色のイメージ・古色

  臙脂(えんじ)濃い赤色をさす、本来は動物性染料で染めた濃赤色だが、植物性の染料を用いることもあった、古来の海老茶系の色
  茜色(あかねいろ)茜で染めた色
紅(くれない)葵の上が死んだ時光源氏が下襲に用いたように喪服にも使う
  緋色(ひいろ)黄味の冴えた赤色
  猩々緋(しょうじょうひ)冴えた赤色、特に強い調子の黄みを有した赤い色
  紅(べに)アザミに似たキク科の植物紅花から抽出した紅色素、光源氏がふざけて鼻につけた色(若紫)
紅梅(こうばい)紅梅の花に由来する色名で今日的にはローズと称される色 
匂宮と対岸の家で過ごした浮舟の「紅梅の織物」の小袿(浮舟)
薄紅梅(うすこうばい)玉鬘の中の君の小袿「いま一所は薄紅梅に御髪色にて柳の糸のやうにたをたをと見ゆ」(竹河)
  珊瑚色(さんごいろ)色名では濃いピンクを表す、珊瑚の色に由来しやや黄みのある中間のピンク色
  鴇色(ときいろ)ピンク系の色の中で少し黄みを帯びた色、朱鷺の羽の薄い紅色
  桃色(ももいろ)桃の花の紫味のピンク
  東雲色(しののめいろ)夜明けの東の空のピンク
桜色(さくらいろ)桜の花の色、玉鬘の大君の細長(竹河)
  丹(たん)赤味のオレンジ
  朱色(しゅいろ)天然の朱砂、紅や緋より黄みを帯びた赤
  洗朱(あらいしゅ)朱色を洗い弱めた色、朱の浅い色
  紅柑子(べにこうじ)赤のくすんだオレンジ
  朱華(はねず)紅花の花弁の色
  琥珀色(こはくいろ)琥珀のような黄橙色
赤白橡(あかしらつるばみ)橡は櫟の古い呼称、櫟の実を用いて染め出された色の一種、禁色、「少女」巻で冷泉帝や太政大臣の光源氏が着用
  枯色(かれいろ)草木の枯れた色
  砥粉色(とのこいろ)砥粉の色、赤みのある鈍い黄色
  宍色(しんいろ)肉色(にくいろ)肌色、宍は肉を意味する古語で肉色あるいは肌色と同義
  生成(きなり)天然素材の繊維の色
  紅殻(べんがら)わずか黄味の暗い赤
  赤銅色(しゃくどういろ)赤銅のような色
  深緋(ふかひ)茜の下染めに紫紺を掛ける
  鳶茶(とびちゃ)鳶の羽色にちなむ色名で現実の鳶の羽より赤身の強い色をさしている
  路考茶(ろこうちゃ)渋い金茶色、江戸期の女形瀬川菊之丞の俳号「路考」にちなみ名付けられた
  媚茶(こびちゃ)揚梅皮を用い鉄媒染で染め出された渋いオリーブ系の茶
落栗(おちぐり)末摘花の贈り物の袴の色(行幸)一時代前に流行したもの
  千歳茶(せんさいちゃ)揚梅皮を用いて染められ鶯を暗くしたような黒みの渋い茶
  皀(くり)黒土の色からきた色名でやや赤みをおびた濃い茶褐色系の色
  璃寛茶(りかんちゃ)歌舞伎役者にちなむ色名で渋い焦げ茶系の色
  栗皮色(くりかわいろ)栗皮の赤味の茶
  焦茶(こげちゃ)焦げたような黒味の茶色、一般に褐色の総称として茶色と言われているが中でも黒みのある濃い茶
檜皮色(ひわだいろ)桧の皮の赤味の茶、小野の庵室に住まわされた浮舟の服装(手習)
  葡萄茶(えびちゃ)山葡萄で染めた色
  小豆色(あずきいろ)小豆の表面の色、紫みのくすんだ赤色で赤小豆のような色
  栗梅(くりうめ)赤味の茶色
  黄櫨染(こうろぜん)黄櫨と蘇芳で繰返し染た色、ハゼ(黄櫨、櫨)の木の心材と煎汁、蘇枋、酢、灰などの混染めで得られる色
  煙草色(たばこいろ)たばこの葉を干して発酵した色
丁子染(ちょうじぞめ)薫の持っている扇(宿木)
  代赭色(たいしゃいろ)黄土を熱し水分除去した色、赤土中にある天然の赤褐色の顔料の色
  団十郎茶(だんじゅうろちゃ)歌舞伎市川家が使用した柿色
朽葉(くちば)褐色味のオレンジ色、花散里が夕霧のために用意した「いときよらなる朽葉の羅、今様色の二なくうちたるなど引き散らしたまへり」(野分)
  金茶(きんちゃ)金色がかった茶、古くはしろ茶系統の色のことを意味していたが後世から現在に至っては金色の感じの茶色
  飴色(あめいろ)水飴のような色
赤朽葉(あかくちば)秋好中宮が紫の上に遣わした使いの女童の衣服(少女)
  洗柿(あらいがき)柿色を洗い晒した色
萱草色(かんぞういろ)紫の上の喪中のあてきの袴(葵)
  柑子色(こうじいろ<)柑子とは橘のことでその実が柑子蜜柑でその色に由来する今日の蜜柑より淡い色
  杏色(あんずいろ)熟した杏の実の色
  駱駝色(らくだいろ)駱駝の毛の色
  赤香(あかこう)赤味の香色
  橡(つるばみ)黄味の茶
  丁子茶(ちょうじちゃ)丁子で染めた茶
  丁子(ちょうじ)丁子で染めた薄い茶、香染め一種で丁子の煎汁で染め出される色、媒染しない場合は淡い香となるが鉄・灰汁媒染でこの丁子となる
  香色(こういろ)香木の丁子で染めた色、香染(こうぞめ)尼僧の法服に用いられることが多い
  白茶(しらちゃ)茶のごく薄い色
 
黄(き)女一の宮の侍女小宰相の君の服装、「黄なる生絹の単衣」(蜻蛉)
山吹(やまぶき)山吹の花の色に由来し彩度の高い赤みの黄、幼い紫の上の「まばゆき色にはあらで、紅、紫、山吹の、地の限り織れる小袿」(紅葉賀)
梔子(くちなし)梔子で染めた色、衣配りの際に贈った空蝉の尼君の衣料(玉鬘)
  黄土色(おうどいろ)黄土のような色
  支子(くちなし)支子は常緑灌木でその実から採取された黄色色素で染められた色、鬱金や刈安に比べより淡いやや赤みを帯びた黄
  黄橡(きつるばみ)橡で染めた黄味の茶、橡は櫟(くぬぎ)のこと、この団栗の実とへたを煎じて染め明礬で発色すると黄味の茶色に、鉄発色したものは濃い灰色で鈍色とも言う
  油(あぶら)菜種油に由来した淡い緑みの黄褐色
胡桃色(くるみいろ)光源氏が明石の君に贈った、求愛の手紙の料紙の色(明石)
  黄金色(こがねいろ)金色
  承和色(そがいろ)黄色の菊の色
  鬱金(うこん)鬱金は熱帯アジア原産の多年草でその根茎染料で染めた色、赤みの冴えた黄
  刈安(かりやす)イネ科の近江刈安の茎や葉を乾燥させ得た黄色染料で染めた色、緑味の黄色
  菜の花色(なのはないろ)菜種色(なたねいろ)菜の花に由来する色、山吹色より緑みをおびた黄
  鶯色(うぐいすいろ)鶯の羽のような色、鶸色より暗い黄緑色
  鶸茶(ひわちゃ)茶がかった鶸色
  海松色(みるいろ)海藻の海松の色
煤竹(すすたけ)煤けた竹の色
 
  黄蘗(きはだ)山地に自生するミカン科の落葉樹黄蘗の樹皮の箭汁を染料として染めた色、緑味の黄
鶸色(ひわいろ)鶸の羽の色、黄蘗などの黄色系染料に淡く藍を交染して得られる鳥の鶸の羽毛に見られるような緑みの黄色
  鶸萌黄(ひわもえぎ)鶸より青みの黄緑色となった色
  柳色(やなぎいろ)柳の葉
萌黄(もえぎ)葱の萌え出る色、黄みをおびた緑の淡い色、女楽の折の明石の君の衣装に「萌黄にやあらむ小袿着て」(若菜下)
  若草色(わかくさいろ)若菜色(わかないろ)春の若草の色、鮮やかな黄みの緑色、伝統色名で「若」と言う場合は若緑、若竹、若藤、若葉など鮮やかな色目に冠される
  草色(くさいろ)草の葉の色
  苔色(こけいろ)苔のような色、六月の梅雨のしっとりとした緑色を表す、藍と刈安をかけやや渋い緑色
  虫襖(むしあお)やや紫味の緑色
若苗色(わかなえいろ)薫がかいま見した浮舟の服装「濃き袿に撫子とおぼしき細長、若苗色の小袿着たり」(宿木)
  若竹(わかたけ)若い竹の緑、青竹に至る前の芽生え出し始めた頃の若い竹の肌の緑色
  若緑(わかみどり)爽やかな薄緑
  裏葉(うらは)葉の裏のような白みをおびた緑
  青磁(せいじ)少し灰味のうすい緑色、青緑系の釉薬をかけた磁器の表面の色に由来、青磁の色は黄みをおびたものから青みをおびたものまで幅広いが一般的には青みの色をいう
秘色(ひそく)青磁色、磁器の色、「御台、秘色やうの唐土のものなれど」(末摘花)
  山葵色(わさびいろ)山葵の色
  老竹(おいたけ)黄緑色の若緑に対しくすんだ濃い緑、年月を経た竹の色
山藍摺(やまあいずり)青摺(あおずり)藍染めの蓼藍に対し山藍の染め色、蓼藍より淡い緑みをおびた色、住吉詣の折の東遊の舞人が着用した小忌衣の染色(若菜下)
  薄緑(うすみどり)薄い緑色。緑。
青丹(あおに)六条院の女楽の折の女三の宮の童女の衣装(若菜下)
  青竹(あおたけ)青竹の色にちなむ青みの緑
  緑青(ろくしょう)青味のやや鈍い緑色、銅青や石緑ともいわれ奈良時代に中国から伝来した緑色の顔料、天然に産する緑青の色
  木賊(とくさ)木賊の茎の色、黒みの緑
青朽葉(あおくちば)一条宮の女房たちの衣装「青朽葉などをとかく紛らはして」(夕霧)
  常盤(ときわ)千歳緑(ちとせみどり)常磐松の濃い緑、縁起・美称として千歳が冠せられている
  納戸鼠(なんどねず)青緑味の灰色
  松葉色(まつばいろ)松葉の色
  萌葱(もえぎ)黄緑系のもえぎを萌黄としたのに対し葱の萌え出る濃い緑
青鈍(あおにび)青みがかった鈍色、光源氏の狩衣・差貫(須磨)、尼衣の空蝉(玉鬘)
 
  藍白(あいじろ)白殺し(しろころし)藍染の最も初期の過程で得られる薄い藍色
  白禄(びゃくろく)緑青を粉末にした色、緑青の白みをおびた淡い色
  瓶覗(かめのぞき)藍染めの一番薄い色、藍染めの初期の段階で染め出される色で藍瓶を覗いた程度にちょっと染めたと言う意、浅い浅葱色程度の色
  水色(みずいろ)薄い青色
  水縹(みずはなだ)藍染の色で淡い藍染の色
浅葱(あさぎ)藍染めの浅い段階で葱の色に似ているころから冠された色、六位の袍の色、夕霧の不遇意識の表象(少女)
  新橋(しんばし)金春色(こんぱるいろ)新橋花柳界で好まれた色、冴えた浅葱色、明治期の合成染料の流入により誕生した新しい伝統色
  白群(びゃくぐん)群青の顔料の粒子をさらに微細にして染めた色、白みの淡い青色
  花浅葱(はなあさぎ)はないろの薄い青
  露草色(つゆくさいろ)露草で染めた暗い青色
浅縹(あさはなだ)藍で薄く染めた縹色、衣配りの際の花散里の小袿「浅縹の海賦の織物」(玉鬘)
  水浅葱(みずあさぎ)水色に近い浅葱色
  濃藍(こいあい)濃い藍色
  熨斗目色(のしめいろ)小袖の地色に使われたことに由来した色、婚礼用に用いた鉄色系の藍色
  露草(つゆくさ)花色(はないろ)露草の花汁を摺染めの染料に用いて得られた色
縹(はなだ)純粋な藍色、古来より知られた藍染めの色のひとつ、藍染めの色は浅い順に浅葱、縹、藍、紺と呼ぶ、直衣の「縹の帯」(紅葉賀)、光源氏(須磨)、夕霧(藤裏葉)、匂宮(蜻蛉)の直衣
  藍(あい)搗染(かちそめ)深い青緑・濃い青
紺(こん)藍染めでもっとも濃く現れる色、六条院の女楽に用いた楽器の袋(若菜下)
二藍(ふたあい)藍に紅花の赤が交染された色で深い青みの紫色、夕霧が内大臣家の藤花の宴に招かれた時、光源氏は二藍は若々しすぎるから、濃い縹がよいと言う(藤裏葉)
  群青(ぐんじょう)紫味の濃い青
  紺青(こんじょう)群青と同成分の顔料で染め出される色だが、その中でも冴えた紫みを帯びた色
  瑠璃(るり)瑠璃のような紫味の青色
  紫紺(しこん)茄子紺(なすこん)藍染めを濃く染めたとき表面が赤色をおびる
薄色(うすいろ)一般に薄色とは淡い色を現すが特に紫の薄色に対して用いられる、夕顔の「薄色のなよよかなる」など表着(夕顔)
  鳩羽紫(はとばむらさき)鳩の羽の青みの灰紫
  端色(はしたいろ)薄い紫色
  紅藤(べにふじ)赤味の淡い紫色
  藤色(ふじいろ)藤の花の色
  青藤(あおふじ)青みがかった藤色
  藤紫(ふじむらさき)藤色を濃くした色、明治期の合成染料により染められた彩度の高い色
  半(はしだ)濃い紫色に対して藤紫系の薄紫
  菫色(すみれいろ)スミレの青みの紫
  藤納戸(ふじなんど)藤色味の青
紫苑(しおん)秋に美しい薄紫色の花を咲かせる紫苑、その花の色に由来した色名、襲の色目、光源氏「白き綾のなよよかなる紫苑色などたてまつりて」(須磨)
  桔梗(ききょう)桔梗の冴えた青紫、実際の花より濃いめの青みをおびた紫色
紫 「小袿」(紅葉賀)、三位の服色(真木柱)、「濃き」だけで紫を指す場合も多い
  本紫(ほんむらさき)いわゆる紫の中の紫、高貴な色として大切にされている代表的な日本の伝統色
  濃色(こいろ)薄色、半などと同様に一般に濃い色を総称だが、単に濃色と言う場合は濃い紫を言う
  江戸紫(えどむらさき)蘇芳や紫根で染めた色、赤みをおびた京紫に対しての青みをおびた紫
  葡萄酒色(ぶどうしゅいろ)葡萄酒のような色
蘇芳(すおう)蘇芳で染めた濃い赤紫、六条院行幸の舞をする童たちの服装(藤裏葉)
葡萄染(えびぞめ)今日では葡萄と書いて「ぶどう」と読むが昔は「えび」と読んだ、その実の色に由来したやや淡い赤紫色、光源氏(花宴)など「下襲」の例が多い。内大臣の「御指貫」(行幸)
  京紫(きょうむらさき)赤味の古代紫、青みをおびた江戸紫に対し赤みを帯びた紫
  古代紫(こだいむらさき)紫根で染めた紫
今様色(いまよういろ)衣配りの紫の上の「今様色のいと優れたる」衣料(玉鬘)
  牡丹色(ぼたんいろ)牡丹の花の赤紫、本来牡丹は濃い赤紫だがその色の冴えた紫みの赤の色
白(しろ)衣服の例が圧倒的に多い、頭・顔・肌など身体の場合も多い
  純白(じゅんぱく)正に真っ白純白色、牡蛎の殻を焼き粉にした胡粉などで引染するなどで得られていた色
  乳白色(にゅうはくしょく)少し黄味の白
  銀鼠(ぎんねず)明るい灰色
  桜鼠(さくらねず)桜がかった鼠色
青白橡(あおしらつるばみ)青緑み鼠色のような中間色、六条院行幸の折の舞の童の衣装に「青き、赤き白橡」(藤裏葉)
  錆青磁(さびせいじ)灰味の明るい青緑色
  灰色(はいいろ)白と黒の中間の色
薄鈍(うすにび)喪服や僧・尼に用いる。叔父式部卿宮への弔意に重ねる薫の直衣(蜻蛉)
  素鼠(すねず)普通のねづみ色、色目を含まない純粋な鼠色
  利休色(りきゅういろ)利休好み
  利休白茶(りきゅうしらちゃ)利休がかった白茶
  利休鼠(りきゅうねずみ)利休がかった鼠色、抹茶のような緑色をおびた鼠色
麹塵(きくじん)萌黄のくすんだ色、青白橡・山鳩色と同系 色、平安時代の天皇の袍(ほう)としてのみ許された禁色、麹黴の色住吉詣「六位の中にも蔵人は青色しるく見えて」(澪標)
  藤鼠(ふじねず)藤色がかった鼠色
薄墨(うすずみ)「喪服」の歌語として亡き葵の上を悼む光源氏の歌に詠まれた「薄墨衣」(葵)
  錆御納戸(さびおなんど)さびたお納戸
鈍色(にびいろ)無彩色系、喪服や僧・尼に用いる、「濃き鈍色」「にぶ」「にばむ」とも、葵の上の喪中の頭中将の「直衣・指貫」(葵)
  鳩羽鼠(はとばねず)鳩の羽毛のような藤色をおびた鼠色
  山鳩色(やまばといろ)山鳩の首から背にかけての緑みの鼠色からきた色
  納戸鼠(なんどねず)藍色の代表的な色のひとつ納戸色の青みをおびた鼠色
  納戸(なんど)古来は鼠みの藍色をさした、今はやや緑みの強い調子の藍色を言う
  根岸色(ねぎしいろ)上等な壁土を根岸と読んでいた、その根岸の壁の色からきた緑みの鼠色
  青鈍(あおにび)鈍いろにさらに青みを増した鼠色
  黒橡(くろつるばみ)黒に近い灰色
  橡(つるばみ)櫟染め鉄媒染による黒みの鼠色、一条御息所の喪に服する小少将の君の服装(夕霧)
  海松(みる)海草の一種の海松の色、鈍い緑系の色
墨染(すみぞめ)紫の上没後の侍女たちの「墨染の色こまやかにて着つつ」(幻)
  滅紫(めっし)滅は「けし」とも読み色みがとれて黒みのくすんだ色を言う、紫みがとれくすんだ色
黒(くろ)「黒し」「黒む」「黒みわたる」は、喪服や僧・尼の衣服、喪中の車・料紙、光源氏の数珠(須磨)
 
 
 
   
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有職故実 
【有職】ゆうそく 〔有識の変化〕朝廷・武家の官制や行事の慣行に関する知識。 
【故実】 昔の法例や儀式の規定・慣例など。
江戸流行色 四十八茶 百鼠 藍 
度重なる、奢侈禁止令により、お江戸庶民の服色は、「茶色」「鼠色」「藍色」 のバリエーションに。 
四十八茶 
江戸茶/路考茶/団十郎茶/芝翫茶/璃寛茶/利休茶/媚茶/鶯茶/千歳茶/唐茶/鳶茶/百塩茶/宗伝茶/金茶/宝茶/雀茶/桃山茶/梅茶/煎茶/威光茶/憲房黒茶/遠州茶/信楽茶 
百鼠 
江戸鼠/深川鼠/銀鼠/梅鼠/葡萄鼠/黒鼠/藍鼠/錆鼠/利休鼠/素鼠/都鼠/小豆鼠/紅鼠/臙脂鼠/嵯峨鼠/壁鼠/玉子鼠/島松鼠/呉竹鼠/松葉鼠/納戸鼠/源氏鼠/濃鼠 
藍 
鉄紺/藍/薄藍/納戸色/浅葱/舛花色/露草色/水浅葱/瓶覗/藍錆/藍玉子/藍鉄/藍生壁/藍鳩羽/藍天鵞絨(あいびろうど)/藍湊/藍深川/藍納戸/錆納戸/納戸茶 
 
藍色は江戸全般、茶色は江戸中期から、鼠色 (男性に人気) は主に文化 (1804年〜)・文政から。藍○○、○○納戸、○○茶、○○鼠のオンパレードです。色味を無視しての色命名も数多く有ります。藍茶、藍鼠、茶鼠、互いにフュージョンしています。江戸っ子の心意気で色名を決めていたのかも知れません。各々の色名を記しましたが、遠くから見れば、殆ど見分けが付けられない色々です。しかし、お袖が触れ合う空間では、見分けが付き、微妙な色合いを競っておられたと思うと、思わず「素敵っ」と。( 尚、「四十八茶 百鼠」 の四十八と百は色数では有りません。多色と云う意味合いです。) 
納戸茶の色事情  
納戸茶色の最初は、染め上げた色ではないと云う話も有ります。ある武家か町人さんかが、呉服屋さんに藍海松茶 (かなり黒に近い藍色) の反物を註文し、その時点で、大事な品物だったのでしょう?出来上がった物を屋敷の納戸 (物置) の奥へしまい込んでいたそうです。ついうっかりか、結局は大切な物でなくなったのか不明ですが、年月が過ぎ去り、何かの拍子に存在確認。時間の経過で色褪 (あ) せた反物が目の前に。しかしながら、中々捨てがたい色に変化、納戸茶に。 
茶色は特に、歌舞伎役者さんの 「イメージカラー」 に。時系列順には、(参考 色 ・彩飾日本史 長崎盛輝) 
 路考茶 二世瀬川路考 (1741〜1773) 江戸の女形 1751〜1772年(宝暦〜明和期) 
 梅幸茶 一世尾上梅幸 (1717〜1783) 江戸の男役 1751〜1772年(宝暦〜明和期) 
 舛花色 四世市川団十郎 (1741〜1806) 江戸の男役 1781〜1801年(天明〜寛政期) 
 璃寛茶 二世嵐璃寛 (1769〜1821) 京 ・大坂の男役 1804〜1830年(文化〜文政期) 
 芝翫茶 三世中村芝翫 (1778〜1838) 京 ・大坂の男役 1804〜1830年(文化〜文政期) 
 岩井茶 五世岩井半四郎 (1776〜1847) 江戸の女形 1804〜1830年(文化〜文政期) 
 高麗納戸 五世松本幸四郎 (1764〜1838) 江戸の男役 1804〜1830年(文化〜文政期) 
 団十郎茶 七世市川団十郎 (1791〜1859) 江戸の男役 1804〜1842年(文化〜天保期) 
 (梅幸茶は、黄味の緑茶色/岩井茶は、梅幸茶より濃い黄味の緑茶色/高麗納戸は、黒味の納戸色) 
路考茶は圧倒的に女性 ・男性問わず大人気、彼以外は、贔屓筋、通の殿方に人気があったとの事です。赤系 ・紫系の服色の着用を規制された江戸庶民の方々は、青、茶、鼠色の渋ーい色、及び、限りなく黒色に見えるカラーで勝負していたのです。(但し、アウター色。)