移動できるようになってからである可能性が非常に高い。
ここ数週間の規模の大きい中央銀行による重要な行動として、システミックなストレスを抑えるための金融刺激策や流動性対策が挙げられる。こうした行動は信頼感を下支えし、ショックの増幅を抑えることで、回復に向けて経済をより良い状態に保つことに寄与している。各国が一斉に行動を起こすことによって各国に生じる効果が高まるだけでなく、新興市場国や発展途上国が金融政策を活用して国内の景気循環面での状況に対応する余地を生み出すのにも役立つ。監督当局は信用リスクについて透明性の高い評価を維持しつつ、苦境に陥った世帯や企業への融資条件の見直しを銀行に促すべきだ。
パンデミックの影響を克服するためには、強力な多国間協調が不可欠だ。そこには公衆衛生危機と資金難という2種類のショックに同時に見舞われ、財政的苦境に陥っている国々への支援も含まれる。そして医療制度が脆弱な国々に援助が届くようにするためにも、協調は欠かせない。ウイルスの拡散ペースを遅らせるため、また感染症に対するワクチンや治療法を開発するために、各国の協力は待ったなしだ。そのような医学的介入が利用できるようになるまで、世界のどこかで感染が起きているかぎり、感染の第一波が収まったあとの再流行を含めて、パンデミックの影響を免れる国はない。 
 
 
 

 

●安倍政権が隠す新型コロナ「日本の奇跡」の原因 5/1
5月6日で終わる緊急事態宣言は、7日以降も延長される方向らしいが、その根拠は何だろうか。4月7日に安倍首相が記者会見で宣言を発表したとき「東京でこのペースで新型コロナの感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後には8万人を超える」と述べた。しかし緊急事態宣言から2週間たった4月21日の東京の累計感染者数は累計3300人。これはニューヨーク州の約3万人の1割で、新規感染者数は減っている。当初は嘲笑していた海外メディアも、最近は「日本の奇跡」と呼ぶようになった。その原因は何だろうか。
日本の新型コロナ死亡率は驚異的に低い
安倍首相が緊急事態宣言を発令したとき、東京の累計感染者数は約1200人、死者は31人だった。当時はアメリカでは感染爆発が始まり、ニューヨーク州では毎日700人以上が新型コロナで死亡していた。「ニューヨークは2週間後の東京だ」と海外在住者がネットで騒ぎ、マスコミも野党も「安倍政権の対応は後手に回っている」と批判していた。もし感染爆発が起こったら、2400人、4800人、9600人・・・という指数関数的な増加で1万人を超えることは論理的にはありうる。
しかし感染爆発は起こらなかった。4月29日の新規患者数は47人。ピーク時のほぼ2割に減った。感染はピークアウトしたように見える。これを「自粛のおかげだ」という人は、次の図を見てほしい。
   ---G20諸国の新型コロナ死亡率---
この図はG20諸国の新型コロナ死亡率(人口100万人当たり)の推移を示したものだが、大きく2つのグループにわかれている。対数グラフなので差が小さく見えるが、最上位のイタリアの452人に対して、日本は3人と150倍の差がある。この大きな差を「自粛のおかげだ」とか「日本人はきれい好きだから」などという原因で説明することはできない。死亡率が最小なのは、きれい好きとは思えないインド(0.7人)である。この差は何らかの生物学的なものと考えるしかない。
やはり有力なのはBCG仮説
この図からわかる特徴は、アジアの新型コロナ死亡率が低いということだ。局地的に感染爆発が起こった中国も韓国も今では約3人で、日本とほぼ同じ。インドネシアも(この図にはないが)タイもベトナムも、東アジア・東南アジアの国はほとんど3人以下である。これを「アジア人とヨーロッパ人の免疫の遺伝的な違い」とする説は、ほぼ反証されている。多様な民族の集まるアメリカでは、アジア系の死亡率は低くないからだ。原因として第1に考えられるのは、中国との交流が多いアジア諸国に新型コロナと似た種類のウイルスが拡散したことだ。2009年の新型インフルエンザのとき日本人の死亡率が低かった原因は、遺伝子配列の似たウイルスに対する免疫ができる交叉反応だったといわれるが、今回はまだ確認できない。
第2の原因としては、ウイルスの変異が考えられる。新型コロナウイルスはRNA(リボ核酸)なので変異が速く、15日に一度、遺伝子配列が変わるといわれる。武漢で発生した初期の新型コロナウイルスは強毒性で、それが変異したものが周辺のアジア諸国に入ったという説もあるが、これもまだ確認されていない。こういう説では、メキシコ(12人)やロシア(6人)は説明できない。東欧や南米の死亡率も、西欧の1/10から1/100である。これを説明できるのは、4月3日のコラムでも紹介したBCG仮説だけである。これはそれほど荒唐無稽な説ではなく、今まで肺炎などではBCGの有効性が確認されている。BCGが人体の非特異的な自然免疫の機能を活性化させ、感染しても重症化しないという説もある。これについて世界中で、毎日のように論文が発表されている。そのほとんどは査読前の論文なので、今の段階で確たることはいえないが、BCG接種を義務づけている国の新型コロナ死亡率が低いという相関関係は統計的に有意だという結果が多い。
安倍政権が「人工不況」からの回復の鍵を握っている
今の段階で確実にいえるのは、日本の驚異的な死亡率の低さの原因は緊急事態宣言ではないということである。日本の自粛より厳格なロックダウン(都市封鎖)をやっている国はたくさんあるが、 死亡率は日本よりはるかに高い。スペインは519人、フランスは369人である。したがって死亡率3人の日本が「緊急事態宣言を解除すると感染爆発が起こってスペインやフランスのようになる」という説は、今から激増するメカニズムを説明しない限り、空想というしかない。この100倍以上の差は偶然ではありえないが、政府はこれについて今まで公式にコメントしたことがない。BCG仮説についても、菅義偉官房長官が一度「厚労省が検討している」とコメントしたきりである。もし日本の新型コロナ死亡率の低さの原因がBCGなどの免疫要因だとすると、クラスター追跡やPCR検査などの日本の対策は無駄だったことになる。緊急事態宣言を解除しても、それほど感染は拡大しない。それがBCGをタブーにしている理由だろう。
だが防疫対策に莫大なコストが浪費され、緊急事態宣言で多くの企業が廃業に追い込まれて失業が増えると、数千人の自殺者が出るだろう。「金は後から取り戻せるが命は取り戻せない」というのは錯覚である。自粛で今回の大不況を作り出したのは安倍政権であり、これは史上初めての人工不況だが、それを回復させる力も政権にある。ここで緊急事態宣言を段階的に縮小し、死者が増えるかどうか注意しながら自粛を緩和すれば、経済は先進国で最初に回復し、日本は世界のトップランナーに復帰できるかもしれない。 
 
 

 

●民事再生法を申請したレナウン、30年間のリストラの歴史と4つのタラレバ 5/15
かつて日本一だったこともあるアパレル企業で、東証一部上場のレナウンが破綻した。5月15日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は138億円余り。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や百貨店や商業施設の休業などにより売り上げが急減し、資金繰りに行き詰った。
これは、コロナ禍によるアパレル崩壊の終わりの始まりなのか……。
答えはイエスでもあり、ノーでもある。中小企業が多いこともあり、多くの企業・ブランドが破綻を迎えるかもしれないが、アパレルが一概に悪いわけではない。むしろ、レナウン固有の、30年に及ぶリストラの歴史を知っておくべきだ。
実は、レナウンほど、タラレバ(もし〜していたら、もし〜していれば)と思わされるアパレル企業は他にない。
創業は1902年。大阪で、繊維雑貨卸業に始まり、有力メリヤス問屋として発展。とくに60〜70年代には、小林亜星によるCMソング「レナウン・ワンサカ娘」が大ヒット。実写とアニメーションを合成したカラーCMの「イエイエ娘」では、ACC(全日本CM協議会)の「CMフェスティバル」でグランプリを受賞。さらに、アメリカンテレビCMフェスティバルでも国際部門の繊維部門最優秀賞を受賞。グループ会社・ダーバンのCMには人気俳優のアラン・ドロンを起用するなど、話題性も創造性も高い花形企業であった。
今では「ラルフローレン」や「ラコステ」などが有名だが、日本で最初にワンポイントのロゴブランドブームを巻き起こしたのもレナウンだった。人気ゴルファーだったアーノルド・パーマー氏にあやかって、日本で独自に「アーノルド・パーマー」ブランドを開発。本人をCMに起用してプロモーションしたこともあり、傘のロゴマークを胸に付けたポロシャツが大ヒット。1ブランドだけで年間売上高が600億円に達するほどの人気となった。
全社売上高は74年度に1000億円を突破。そのわずか6年後の80年度には2000億円を超えた。しかし、81年度に売上高2023億円で過去最高益(営業利益108億円、経常利益140億円)を記録したものの、82年度には営業利益が68億円、86年度には20億円へと、激減。しかし、金融収支が利益を支えてしまったため、本業へのテコ入れは遅れに遅れた。
そして、1つ目のタラレバが起こる。1990年の英国アクアスキュータム社の買収だ。1856年に創業したバーバリーよりも5年早い1851年に高級紳士服店としてスタート。ロンドンのリージェントストリートに旗艦店を構え、英国を代表する老舗ブランドに成長していた。しかし、英国の投資家グループに敵対的買収をされそうになり、レナウンが救済する形で買収に至った経緯がある。買収価格は200億円だったが、結局400億円以上を投入する羽目になった。
オンワード樫山は70〜80年代にかけて海外に現地法人を設立し、デザイナーや現地メーカーをパートナーに迎えてグローバル化を推進。三陽商会が英国「バーバリー」のライセンス事業を成功させていた最中のこと。レナウンも欧州への生産・販売の足がかりをつかんだ……はずだった。しかし、アクアスキュータムの欧州での業績は冴えず、米国事業拡大も失敗してしまった。
結局、買収の翌年、91年12月期に営業赤字に転落し、92年7月期から最終損益も赤字に。バブル崩壊と時を同じくして、長い長いリストラの歴史が続くことになる。2019年12月期までの29年間で、最終黒字化したのはわずか4期。過去の遺産と、後述するスポンサー企業の存在により、現在まで生き延びてきた、ある種、天然記念物のような企業なのである。
2つ目のタラレバが「営業力が弱ければよかったのに」というものだ。当時のアパレルの商慣行では、「お客さまに売れた時点」ではなく、「百貨店など店に納品した時点」で売り上げが計上される仕組みになっていた。営業マンの成績は納品量で計られていたので、期末に売れ残り品が大量に返品されようとも、「押し込み営業」は横行。そこに「売り上げ第一主義」が重なり、在庫が積み上がり、利益はますます低下した。早期に「利益第一主義」やSPA(製造小売り)に転換できていたら、状況は大きく変わっていただろう。武器だった営業力が、じわじわと自らを追い込むことになってしまったのだ。
経営改革の一環で、2004年にはグループのダーバンと経営統合し、レナウンダーバンホールディングス(商号変更して現在はレナウン)を設立。長年のライバルだったオンワード樫山で婦人服「組曲」を成功させ、紳士服を祖業とするオンワードの総合アパレルでの日本一をけん引した加藤嘉久・専務(当時)を副社長に迎え入れるドラスティックな人事も行ったが、効果は限定的だった(加藤氏は3年で退社)。
3つ目は、スポンサー企業の選定だ。最初のホワイトナイトは、2005年に現れたカレイド・ホールディングスだった。福助などの再建を手がけていた和製ファンドの走りだったMKパートナーズから、川島隆明氏が独立して2004年に設立。100億円を投じ、川島氏自らアクアスキュータムの会長も務めた。しかし、赤字は拡大するばかりで、2008年にわずか26億円で保有株式をネオラインに売却した。もともとライブドアグループの一員で、中堅商工ローンなどを傘下に有する消費者・事業金融会社だ。翌年、経営参画を含めた株主提案を突き付けられ、経営陣が総退陣するなど混乱を招いた。
レナウンが助けを求めたのが、現在の親会社である中国繊維大手、山東如意科技集団だった。2010年、第三者割当増資に応じる形で、40億円を出資し、ネオラインを抑えて筆頭株主となった。2013年に29億円を追加し、53%まで出資比率を上げた山東。
レナウンとしては山東のグループ入りをすることで、中国市場への本格展開を目論んでいたのだが、全くうまくいかず。アクアスキュータムの欧州進出に続き、山東を橋頭保にした中国進出という、2度の大きなグローバル展開のチャンスをものにすることができなかった。
しかも、2019年12月期に山東如意の香港子会社(恒成国際発展有限公司)から53億円の売掛金が回収できずに貸倒引当金を計上したことで、赤字幅が拡大。さらに、3月の株主総会では前社長と前会長の取締役再任案を否決され、毛利憲司氏が社長に就任したばかりで、経営体制も混乱していた。
実は山東の傘下に入る前に、サーベラスなど、数社がレナウン買収に向けて水面下で動いていたことがある。サーベラスは、西武ホールディングスの敵対的TOBを仕掛けて委任状合戦(プロキシーファイト)となったことなどで話題になったあの「ハゲタカファンド」と呼ばれた、あの米投資会社だ。
そして、4つめのタラレバが、レナウンが日本で行っていた「J.Crew(J.クルー)」の展開だ。奇しくも先日、米J.クルー社の経営破綻が伝えられたばかりだが、日本事業がうまくいっていたならば、今も両社ともに健全な成長を遂げていたかもしれない。
もし、アクアスキュータムを買収していなかったら。もし、営業力が弱かったら。もし、山東ではなく、サーベラスが買収していたら。もし、「J.クルー」の日本でのブランド展開がうまくいっていたなら……。そんなタラレバを想起しつつ、再建に向けたスポンサー獲得の行方が気になるところだ。
●レナウン業績不振 コロナ追い打ち 親会社と対立も痛手 5/15
名門アパレルのレナウンが法的整理手続きに入る。1990年代には世界最大の事業規模を誇ったが、近年はブランド力の低下やファストファッションの台頭などで不振が続いていた。そこに新型コロナウイルスによる需要蒸発で4月の販売が8割減まで落ち込み、行き詰まった。親会社の山東如意科技集団との関係悪化も目立っており、スポンサー探しなど再建は難航も予想される。
新型コロナの感染拡大以降、販売は急速に落ち込んでいった。主要販路である百貨店やショッピングセンターの休業を受け、3月の既存店売上高は前年同月比42.5%減と急減、4月は同81%減まで落ち込んだ。資金が入らず、5月中旬以降の債務支払いができなくなった。
比較的高価な百貨店中心のブランドに依存するレナウンは、米アマゾン・ドット・コムなど電子商取引(EC)の拡大や、「ZARA」などファストファッションに押され、顧客層を崩されていた。最近は新たな販路開拓を続けていたが、若者向けブランドの育成がうまくいかず、再建に向けた有効な戦略が見いだせなかったところに、新型コロナが直撃した形だ。
ただ、業績悪化は販売不振だけではない。19年12月期は2期連続の最終赤字となったが、主因は山東如意グループである香港企業からの売掛金の回収が滞ったためだ。「回収がいつになるのか不透明だ」(毛利憲司社長)として貸倒引当金を計57億円計上した。
山東如意も近年は事業環境が厳しくなっていた。中国の景気減速や米中貿易摩擦に加えて、新型コロナで苦戦していたとみられる。レナウンによると、山東如意が売掛金を補償する取り決めもあったというが、実現しなかった。山東如意も経営が厳しくなっていた様子がうかがえる。
山東如意とは取締役選任でも対立した。3月の株主総会では神保佳幸社長と北畑稔会長の再任が山東如意の反対で否決され、取締役だった毛利氏が社長に就任した。
今回の法的整理は子会社が債権者として民事再生法の適用を申請するという異例の手続きをとった。民事再生を巡ってレナウンの取締役会の意見がまとまらず、子会社を通じた手法になったとみられ、東京地裁は経営陣が主体となって再生手続きを進める「監督型」ではなく、管財人のもとで進める「管理型」を選択した。
再建へはスピード感を持って、2つの壁を乗り越えなければならない。親会社である山東如意との対立は残っており今後、山東如意出身の取締役が不服として、民事再生手続きの停止を求めてくる可能性も残る。手続きが停止すれば、再建が難しくなる恐れがある。
さらに難しいのが、スポンサー探しだ。法的手続きとなり、消費関連企業にとって重要なブランド価値の毀損は免れない。店舗の閉鎖が長引き、社員やアルバイトが減ると、店舗の運営すら難しくなる。
ある投資ファンドは「消費者の価値観の変化やECの拡大など、アパレルは構造的に厳しい業種だ。新型コロナの影響でいつ平常通り運営できるか分からない。ここでスポンサーに名乗り出るのは難しい」と話す。
●レナウンが民事再生法適用を申請 衣料品販売の低迷 コロナ影響  5/15
「ダーバン」や「アクアスキュータム」などの紳士服ブランドを展開するアパレル大手のレナウンは、新型コロナウイルスの影響で販売低迷に拍車がかかって経営に行き詰まり、15日、民事再生法の適用を東京地方裁判所に申請しました。負債総額は138億円余りで、今後、裁判所の選んだ管財人のもと、建て直しに取り組むことになります。
レナウンは、主力の販路であるデパートでの販売不振や、取引先から売掛金の回収ができなかったことで、去年12月期の決算で67億円の最終赤字となるなど、業績の低迷が続いていました。
ことし3月の株主総会で、筆頭株主の中国の大手繊維メーカーの反対で会長や社長が退任に追い込まれるなど、経営をめぐる混乱も重なり、新体制のもとで立て直しに取り組んでいました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、各地にあるほぼすべての販売店の休業を余儀なくされ、資金繰りが急速に悪化したため、自力での再建を断念し、15日、民事再生法の適用を東京地方裁判所に申請し、再生手続きを開始する決定を受けました。会社によりますと、負債の総額は138億円余りに上るということです。
民間の信用調査会社によりますと、新型コロナウイルスの影響で上場企業が破綻したのは初めてだということです。
レナウンは今後、裁判所が選んだ管財人のもとで支援先探しなどを進め、経営立て直しを目指すことになります。
アパレル業界の老舗
レナウンは1902年、明治35年に大阪の繊維の卸売り業者として創業したアパレル業界の老舗です。社名は1922年に当時、繊維産業の先進国だったイギリスの皇太子が来日した際の巡洋艦の名前から付けられました。1960年代からは若い女性向けのファッションを多く手がけ、印象的なコマーシャルソングで一世をふうびしました。
バブル期には、アパレルメーカーとして国内最大規模の売り上げを誇り、1990年にはイギリスの高級ブランド「アクアスキュータム」社を買収しました。しかし、バブル経済が崩壊したあと、多くの販売拠点を置くデパートでの売り上げが落ち込み、ユニクロなど衣料品の専門店の台頭で業績が低迷しました。
その後、店舗の縮小や社員のリストラなどで経営再建を図りますが販売の不振は続き、2010年、中国の大手繊維メーカーの傘下に入り、経営の立て直しを進めてきました。しかし、その後も「ダーバン」など紳士服向けの主力ブランドの販売は振るわず、去年12月期の決算で67億円余りの最終赤字となるなど、業績の抜本的な回復に至らないまま新型コロナウイルスの感染拡大の直撃を受け、自力での経営再建を断念しました。
東証 レナウン株の上場廃止を決定
レナウンが東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請して受理されたことを受けて、東京証券取引所は東証1部に上場しているレナウンの株式を来月16日に上場廃止にすると発表しました。それまでは上場廃止の決定を投資家に周知する「整理銘柄」に指定されます。
レナウンの株式を売買できるのは上場廃止の前の日の来月15日までの1か月間となります。 
●「民事再生」レナウン、最初の躓きはバブル絶頂期に 5/16
かつてアパレル業界の“王者”として自他ともに認めたレナウンの民事再生適用申請が、15日、東京地裁に受理された。新型コロナ禍による外出自粛と衣料品販売の激減は、体力の弱まった企業から倒れていくサバイバルゲームをもたらし、筆者が住む英国では、柔らかな植物模様の衣料品で世界的に有名なローラ・アシュレイが3月に破綻した。
アパレル業界でぶっちぎりの首位
レナウンは明治35年(1902年)、創業者の佐々木八十八によって「佐々木営業部」として大阪で設立され、繊維製品の卸売業やメリヤス(ニット製品)の製造を手がけた。
第二次大戦中、国策による企業整理で江商(現・兼松)に吸収合併される苦難期もあったが、戦後、いち早く東京に本社を開設して復活。メリヤス、肌着、靴下、セーターなどの販売を手始めに、衣服の洋装化の波に乗って急成長し、瞬く間に日本最大のアパレル・メーカーになった。2016年下半期に放送されたNHKの朝ドラ『べっぴんさん』に登場するオライオンという衣料品メーカーのモデルでもある。
戦後の同社の歴史は、栄光に満ちていた。高度経済成長真っただ中の1961年には、小林亜星が作詞・作曲したCMソング『ワンサカ娘』で一世を風靡。1969年には、空前のゴルフブームを背景に、米国の著名ゴルファーの名前を冠し、赤黄白緑の四色の傘をマークにしたトータルファミリーブランド「アーノルドパーマー」で戦後最大と言われるヒットを飛ばした。さらに1971年には、紳士服のブランド「ダーバン」をアラン・ドロンのCMによって売り出し、樫山と大賀を抜き去って、背広市場で首位に躍り出た。
1965年の売上げで見ると、日本のアパレル・メーカーの上位5社は、1レナウン162億円、2樫山(現・オンワードホールディングス)85億円、3イトキン43億円、4三陽商会39億円、5東京スタイル24億円である。1985年時点でも、やはりレナウンが首位で2202億円、2位樫山1760億円、3位ワールド1359億円。レナウンは常に業界の王者だった。
営業利益激減でも財テクの儲けで危機感薄く
しかし、同社の凋落はバブル期にすでに始まっていた。
アパレルは消費者の嗜好の変化に最も影響を受ける業種の代表格で、常に新たなブランドを生み出していかないと、生き残ることはできない。レナウンはダーバン以降、目立った新ブランドを生み出せておらず、バブル真っ最中の1986年に営業利益が5年前の108億円から20億円に激減した。
しかし、過去の遺産である豊富な内部留保を使った財テクで、毎年50億円を超える営業外収益があったため、社内に危機感は生まれなかった。
レナウンにとって致命傷になったのが、バブル末期の設備投資と企業買収だ。同社は1989年に年商の1割を上回る250億円を投じて、千葉県習志野市茜浜で大物流センターの建設に着工。さらに翌1990年には、英国の名門ブランド「アクアスキュータム」を200億円で買収した。
しかし、バブル崩壊で物流センターは無用の長物となり、三陽商会の「バーバリー」がすべての年齢層に幅広く売れたのに対し、「アクアスキュータム」は主に50代以上の層にしか売れなかった。
バブル末期に大規模な設備投資をやって経営危機に陥った企業は、尾州(愛知県と岐阜県をまたぐ毛織物の産地)の多数の織物メーカーや、世界最大級のトレーディングルームを建設した三陽証券など、枚挙にいとまがないが、レナウンも例外ではなかった。
バブル弾けてみれば商品企画力も失っていた
おっとりとして、比較的紳士的な社風も仇となった。同じ百貨店を軸足とするアパレル・メーカーでも、オンワード樫山や東京スタイル(現・TSIホールディングス)は体育会系で、営業マンは売れ筋を着実に捉え、欠品を生じさせないよう生産部門と連携するよう、厳しく躾けられている。オンワード樫山は、新規ブランドの開発にも積極的で、バブル崩壊後も、20代と30代に的を絞った新ブランド「組曲」(1992年秋冬物)、「五大陸」(紳士物)、「23区」(1993年秋冬物)を次々と投入し、成功を収めた。これに対し、レナウンは営業力も新商品開発力も失っていた。
1991年には85億円もの営業赤字を計上し、暗く長いトンネルに入った。その後は、1991年12月期から11年年連続の営業赤字で、ブランド統廃合、不採算売場からの撤退、人員削減といったリストラに明け暮れた。2004年に紳士服専業のグループ会社ダーバンと経営統合し、ダーバンの利益を取り込んだり、不動産を売却したりして、2003年1月期から2007年2月期までは何とか黒字を維持したが、2008年2月期に再び赤字に転落した(決算時期は1993年から1月に、2004年から2月に変更した)。
この間、メーンバンクである三井住友銀行は、西川善文頭取が「レナウンは絶対つぶすな」と行内で指示し、エース級の人材を複数人レナウンに出向させ、再建策の策定に当たらせた。
また2005年にレナウンは、投資会社のカレイド・ホールディングスから100億円の出資を受け入れた。カレイドは、興銀証券で執行役員を務め、日本の企業再生ファンドの草分けと言われる川島隆明氏が設立した独立系の投資会社で、配管機材メーカーのベネックス(現・ベンカン)、衣料品メーカーの福助、自動車管理業務の大新東といった企業の再生を手がけ、成功していた。川島氏はレナウンの取締役となり、主にアクアスキュータムにテコ入れする戦略でレナウンを立て直そうとしたが果たせず、2009年に撤退した。
アクアスキュータムの売却、中国企業の傘下入り
レナウンは2009年にアクアスキュータムを売却し、翌2010年、中国山東省の民間大手繊維メーカー、山東如意科技集団を引き受け先として40億円の第三者割当増資を実施し、同社の傘下に入った。しかし、その後も業績が浮上することはなく、株価は100円から150円という水準で低迷を続けた。昨年12月の決算では、親会社の山東如意科技集団自体の業績も厳しくなり、レナウンが保有する同社のグループ会社である香港企業に対する売掛金回収が滞ったため、57億円の貸倒引当金を計上した。そこに新型コロナ・ショックが追い打ちをかけ、2月後半から株価が60円近くまで急落し、外出自粛にともなう売上げ急減で、とどめを刺された。
ちなみに直近の決算による、アパレル・メーカーの売上順位は次の通りに激変している。1ファーストリテイリング(ユニクロ)2兆2905億円、2しまむら5460億円、3青山商事2503億円、4ワールド2499億円、5オンワードホールディングス2407億円。激的な主役交代である。
レナウンの破綻の原因は、戦後の衣服の洋装化の恩恵を受け、粗利益率25パーセント〜30パーセント後半という高収益の百貨店向けビジネスを謳歌し、ダーバンやアーノルドパーマーの遺産に安住しているうちに、新商品開発力を失ったこと、バブル末期に過大な設備投資や企業買収を行ったこと、平成に入って不況やインターネットの普及(趣味・嗜好の多様化)の影響で、ユニクロのような安くてカジュアルな衣料品を消費者が求めるようになったことが挙げられる。
英国のローラ・アシュレイは、すでに米国の投資会社ゴードン・ブラザーズによって買収された。経営が破綻してもブランド力がある会社は、債務を削減して身軽になれば買い手は付くのである。しかし、半ば過去のものとなったアーノルドパーマー以外、これといったブランドを持たないレナウンの再建は、困難が予想される。
●コロナ不況の原因は行き過ぎたグローバル化にあり  5/27 
戦後最大の不況が訪れる〜グローバル資本主義による影響
新型コロナウイルスの感染拡大で世界が大不況に陥っています。おそらく戦後最大の不況が訪れて、いまの状況だと今後数年は続くだろうと言われています。もちろん、新型コロナがきっかけではありますが、この大きな不況のもう1つの原因は、ベルリンの壁の崩壊以降、この30年間、世界中を席巻して来たグローバル資本主義が与えた影響ではないかと考えています。
なぜ、世界中に新型コロナウイルスが感染拡大したのか。発生源についてはいろいろありますが、最初に大量発生したのは中国の武漢でした。これが30年前の人の移動であれば、世界中にこれほど早く拡がることはなかったと思います。武漢との直行便はなかったですし、極論を言うと、武漢の風土病で終わっていた可能性も高いと思います。いまはとてつもない人が世界中で動き回っているので、どこかでウイルスが発生すると、あっという間に世界中に拡がるということが今回わかりました。
サプライチェーンというグローバル主義の問題点
グローバル資本主義の2つ目の問題点は、サプライチェーンという問題です。これは短期間で終わりましたが、車メーカーが中国から部品が入って来ないので、車が組み立てられなくて工場が止まりました。家を建てているところも、システムキッチンやトイレが中国製で入らず、家ができているのにお客様に引き渡せないという事態が起こりました。いま慢性的にマスクが足りないのも、日本のマスクの8割が海外生産に依存していたからです。経済産業省は先日、製造業全体で国内回帰を考えた方がいいのではないかという方針を打ち出しました。いままでと真逆です。世界で安いところに大量発注して大量生産させる。例えば私が履いているジーンズは980円ですが、なぜそれができるかというと、国際流通資本が大量発注して、買い叩いて安い値段でつくっているからです。
グローバル資本主義の最大の弊害は「大都市集中」
もう1つのグローバル資本主義の最大の弊害は、大都市集中です。24年間連続で東京圏への人口流入が続いています。これはグローバル資本主義が広がった時期と合います。なぜ大都市の1人勝ちになってしまうかと言うと、経済の中心が金融にあるからです。世界には無数の都市がありますが、国際金融センターと言われているところがニューヨークやロンドン、東京、上海などせいぜい10都市くらいしかありません。なぜ一極集中するかは謎だと言われていますが、東京都の平均所得が高いことの、いちばん大きな原因は株式の譲渡益です。株で儲けている人がたくさんいて、その人たちがお金を使うから東京が栄えるという構造になっています。その結果、家賃が高くなるし、物価も高くなるのです。その高い生活コストをまかなうために、金融で儲けていない人は必死で働かなければいけないのです。それを新型コロナウイルスは直撃しました。大都市は3密の塊です。そこも新型コロナウイルスがグローバル資本主義、行き過ぎたものの矛盾を露呈したということです。
ガンディーの経済学
私はこれを見直した方がいいと思います。ガンディーの経済学、隣人の原理と言うものがあります。近くの人がつくった食べ物を食べて、近くの人がつくった服を着て、近くの大工さんが建てた家に住むという、地産地消で小さな経済単位を無数につくって行く。富山県は、お団子と串の都市構造にするということを始めました。串は富山駅から出る鉄道路線です。中心部からの鉄道沿線に小さなお団子型の経済の集団、地域をつくって行こうということです。そのなかで支え合う都市づくりがいちばんいいのではないかということです。
新型コロナによるライフスタイルの変化〜テレワークの普及で都心に住まなくてもいい
新型コロナによって、私は今後のライフスタイルが変わって行くのではないかと思います。去年(2019年)不動産業者の人と話していたら、いま家を売るには、「東京都区内で駅から10分以内の物件でなければすぐ売れない」ということです。圧倒的需要はそこにあると言います。みんな電車に乗って都心の会社に通勤しなければいけないからです。でも、このままテレワークが進んだら駅から遠くてもいいわけです。ライフスタイルの大革命が起こるのではないでしょうか。そうなれば満員電車にも乗らなくていいのです。 
●コロナの爪痕「深刻な不況」の収束は早い… 5/31 
落ち込みは戦後最悪でも、深刻な不況は「短期終了」
今回の「コロナ不況」はきわめて深刻です。4月分、5月分の経済統計は、おそらく壊滅的な数字が並ぶことでしょう。石油ショック当時、バブル崩壊時、リーマン・ショック当時の落ち込みをはるかに上回る、戦後最悪の落ち込みであることは疑いないでしょう。しかし、回復は早いはずです。
バブル崩壊時は、バブルの余熱が残っていたため、全面的な落ち込みとはならず、ダラダラとした悪化でした。バブル崩壊後の金融危機時は、公的資金の注入により金融仲介機能が回復するまで貸し渋り等が続き、回復には時間がかかりました。リーマン・ショック時も、米国の景気回復に時間を要したため、日本の景気回復にも時間がかかりました。
これらの不況は「金がないから買えない」という需要そのものの落ち込みでした。失業したから金がない、という人も多かったですし、銀行が貸し渋りをしているから買いたいものが買えない、という企業も多かったわけです。
それらと比較すると、今回は「買いたいけれども、外出できないから買えない」という表面的な落ち込みなので、自粛が解ければ消費の回復は早そうです。
ちなみに石油ショック時は、インフレを止めるために厳しい財政金融政策による需要の押さえ込みがなされたものでしたから、異質な不況だったといえるでしょう。今回はインフレ抑制の必要もなさそうですから、政府日銀が需要の回復を邪魔することもないでしょう。
もっとも、インフレについては、可能性が皆無ではないと筆者は思っていますが、リスクシナリオなので今回は考えないことにしましょう。
自粛緩和後についても、感染を怖がりながら、三密を避けながらの外出でしょうから、需要がどこまで戻るかは、わかりません。その後も感染が再拡大して自粛が要請され、行きつ戻りつ回復が続くのかもしれません。
しかしそれでも、「深刻な不況」は短期間で終わるはずです。そして多くの企業は、資金繰りが保てているうちに売上が回復し、倒産の危機は免れることになるでしょう。その後も、景気回復が本格的ではない分だけ売上不振には悩みながらも、倒産はせずに生き延びる企業が多いでしょう。
企業が「倒産する」のと「倒産しそう」なのとでは大違いです。たとえるなら、嵐で傾いた船が「転覆する」「転覆しない」という違いですから、この差は重要です。
「少子高齢化」が失業率増加のブレーキに
倒産が限定的だとすると、失業率はそれほど上昇しないと期待されます。短期的には摩擦的な失業が増加するかもしれませんが、早期に減少するでしょう。そう考える理由のひとつは、少子高齢化が労働力不足をもたらすからです。
少子高齢化は、現役世代の人数を減らしますが、総人口は減らさないので、使う人は減らずに作る人だけが減り、もの(財およびサービス、以下同様)が不足します。すると、「現役世代は失業等していないでしっかり働いてものを作れ」といわれるわけです。
それだけではありません。若者の需要は自動車等、全自動ロボットが作るものも多い一方で、高齢者の需要は医療や介護といった労働集約的なものが多いのです。したがって、若者が減って自動車が売れなくなり、高齢者が増えて医療介護サービスが増えると、GDPは変化しなくても労働力が不足する、というわけです。
失業率がそれほど高まらないと考えるもうひとつの理由は、そもそも景気の波が少子高齢化によって小さくなっているからです。高齢者は所得も消費も安定していますから、経済に占める高齢者の比率が高まると景気が安定するのです。
加えて、高齢者向けのサービスに従事している現役世代も所得が安定しているので消費も安定しています。
極端な場合、現役世代が全員で高齢者の介護をしている経済には、景気変動はありません。もちろん、実際にはそんなことはありえませんが、そちらの方向に経済が近づきつつある、ということは疑いありませんから。
コロナ騒動が収束すれば「黄金時代」が来る
筆者はコロナの前、「少子高齢化による労働力不足で失業のない黄金時代が来る」と予想していました。結果としては外れたわけですが、考え方が間違えていたわけではないと思っていますし、「コロナ騒動が収束すれば黄金時代が来る」といまでも思っています。ちなみに、筆者が最初に「少子高齢化で黄金時代が来る」といいはじめたのは、リーマン・ショックの直前でした。
結果としては完璧に外れたわけですが、筆者はむしろ自信を深めました。あれだけ深刻な不況であったにもかかわらず、失業率はITバブル崩壊のときと同じだったからです。
したがって今回も、リーマン・ショックよりはるかに深刻な不況であるにもかかわらず、リーマン・ショック程度の失業率に止まり、しかも比較的短期間で低下すると期待しています。もちろん、新型コロナの今後の感染再拡大の状況次第ではありますが。 
 
 

 

●大企業50社を実名公開、コロナ不況「生き残る会社・心停止する会社」 6/1 
日本経済が、死に瀕している。
今期決算で、丸紅は1900億円の赤字に転落。また、今年1〜3月でJALは233億円、ANAは594億円の赤字を計上したと発表。ユニクロのファーストリテイリングも、今年8月の決算が38%の減益になる見通しを明らかにした。コロナによって、あらゆる産業が壊滅的なダメージを負いつつある。
コロナとの戦いは、1年は続く可能性のある長いマラソン――。ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授はそう言う。仮に緊急事態宣言が一時的に解除されることはあっても、今と同じような状況が、半年や1年、それ以上続くかもしれない。
そうなれば、名だたる大企業ですら手持ちの現金がみるみる減少していく。カネが回らなければ企業は死ぬ。どんな有名企業であっても、マネーという血液が止まれば、破綻はまぬがれない。
そこで本誌は、大手企業50社を対象に、コロナ禍における売り上げの減少が、企業の現預金をどれだけの速度で食い潰すのかを試算した。1ヵ月の売上高が30〜50%下落したケースを仮定し、下落分の損失が何ヵ月続くと、手持ちのキャッシュがゼロになるかを表にまとめた。
実際には売り上げが8割減や9割減といった業界もあり、30〜50%の下落で収まるか不明だが、それでも1年以内に現預金が底を突く可能性がある企業が多い。特にコロナの影響が大きい業界は今後どうなっていくのか。
自動車
トヨタは1兆円、日産は5000億円の融資をそれぞれメインバンクに要請したことを明らかにしている。日本を代表する企業でさえ、運営資金が枯渇する危険を強く感じているのだ。
「トヨタでいえば、自動車の製造部門はほぼ無借金ですが、金融部門で20兆円超の有利子負債を抱えています。これは自動車のローンに当たる部分で、購入者の返済が滞り始めると、手元の資金がなくなって会社が回らなくなる可能性がある」(ビジネスリサーチ・ジャパン代表の鎌田正文氏)
自動車業界のさらなる問題は、店舗が営業できず、新規受注ができないことだ。そのため、仮に工場を再開できても、ラインを100%稼働させられない。人件費がかさみ、リストラすれば生産能力が落ちてさらに製造が滞る。そうした負の連鎖が目前に迫っている。
エネルギー
工場や物流が停滞すると、資源を供給する商社やエネルギー業界のビジネスが成り立たなくなる。4月20日、米原油の先物取引価格が史上初の「マイナス」に転じたのも、それを象徴する出来事だ。そうしたことから、先述の通り丸紅は赤字転落し、JXTGホールディングスも3000億円の赤字が予想されている('20年3月期)。
「エネルギー企業はもちろん、総合商社も資源を経営の中心に据えて大きな利益を上げるビジネスモデルです。ただ、今回は製造全体が止まっているため、石油だけでなく、石炭や鉄鉱石など、資源全般の需要が下がっている。製造業が動かなければ、商社やエネルギー業界も連動して売り上げがどんどん減っていくことになります」(フィスコ情報配信部アナリストの小林大純氏)
鉄道・航空
その資源を使う鉄道や航空などの旅客業界は、外出自粛の影響をモロに受け、未曽有とも言える苦境に直面している。
JR東日本では、東京駅や新宿駅などターミナル駅の利用者数が3月末から8割近く減った。また、JR東海のドル箱である新幹線も、緊急事態宣言以降は利用者数が9割落ち込んでいる。
鉄道はもともと、「不況に強い業界」と言われており、乗客がほとんどいなくなる事態など想定していなかった。
「おおむね鉄道業界は、売り上げに対して現金が非常に少ない傾向にあります。圧倒的な利用者数と収入が、なかば保証されていたため、手元で動かせるキャッシュを用意していなかったと考えられます。列車の維持費や駅・線路の保守管理費などに加えて、新型コロナによって、大きな収入源だった駅ビルが営業自粛になり、今後テナント料の収入が減る可能性も高い」(公認会計士の川口宏之氏)
乗客数が減っても、運行本数は減らせないため、固定費がかさむ。緊急事態宣言が解除されても、テレワークやウェブ会議が定着し、乗客数が減ることは必至だ。天下のJRであっても、コロナからの回復は容易ではない。
航空業界も同様だ。冒頭で述べたように、大手2社は1〜3月で大赤字を出したが、緊急事態宣言により、自粛が強まった4月以降となると、それどころでは済まない。
「大手航空会社は飛行機を停めているだけで、バカにならない停留料を空港に払わなければなりません。固定費が高いうえに、国交省などの規定により、一定数の飛行機はどれだけ乗客が少なくても運航する必要がある。5月末までは規定が免除される予定ですが、その後はどうなるか、まだわかりません」(経済ジャーナリストの松崎隆司氏)
百貨店
インバウンド需要はおろか、店舗休業で一般客の集客も見込めなくなった百貨店業界は、苦境に追い討ちをかけられた格好だ。都心の老舗も例外ではない。百貨店大手では、売り上げが半減した場合、わずか1〜2ヵ月でキャッシュがほとんど消えてしまう計算だ。
百貨店が生き残るすべはないのか。ファイブスター投信投資顧問取締役運用部長の大木昌光氏はこう言う。
「大手百貨店が一般の小売店と違うのは、一等地に驚くほど多くの土地を持っていることです。景気悪化で地価が下がることも今後のリスクですが、今はまだそうなっていない。保有している土地を売る決断ができれば、当座はしのぐことができると思います」
新宿から伊勢丹が、日本橋から三越や高島屋が、池袋から西武が消える日が近いうちに来るかもしれない。
旅行
それでは、国内外の旅行客がほぼ絶え、苦しい状況にある旅行代理店はどうか。
「コロナの影響をもっとも受けている業種のひとつなのは間違いありません。ただ、材料や部品を調達する必要がなく、そのコスト負担は他業種より軽いと言えます。そのことから考えると、たとえばHISは、実際の数字以上にキャッシュを持っている企業と言えるでしょう」(前出・大木氏)
とはいえ、直面している現実は厳しい。「近畿日本ツーリスト」を運営するKNT‐CTホールディングスは、'20年3月期の通期予想を20億円の黒字からマイナス98億円へ下方修正、赤字転落した。旅行代理店各社でこの状況が続けば、今はキャッシュに余裕があっても早晩、限界が来る。
コロナの影響を受ける企業は、その産業構造や持っている資金に違いはあっても、今は打てる手がない状況だ。ウイルスの封じ込めは同時に、企業の心停止という犠牲をともなう。
「政府の経済支援で中小企業がなんとか持ち堪えたとしても、毎月数百億円から数千億円単位の固定費が流出していく大企業をいくつも救うことはどう考えてもできません。手元のおカネがなくなれば会社が倒産するのは、大企業も同じ。このまま日本経済がストップした状況が続けば、『コロナ以前』に戻ることは二度となくなってしまうかもしれません」(経営コンサルタントの小宮一慶氏)
コロナ収束は最重要課題だが、早く経済を動かし始めないと大企業の倒産ラッシュが起こる。コロナで死ぬか、大恐慌で死ぬか。政府・各自治体はもちろん、企業もそこで働く従業員も、最悪の二択を迫られている。 
●コロナ不況、失業率微増の背後で急増する「休業者600万人」の衝撃 6/4 
新型コロナウイルス問題で緊急事態が宣言された4月の失業率はあまり高まらなかったが、その陰で「休業者」が激増した。これは、営業自粛要請などにより、仕事がなくなってしまった人たちがいるからだ。現在のところ、失業としては顕在化しておらず、政府は、雇用調整助成金の拡充で対処しようとしている。しかし、経済の落ち込みが長期化した場合に、対処しきれるだろうか?
4月の完全失業率2.6% 背後に巨大な失業予備軍
5月29日に公表された労働力調査によると、2020年4月の完全失業率は、前月から0.1ポイント上昇の2.6%にとどまった。失業者数は前月から6万人増加しただけで、178万人になった(いずれも季節調整値)。
なぜ失業者が増えないのだろうか?
それを解く鍵が、「休業者」だ。
4月の労働力調査では、追加参考表「就業者及び休業者の内訳」という資料が突然、現れた。
休業者とは、仕事を持ちながら、実際には仕事をしなかった者のうち給料や賃金の支払いを受けている者だ。だから、求職活動をしておらず、失業者とされていない。
休業者は、これまで毎月150万〜200万人程度だったが、4月に突然、対前年同月比で420万人増えて、597万人になった。
これは、営業自粛要請などで事業者の売り上げがなくなり、そこで働いていた人も休業せざるを得なくなったからだ。
まだ「失業予備軍」の段階にとどまっているとはいえ、仕事をしていない人が600万人近くなったというのは、ショッキングなニュースだ。
4月の労働力統計で最も重要な情報は、これだ。
これまでの労働力調査では、「休業者」という項目は公表される統計表の中には現れなかった。それが、突如として、最も重要な項目になってしまったのだ。
いうまでもないことだが、企業にとっても、売り上げが落ち込んだ状態での休業者の人件費は、重い負担となっている。
生産や売り上げは1割減 かつてない全体の落ち込み
休業者が激増したのは、経済活動が落ち込んだからだ。
5月29日に発表された4月の鉱工業生産指数(季節調整済み)速報値は、前月比マイナス9.1%となった。指数は、2013年以降で最も低い水準だ。
マイナス幅が最も大きかったのは「自動車」(前月比33.3%減)だ。また、航空機部品などの「輸送機械」(25%減)、「鉄鋼・非鉄金属」(14.3%減)も振るわなかった。
鉱工業生産指数は、輸出の減少のため、コロナ以前から低迷しており、19年秋にはマイナス6%台だった。しかし、今年に入ってからはマイナス2〜3%程度になっていたので、4月の数字は、かなり大きな落ち込みだ。
同日に発表された商業動態統計(速報)では、4月の小売業販売額の前年同月比がマイナス13.7%となった。
業種別では、衣類がマイナス53.6%、自動車が23.7%、ガソリンなど燃料が同21.7%だ。
業態別では、百貨店がマイナス71.5%、コンビニエンスストアがマイナス10.7%、家電量販店がマイナス9.0%減だ。
このように、4月の日本経済は、ならして言うと売り上げが1割減った「1割減経済」になった。こうした大きな落ち込みは経験したことがなかったものだ。
小売りなどの営業利益率は2.5%程度 大部分の企業は赤字に
このことは、企業の営業利益に対してどのような意味を持つか?
法人企業統計調査によると、売上高営業利益率(売上高に対する営業利益の比率)は、全産業で4.26%だ。
したがって、仮に売り上げが10%減少して、売上原価や人件費が変わらなければ、営業利益はマイナスになってしまう。
売上高営業利益率は業種によって異なり、小売業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業(集約)ではことに低く、2.5%程度でしかない。
これらの業種では、営業利益の赤字幅は、もっと大きくなる。
売上高営業利益率を企業規模別に見ると、資本金規模が小さい企業ほど利益率が低い。
資本金10億円以上では6.0%だが、1000万円以上2000万円未満を除けば、資本金規模が小さくなるほど比率が低下し、2000万円以上5000万円未満では、2.5%になってしまう。
資本金が2000万円以上5000万円未満の零細企業は、売り上げの減少によって、やはり厳しい状況に直面する。
「1割減経済」では、雇用は8%減少する
上記で見たことは、雇用にどのような影響を与えるだろうか?
営業自粛で最も深刻な影響を受けているのは、対人サービス業であり、零細企業であるので、図表1、2を参照して、売上高営業利益率が2.5%である企業を考えてみよう。
この企業のこれまでの売上高が100だったものとする。売上高営業利益率が2.5%なのだから、売上原価やその他経費は、97.5だ。
ここで、コロナ禍の影響で、売上高が10%減少し、90になったとする。
売上原価やその他経費が97.5のままであれば、この企業の営業利益は、マイナス7.5になってしまう。
営業利益を0にするためには、売上原価やその他経費を90に圧縮しなければならない。これは、約8%の圧縮を意味する。人件費についても、これだけの圧縮が必要だ。
したがって、就業者総数は、8%減少することになる。
現在の就業者総数は6732万人なので、これは538万人の減少を意味する。
これは、冒頭で示した4月の休職者数597万人とほぼ同程度だ。
つまり、「1割減経済」では、約600万人の休業者は必然なのだ。
前回の本コラム(2020年5月28日付け)「コロナで失業者300万人超えも、助成金だけに頼らない抜本的対策とは」では、リーマンショックでの経験を参照し、今回のコロナ禍で、就業者が約4%減少するとした。
しかし、営業利益率が低い企業で売上高が10%減少すると、影響はこれよりかなり大きくなってしまう。
では、営業自粛と休業は、4月以降はどうなるだろうか?
5月は、4月と同じような状況だろう。
6月は、規制が緩和されつつあるので、第2波がなければ売り上げが回復する可能性がある。しかし、第2波に見舞われれば、再び営業自粛が求められるかもしれない。いまのところ、どうなるか分からない。
仮に売り上げが回復しない状態が続けば、休業者が失業し、失業率が一気に上昇する恐れがある。
雇用調整助成金の拡充で対処しきれるか?
休業者の問題に対処するため、雇用調整助成金に新たな制度が創設された。
売り上げなどが減少した事業者が労働者を1人も解雇しなかった場合、1人当たり1日8330円を上限に休業手当、賃金などの一部を助成するこれまでの制度を大幅に拡充して、上限を1万5000円にすることになった。
また、勤務先から休業手当を受け取れない労働者が、直接に給付を申請できることになった。
これによってどの程度の支出が必要になるだろうか? それを推計してみよう。
従業員1人当たりの助成金を、1月当たり25万円としよう。仮に上記の休業者のうち400万人が申請するとすれば、必要額は単純計算で、月当たり1兆円となる。
新しい制度は4月に遡って適用されるので、現時点でも、必要な給付は4月と5月で2兆円になる。
これに対する財源は十分だろうか?
第2次補正予算案には、下記の支出が盛り込まれた。
・雇用調整助成金の抜本的拡充:7717億円
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(仮称)の創設:5442億円
他方で、雇用調整助成金を支出する雇用保険2事業の積立金は、2020年度に1.3兆円だ。
したがって、3.4カ月程度は支えられるだろう。しかし、助成必要期間がそれより延びれば、積立金が枯渇する恐れがある。
そうなれば、保険料の引き上げが不可避になるだろう。
「3割減経済」になれば、失業はもっと増える
さらに大きな問題は、売り上げ減少が一時的なものに終わらず、長期化する可能性があることだ。
移動や経済活動が自由にできない経済では、消費や人出などが平時の7割程度にとどまるという見方がある。
大阪府と兵庫県では、5月21日に緊急事態宣言が解除されたが、人出は平時に比べて6〜7割にとどまっているといわれる。
大手百貨店の幹部は、「6〜8月までは外出自粛の傾向が強く、売り上げは前年同期に比べ3割減だろう」としている。
トヨタ自動車は、世界販売について「7〜9月で(前年の)8割」と見ている。前年並みに戻るのは年末以降だとしている。
つまり、4月の鉱工業生産や小売りのデータから想定した「1割減経済」ではなく、「2割減や3割減」が続くというわけだ。
そうだとすると、企業利益の悪化や雇用の悪化は、これまで見たより厳しくなる可能性が高い。
こうした事態に対して、現在の政策で対処することができるかは疑問だ。 
●コロナ不況で退場する会社、生き残る会社  6/9 
コロナショックで優良株がバーゲンセールに
今回のコロナショックで、憧れの優良株がバーゲンセールとなり、安値で仕込んだ多くの国内個人投資家の方がいます。いったんは、大きなショックから立ち上がっているかのように見える相場です。株価は「少し先のミライ」を折り込んだ値動きとなっています。ここから先については、企業の本質である、セクター、業績などを総合して判断する必要があります。
「フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議」において、国内上場企業における利益額上位企業の業績を予想しています。この予測ではコロナの影響が2021年3月まで続いたと仮定した場合の企業の営業利益の増益率を各社出しています。トヨタは、営業赤字10兆円もあり得る予想となっており、ホンダも5兆6000億円の赤字予想と、自動車業界は大きな赤字幅が出る試算です。鉄道業界では、JR東海が2020年12月には赤字転落の予想です。石油元売のJXTG、ソニー、日立も赤字転落予想です。一方、黒字でとどまる予想の企業は、通信の企業であるNTT、KDDI、NTTドコモ、たばこのJT、三菱商事、信越化学、セブン&アイ、Zホールディングス、三井不動産などが挙げられます。しかし、各社大幅な減益は免れない予想となっています。
固定費が重い、鉄道
人の移動が止まったことで、鉄道業界にも影響が出ています。2019年度のJR東日本の決算は、大幅な減益となっており、営業利益は前期比22%減の3808億円でした。20年度の業績見通しについては、「未定」となっています。鉄道業界の構造の特徴は、固定費が高い点です。売上高の増減にかかわらず、固定的に発生する費用、例えば、車両や線路の維持管理費用や人件費が重くのしかかります。
テレワークやウェブ会議が定着し、乗客数が減ることは予想されますが、内需に関しては、徐々に戻り始める可能性があります。JR東日本、JR西日本、JR東海に関しては、株価の反発が弱く「7割経済」を強いられる中で、株価も「7割戻し」といったところです。JR東日本は、通勤・通学など在来線の日常利用が一定割合を占めており、JR東海は出張や観光などの新幹線の利用が中心、JR西日本の2018年度単体売上高営業利益率は15.3%で、JR東日本やJR東海と比べると低いといった、それぞれの違いにも注目が必要です。この中では新幹線の比重が高いJR東海が危ないでしょう。テレワークの進展による通勤の減少、ネット会議の進展による出張の減少など、今後はJR各社の経営戦略も軌道修正を余儀なくされるのは間違いありません。
一方、小田急電鉄に関しては、コロナ以前の水準にまで株価が戻りつつあります。「とりあえず近いところに旅行に行きたい」人たちが動きだすことから、箱根に強い小田急電鉄は「10割戻し」となっています。(6月2日時点)
地獄の百貨店、増収増益のニトリ
小売は4〜5月も厳しい局面が予想されます。家庭の財布のひもも堅くなっていることから、消費のV字回復は難しいでしょう。消費行動も、都市部から自分の生活圏へ、外食から内食へと移っています。その中で、百貨店の苦戦が続き、生活圏に近いドラッグストアや食品スーパーが堅調と明暗が分かれています。大手百貨店が6月1日発表した5月売上高速報によると、各社ともに70〜90%の大幅に減少しました。高島屋が64.2%減、大丸と松坂屋のJ.フロントリテイリングは72.7%減、三越伊勢丹ホールディングスは90.2%減、そごう・西武は61.5%減と厳しい状況が続いています。
一方、ニトリはコロナ禍でも「増収増益」を発表し、似鳥会長は「不況こそチャンス」と述べたことに、市場は驚かされたました。結果、巣ごもり需要のなかで、家庭の住環境を変えた需要をうまく取り込み、5月の既存店売り上げも0.6%増と検討しています。「不況になれば建築費は半分になり、既存物件も手に入りやすくなる。来年から再来年にかけて投資が安く済む」と話しています。アパレルは、レナウンを象徴として厳しい状況が続いていますが、ファーストリテイリングは機能性重視、快適さ重視の流れに乗っています。
苦境の外食。マクドナルドは好調
外食産業は一番、最初に打撃を受け、これからも、withコロナの世界を意識させられる営業を迫られる業態です。そんな中で、日本マクドナルドHDはコロナ以前の水準よりも株価は上昇し、吉野家ホールディングスは株価がV字回復しています。その他、ゼンショーHD、松屋フーズ、ケンタッキー、モスバーガーは、コロナによる売り上げへの影響はプラスで推移しています。一方、スシロー、くら寿司、ワタミ、鳥貴族はマイナスの影響を受けています。
マクドナルドは5月12日に発表した決算発表では、売上高が前年同期比5%増の722億円。2020年12月期の業績予想は、売上高で前期比2%増を見込むことも維持しています。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて店内飲食は中止していたものの、ドライブスルーなど持ち帰り需要が大きく伸びています。7日に発表した4月の既存店売上高も前年同月比6.5%増と堅調です。吉野家HDもテイクアウトを強化し、4月時点でテイクアウトの販売数の割合が6割を超えるまでに、なっています。2020年2月期の決算発表では、経常利益が前期比9.7倍の33億6000万円に急拡大し、7期連続増収となっています。
絶好調の半導体、自動車は注意
半導体は、目先のコロナの影響とは別として、5Gやテレワークなどの複数の成長要因を持っています。高性能絶縁素材を得意とするトリケミカル研究所、半導体やFPD製造用運搬装置のローツェ、シリコンウエハの信越化学工業、SUMCOなどは底堅い。半導体用マスク基盤のHOYAは3期連続最高益。半導体の製造工程で必要な欠陥検査装置を手掛けるレーザーテックは会社側では通期の受注計画を従来の700億円から850億円に上方修正、と半導体業界は全般的に絶好調です。
自動車業界は、「フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議」の試算によると、コロナの影響が21年3月まで続いたと仮定した場合、トヨタは、営業赤字10兆円もあり得る予想となる厳しい状況です。トヨタの会社側の予想では、80%減益の5000億円の黒字見通しであることから、アナリスト予想の乖離かいりについては、引き続き動向を追う必要があります。
ただ、日産、ホンダは今期の見通しを非開示であるなかで、トヨタは見通しを出していること自体を評価されています。4月の中国新車販売台数が前年同月比で4.4%増加したことや、米国でも新車販売台数は今後回復すると期待されています。リーマンショック時のような、円高に見舞われていない点も、自動車業界には不幸中の幸いでしょう。ただ、今度、円高になるような局面に入ると自動車業界はさらに、状況が厳しくなります。
ソニーはゲーム半導体、音楽などのコア事業の収益性が高いことが強みです。年末に発売予定の「プレイステーション(PS)5」の投入により、中長期的な収益拡大が期待できます。ソニーと比べて、出遅れが目立つのがパナソニック。赤字事業の整理を進めており、収益力は回復傾向ではあるものの、ソニーに比べてグローバルで優位に立つ事業が少ないです。 
●コロナ不況「万年赤字のゾンビ企業は今こそ潰れ時」…なのか? 6/14 
新型コロナ不況、優先すべき対策は「資金繰り支援」
新型コロナ不況は、飲食店等々の資金繰りを直撃しています。収益の支援も必要ですが、なにより迅速な資金繰り支援の必要があります。
支援の必要性の有無を判断していると時間がかかるので、まずは幅広く融資を行い、必要性を認めたところには返済を免除する、という手順が望まれます。
納税と社会保険料の納期を1年待ち、必要な先には1年後に免税する、という手段を筆者は考えています。超少数説のようですが、筆者の自信作なので、『コロナ不況、現金給付より「納税一律1年間延長」が有効なワケ』をご参照いただければ幸いです。
もっとも、企業のなかにはコロナ以前から赤字経営を続けていて、収束宣言以降も回復の見込みのないところが含まれています。「ゾンビ企業」と呼ばれる企業です。上記の方法では、そうした企業も支援してしまうことになりますが、その点はどうでしょうか?
筆者は、それでいいと考えています。ひとつには、なにより必要なところへの資金繰り支援を急ぐことが重要なので、仮に支援すべきでないところに資金が回ったとしても、それは迅速化のための「必要コスト」だと考えるからです。
もうひとつは、今回の主題である、回復困難な借り手であっても、不況期には支援して生き延びさせるべきだからです。
ゾンビ企業であれ、一時的な苦境に陥っているだけの企業であれ、倒産すると景気をさらに悪化させてしまいます。経営者と従業員が仕事と収入を失い、消費をしなくなるからです。
倒産が増えると、銀行が貸出しに慎重になるかもしれません。悪くすると、銀行の自己資本が減って、自己資本比率規制による貸渋りを余儀なくされるかもしれません。そうなると、「倒産増→貸渋り→倒産増」という悪循環に陥りかねないわけです。
ちなみに、前回の記事『赤字企業を「銀行が生温かく見守り助け続ける」冷淡な事情』で記したとおり、ゾンビ企業であっても、借り手が倒産すると銀行にとって大きな打撃となるので、銀行にも支援するインセンティブがあるわけですが、景気という観点からは、政府にも救うインセンティブが大きいわけです。
景気だけではありません。企業が倒産すると、まだ使える機械がスクラップされてしまったり、企業の持っているノウハウ等が雲散霧消してしまったりして、日本経済にとって大変もったいないことが起きますから、使える機械があるならば、それを使い尽くすまでは少なくとも生かしておきたい、ということもいえるでしょう。
赤字企業の倒産は「好況期」のほうが好都合
ゾンビ企業はその定義からして、いつかは倒産する運命にあるのでしょうが、不況期より好況期に倒産してくれたほうが、日本経済にとってはるかに好都合です。
好況期は失業率が低いので、仮にゾンビ企業が倒産して従業員が失業しても、すぐに次の仕事が見つかるでしょう。したがって、消費のさらなる落ち込みで景気悪化…という悪循環に陥ることも考えにくいのです。
貸倒れが少なければ、銀行の自己資本比率にも問題が起こりにくく、自己資本比率規制によって銀行が貸渋りを余儀なくされるという心配も小さいでしょう。
要するに、ゾンビ企業であっても、不況期には雇用の受け皿等として日本経済に大きな貢献をしているが、好況期には雇用の受け皿が必要ないので、倒産してもかまわない、ということですね。
もしかすると、好況時には労働力不足になるのだから、ゾンビ企業は倒産してくれたほうが望ましい、ともいえるかもしれません。
「不況だから赤字企業を淘汰」との意見に反論
世の中には「そもそもゾンビ企業は、日本経済効率化の妨げだから淘汰されるべきであり、不況にはゾンビ企業を淘汰してくれるというありがたい役割がある」と考えている人もいます。
小泉構造改革の大きな柱はゾンビ企業の淘汰でしたので、小泉改革を支持していた人は(意識していたか否かは別として)上記の考え方に与していたことになります。
つまり「景気悪化は悪循環を起こすから、倒産が増えるとどんどん景気も悪化してしまう」ということを気にかけない人です。「失業している人は、いつまでも失業していると損だから、給料の安い企業に就職するだろう。したがって、失業問題など気にする必要はない」というわけですね。
上記のような思考回路をもつ人は、そもそも「経済はいかにして動くのか」ということへの理解と解釈が筆者と正反対なわけですから、議論をするのは無駄でしょう(笑)。
しかしここでは、筆者としての反論を示しておきたいと思います。どちらの言い分が正しいのか見極めたいと考えている読者には、ぜひお読みいただきたいと思うからです。
ゾンビ企業は「好況による労働力不足」でも淘汰される
ゾンビ企業は、不況による売上減少でも淘汰されますが、好況による労働力不足によっても淘汰されます。したがって、わざわざ不況期に淘汰する必要はないのです。
景気が回復してくると、労働力不足になります。とくに日本は少子高齢化ですから、労働力不足になりやすいでしょう。そうなると「賃金を上げないと労働者が逃げ出してしまう」という状況になるわけです。
ゾンビ企業には、賃上げをする余裕がありませんから、低賃金のまま労働者を雇い続けようとしますが、労働者が給料の高い仕事に移ってしまうので、「ゾンビ企業が労働力を抱え込んでいるから経済が効率化しない」ということにはならないのです。
結局、ゾンビ企業自体が消滅してしまうかもしれませんし、消滅しないまでも労働者が減っていけば、ゾンビ企業を淘汰する必要性も減っていくでしょう。
問題は、政府が不況期にゾンビ企業を支援すると、その支援が景気回復後も続いて、本来労働力が流出すべきゾンビ企業が労働力を囲い込み続けてしまう、という可能性です。
政府の支援は不況期に限ること、景気が回復して労働力不足になったら支援を打ち切ること、それをあらかじめ決めておくこと、などが必要でしょうね。 
●コロナ不況で「富裕層」はもっとリッチに、「庶民」はさらに厳しく 6/19 
世界中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックだろうが、国中で抗議デモが行われていようが、アメリカ超富裕層はビクともしないどころか、今まで以上にリッチになっているようです。
アメリカ各地で抗議デモが行われていた最中ですら、資本主義の象徴的存在といえる株式市場ではおかまいなく株価が上昇したことが理由の一つです。
株価上昇の恩恵を受けることもない多くの中間層以下は、コロナ不況のダメージをもろに受けるだけではなく、今後政府が打った金融政策に苦しむ事になるかもしれません。他人事ではないこのような不公平な仕組みについて考えてみます。
コロナ禍で業績伸ばすハイテク企業
アメリカ株は3月23日の底値から順調に回復をみせ、6月上旬にはS&P総合500種は約40%の回復し、ナスダック総合は2月に達した過去最高値に届こうとしています。アメリカに限らず日経平均も2月以来久しぶりに2万2,000円台に回復をしました。
世界的にCOVID-19感染拡大が一段落をみせ、ビジネスが再開され始めたところもありますが、急に株価が上昇したわけではありません。3月の底値から徐々に着実に上昇しつづけてきたのです。
というのも、コロナ禍では市場全体が被害を受けたわけではなく、むしろコロナ禍で人々の生活パターンの変化によって、今まで以上に売り上げを伸ばしている会社があります。その株価は上昇しているのです。
とくにアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトといった大手ハイテク企業が絶好調なのです。これらの企業の時価総額はS&P500時価総額の約20%を占めているといわれています。影響力をもつこれらハイテク企業の株価が上昇し、市場をけん引しているということです。
株価上昇で喜ぶ人々
儲かっている企業があれば、儲かる人います。株式投資をしていない富裕層なんていないといっても過言ではないでしょうから、彼/彼女らのほとんどはしっかり株価上昇の恩恵を受けています。
あるシンクタンクの報告書によれば、アメリカの富裕層の資産は3月から約3カ月で5,650億ドル(約62兆円)増え、「富裕層らの現在の資産総額は3兆5,000億ドル(約380兆円)で、感染拡大初期から19%増加した」とCNN(※)は伝えています。
ちなみに、アマゾンCEOのベゾス氏は今回のパンデミックで3月より6月上旬時点までに362億ドル(約3.9兆円)も資産を増やしたそうです。
一方、日々の支払いで精一杯の世帯では、株式投資などまったく関係ないことです。それどころか、コロナ不況の犠牲となり、失業で貯金を取り崩しながら生活する人も大勢います。
インフレでさらに苦しい生活
株価上昇の背景にはハイテク企業の業績の伸びだけではなく、米連邦準備理事会(FRB)と米政府の無制限の量的金融緩和策も大きく影響しています。FRB の債券購入による無制限の量的金融緩和が市場を安定させるだろうという期待が強まるからです。
無制限の量的緩和で国内にお金が増えすぎるとお金の価値を下げてしまい、いずれは物価上昇、インフレーションに繋がるというのが基本的な流れです。株式・不動産などを所有する富裕層にとっては、インフレで物価が上がれば資産を増やすことになります。
しかし十分な昇給もなく、物価上昇に追いつけない中間層以下への負担は重く、生活がますます厳しい状況になってしまいます。
どうでしょうか。今回の量的金融緩和ではインフレにはならないだろうという意見もあるようです。様々な解釈が出来るのかもしれません。ただ、基本的な流れをみれば、こうして格差がまた広がってしまうという仕組みが分かります。
黒人差別から始まった抗議デモですが、一生懸命働けど生活は苦しくなっていくという不遇な人々の格差や差別を容認する社会構造に対する不満が、米国中で爆発し大規模な抗議デモとなりました。アメリカに限らず、世界的な問題でもある格差、差別が少しでも改善されることを願います。 
●コロナ不況でさらに窮地 世界から取り残される日本経済 6/20 
戦後最悪ともいわれる、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退。不透明な社会情勢が続くなか、実はコロナ以前から日本は「貧しく、住みにくい国」になっていました。その衝撃の現実をデータで示した『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』(加谷珪一氏著、幻冬舎新書)が発売後、4刷目の重版となり、反響を呼んでいます。
この30年間で日本がどう世界から取り残され、コロナで私達の生活はどう変わり、どう対処すればよいのか。内容を少しご紹介いたします。
日本で高所得の「年収1400万円」、米国では低所得
2020年に入って本格化した新型コロナウイルスによる感染は、弱体化していた日本経済にさらに大きな打撃を与えました。政府は当初、個人に対する所得補償に極めて消極的だったことから、多くの国民がその対応に失望しました。年収7万5000ドル(約825万円)以下の全国民に対して、大人1人あたり最大1200ドル(夫婦と子ども4人家族の場合3400ドル)を、ほぼ無条件に振り込んだ米国や、フリーランスらに対して数日で数十万円を給付したドイツなど、諸外国の対策が報じられるたびに、ため息をついた人も多かったことでしょう。
しかしながら、米国政府が支援対象を年収825万円以下に設定したのは、あらゆる階層の国民に支援するという意図からではありません。年収825万円を基準にしたのは、米国では年収1000万円の世帯は高所得とは見なされていないからです。米国の支援策は、基本的に所得が低い世帯を対象としたものですが、基準金額が日本と比べてあまりにも高かったことから、日米の豊かさの違いがはからずも露呈してしまったのです。
2019年の年末に日本経済新聞に掲載された「アメリカでは年収1400万円は低所得」という記事がネットで大きな反響を呼びました。これは米住宅都市開発省が行った調査において、サンフランシスコでは年収1400万円の世帯を「低所得」に分類したという話で、日本と諸外国の物や賃金に極めて大きな乖離が生じていると指摘する内容です。実は日本が価格という面で諸外国から完全に取り残されているという話は、海外によく行く人の間では数年前から常識となっていました。
ここ数年、食品やIT機器など、海外依存度が高い製品では、輸入価格の上昇でジワジワと価格が上がっており、一部の人は日本が安く貧乏な国になっている現実について気付き始めています。
先進国の地位から脱落も
こうした中で発生したのが新型コロナウイルスによる世界的な感染拡大です。
この原稿を書いている時点では、まだ終息の兆しは見えていませんが、新型コロナによる経済的影響が長期化するのはほぼ確実という状況です。新型コロナという見えない敵の台頭は、「安い国」になった日本にさらに追い打ちをかける可能性があります。日本が先進各国と比較して賃金が低くなっているにもかかわらず、何とか生活を維持することができたのは、グローバル経済の発達で、さらに安いものを世界から調達できていたからです。私たちが手にしている商品や口にしている食べ物の多くは、グローバルなサプライチェーンを活用して世界最安値で調達されたものであり、これによって安い賃金でも何とか生活水準を保ってきました。
しかし新型コロナの感染拡大はこうしたグローバルなサプライチェーンを直撃しています。近い将来、再び、今回のようなウイルス感染が拡大する可能性があることは否定できません。各国の企業は感染症を大きなリスク要因と見なすはずです。
そうなるとコストよりもリスク回避を優先するようになり、日本の企業も従来のサプライチェーンの大幅な見直しを進める可能性が高いでしょう。
これまでの時代であれば、とにかく安く調達することを最優先し、世界のあらゆる場所に物流網を構築していたわけですが、これからは多少、コストが高くても、シンプルな物流にとどめ、感染症などの拡大に対して抵抗力のあるオペレーションを重視するようになると考えられます。
すると、原材料や部品の調達コストは増大します。最終的には製品の価格上昇という形で消費者の生活に跳ね返ってくることでしょう。
つまり、コロナ後の社会においては、さらに高い購買力を確保しなければ、豊かな生活を送れなくなる可能性が高まっているのです。これは、賃金を大幅に上げることができなければ、日本経済の貧困化がさらに進み、先進国の地位から脱落してしまう、ということでもあります。
本書は、日本という国が諸外国から見て安い国になってしまった現実と、その原因、そして対処方法について解説する目的で執筆しました。
アジアで仕事を見つけることも視野に
少なくとも現時点では日本が安い国になっているのは事実ですから、こうした状況に負けないためには、諸外国の富をうまく自身に取り組む工夫が必要となります。これからの時代、外国企業への投資はほぼ必須といってよいでしょうし、場合によってはアジア地域で仕事を見つけることも視野に入れた方がよいかもしれません。
物価というのは、その国の経済状況をもっとも的確に反映する指標です。物価についての感度を高めることができれば、それは仕事にも資産形成にもよい影響を与えます。また私たち日本人は今後、どのように行動すべきなのか、あるいは日本経済をどう舵取りすべきなのかについても多くの示唆を与えてくれるでしょう。 
●高橋洋一氏 「消費税5%に」主張 6/22 
コロナ禍により、日本の経済はどうなるだろう? と心配している人は多いだろう。本書『コロナ大不況後、日本は必ず復活する』(宝島社)は、経済学者の高橋洋一氏が「50兆円以上の財政出動をすれば、絶対に日本経済は復活する」と国民を鼓舞する内容の本だ。
著者の高橋氏は現在、嘉悦大学教授。東京大学理学部数学科と経済学部を卒業後、大蔵省入省。総理大臣補佐官付参事官などを歴任した。
「第1章 新型コロナウイルスは収束するのか?」「第2章 トリプルショックの日本経済」「第3章 ショボい財政出動ではダメだ!」「第4章 コロナで進む中国の野望」「第5章 オリンピックで日本経済は復活する」「第6章 日本経済はどう変わるのか?」という構成。
休業の負担は民間ではなく国が
最初に高橋氏はコロナウイルスの感染症対策として、休業などによる経済コスト100兆円を民間が負担した場合、失業者が200万〜300万人発生し、それによる自殺者が1万人程度と予測する。
民間ではなく、国が負担すればいいのだと説く。
「移動制限などに伴うGDP減少を、休業補償や現金給付、減税等のマクロ経済政策による政府需要増加で補うことにほかならない。そして政府が100兆円の基金をつくり日銀が買い取ればいい。無制限緩和をするのだからできるはずだ」
そんなことは可能なのか。高橋氏はこう書いている。
「いまはマイナス金利の時代なので、事前に(国債を)発行して基金を作っても利払い負担はない。それどころか、マイナス金利なので、逆に収入がある」
そうすれば、どういうことができるのか?
「一人当たり10万円の給付も、2回、3回にわたって行うこともできるし、中小企業の休業補償も手厚くできる。それによって、コロナ・ショックの先行き不安を感じている国民の懸念も払拭できる」
政府が4月に出した108兆円の緊急経済対策に対しては、「真水は10兆円ほどしかないのに、GDPの20パーセントもお金を出すと思わせる虚構を見せた。でも、こんなものはすぐばれる」と批判する。先日成立した第二次補正予算についても、使い道がどうなのか、注視しなければならない。
諸外国に比べてショボい経済対策
諸外国の経済対策にもふれている。アメリカは中小企業融資だけで3500億ドル。日本円にして38兆5000億円。融資といっても雇用を維持した場合には返済不要だから実質給付と変わらないという。ほかに失業保険に20兆円など。ドイツは91兆円。GDPは日本よりも小さいのに規模は大きい。イギリスは二度の経済対策で規模は45兆円5600億円だ。イタリアを除いて、自由主義各国は日本を超える規模の経済対策をしており、「日本がショボいのだ」と批判する。
消費税減税が決め手
緊急経済対策の後は、「消費税減税を」と訴える。それも8%ではなく、インパクトのある5%まで引き下げるべきだと。
「安倍政権の前には、消費税率は5%だった。安倍政権の責任として、2回で計5%の消費税率を引き上げたのだから、今度は、それを政治責任として、時限的に5%まで引き下げるのは一つの選択肢だろう」
消費税減税によって「消費の復活を」と訴える。
オリンピックの影響は?
コロナ後の日本経済については、テレワークに注目している。地方への移住の動きもあるが、とりあえずは自宅のワークスペースの確保が課題だと見ている。ノートパソコンや椅子などに新たな需要がありそうだ。
オリンピックの経済波及効果は32兆円になると見込んでいる。逆の場合はどうなのか。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算を紹介している。延期の場合は6408億円の損失、中止の場合は4兆5151億円となる。
オリンピックが開催されれば、新たなインバウンドの始まりになる、と期待するが、「すべていまの新型コロナウイルスの収束が前提になる」と釘をさしている。
すべては夏以降のコロナウイルスの感染状況にかかっているようだ。 
●コロナ不況が「日本の化学業界」に与えた大打撃 6/29 
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的な生産・販売台数の落ち込みに見舞われた自動車産業。その大きな余波が、国内の化学・化学繊維メーカーにも及んでいる。
三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学、東レ、旭化成、帝人、東洋紡……。主要な国内化学系メーカーの2020年度の業績は軒並み大幅な減益となる見通しだ。原油相場急落に伴う在庫評価損や新型コロナによる需給悪化で汎用石化品の損益が悪化するうえ、各社が力を入れてきてた自動車関連ビジネスの落ち込みが響く。
樹脂や人工皮革など多様な製品を供給
化学系メーカーによる自動車用途の素材・材料は数多い。代表例が樹脂(プラスチック)だ。バンパーや燃料タンク、ダッシュボード、ヘッドランプなど内外装を中心にさまざまな部位に使用され、車1台当たりの樹脂使用量は100キログラムにも及ぶ。最も多く用いられるポリプロピレンをはじめ、ABS樹脂やポリカネード、強度や耐熱性に優れたエンプラまで種類も幅広い。
シートや天井材などに使用される人工皮革、エアバッグの基布(生地)、タイヤ用のナイロンや合成ゴム、構造材用の炭素繊維複合材なども自動車用途の主要製品だ。ハイブリッド車(HV)・電気自動車(EV)の動力となる車載用リチウイオン2次電池を見ても、セパレーター(絶縁材)や電解液といった原材料は化学・繊維業界が生産・供給を担っている。
しかし、自動車業界は3〜5月にかけて、世界各地で工場の操業が停止。生産自体は順次再開したが、外出制限(自粛)や景気悪化により、足元の新車販売は大きく落ち込んでいる。市場調査会社IHSマークイットの最新予測によると、2020年の世界新車販売は昨年比で2割減る見通しだ。感染拡大の収束に時間がかかれば、さらなる需要減少が避けられない。
主に日系の完成車・部品メーカーに素材や材料を提供する国内化学業界にも、当然のごとく影響が及んでいる。「自動車用途はさまざまな樹脂やガラス繊維複合材の成形品、アルミナ繊維など取り扱い製品が幅広く、コロナによる需要低迷の影響は大きい」(三菱ケミカルホールディングスの伊達英文・最高財務責任者)。
とくに今上期(2020年4〜9月)は事業環境が厳しい。用途別に事業セグメントを区分している三井化学は、自動車関連事業の2020年度の売上高が3000億円と昨年度比18%減ると予想。バンパーなどに使用される主力のPPコンパウンド(ポリプロピレンにほかの樹脂や添加剤などを混ぜてカスタマイズしたもの)の出荷減が響き、事業営業利益は275億円と同35%減を見込んでいる。
東レは海外で積極的な設備投資
国内の化学・繊維メーカーは近年、こぞって自動車向け素材・材料ビジネスの強化を推し進めてきた。
例えば、東レは車載電池用セパレーターやエアバッグ基布などの生産能力を拡大すべく、海外で積極的な設備投資を実施。セパレーターでは2017年に1200億円規模の巨額投資構想を表明し、韓国の工場を毎年のように増設。旭化成と世界首位を争っており、欧州(ハンガリー)の生産拠点も2021年夏に稼働開始する。
旭化成もその車載電池用セパレーターを始め、エコタイヤ用合成ゴムの生産能力拡大などに資金を投下。さらに2018年には約800億円を投じ、自動車用の織物・編物製シート材の世界大手、アメリカのセージ・オートモーティブ・インテリアズを買収した。宮崎県延岡市で生産する人工皮革も自動車内装材用途での需要拡大を見込み、生産設備を大幅に増強中だ。
帝人は800億円超を投じ、ガラス繊維複合材製の自動車外板成形を得意とするアメリカのCSP社を2017年に買収した。CSPはゼネラルモーターズを始めとするビック3や現地のトヨタなどと直接の取引があり、そうした世界的な完成車メーカーに深く食い込むためのM&Aだ。その後も欧州で自動車用吸音材などを手がける不織布メーカーや複合材料・部品会社を相次ぎ買収している。
また、化学系の大手各社は近年、自動車関連事業の強化策として、関連するさまざまな素材・材料を一括して取りまとめる専門の部署を相次ぎ設立。その専門部署が代表窓口となって、国内外の自動車メーカーや主要サプライヤーに技術や製品を総合提案する営業活動にも力を入れてきた。
国内化学系メーカーがこぞって自動車関連分野に力を入れてきた背景には、生き残りをかけた差別化戦略がある。
化学・繊維は中国を始めとするアジア勢の台頭が著しく、価格だけで勝負が決まる汎用品で日本企業はもはや太刀打ちできない。そこで各社は「脱汎用」をキーワードに技術力や品質で勝負できる高機能素材・材料へのシフトを進めており、その大きなターゲットの1つが自動車用途だ。
航空機ほどではないにしろ、自動車用途の素材・材料は高い品質・信頼性が要求されるため、中国企業などに対して日本勢の強みが発揮しやすい。また、「自動車はコストダウン要求が厳しいが、製品が採用されれば、その車種がモデルチェンジするまで安定的な数量が毎年見通せる。これは大きな魅力だ」(化学繊維メーカー幹部)。
さらに素材転換の追い風も吹く。環境規制などを背景として、自動車業界は燃費改善に向けた車体軽量化やHV・EV強化を推し進めている。軽量素材や車載電池材料のほか、安全性や快適性などに寄与する商材も今後の需要拡大が確実視されており、化学系企業にとっては絶好のチャンス。国内勢はこの商機を生かし、日系自動車業界だけでなく、欧米の自動車産業との取引拡大にもつなげたい考えだ。
需要回復に備えて投資は継続
そうしたさなかに起きたコロナショック。少なくとも2020年度は自動車関連分野の大幅な落ち込みが避けられず、感染の収束時期や経済悪化の動向次第では、2021年度も厳しい取引環境が続く可能性はある。
しかし、東洋紡の楢原誠慈社長は5月の決算会見でこう言い切った。「平時であれば自動車は世界的に需要が安定しているし、力を入れているエアバッグ基布などは当社に技術的な優位性もある。今回はコロナで急激に落ち込んだが、自動車関連が最重要分野の1つという位置づけは何ら変わらない」。
旭化成も強気のスタンスだ。「EV用のセパレーター、シート用の人工皮革といった製品は、コロナ問題が落ち着けば再び需要拡大局面に戻る。そのときに備えて、こうした分野の能力増強投資は計画したとおりに粛々とやっていく」(柴田豊副社長)。
コロナ影響で自動車用途の素材・材料需要が大幅に落ち込む中、足元の業績悪化に耐えながら、収束後の事業拡大に向けてしっかり手は打つ。化学・繊維メーカーにとって、2020年はそんな我慢の1年となりそうだ。 
●日本に生産ショック、主軸の自動車不振が深刻 年内3次補正も 6/30 
5月鉱工業生産は、予想されていたとはいえショッキングな数字だった。「四番打者」とも言える自動車の不振が主因であり、世界の自動車需要を見通せば、主軸の不振で日本経済の停滞が長期化する可能性がある。自動車産業は裾野が広いだけに他の産業への波及効果もあり、年内の3次補正編成は必至の情勢になってきたと言えるだろう。
今回の生産データ発表とマーケットの反応は、まさに「コロナ的世界」の典型だった。5月生産は前月比マイナス8.4%と市場予想の同5.6%よりも落ち込んだが、東京市場は「完全に無視」(国内金融機関)。日米欧の中銀が緩和マネーを潤沢に供給、世界中で金利が低下し、その上に信用緩和で社債も中銀が購入し、結果として「株式市場は最も安全で有利な市場」(国内証券)となってしまった。国際通貨基金(IMF)も「金融市場と経済見通しの間にかい離が生じている」との報告書をまとめている。
ところが、注目していた市場もあった。いつもは無反応を決め込んでいる原油市場だ。30日のアジア市場では、米WTI先物CLc1が一時、1%程度下落した。日本の生産の不振は世界経済停滞の長期化リスクを意識させ、原油需要の弱含みをイメージさせたらしい。
<ドミノ的生産減少の構造>
原油市場の連想は、決して間違っていないと指摘したい。もっと日本経済に引き付けて5月鉱工業生産のデータを分析すると、自動車産業が受けた新型コロナウイルスの感染拡大による打撃は、「想定以上」であると言える。
生産データを業種別にみると、「自動車工業」は前月比マイナス23.2%。前年同月比は同61.2%と目を覆いたくなる惨状だった。
自動車産業は裾野が広いため、他の業種にもドミノ的にマイナス効果が及んだ。設備投資に関連する「生産用機械工業」が前年同月比同21.6%、自動車用照明器具などの「電気・情報通信工業」が前年同月比同23.3%、タイヤなどの「その他工業」が前年同月比同23.3%と総崩れ状態だった。
また、生産全体に関して先行きも楽観できない。30日の鉱工業生産発表の会見で経産省幹部は、新型コロナウイルスによる影響について、企業は精緻に織り込んでいないため、生産計画が「必ずしも保守的でない」と説明。実際、5月の生産実績は計画の2倍もマイナス幅が拡大。6月の生産も前月比マイナスにとどまる可能性があると指摘した。「5月に底を打ったか分からない」とも述べ、6月の生産回復の鍵は輸出の回復が握っているとの見解を示した。
<みえない生産反転のきっかけ>
だが、世界最大の市場である米国におけるコロナ感染者数が、足元で増勢に勢いが付き出し、経済の「X字回復」に暗雲が漂っている。
自動車各社は日本から一定数を輸出しており、複数の自動車会社に至っては、対米輸出の帰すうがその会社の命運を握っているところもあり、先行きは不透明なままだ。
日本国内をみても、夏のボーナスは経団連が把握する大企業に限ってみても、前年比マイナス6%となっており、雇用・所得環境は厳しさを増している。コロナ感染の第2波が襲ってくれば、再び、休業要請が政府から出てくる産業分野も予想され、雇用されている立場からみれば、今後の雇用が保証されているとの「実感」が、次第に薄れがちになるリスクがある。
そのような「防御的」な心理が強い中で、果たして1台につき数百万円する自動車を購入しようとする人がどれくらいいるのか、ということが問題だ。コロナ問題の影響が「収束」したと思える環境が整うまで、自動車や住宅などの消費は手控えが主体となる公算が大きい。
生産からの視点でみれば、主軸の自動車生産が前年同月比プラスに浮上するまでに、相当の時間がかかると予想される。2021年中に19年のレベルまで生産が戻ればいいが、このハードルは相当に高いと指摘したい。
なぜなら「ウイズ・コロナ」時代は、社会的距離の保持が求められ、従来型の「集客」ベースのビジネスは、損益分岐点が大幅に上昇するからだ。政府・与党には関係する業界団体から「収容人員を従来の定数の50%に制限されると、多くの業種で黒字化が難しい」との声が寄せられているという。
つまりサービス産業の多くでは、利益が出ず、業態やビジネスモデルの転換を求められるということだ。どんなに短めに見積もっても、今後数年間は、国内総生産(GDP)の過半数を占める非製造業の利益率が落ち、個人の購買力低下を伴って自動車などの売り上げ不振が長期化することも予想される。
<今から必要な「安全ネット」>
生産水準の低迷が長期化すれば、自動車産業に象徴される製造業は大きな危機に直面しかねない。構造改革には時間がかかり、短期間で効果の出る処方せんは政府にも持ち合わせがないだろう。
そこで、経営不振の長期化による資本の毀損に直面した企業の「救済」を目的にした新スキームが必要になるのではないか。また、コロナ対応の結果、経営が悪化している病院などへの「財政支援」も喫緊の課題として浮上。今年の秋冬から襲来するかもしれないコロナ感染の第2波に備えた対応にも、相当額の国費が必要になる。
年内の2020年度第3次補正予算編成は避けられない事態であり、政府債務の膨張に対し、財政・金融政策がどのように立ち向かうかも、今から検討すべき課題であると指摘したい。  
●コロナ不況で収入が減った世帯は約半数、赤字家計の生活費補填策TOP3 6/30 
感染者の身体だけでなく、経済をも蝕んでいる新型コロナウイルス。感染症対策として国や自治体から要請された休業・自粛要請により倒産や従業員の解雇が相次ぎ、 そして、私たちの家計までも脅かしている。
お金の情報サイト「まねーぶ」ではこのほど、全国500世帯を対象にコロナ禍中の3月度から5月度の3か月間における家計調査を実施。
本稿では、調査によって明らかになった収支変化と生活費の補填状況、さらには、経済活動再開に向けての課題や回復の兆しについて、ファイナンシャルプランナーでFP For You代表の稲村優貴子氏による考察を添えて紹介していきたい。
コロナ感染症対策により「収入が減った」45.8%、原因は「仕事の減少」「勤務先の休業」
全国500世帯を対象に、コロナ感染症対策(自粛期間中)における収入変化について尋ねる調査が行われたところ、「収入が減った」は45.8%であり、収入減の理由として、「仕事の減少(業務委託含む)」45.0%、「勤務先の休業」41.5%と、およそ半数の収入に悪影響を及ぼしていることが明らかになった。
一方で「収入は変わらない」53.0%、「収入が増えた」1.2%と収入に悪影響を受けない世帯も半数を占めており、理由として、「勤務先の通常営業(在宅勤務含む)」が78.2%で突出しており、回答が真っ二つに分かれる結果となった。

会社員・公務員などリモートワークに切り替えた世帯の多くは収入が変わらなかったようですが、休業の影響で収入が減ったケースも。収入が変わらなかった場合でも勤務先の業績によってはボーナスダウンの可能性もあります。
一方、自営業、フリーランスや派遣の場合、収入にダイレクトに影響が出たようです。持続化給付金は事業者・自営業、フリーランスで1か月でも売り上げが昨年より半分以下になっていればネットから申請できるので対象にならないか確認してみましょう。
事業者で最大300万円、個人で最大100万円給付されます。旅行・外食産業は自粛解除になってすぐに回復は難しいので今後の政府の施策に期待したいところです。
世帯収入は3〜5月にかけて平均3万円減少。20万円未満の世帯は21.2%から32.4%に増加
3月〜5月度の3か月間における世帯収入変化では、3月度は平均値31.6万円・中央値30万円だったが、4月度は平均値29.4万円・中央値27万円、5月度は平均値28.3万円・中央値25万円と推移し、3か月間で世帯収入額が平均3万円減少している結果となった。
収入額が20万円未満の世帯割合は、3月度の21.2%に比べて5月度は32.4%と11ポイント増加している。
消費支出は3〜5月にかけて平均4千円微減。20万円未満の世帯は43.2%から47.0%に増加
3月〜5月度の3か月間における消費支出変化では大きな差はみられないものの、3月度の平均値22.5万円に対し、5月度の平均値22万円とやや減少傾向にあることがわかった。
支出額が20万円未満の世帯割合は、3月度の43.2%に比べて5月度は47.0%とおよそ4ポイント増加している。
家計収支の黒字幅は3〜5月にかけて約3万円減少。赤字世帯は15.6%から21.8%に増加
3月〜5月度の3か月間における家計収支変化では、3月度は平均値9.1万円・中央値6万円だったが、4月度は平均値7万円・中央値5万円、5月度は平均値6.2万円・中央値4.5万円(いずれもプラス、黒字)と推移し、収支の黒字額が平均3万円減少している結果となった。
家計収支が赤字となった世帯割合は、3月度の15.6%に比べて5月度は21.8%と6ポイント増加している。
調査3では消費支出額を抑えている傾向にあるものの、収入額の減少に伴い赤字家計が増えている状況だ。

世帯収入の平均値でみると3万円の減少にとどまっていますが、20万円未満の低所得世帯が約2割から3割に増えていることからコロナの影響により低所得層が増えたことが伺えます。
外出できないことから、レジャー・外食・交際費の消費支出は減りました。一方で自炊のための食費やリモートワークによる通信費、自宅滞在時間増により水道光熱費が増えたため、支出全体としてさほど変化は見られませんでした。赤字家計は通信費や保険料など固定費の見直しをしていきましょう。
3〜5月で増えた消費支出は「食費」「水道光熱費」、減った消費支出は「交通費」「外食費」
3月〜5月度の3か月間で増えた消費支出では、「食費(自炊)」が376人と最も多く、次いで「水道光熱費」252人、「日用品費」156人と続く結果で、外出自粛や在宅勤務に伴い家庭内での自炊機会が増えたことが出費項目にも反映した内容だ。
一方で減った消費支出として、「交通費」257人、「外食費(テイクアウト含む)」246人、「交際費」218人、「趣味費・娯楽費」209人が多く、この結果も外出自粛で生活に制限がかけられたことに付随する結果だと考えられる。

ステイホーム生活により、これまで自炊しなかった人も必要に迫られて料理する機会が増えました。食費(自炊)が増える一方で、飲み会などの交際費、趣味やおしゃれにかける費用も減りました。
また、オンラインで済ませられる仕事や外出自粛により交通費の節約にもつながったようです。自炊すれば外食費が減り、体にもよい食事ができるため健康になり医療費減にもつながります。
新しい生活スタイルを意識して、必要のない支出は見直してカットしていきましょう。
赤字家計の生活費補填として「貯金の取り崩し」が226人
赤字家計の生活費補填として、「貯金など資産の取り崩し」が226人と最も多く、次いで「生活費を切り詰める」153人、「特別定額給付金(10万円)」128人と続き、日ごろの備えや節約そして自治体からの給付金で補うといった堅実的な姿勢が目立つ結果だ。
また、「赤字ではない(生活費の補填なし)」も212人と多く、収入減に伴う家計収支の悪化がみられる中でも、しっかりと家計を支えている実態が伺える。

赤字家計の生活を見直していく方法は、「収入を増やす」「支出を減らす」の2つです。
一番回答の多かった「貯金など資産の取り崩し」は自己資金が減ってしまうため見直しとはいえません。仕事・アルバイトなど収入を増やすのが難しい場合、給付金・手当てで補填をしていきます。
支出を減らすには、通信費や習い事、保険など固定費の見直しを。払込が必要な公共料金・保険料・家賃などは支払いの猶予をしてもらえないか相談してみましょう。
特に保険は失効したままでは保険対象の事柄があっても保険金は支払われません。いざ困った時に無保険では負のスパイラルに陥ってしまいます。
調査7:特別定額給付金(10万円)、3世帯に1世帯が「足りない」
特別定額給付金(10万円)で生活費を補えるという調査に対し、「足りない」と回答した人は31.2%と、およそ3世帯に1世帯が給付金額に不足を感じているという結果だった。
また、「十分に足りる(余る)」と回答した27.4%に対して余剰金の使い道について尋ねる調査が行われたところ、「今後の収入にまだ不安があるため貯金する」という声が最も多く、その他「経済復興のため居住地域で消費する」、「住宅ローン返済に充てる」という声もあった。
自粛要請が解除された中でも、いまだ続く不安やリスクへの備えとして貯金する世帯が多いようだ。

特別定額給付金は収入等の条件なく一律給付となったため、本来であればもっと大きな額が必要な人にも10万円しか支払われないともいえるものになりました。足りない3割の世帯は、家計の見直しが必要ですが支出を減らすにも限界があります。
中学生までの子どもがいる場合、2020年6月に子ども1人につき1万円の児童手当が追加支給されます。ひとり親家庭や年収が一定以下の世帯が対象の就学援助は、給食費や修学旅行の費用の援助が受けられますが、コロナの影響で収入が急変した場合年度途中でも学校経由で申請ができます。
保険・光熱費・税金等も支払い猶予の制度もあります。一人で悩まず区役所・学校に相談してみてください。 
●IMF世界経済見通し 2020/6 
類例のない危機、不確実な回復
2020年の世界経済の成長は-4.9%と予想される。2020年4月の「世界経済見通し(WEO)」の予想から、さらに1.9%ポイント低くなっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、2020年前半の経済活動に予想以上のマイナス影響を及ぼしており、回復は従来の予想より緩やかになると見込まれる。2021年の世界の成長は5.4%と予想される。この結果、2021年のGDPは全体として新型コロナウイルス流行前の2020年1月時点の予想より6.5%ポイントほど小さくなる。とりわけ低所得世帯への打撃は深刻で、1990年代以降大幅に進展してきた世界的な極度の貧困の削減が危うくなっている。
2020年4月WEOの予想と同じように、今回の予想も通常より不確実性が高い。ベースライン予想は、パンデミックの影響に関する重要な想定に基づいている。感染率が低下している国々で、今回の予想でこれまでより回復ペースが鈍化しているのは、2020年後半にかけても社会的距離の確保が続くこと、2020年の第1および第2四半期のロックダウン期間中の経済活動への打撃が予想以上に大きかったことによる影響(供給能力へのダメージ)の拡大、さらには危機を生き延びた企業が職場の安全や衛生への取り組みを強化する中で落ち込む生産性を反映している。感染率の抑制に苦しんでいる国々においては、ロックダウンの長期化によって経済活動にさらなる打撃が生じるだろう。それに加えて今回の予想では、2020年4月WEOの公表以来緩和してきた金融環境について、全般的に現在の水準にとどまると想定している。当然ながらベースラインシナリオとは異なる結果になる可能性はあり、その要因はパンデミックの動向にとどまらない。「国際金融安定性報告書(GFSR)2020年6月改訂報告書」で詳述するとおり、このところの金融市場のセンチメントの回復度合いは、その土台となる経済見通しの変化と乖離しているように見受けられ、今後ベースライン予想以上に金融環境がタイト化する可能性が生じている。
感染のピークを越えたと見られる国を含めて、どの国も医療制度に十分な資源を確保すべきだ。国際社会は国家レベルの取り組みへの支援を大幅に拡大しなければならない。そこには医療の能力が限られている国々への資金援助や、十分な量のワクチンがすべての国々に安価かつ迅速に行き渡るように、ワクチン開発の進展に伴って生産体制の整備に資金を振り向けることなどが含まれる。ロックダウンが必要な国では経済政策を通じて、適切な対象に向けた手厚い対策による家計所得減少の影響緩和、強制的な活動自粛によって苦しんでいる企業への支援を続けていかなければならない。経済を再開する国では、回復の進展にともなって特定層を対象とする支援を段階的に終了し、需要拡大に向けた刺激策や、パンデミック後に恒常的な規模縮小が見込まれる産業部門からの資源の再配分を円滑化および促進するような政策を実施すべきだ。
多くの分野において、引き続き強力な多国間協調が求められる。医療危機と国外資金不足に直面する国々に対しては、国際金融のセーフティネットを通じた融資や債務救済を含む、流動性支援を早急に実施する必要がある。政策当局者はパンデミック対応にとどまらず、今後の新型コロナ危機からの回復を阻害する恐れのある貿易とテクノロジー分野の緊張解消に向けて協力しなければならない。さらにパンデミック下での温室効果ガス排出量の記録的減少を足がかりに、政策当局者はそれぞれが約束した気候変動緩和措置を着実に実施するとともに、炭素課税やそれに類する公平に設計された枠組みの拡充に向けて協力すべきだ。さらに国際社会は今回のような惨事の再発防止に向けて、重要な物資や個人防護具の世界的備蓄、研究への投資や公衆衛生システムの支援、最も困難な状況にある人々に支援を届ける効果的手段の整備など、今すぐ行動を起こさなければならない。  
●IMF世界経済見通し(改定)−30か国中24か国で下方修正 6/25 
1.内容の概要:20年で1.9%ポイントの下方修正
6月24日、国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しの改定版を公表し、内容は以下の通りとなった。
【世界の実質GDP伸び率(図表1)】
・2020年は前年比▲4.9%となる見通しで、4月時点の見通し(同▲3.0%)から下方修正
・2021年は前年比+5.4%となる見通しで、4月時点の見通し(同+5.8%)から下方修正
(図表1)世界の実質GDP伸び率/(図表2)先進国と新興国・途上国の実質GDP伸び率
2.内容の詳細:30か国中24か国で下方修正
IMFは、今回の見通しを「類を見ない、不確実な回復」と題して作成した1。4月に見通しを作成して以降、新興国・途上国を中心にパンデミックが拡大し、厳しいロックダウンが必要になったと振り返っている。また、1-3月期の成長率が予想を下回ったこと、その後の指標が弱含んでいることから、IMFは今回の見通しを20年で1.9%ポイント下方修正した。国別には、改定見通しで公表している30か国中24か国を下方修正、4か国を据え置きとし、上方修正は2か国にとどまった2。
IMFは2021年の見通しも下方修正しており、回復の遅さも反映させている。IMFは回復の遅さに関して、20年上半期の成長鈍化が予想以上だったということに加えて、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の長期化、企業の感染防止基準の強化による生産性への悪影響を織り込んだことを指摘している。
またこの結果、世界GDPは2020年および21年で12.5兆ドル失われたと試算している(今回の見通しと1月の見通しの差額から計算)。
なお、今回もベースラインシナリオおよび代替シナリオを用意しており、ベースラインでは感染が減少傾向にある国では、20年上半期のような厳しいロックダウンを再実施しないという仮定を置いている。また、表題ともなった「不確実性」として、以下の要因を列挙している。
 ・パンデミックとロックダウンの期間
 ・自発的な社会的距離(消費に影響)
 ・離職者(displaced worker)が雇用を守られる能力(ケースにより異なる部門)
 ・廃業や失業による離職の影響を受けた、パンデミック収束後の活動再開の難しさ
 ・職場の安全性確保(シフト制、清掃強化、近接についての職場慣行)によるビジネスコスト増
 ・サプライチェーンの強化を企図したグローバルサプライチェーンの再構築の生産性への影響
 ・外需低迷と資金不足の国際的な波及効果
 ・金融資産価格と実体経済の乖離がもたらす、最終的な調整
さて、代替シナリオについては後述することにし、ベースラインのシナリオで各国・地域の状況を確認しておきたい。まず、先進国と新興国・途上国の実質GDP伸び率を見る(前掲図表2)と、成長率の水準の違いはあるものの、いずれも2020年に減速し、新興国・途上国全体でもマイナス成長となることが分かる。4月作成の見通しでは、中国を含むアジア新興国・途上国はプラス成長を維持していたものの、今回はインドが大幅下方修正(20年度で1.9%→▲4.5%と6.4%ポイントの下方修正)されたことを受けて、マイナス圏に落ち込むことになった。
先進国についても下方修正され、2020年に前年比▲8.0%と急減速し、2021年は+4.8%の回復となっている。
(図表3)各国・各地域の成長率と実質GDP水準
図表3には主要国・地域の成長率見通し、および2019年を100としたときの実質GDP水準の見通しを記載している。世界全体では、2021年の実質GDP水準は2019年を若干超える水準に回復すると予想しているが、回復をけん引しているのは、アジア新興国の一部(中国・ASEAN5)で残りの国の2021年時点の活動水準は低い。先進国では、フランス・イタリア・スペイン、新興国ではブラジル・メキシコが弱い予想となっている。
次に代替シナリオを確認する。今回、IMFが提示した代替シナリオは以下の2種類である。
「(1)2021年初の第二波到来(ただし封じ込め政策の厳しさは第一波の半分)」(悲観シナリオ)
「(2)2020年上半期のロックダウンからの早期回復」(楽観シナリオ)
IMFの試算結果によると、(1)の場合、2021年のGDPはベースラインと比較して4.9%低くなり、22年のGDPもベースライン対比3.3%下回る。(2)の場合は、2020年にGDPはベースライン対比0.5%高くなり、21年のGDPではベースライン対比3%以上の改善を見せる。なお、代替シナリオの(1)については、仮に今年の秋に第二波が襲来したとすれば、さらに負の影響が強くなると補足している。
最後に、IMFは今回の見通し改定報告書の付属資料として、財政収支見通しも添付している。
(図表4)主要国の財政政策規模添付資料では、各国の異例の政策支援は11兆ドル(うち5.4兆ドルが財政支出、5.4兆ドルが流動性供給)に達しており(図表4)、その結果、公的債務対GDP比では100%を超えて2020年に101.5%、21年で103.2%となる見通しであることが示された。この結果、公的債務の水準は第2次世界大戦後の最高値を超え、史上最高水準となる見込みである。
IMFはこれら財政政策や金融政策が実体経済や金融市場の回復をけん引していると評価する一方で、実体経済と金融市場の乖離が過剰なリスクテイクを生み、無視できない脆弱性をもたらしているとも警告している。また、公的債務の大きさがGDP比で史上最高水準になることから、中期的な財政再建の必要性も説いている。

1 なお、同日に公表したブログでは、「『大封鎖(the Great Lockdown)』後の経済再開:不均一で不確実な回復」の題名を付けている。不均一はコロナ禍の被害状況・回復状況の各国間でのバラツキのことと推測される。
2 上方修正はオーストラリア(20年で2.2%ポイントの上方修正)および、パキスタン(同1.1%ポイント)  
 
 

 

●コロナで企業心理が大幅に悪化 リーマン不況に迫る低水準 日銀短観 7/1 
日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でマイナス34(前回3月調査はマイナス8)となった。リーマン・ショックの影響で深刻な不況に陥った2009年6月(マイナス48)に迫る11年ぶりの低水準。大企業・非製造業はマイナス17(同プラス8)で、09年12月(マイナス22)以来10年半ぶりの低さだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、企業心理が大幅に悪化していることが確認された。
DIは景気が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した割合を引いた数値で、今回の回答期間は5月28日〜6月30日。6月11日までに約7割の企業が回答した。 ・・・ 
●日銀短観、大企業製造業景況感はリーマン以来の低水準-コロナ直撃 7/1 
〇製造業はマイナス34、09年6月以来の低水準−先行きマイナス27
〇非製造業はマイナス17、11年6月以来のマイナス−先行きマイナス14
日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査(短観)の6月調査で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はマイナス34と、3月の前回調査から26ポイント悪化し、リーマンショック後の2009年6月調査(マイナス48)以来の低水準となった。悪化は6期連続で、マイナスは2期連続。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた経済活動の停滞が企業心理を直撃した。
大企業・非製造業はマイナス17と、前回調査から25ポイント悪化した。マイナスに転じるのは、東日本大震災後の11年6月調査(マイナス5)以来9年ぶり。悪化幅は比較可能な1983年以降で最大となった。新型コロナの影響が直撃した宿泊・飲食サービスはマイナス91と過去最低を記録した。
キーポイント
景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いたDIは大企業・製造業がマイナス34前回調査から26ポイント悪化ーブルームバーグ調査の予想はマイナス31
非製造業はマイナス17と25ポイント悪化−予想はマイナス20
先行きは製造業がマイナス27と改善、非製造業はマイナス14と改善を見込む
全規模・全産業の20年度の為替想定は1ドル=107円87銭、1ユーロ=119円74銭、いずれも前回から円高方向
西村康稔経済再生担当相は1日夕方の記者会見で、短観の結果について、「4月、5月の緊急事態宣言の下で経済を抑制したことの影響が色濃く出ている」と説明。極めて厳しい状況であるものの、「段階的に経済活動は再開・拡大されていく中で、少しずつ前向きな動きも出てきている」との認識を示した。また、感染拡大防止策と両立しながら「何としても4月、5月を底にして、内需主導で経済回復を実現していきたいと思っている」と語った。
エコノミストの見方
野村証券の桑原真樹シニアエコノミスト
景況感の大幅な下落自体は驚きではない。さすがに4−6月が底だとは思うが、先行き見る限り急な回復は見込めないということだと思う
製造業は世界経済の動向に左右され続けるだろうし、非製造業に関してもインバウンドが戻ってくるのはまだまだ先だろうから厳しい状況が続く
7月は日銀に大きな動きはないだろう。今の政策の枠組みの中で対応して、危機を乗り切ることに専念していくと思う。物価のモメンタムに関してはすでにあきらめている
BNPパリバ証券の白石洋シニアエコノミスト
どの産業も非常に厳しいの一言に尽きる。先行きに関しても一応改善を見込んでいるが、V字回復が見込まれている感じではない
設備投資は意外に底堅く、決して高くはないがプラスを維持。リーマン後に本当に必要な設備投資までも削ってしまい競争力を失った経験が企業にはある。その辺が影響しているのではないか。企業が深刻なキャッシュフローの問題に直面しているわけではないこともうかがえる
中小企業は先行きネガティブにみるバイアスはあるが、それを鑑みても相当慎重になっている
日銀としては悪い数字だが想定内ということではないか。必要ならさらなる政策も辞さないということであろうが、これまでにコロナ対応の政策は打ち出しており当面はその効果を見極めていくということだろう
日銀の説明
足元の判断が過去最低になった業種は、はん用機械、業務用機械、電気・ガス、対個人サービス、宿泊・飲食サービス。自動車は09年6月調査(マイナス79)以来の低さ
業況判断では、新型コロナ感染拡大の影響による輸出やインバウンドの大幅な減少、外出自粛による個人消費の減少を指摘する声が幅広く聞かれた
大企業は製造業、非製造業ともに改善が見込まれている。感染拡大の第2波や影響の長期化への懸念が聞かれた一方、早期収束を期待する声が上回った
設備投資計画は過去の修正パターンに比べて弱め。伸び率も過去平均を下回る。ただ、引き続き人手不足に伴う省力化投資や成長分野への投資など中長期的な観点からの投資への言及も多く聞かれた
回収基準日は6月11日、それまでに約7割が回答。回答率は引き続き極めて高水準
背景
新型コロナ感染拡大に伴う経済活動の停滞で、3月短観では大企業・製造業の業況判断DIが13年3月以来のマイナスに悪化。国内では4月の緊急事態宣言で営業や外出が制限され、企業マインドは一段と冷え込んだ
緊急事態宣言は5月下旬に解除され、国内の経済活動は段階的に再開されたが、新興国中心に世界的な感染拡大が続く中、第2波への懸念も根強い
政府は20年度の1次と2次補正予算を合わせ事業規模200兆円超の新型コロナ対策を決定。日銀も3月以降、企業の資金繰り支援や金融市場安定化のための措置を相次ぎ打ち出し、政府と連携して経済の下支えに取り組む
日銀の黒田東彦総裁は6月26日のHLS/PIFS共催イベントで、日本経済は「当面、厳しい状態が続く」とし、「感染症によるショックの二次的影響が経済を大きく下押しするリスクにも注意が必要だ」と指摘  
●6月の日銀短観、企業心理の悪化に歯止めかからず コロナ影響長期化が懸念 7/1 
日本銀行が1日に発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、代表的な指標である大企業製造業の業況判断指数(DI)が3月の前回調査から26ポイント下落し、新型コロナウイルスの感染拡大を受け企業心理の悪化に歯止めがかかっていない実態が鮮明になった。緊急事態宣言の解除などを受け、大企業製造業の先行きの景況感はわずかに改善したものの水準は低く、新型コロナの影響長期化が懸念される。
前回3月の短観は7割の企業が同月11日までに回答していたため、外出自粛要請や東京五輪・パラリンピックの延期決定といった影響が十分に織り込まれていなかった。今回は外出自粛の影響で飲食や宿泊などの需要が消失し、大企業非製造業のDIもマイナスに落ち込んだ。また、欧米の景気悪化に伴う輸出の減少で、自動車など製造業の景況感も大幅に悪化した。
今回の調査は、緊急事態宣言解除後の5月28日から6月30日に行われた。経済活動が再開され始め、大企業の製造業、非製造業ともに3カ月後の景況感を予測したDIが改善された。しかし、中小企業・全産業の先行きDIは悪化するなど、感染拡大の第2波に対する警戒感は根強い。
国内の新型コロナの新規感染者数は高止まりしており、経済活動がいつコロナ前の水準に戻るかは見通せない。政府は大規模な経済対策を打ち出し、日銀も企業の資金繰り支援に乗り出しているが、企業心理の悪化は当面続きそうだ。  
●「廃業の決断、迫られるかも…」 コロナ不況に企業悲鳴 7/2 
日本銀行の6月短観では製造業と非製造業を問わず、大企業のほとんどの業種で業況判断指数(DI)の悪化幅が拡大した。経済活動はそろりと動きだしつつあり、3カ月後の先行きは一定の改善を見込むが、新型コロナウイルスの感染の再拡大の懸念は常につきまとう。
自動車大手スバルの完成車工場がある群馬県太田市。2次下請けで金属加工業の「アミイダ」は4月以降、「工場を開けているだけで赤字」(阿久戸洋希社長)の状態に陥った。トランスミッションやエンジン部品の研削を担うが、3月から減り始めていた受注が4月から激減し、電気代や人件費だけが出ていった。
5月の大型連休前後は約20人の従業員を臨時に休みにし、その後は週休3日にしてしのいだ。雇用調整助成金を活用する一方、三つの金融機関から運転資金を工面した。4〜6月の借入額は、リーマン・ショック時の3倍にもなった。
苦しいのは製造業だけではありません。営業を再開した東京ディズニーランドには「信じられない光景」(客の一人)が広がっていました。
自動車大手の国内工場は4月以 ・・・ 
●日銀短観/地域むしばむ廃業・失業/コロナ不況で万策尽き  7/2 
新型コロナウイルスが地域経済をむしばんでいる。万策尽きて廃業を選ぶ経営者、失業に追いやられる労働者。極度の景況感悪化を示した日銀の企業短期経済観測調査(短観)にも反映されない苦境の人々が多数存在する。感染第2波への懸念も強まり、景気回復の光は差してこない。
大赤字
「コロナ禍による激変は目を覆うばかりだ。これ以上の継続は困難と言わざるを得ない」。5月18日、栃木県栃木市のタクシー会社「栃木交通」の植原和信(うえはら・かずのぶ)社長(67)は従業員に廃業を通告した。60〜70代の従業員10人で車両9台を回してきたが全員解雇。6月27日に創業64年の歩みにひっそりと幕を下ろした。
植原氏が営む運送会社が栃木交通の経営を受け継いだのは1996年。代行タクシーや低賃金の乗り合いタクシーの普及、消費税増税が響いて売り上げはじりじりと落ち込み、コロナ拡大前の時点で最盛期からは既に半減していた。
植原氏は栃木県タクシー協会の会長も務め、若者のタクシー離れや長時間労働の常態化など業界の行く末を憂えてきた。それでも病院や市役所へタクシーで通う高齢者らの必要に応えようと、運送会社から資金を援助して延命を図ってきたが「コロナで事態の好転が完全に見えなくなった」。4、5月は売上高が約130万円で大赤字。商売として限界だった。
全員解雇
コロナに絡む企業倒産は1日時点で累計300件を超えた。これに数えられない自主廃業なども含めると実態はさらに深刻だ。国土交通省によると、コロナを理由に2〜5月に廃業届を出したタクシー会社は全国で9社、休業も28社に上る。
宇都宮市では小売店や飲食店に登録タクシーで向かえば、初乗り運賃740円を補助するサービスを期間限定で開始。地元商工会議所が消費者、小売業、タクシー会社の3者支援のため300万円を用意し、苦境を打開しようと必死だ。
地域企業の疲弊は雇用に暗い影を落とす。コロナ関連の解雇や雇い止めは見込みも含め、6月26日時点で2万8173人に達し、増加に歯止めがかからない。
有名ブランド「ダーバン」のスーツを製造する宮崎県日南市の「ダーバン宮崎ソーイング」は、親会社のレナウンが民事再生手続きに入ったあおりで6月に経営破綻し、全従業員136人を7月5日付で解雇する。
市内には下請け会社が3社あり、約210人が働く。取引先幹部は「縫製を極めた職人が代わりにできる仕事は地元にはない。多くの家族が町を出て行くかもしれない」とため息をついた。
畳むに畳めず
廃業せずに踏みとどまる企業の多くも厳しい状況に置かれている。
日銀短観で大企業、中小企業とも景況感の悪化が顕著だった自動車産業。関東にある商用車大手の下請け会社を営む男性(60)は「今年の生産量は前年より3〜4割落ちるだろう。10月に元の水準に戻れるかどうか」と肩を落とす。7月も従業員に週休3、4日の勤務体制を求め、国の雇用調整助成金を活用するものの「残業代がなくなって給料が下がっているのが心苦しい」と漏らす。
ある信用金庫の支店長は「既存の借金を返せないから会社を畳むに畳めず、政府の無利子融資を頼りに事業を続けざるを得ない中小企業も多い」と語る。コロナ不況の底はなお見えない。 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
2020/4-