心・情・意

 
心情意思(おもい)志(こころざし)魂(たましい)情(なさけ) 
 
  
【心・情・意】
 
人間の知的、情意的な精神機能をつかさどる働き。いろいろな事物の、人間の心に相当するものにも用いられる。精神。魂。
人間の精神活動を総合していう。 
人間の理性、知識、感情、意志など、あらゆる精神活動のもとになるもの。 
表面からはわからない本当の気持。本心。 
先天的、または習慣的にそなわっている精神活動の傾向。性格。 
人知れず考えや感情などを抱くところ。心の中。内心。 
人間の精神活動の知、情、意のいずれかの方面を特にとり出していう。 
物事を秩序だてて考え、行動を決定する精神活動。思慮分別。 
とっさの気の配り。また、事に臨んで物事を処理してゆく能力。機転。気働き。 
自分の気持と異なったものを受け入れるときの精神的許容性。度量。 
感情、気分など、外界の条件などに反応して心理内で微妙にゆれ動くもの。情緒。 
他に対する思いやり。他人に対して暖かく反応する気持。情け。 
詩歌、文学、芸術、情趣、もののあわれなどを理解し、それを生み出すことのできる感性。 
人間の意識や感情。言語表現を支える精神活動。 
ある物事を意図し、その実現を望む気持。考え企てること。企て。意向。意志。 
気持の持ち方。心構え。意図を実現させるのに必要な意気ごみや精神力。 
人間の行動の特定の分野にかかわりの深い精神活動を特にとり出していう。 
相手に逆らうような気持をひそかに抱くこと、その気持。 
宗教方面に進んでいる気持。道心。宗教心。信仰心。信心。 
世俗的なものに執着する気持。雑念。妄念。我執。煩悩(ぼんのう)。 
事物について人間の「心」に相当するものを比喩的にいう。 
人に美的感興などを起こさせるもの。事物の持つ情趣。風情。 
あまりおおやけにされていない事情。内情。実情。 
物事の本質的なあり方。中心的なすじみち。物事の道理。 
内々でたくまれた物事の趣向。くふう。 
ことばの意味。わけ。語義。 
事柄を成り立たせている根拠。 
人体または事物について「心」にかかわりのある部位や「心」に相当する位置。 
物の中心。物の中央。特に池についていうことが多い。 
人体で心の宿ると考えられたところ。心蔵。胸のあたり。胸さき。
心暖(あたた)まる 人情の暖かさに触れて心がなごむ。「心暖まる話」 
心合わざれば肝胆も楚越(そえつ)の如し 気が合わないと近親の者も遠国の人のように疎遠なもの。 
心急ぐ 気がせく。早く物事をしたいと思って気がいらだつ。 
心痛し 胸が痛む。心がうずく。悲しい。 
心熬(い)らる 気持があせって落ち着かない。いらだつ。 
心入る ある事に心が引きつけられる。気に入る。身が入る。心にかなう。思い入る。 
心浮く 気持がうわつく。思慮分別を欠く。陽気である。気さくにふるまう。 
心動く 気持が動揺する。思い乱れる。感動する。心がその方に引きつけられる。 
心失(う)す 驚いて気が遠くなる。正気を失う。胆がつぶれる。 
心内にあれば色外にあらわる 心中に思うことは自然に顔色、動作などに現われる。 
心内に動けば詞(ことば)外にあらわる 心中に思うことは覚えずことばに現われ出る。 
心移(うつ)る 愛情や関心が他からそのものに移る。心を引かれる。恋慕の情が生じる。
心生(お)う 心のままに育つ。自然に成長する。 
心多(おお)し 気が多い。移り気である。浮気だ。趣向が複雑である。 
心後(おく)る 心の働きや美的感覚などが劣っている。気がきかない。考えが幼稚だ。 
心起(お)こる 思い立つ。その気になる。発心(ほっしん)する。菩提(ぼだい)心が起きる。 
心おさむ 気持を落ち着ける。我慢する。 
心惜(お)し 心中に惜しく思う。残念だ。 
心重(おも)し 落ち着きがある。思慮深い。人柄がおおようである。 
心及(およ)ぶ 考えが行き届く。気がつく。常識によって予想、想像、期待などができる。 
心懸(か)かる 心が、ある対象にとまる。心が引かれる。
心が軽い 軽薄である。思慮が浅い。気軽である。心がはずんでいる。 
心が弾む 楽しさや明るい希望などのために心が浮き浮きする。意気が揚がる。乗り気になる。 
心通う 思いの心が通い合う。気持が通じ合う。互いに思い合う。 
心から 心の底から。一心に。衷心から。 
心変わる 気持が前とは異なる。気持が他に移る。愛情がなくなる。変心する。 
心利(き)く 機転がきく。才覚がある。気がきく。 
心消(き)ゆ 感情がはげしく動揺して、気が遠くなる。正気を失う。 
心切(き)れる 思いきりがよい。気まえがよい。さっそうとした意気がある。 
心砕く 心が乱れる。いろいろと思い煩う。心屈する。 
心下(くだ)る 卑屈になる。気性が劣る。無気力になる。 
心曇る よこしまな気持が生じる。心に晴れ晴れしないことがある。暗い気持になる。
心昏(く)る 心がまっくらになる。ぼうぜんとして前後の分別がなくなる。 
心消失(けう)す 正気がなくなる。失心する。 
心鴻鵠(こうこく)にあり 心がうわの空で物事に身がはいらない。 
心焉(ここ)に在(あ)らざれば視(み)れども見えず 心が他のことにとらわれていれば、たとえ視線が物に向かっていても、その物が目にはいらない。 
心下(さ)がる 品性が卑劣である。根性が卑しい。 
心定(さだ)まる 意志堅固である。情緒が安定している。気持が落ち着く。平静になる。 
心騒(さわ)ぐ 心配で気持が落ち着かない。いやな予感がして胸さわぎがする。虫のしらせで心が波立つ。
心時雨(しぐ)る そぞろに心に悲しく思い、涙を流す。心が湿りがちである。 
心染(し)む 深く心にとまる。気持が引き付けられる。心を打ち込む。心にかける。 
心好(す)く 風流を好む心がある。物好きだ。 
心少(すく)なし 思慮が浅い。注意が足りない。 
心進(すす)む 心がはやる。気がせく。気負い立つ。希望する気持が強くなる。 
心坐(すわ)る 心が安定する。気持が落ち着く。迷っていたことの決心がつく。 
心急(せ)く 心がいらだつ。もどかしく思う。あせって落ち着かない。 
心添(そ)う 本来の気持のほかに、別の気持が加わる。 
心空なり 心が体から抜け出て無我の状態にある。ある物事に気をとられて何事も手につかない。うわの空。 
心違(たが)う 本意にそむく。予期に反する。あてがはずれる。気が変わる。心境が変化する。正念が乱れる。 
心正しければ則(すなわ)ち筆(ふで)正し 書法は心が根本で心の正しいものは筆法もおのずから正しい。 
心立つ 心を起こす。興味を持つ。心が奮い立つ。一念発起する。
心絶(た)ゆ もだえ苦しむ。悶絶(もんぜつ)する。思う気持がなくなる。あきらめる。断念する。 
心足(た)る 心境が十分である。深い境地に至っている。注意がいきとどく。十分に気をくばる。 
心付(つ)く ある考えを持つようになる。考えるようになる。愛情、執着、強い関心などが生じる。心にかる。思いこがれる。執心する。すぐれた分別や才覚などをもつようになる。また、成長して物心がつく。一人前の思慮分別をもつようになる。 
心尽(つ)く あらゆる物思いをし尽くす。気がもめる。 
心解く 気が晴れる。心中のわだかまりが解ける。気持がやわらぐ。うち解ける。気を許す。油断する。 
心とす 心に任せる。思う通りに行なう。気を配る。注意する。
心留まる 愛情や深い関心・興味を感じる。心が引かれる。気に入る。心が残る。未練が残る。世俗的なものに心が執着する。 
心ともなく 心にもあらず。思わず知らず。無意識に。 
心ながら われながら。内心では。同じ心を保持し続けて。その心のままで。 
心和(な)ぐ 気持がやわらぐ。心が慰む。気が静まる。 
心ならず 本意ではない。自分の意思に反している。思い通りにすることができない。自由にはできない。不安でじっとしていることができない。気が気でない。われ知らず。無意識である。うっかり。 
心ならずも 心からそうするのではないが。不本意ではあるがやむをえず。 
心に合う 意にかなう。満足する。気に入る。 
心に当たる 気にさわる。気を悪くする。 
心に余る 自分の心一つでは処理できないでいる。思案に余る。 
心にあり 胸中にある。内々に思っている。考えや決心しだいで事態がきまる。気持しだいである。心に思いつく。
心に入る 心にしみこむ。深く心に留まる。印象が深く感ぜられる。気に入る。心にかなう。気のりがする。興に入る。感興をもよおす。専念する。熱中する。身を入れる。理解する。会得する。ふに落ちる。心をこめる。熱心にする。深く心に思いこむ。 
心に鬼をつくる 恐れて無用な想像をする。疑心暗鬼を生ずる。うしろ暗く思って悩む。心にやましさを覚える。 
心に及ぶ 予想や想像のつく範囲内にある。思い及ぶ。 
心に懸(か)かる 心から離れないでつきまとう。念頭を離れない。気になる。心配なこととして気になる。恐れ、不安などが心に生じて離れない。ある人の厚意にたよる。志を頼みとする。情けにすがる。 
心に垣(かき)をせよ 油断をしないで用心せよ。常に用心を怠るな。 
心に掛(か)く 心にとめる。念頭におく。気にする。特別の関心をいだく。懸想(けそう)をする。目をかける。
心に笠着て暮らせ 上を見ないで足(た)ることを知れ。高望みをせず分相応に暮らせ。 
心に適(かな)う 思う通りになる。意のままになる。予期、希望、不満などを満たしてくれる。望ましく思っていたものを得て、満足する。気に入る。 
心に通(かよ)う 心に相通じる。外から心にやってくる。心に思い浮かぶ。心にしみ入って感興をもよおす。 
心に刻(きざ)む 深く心に留めておく。肝に銘ず。 
心に焦(こ)がす ひそかに思いこがれる。人知れず思い乱れる。 
心に応(こた)う 思い当たってはっとする。胸にぎっくりとひびく。 
心に籠(こ)む 人に漏らさずに心に秘めておく。胸にたたむ。心を傾ける。細心の注意を払う。 
心に従う 相手の意向の通りに事を行なう。相手の心のままになる。自分の思う通りにする。思い浮かぶままにする。心のままに物事がはこぶ。それぞれの心の程度に応ずる。心の深さに対応する。 
心に染(し)む 心に深く刻みこまれて離れない。深く心に感じる。心を傾ける。思いつめる。執心する。
心に錠(じょう)をおろす 用心する。気を許さない。心を変えまいと堅く決心する。心にきめる。 
心に進(すす)む 気がはやる。しきりに思う。 
心に添う 心につきまとう。離れず念頭にある。意のままになる。期待通りになる。 
心に染(そ)む 気に入る。意にかなう。強く心が引かれる。深く心を寄せる。執心する。 
心に違(たが)う 本意にそむく。期待に反する。心にそむく。 
心に付く 心にかなう。気に入る。心が引かれる。心を寄せる。関心をもつ。心にかける。 
心に剣(つるぎ)を含む 相手に危害をあたえようとする気持をもつ。害心をいだく。 
心に留(と)まる 心が引かれる。気にかかる。 
心に留(と・とど)める 気にかける。忘れないでおく。
心に乗る 心に乗り移って離れない。心を占める。心にかかる。気に入る。満足する。心にかなう。 
心に蓋(ふた)なし 心に包み隠すことがない。隠しだての心がない。 
心に任(まか)す 自分の思うままに行なう。勝手気ままにふるまう。自分の思うようになる。思い通りに事が運ぶ。 
心に咽(むせ)ぶ 悲しみが胸にこみあげる。胸が迫る。 
心にもあらず 思わず知らずのさま。無意識である。本意ではない。気が進まない。思いもかけない。意外だ。 
心にない 身に覚えがない。思いもよらない。本心ではない。思ってもいない。 
心に物を言わす 口に出さないで、表情や動作で気持を伝える。無言の中に思いをこめる。 
心緩(ぬる)し 心がのんびりしている。性質がおっとりしている。気が長い。心が鈍い。心が弱い。 
心の垢(あか) 心の汚れ。煩悩(ぼんのう)。罪障。 
心の秋 秋になると葉が変色するように飽きて心変わりする。心に寂しさを感じること。心の弱まり。
心の仇(あだ)は心 自分の心を害するものは自分自身の妄念。悟りを妨げるものはおのれの煩悩である。 
心の跡(あと) 心の思いを象徴する痕跡。思いのあらわれ。 
心の雨 心が晴れやかでないさまのたとえ。 
心の綾(あや) 複雑な物思い。入り組んだ心境。 
心の嵐 心が乱れ平穏でないこと。心がすさんでしまうこと。 
心の池 池が水をたたえているように、心に物思いを深くたたえていること。悩みが心にみちみちていること。 
心の泉 泉のように心に湧(わ)き出る考えや感興。 
心の至り すみずみまで心が行き届くこと。心境の深さ。思慮の深さ。 
心の糸 心が乱れることを糸にたとえる。
心の暇(いとま) 口には出さないで、心の中でひそかにするいとまごい。 
心の色 心の有様。心に深く思いそめているさま。美しいものに動かされた心。うわついた心。 
心の内 心の中。胸のうち。内心。 
心の馬 馬が勇み逸(はや)って押えがたいように、感情が激して自制しがたいこと。意馬。 
心の海 心の広く深いことを海にたとえていう。度量の大きいこと。 
心の占(うら) 心中に、前もって感得したり判断したりすること。心中に立てたうらない。予感。予想。 
心の浦 心の中。 
心の裏 心の中。 
心の緒(お) 物を思い続ける心のさまを緒にたとえたもの。 
心の熾(おき) 思いこがれる心を、赤くおこった炭火にたとえていう。 
心の掟 心に守るべき価値基準。心がまえ。心の持ちかた。
心の置き所なし 心がどうしようもないほどせつなく苦しい。やるせなくて途方に暮れる。 
心の奥 心の底。表面からはなかなか知れない本心。奥深い考え。思慮の深さ。 
心の鬼 心を責めさいなまれること。ふと心をよぎる不安や恐れ。心の奥に隠れているよくない心。よこしまな心。邪心。恋慕愛着の妄念。煩悩にとらわれる心。 
心の鬼が身を責める 良心に責められて苦しむ。 
心の鏡 清く澄んで物事をよく感得できる心を鏡にたとえる。筆の異称。 
心の限(かぎ)り からだはともかくとして心だけを全部。心の及ぶ限り。精一杯。思う存分。 
心の風 人の心のきびしく荒いさまを風にたとえる。心に俗塵のつくのを払う道心などを風にたとえる。
心の糧(かて) 精神生活を豊かにするもの。精神の向上を助けるもの。 
心の際(きわ) 心の高さ深さなどの程度。心の有様。心のぎりぎりのところ。心の限界。 
心の琴線に触れる 人の心の奥を揺り動かし、深い感動や共鳴を引き起こすことを、琴の糸に触れて音を発するのにたとえる。心を打つ。 
心の草 心の中に生じる種々の物思いを草にたとえる。 
心の隈(くま) 人に知られない心の奥底。心のすみずみ。人知れず抱いている考え。 
心の雲 心が迷って悟れないでいるのを雲がおおうのにたとえる。心の迷い。心がふさいで晴れ晴れとしないさまを雲にたとえる。 
心の氷 心が憂いにとざされて解けないさまを氷にたとえる。不安や恐れのために心が冷えわたるさまを氷にたとえる。 
心のごとく 意のままに。思う通りに。 
心の錆(さび) こころの垢(あか) 
心の猿 煩悩のために情意が乱れて落ち着かないこと。 
心の師となるとも心を師とせざれ 師が弟子を教え導くように自らの心を仏の教えに則して律すべきであり、情意のままに動かされてはならない。
心の注連(しめ) 心ではいらせまいと思うこと。立ち入り禁止の心づもり。身を慎んで心から神に祈ること。 
心の末(すえ) 心が移り行く先。将来の心の状態。 
心の杉 杉の木がまっすぐに伸びるところから、正直、誠実な心のたとえ。常緑樹であるところから、ひたむきな変わらない心のたとえ。 
心の直(すぐ)にない者 心の正しくない者。盗み、かたりなどを働く悪者。 
心のすさび 気持のおもむくままに事をすること。興に乗じた物好き。気まぐれ。 
心の筋(すじ) 判断や考え方の中に一貫して通っている条理。考えのすじみち。 
心の勢(せい) 心のいきおい。心の有様。 
心の関(せき) 思うことが通されず滞ることを関所にたとえる。心の中で相手の行動をせきとめようと思うことを、関所にたとえる。人に対して心を許さないことを関所を設けて守るのにたとえる。警戒心。
心の底 心の奥深いところ。うわべからはわからない本当の心。本心。心底。 
心の空 心を晴れたり曇ったりする空にたとえる。心の中。心もそぞろになる意の「空」をかけた表現。気持のゆとり。心の暇。 
心の丈(たけ) 心の深さ。心のありったけ。思うことのすべて。 
心の竹 実直な心を竹のまっすぐなさまにたとえる。 
心の種 心を植物の種子にたとえ、言葉の「葉」と対応させたもの。詩歌、詞の生じるもと。心が展開するもとになるものを、草木の種にたとえる。心に悩みを生じさせるもと。 
心の塵(ちり) 悩みのために千々にくだけた気持を比喩的に表現。心についた汚れ。煩悩。雑念。 
心の使い 筆の異称。 
心の月 悟りを開いた心や邪心のない清い心を明月の清く澄むさまにたとえる。 
心の綱(つな) 情にほだされて心がままにならないこと。思いの綱。思いのきずな。 
心の角 邪悪な心。
心の端(つま) 思いの生じる種。心のよすが。気持が外に表われ出た一端。気持のはし。 
心の露 悲しみのあまり心中に流す涙を露にたとえる。 
心の剣(つるぎ) 自分や他人を傷つけ破滅させる心。害意を剣にたとえる。 
心の留(と)まり 愛情が他に移らないでそそがれているところ。心の落ち着きどころ。 
心の友 心の通じあっている友。自分の心をよく理解してくれる友。知己。心を慰めてくれる対象物。 
心の做(な)し 先入観などがそのように思わせること。気のせい。 
心の濁り 心のけがれ。煩悩。邪念。心の垢。心の塵。 
心の蓮 人が生来持っている清らかな心を、蓮の花にたとえる。 
心の果(は)て 心の落ち着くところ。思いの極まるところ。
心の花 変わりやすい人の心を花の移ろいやすいことにたとえる。多く愛情についていう。あだごころ。浮かれ心。美しい心を花にたとえる。風情を解する心。 
心の林 心をはやし立て勇気づけるもの。心を励まし力づける材料。 
心の針 心の中にいだく害意。とげとげしい気持。 
心の春 春のようにのどかな心。うきうきした気持。 
心の引き引き 思い思いに。好みにまかせて。心の向き向き。 
心の暇 心が安らかで静かな時。物思いのない時。心のゆとり。心のいとま。 
心の紐 心を締めくくる紐。油断をしないで気を引き締めるたとえ。 
心延(の)ぶ 心のどかになる。気持がのんびりする。 
心の蓋(ふた) 本心をおおい隠すもの。
心の外(ほか) 自分の望むとおりにならないこと。不本意なこと。期待に反すること。思いのほか。思いがけないこと。意外なこと。問題にしないこと。無関心。 
心の欲(ほっ)するところに従えども矩(のり)を踰(こ)えず 自分の心に思う事をそのまま行なっても、まったく道徳の規範から外れることがない。 
心の程(ほど) 心の程度。心の有様。 
心の仏 心の本性は仏で自己の心以外に仏はない。即心是仏。 
心の松 心中に期待すること。変わらない心を松の常緑であるのにたとえる。 
心のまま 心に思う通り。心まかせ。思う存分。
心の水 心の状態を水にたとえる。清濁、深浅、動静などのさまを表わす。精液。淫水。 
心の道 心に守るべき正しい道。心の通う道。 
心の湊(みなと) 硯(すずり)の異称。 
心の紅葉 恋い焦がれる心や色めいた心を紅葉にたとえる。 
心の刃(やひば) 人に危害を与えようとする心。害意。心の剣。思いを託した刃物。 
心の宿 心がやどるところ。胸のうち。 
心の山 心を山にたとえる。積もる思いや奥深い心などのたとえに用いる。 
心の闇(やみ) 煩悩に迷う心を闇にたとえる。思い惑って理非の分別を失う。迷妄の心。 
心の行方(ゆくえ) 心の向かうところ。意向。考え。 
心の夢 煩悩に思いまどう心を夢にたとえる。 
心の蓬(よもぎ) 人の心が曲がり正直でないさまを蓬にたとえる。 
心は心として 心はさておき。思ってはみるものの一方では。 
心は小(しょう)ならんことを欲(ほっ)し志(こころざし)は大(だい)ならんことを欲す 細心綿密な思慮とともに高尚遠大な志操を持ちたいものである。胆大心小。 
心働(はたら)く 心が動揺する。心が静まらない。気がきく。才覚がある。
心は二つ身は一つ 思いはあれもこれもと双方に引かれるが、わが身は一つで思うに任せない。 
心は持(も)ちよう 心の持ち方しだいで同じ事が楽しくも苦しくもなるものだ。気は持ちよう。 
心は矢竹(やたけ) 気持がいよいよ勇み立つこと。心の中ではやってあせること。 
心引く 心が傾く。心がひきつけられる。好意を寄せる。 
心一(ひと)つ 多くあるわけではないただ一つの心。たった一つの自分の心。たった一つの心なのに思うままにならないという嘆きの意をこめて使われることが多い。人知れずひそかに自分の心の中だけで、考え、感じるさま。他人のおもわくには関わりなく、自分の考えだけに固執するさま。ひとりよがりな、独断的な態度。もっぱら、その事だけを考えること。一つのことを思いつめること。他の考え方を切り捨てて残った、たった一つの考え方。もともと二つ以上のものが一心同体になった状態。同じ趣味、目的、志向などを心に持っていること。もっぱら本人の考え方いかんにかかっているさま。その人の考え方しだい。
心開く 晴れ晴れとした気持になる。うちとける。 
心隔(へだ)つ 心と心との交流を妨げる。心に隔てをおく。うとましく思う。 
心惚(ほ)る 放心状態になる。物事に心を奪われて夢中になる。年老いてぼける。耄碌(もうろく)する。恍惚(こうこつ)となる。 
心惑(まど)う 思い乱れる。当惑する。途方に暮れる。 
心回(まわ)る 考えつく。機転がきく。 
心咽(む)す 心がふさがり詰まる。悲しみで胸がいっぱいになる。 
心も肝も 思慮も分別も。 
心も心ならず 落ち着きを失って、そわそわするさま。気が気でない。上気してわれを忘れる。うっとりする。 
心も詞(ことば)も及ばれず 思案に余り、形容のことばもない。想像もつかないし、ことばで言い尽くすこともできない。
心もしのに 心もしなうばかりに。心もぐったりして。 
心も空 気もそぞろであること。放心状態であること。うわのそら。 
心以(も)て そういう性質を持っていて。自分の意志で。自発的に。 
心燃(も)ゆ 感情がたかぶる。居たたまれない気持になる。胸が一杯になる。 
心焼(や)く 心を乱す。胸を焦がす。思い焦がれる。心が燃える。 
心病(や)む 平静でいられないで、心を痛める。思い悩む。恨む。怒る。ねたむ。 
心ゆ 心から。本気に。心底から。
心行(ゆ)く 思う心が相手に届く。ふさいでいた気持が晴れて、満足する。念願を達して心が晴れ晴れする。 
心より 自分の心がもとで。自分の考えで。思いなしから。心によって。以心伝心。 
心より外(ほか) 思いもかけないさま。思いも及ばないさま。意外なさま。意に満たないさま。不本意なさま。 
心寄る 心がひかれる。心がその方になびき傾く。 
心を洗う 心のけがれをすすぎ清める。すがすがしい気持にする。 
心を改(あらた)む 志を変える。心を入れ替える。改心する。 
心を合わせる 同意する。合意する。納得する。しめし合わせる。共謀する。協力する。心を同じくする。 
心を致(いた)す 心をこめる。心を尽くす。深く心を入れる。 
心を痛める どうなるか、どうしたらよいかとさまざまに心をなやます。 
心を一(いつ)にす 気をそろえる。協力する。 
心を入れ替える それまでの考え方や精神をあらためる。魂を入れかえる。改心する。 
心を入れる その事に心を打ちこむ。専念する。熱中する。
心を得(う) 意味を理解する。会得する。事情をさとる。それと気付く。心得る。精通する。 
心を動かす 心を乱す。心を動揺させる。気をもむ。感動する。心を打たれる。説得などして相手の気を変える。 
心を移す 注意を向ける。心がひかれる。気を取られる。愛情を他の者へ移す。 
心を奪う 人の心をひきつける。魅了する。 
心を置(お)く 心にかける。配慮する。念頭に置いて事をする。心をあとに残す。執着する。執心する。自分に気がひけるようなことがあったりして、改まった態度をとる。遠慮する。気がねする。相手に対してわだかまりの気持や警戒する気持を抱く。 
心を起こす 精神を奮い起こす。心を励ます。気をとりなおす。発心する。信仰心を起こす。 
心を鬼にする 気の毒に思いながら、わざとつれなくする。情にほだされながら非情にふるまう。 
心を思う 心を持つ。気持をいだく。心に思う。
心を反(かえ)す 考えを変えさせる。翻意する。 
心を掛(か)ける 心を留める。注意する。思いを寄せる。恋い慕う。信仰する。祈願する。 
心を固(かた)む 心構えをする。決心を固める。 
心を傾ける 心を集中させる。心を尽くす。心を打ちこむ。心を寄せる。他人の権勢などになびく。 
心を通わす 互いに心を通じる。気脈を通じる。注意を行きわたらせる。 
心を交(か)わす 互いに心を通じあう。思い合う。合意する。 
心を利(き)かす 気をつかう。気を配る。心をはたらかせる。 
心を砕く 気をもむ。心配する。気を配る。苦心する。真心を尽くす。 
心を配る 気をつける。配慮する。気を配る。 
心を汲む 相手の心中を思いやる。気持を察する。斟酌(しんしゃく)する。 
心を暗(くら)す 心を暗くさせる。心を曇らせる。悲しい気持にする。
心を呉(く)る 気を許す。油断する。 
心を消(け)つ 気を落とす。 
心を焦がす 心を苦しめる。思いわずらわせる。 
心を粉(こ)に いろいろと苦心する。心を砕く。 
心を込める 心の丈(たけ)を託す。真心を込める。 
心を凝らす 工夫(くふう)する。一心になる。気を詰める。 
心を殺す 心を押える。耐え忍ぶ。 
心を定める 決心する。心にきめる。覚悟する。 
心を染(し)む 心に染みつく。深く心を寄せる。愛着する。
心を締(し)める 気を引き締める。油断なく気をくばる。 
心を知る 相手の気持を推しはかる。気心がわかる。物の道理を知る。事情がわかる。情趣を解する。 
心を添(そ)う 真心をこめる。特に、熱意や好意を相手に対して抱く。気を配る。 
心を染(そ)む 思いをかける。心を深く寄せる。恋慕する。 
心を空に われを忘れて。夢中で。 
心を剃(そ)る 真心から発心(ほっしん)する。 
心を倒す 気力を失う。気を腐らせる。卑屈になる。 
心を立つ 発奮する。志を立てる。また、自分の意志を押し通す。我を張る。 
心を散らす 気を散らせる。種々に思いを馳せて落ち着かない。 
心を使う 心を持つ。考えを起こす。心をいだく。気を配る。心配する。
心を付(つ)く 思いをかける。心を寄せる。執着する。考えを持つようにさせる。物思う心をいだかせる。感慨を催させる。正気づく。われに帰る。元気を出す。気をくばる。気をつける。また、気をつけさせる。 
心を尽くす 真心を込める。精魂を傾ける。工夫(くふう)を凝らす。精根を使い果たす。神経をすり減らす。さまざまに心を痛める。気をもむ。 
心を留める 気をつける。注意する。心を寄せる。愛着を感じる。気に入る。 
心を調(とな)う 心を澄ます。心を集中する。気をしずめる。 
心を取(と)る 人の気持を察する。機嫌をとる。取り入る。 
心を延(の)ぶ 心をのびのびとさせる。気持をやわらげる。心を慰める。安堵する。気持を整える。気を取りなおす。 
心を馳(は)す はるか遠くの人、場所のことを思う。思いをはせる。 
心を引く それとなく相手の心をためす。気を引く。興味をひく。関心を持つ。
心を翻(ひるがえ)す 従来の心掛けを改める。改心する。心を入れ替える。反対の方へ心を向ける。心変わりする。決意を変える。変心する。 
心を回(まわ)す 思案を巡らす。趣向をこらす。 
心を見る 人の本心を試す。こころみる。 
心を虚(むな)しくする 無心になる。心にわだかまりを持たない。我執を去る。 
心を用いる 気をくばる。注意を払う。配慮する。 
心を持つ 自覚する。心を保つ。心をくばる。 
心を以て心に伝う 「以心伝心」の訓読み。 
心を揉(も)む やきもきする。心配する。気をもむ。 
心を遣(や)る 心に滞るものを他におしやる。心のうさを晴らす。心を慰める。思うままにふるまう。得意げにふるまう。思いを馳せる。考えを及ぼす。思いやる。
心を行(ゆ)かす 満足できるようにする。気を晴らす。満足する。 
心を許す 心の緊張をゆるめて人にうちとける。納得する。特に愛情を受け入れる。心の緊張をゆるめて必要な注意を怠る。気を許す。油断する。 
心を寄(よ)す ある方へ気持を片寄らせる。思いをかける。好意を寄せる。味方をする。専心する。傾倒する。心を砕く。 
心を別(わ)く 心を二分する。愛情を他のものにも及ぼす。よくわきまえて判断する。弁別する。
   
【気】

 

変化、流動する自然現象。または、その自然現象を起こす本体。 
風雨、寒暑など、天地間に現われる自然現象。 
陰暦で一年を二四分した一期、一五日をいう。「二十四気」 
万物を生育する天地の精。天地にみなぎっている元気。 
空気。大気。 
雲、霧、煙などのように、上昇する気体。 
そのもの特有の味わい、かおり。香気。  
生命、精神、心の動きなどについていう。自然の気と関係があると考えられていた。 
いき。呼吸。「気のつまりそうな雰囲気」 
精気。生活力。 
心のはたらき。意識。「気が狂う」 
精神の傾向。気だて。気ごころ。 
緊張した、さかんな精神。気力。気勢。「気がはやる」 
何事かをしようとする心のはたらき。つもり。考え。意志。「死ぬ気になって働く」 
あれこれと考える心。心配。「気が晴れる」 
感情。気持。気分。 
根気。気根。 
興味、関心。また、人を恋い慕う気持。 
取引所で気配(きはい)の事。人気。「気崩れ」「気直る」
気が合う 気持が通じあう。気分が互いに一致する。 
気がある 関心がある。心がかたむく。恋心をいだいている。 
気がいい 気持がすなおである。気立がいい。また、気前がいい。気が良い。 
気が多い 心が定まらないで、移り気であるさま。いろいろな物事に興味をもつさま。うわきであるさま。 
気が大きい 細かなことなど気にかけないで、心が広い。 
気が置(お)ける 何となくうちとけられない。遠慮される。 
気が重い 物事をするのに気が進まないさま。おっくうなさま。「気が重い任務」 
気が勝つ 気性が強い。勝ち気である。「気の勝った娘」 
気が軽い 容易に物事にうちとけてふるまうことができるさま。気がおけない。気さくである。 
気が利(き)いて間(ま)が抜ける 気をきかせすぎて、かえって手落ちのところがある。機敏でありながら不注意なところがある。
気が利(き)く 物事をするのに細かなところまでよく気がつく。心が行きとどく。気転がきく。しゃれている。いきである。おつである。 
気が気でない ひどく気がかりである。気にかかって心が落ち着かない。 
気が腐る 思うようにならないで心がはれない。いやになる。くさる。 
気が暗くなる 気がめいる。沈んだ気持になる。陰気になる。気が遠くなる。ぼんやりとなってくる。うっとりする。 
気が差(さ)す なんとなく気になる。うしろめたい感じになる。気がとがめる。 
気が沈む 心がはれない。気分がふさぐ。 
気が知れない こちらに相手の気持がわからない。わけがわからない。
気が進まない 何かの刺激を受けても、気分がひかれない。気乗りがしない。 
気が済む 気持がおさまる。気分が落ち着く。満足する。 
気が急(せ)く 物事を早く実行したくて心が落ち着かない。心がせわしい。気があせる。 
気が立つ 心がいらだつ。興奮する。 
気が小さい 小さなことを気にする。小心である。 
気が違う 気が狂う。狂気になる。 
気が散る 気持が一つに集中しないで、いろいろなことに心がひかれる。注意が散漫になる。 
気が尽(つ)きる 気力がなくなる。精根が尽きる。根気がなくなる。元気がなくなる。気分がくさくさする。退屈する。気疲れがする。気づまりがする。 
気が付く 考えつく。心づく。気づく。かんづく。細かなところに注意が行きわたる。よく気がまわる。配慮が行きとどく。息を吹きかえす。正気にかえる。元気が出る。 
気が詰(つ)まる 気持が圧迫されるように感じる。きゅうくつに思う。気づまりに感じる。憂鬱になる。
気が遠くなる 意識を失う。正気を失う。 
気が通(とお)る よく物事の事情を承知していて、心がゆきとどいている。気がきく。さばけている。粋である。 
気が咎(とが)める 心の中にやましさを感じる。何となく気おくれがする。気が差す。 
気が無い 気がすすまない。乗り気でない。気にいらない。「気がない返事」 
気が長い 気持がのんびりしていて、せかせかしない。気長である。 
気が抜(ぬ)ける 魂が体から抜ける。ぼんやりする。正気を失う。やる気がなくなる。拍子ぬけがする。本来の香り、匂い、味などがなくなる。 
気が上る のぼせる。上気する。精神の安定を失う。正気でなくなる。逆上する。気が狂う。 
気が乗る 興味を感じる。乗り気になる。
気が早い 性急である。せっかちである。気短である。 
気が張る 心が緊張する。気持にゆとりがない。精神が興奮する。気張る。見栄を張る。気張る。 
気が引ける 身にやましい感じがして気おくれがする。遠慮される。気がとがめる。 
気がふさぐ 気分が重くはれない。憂鬱になる。 
気が触(ふ)れる 気が狂う。狂人になる。心が動く。気の迷いが起こる。 
気が減(へ)る 気疲れする。はらはらする。 
気が細(ほそ)い 気が小さい。線が細い。 
気が回る いろいろと推測する。ひがんで悪く考える。邪推する。細かなところに気がつく。注意が行きとどく。 
気が短い 短気である。せっかちだ。
気が向く 気持があることに傾く。あることをする気持になる。関心がわく。 
気が滅入る 考えこんで憂鬱な気分になる。意気消沈する。「暗い世相に気が滅入る」 
気が戻る 何かしようとする気持がそがれる。気が変わる。 
気が揉(も)める 心配で気持が落ち着かない。もどかしくいらいらする。やきもきする。 
気が良い 気持が良い。快い。愉快だ。 
気が悪い 気分が悪い。快くない。気味が悪い。気が重い。憂鬱である。意地が悪い。欲望をかきたてられるような情景や物を見たり聞いたりして、その気分になりそうである。 
気で気を病む 必要でもないことに悩んで自ら苦しむ。 
気で食う 自分で自分の心をおさえる。気をもち直して事をする。こらえる。
気に合う 心にかなう。気にいる。「着物の柄が気に合わない」 
気に入る 心にかなう。満足する。好きになる。きげんをとる。とりいる。あやす。 
気に掛(か)かる 心配になる。気になって忘れられない。 
気に掛(か)ける 心配する。懸念する。こだわって忘れない。 
気に食わない 心に合わない。いやに思う。 
気に障(さわ)る 心中おもしろくなく感じる。しゃくにさわる。腹が立つ。 
気にする 心配する。懸念する。気にかける。 
気に染(そ)む 気にいる。心にかなう。 
気にとめる 心にとどめておく。留意する。また、こだわって忘れないでいる。 
気になる 心配に思う。心にひっかかる。気にかかる。その気持になる。 
気に向(む)く 望みにあう。心にかなう。気にそむ。 
気に病む 心にかけていろいろ心配する。苦労に思う。
気のかた 気がふさいで生ずる神経症。気鬱(きうつ)症。江戸時代には労咳に結びつけて考えられていた。 
気の薬 心のなぐさめになるもの。おもしろいこと。 
気の所為(せい) 実際には存在しない現象を見聞きしたり、理由のない感情を持ったりするなど、原因が自分の心の持ち方にあること。 
気の尽(つ)き 精根がつきること。気分がくさくさすること。 
気の病 精神の疲れなどから起こる病気。気やみ。 
気は心 わずかでも気のすむようにすれば心も落ち着くこと。量は少なくとも誠意の一端を示すこと。贈物などをする時に用いる。
気もそぞろ 心が落ち着かないこと。そわそわするさま。 
気世を蓋(おお)う 気がまえが雄大で、天下に知れわたる。意気さかんなようす。蓋世(がいせい)。 
気を入れる 気をつかう。気にする。心配する。気がせく。あせる。気合を入れる。元気づける。 
気を失う しようとする意欲をなくす。気落ちがする。気を取り失う。意識をなくす。失神する。 
気を移す 気を他に移す。気持を変える。心を向ける。 
気を置く 相手の気持を気づかう。遠慮する。気を休める。ほっとする。 
気を落とす 元気をなくす。失望する。気落ちする。 
気を変える 考えを変える。思いなおす。気分転換する。 
気を兼(か)ねる 他人に対して気をつかう。気がねをする。 
気を利かせる 相手の立場や周囲の状況に応じてそれにふさわしいように心をはたらかす。気がきくようにする。
気を挫(くじ)く 気力をなくさせる。意気ごみを失わせる。意気消沈させる。 
気を砕く いろいろと心配する。心を砕く。 
気を配る 注意を向ける。気をつける。気を使う。「あたりに気を配る」 
気を嗜(たしな)む かたく覚悟する。強くこころがける。 
気を尽くす 精を出す。物に凝る。趣向をこらす。気苦労をする。気力を使いはたす。気疲れする。 
気を付ける 気づかせる。思い出させる。注意力をはたらかせる。意識を回復させる。正気にさせる。元気をとりもどす。景気づける。 
気を詰める 精神を集中する。一心になる。気がねをする。遠慮をする。気詰まりする。 
気をとめる 特別に注意をはらう。注意を向ける。
気を取(と)られる 魂を奪われる。けどられる。注意を奪われる。 
気を取(と)り直(なお)す 失意の状態からぬけでる。思い直して元気になる。 
気を取る 相手の注意を向けさせる。気を引く。気に入るように振舞う。機嫌をとる。気に入る。好都合である。 
気を抜く びっくりさせる。肝をぬく。疲れた神経をほぐす。いきぬきをする。 
気を呑む じっと息をころす。かたずをのむ。気持の上で相手を威圧する。 
気を吐(は)く 威勢のいいことばを発する。または、意気を示す。「一人気を吐く」 
気を晴らす ふさいだ気持を発散する。憂いを晴らす。 
気を張る 心を緊張させる。気持をひきしめる。奮発する。きばる。 
気を引く それとなく相手の気持を探る。さそいをかけて相手の心を引く。 
気を触(ふ)る 注意を他に向ける。気を取られる。気にさわる。怒る。
気を回す いろいろとよけいなところまで、心をはたらかせる。邪推や、あて推量をする。 
気を持たす それとなくそそのかして、相手にやる気や期待する気持を起こさせる。 
気を持つ ある気持をいだく、乗り気になる。気持をある方向に持っていく。そのように考えるようにする。 
気を揉(も)む あれこれ心配する。やきもきする。 
気を許す 警戒心や緊張をなくしたり、ゆるめたりする。 
気を能(よ)くする 気持を快適にする。気分をすっきりさせる。また情況が都合よくいくなどして調子づく。「評判に気をよくする」 
気を悪くする 感情を傷つける。いやな気持になる。
   
【胸】

 

一般に頭部と腹部の間の部分。脊椎動物では胴部の前部で前肢があり肋骨で囲まれた部分。胸部。 心臓。ま肺臓。時に、胃をさしていうこともある。「胸が高鳴る」「胸をやられる」「胸が焼ける」 
ふところ。懐中。人の心。人の感情や性質、気持、考え。「胸に秘める(描く)」
胸開(あ)く 心が晴れる。心配事などの心の重荷がなくなる。 
胸が痛む 心に苦痛を感じる。心痛する。悩む。 
胸が一杯になる 悲哀・歓喜・感動などで心が満たされる。感極まる。 
胸が躍る 期待・興奮などで浮き浮きして落ち着かなくなる。胸がわくわくする。 
胸が裂(さ)ける 悲しみ、苦しみ、憎しみ、くやしさなどが大きくて、胸が裂けるような苦痛を感じる。 
胸が騒ぐ 心が動揺する。むなさわぎがする。 
胸がすく 気分がさわやかになる。胸のつかえがとれる。溜飲がさがる。 
胸が狭い 心が狭い。度量が小さい。 
胸がつかえる 心配事などがあって心が平静でなくなる。 
胸が潰(つぶ)れる 悲しみや心配事で心が強くしめつけられるように感じる。むなさわぎを感じてどきりとする。 
胸が轟(とどろ)く 胸がどきどきする。心がときめく。また、むなさわぎがする。 
胸が焼ける 胃に熱があるように感じる。胸焼けがする。 
胸が悪い 癪にさわる。むかむかとして腹立たしい。胸糞が悪い。性質がよくない。たちが悪い。
胸焦(こ)がる 心でもだえ苦しんで、胸が熱くなるように感じる。 
胸潰(つぶ)らわし あぶなくて胸がつぶれそうである。胸がどきどきするようである。 
胸に当たる 心に思いあたる。心に強く感じる。 
胸に一物(いちもつ) 心中にわだかまりがあること。心の中にひそかに期するところがあること。 
胸に納(おさ)める 口に出して言わないで、心の中にしまいこんでおく。 
胸に聞く 心の中でよく考える。心の中を振り返って確かめる。「自分の胸によく聞いてみればいい」 
胸に釘打つ 胸に釘を打たれたように心の急所に当たって、痛切に感ずる。心中の弱点を突かれて心痛する。 
胸に応える 身にしみて感じる。いっそう痛切に感じ入る。 
胸に迫る いろいろの思いが胸に満ちていっぱいになる。
胸に手を置く 心を静め、落ち着いて考えるために両手を胸にあてがう。よく思案する。胸に手を当てる。息苦しい思いにたとえる。 
胸に鑢(やすり)を掛(か)く ひどく苦悩する。心を痛切に悩ませる。 
胸の霧 心配事などで心の晴れないさまのたとえ。胸にあるわだかまり。心の霧。 
胸の煙 胸の火が燃えるときに出る煙の意で、胸の中の思い。また、その思いが十分にかなえられないさま。 
胸の関(せき) 恋慕、煩悶(はんもん)などで、胸のふさがっているさま。心の関。 
胸の月 悟りを開いた心を清く澄む月にたとえる。心が清いさま。心の月。 
胸の火[炎(ほのお)・焔(ほむら)] 胸に燃える思い。恋慕や嫉妬などで燃えたつ心を火にたとえる。 
胸の隙(ひま)開(あ)く 心が晴れやかになる。胸あく。 
胸の病(やまい) 胸部の疾患。転じて、心を悩ます病。恋の病など。 
胸走(ばし)る むなさわぎがする。やきもきする。心さわぐ。
胸塞(ふた)がる 胸がいっぱいになる。心苦しさに胸がつまるように感じられる。 
胸を痛める ひどく心配する。 
胸を打つ 自分の胸をたたいて嘆き悲しむ気持を表現する。驚く。感嘆する。感動させられる。心をうつ。 
胸を躍らす 喜びや期待、また、不安などで胸をわくわくさせる。 
胸を貸す 相撲で上位の者が下位の者の稽古の相手をしてやる。 
胸を焦がす ひどく思いわずらう。思いこがれる。 
胸をつく 急の事態に驚いてどきっとする。はっとする。と胸をつく。いろいろの思いが胸をいっぱいにする。心配の思いが急につのる。気がかりになる。坂や山道などの勾配が急である。 
胸を撫(な)でおろす 気持をおししずめる。心配事が解消して、ほっと安堵する。安心する。 
胸を冷やす おそれや危険を感じてぞっとする。きもをひやす。 
胸を膨(ふく)らます 期待や喜びなどが心中に満ちあふれる。「希望に胸を膨らます」 
胸を病む 胸部の病気をわずらう。肺結核をわずらうことをいう。
   
【思】(おもい・おもひ)

 

物事を理解したり感受したりするときの心の働き。 
ある事について、こうだと考えること。また、その内容。思慮。所存。 
こうなるだろうという予想や想像。また、こうだろうという推量。 
過ぎてきたことをふりかえって心に浮かべること。回想。追憶。 
物事から自然に受ける感じ。感慨。また、ある気持をいだかせるような体験。 
ある対象に強く向けられる心の働き。 
こうしたいという願い。希望。また、こうしようという決意。 
あれこれと心を悩ますこと。心配。物思い。また、嘆き悲しむ気持。 
恋しく慕わしく感じること。また、その気持。いとしい気持。思慕の情。 
大切にすること。また、そういう気持の強いさま。 
にくらしい、うらめしいと強く感じること。また、その気持。うらみ。執念。 
いやな、つらい気持になること。
思内にあれば色外(そと・ほか)に現わる 心の中に思っていることがあると、それが自然に顔色や動作に現われる。 
思い半ばに過(す)ぐ 考えてみて思い当たることが多い。おおよそは推測できる。 
思いの家 迷いに苦しめられるこの世。火宅。 
思いの色 緋色。心に思っていることが表情にあらわれること。心に思っているようす。 
思いの霞(かすみ) 思いの晴れないのを霞にたとえた表現。 
思いの絆 情につながれて逃れることのできないこと。心のほだし。思いの綱。 
思いの句 連歌の付句の一形式。前句の意味を反対、あるいは別の意味に取り成して付ける句。一種の取り成し句。 
思いの煙 人をはげしく思いこがれるのを、火をたくのにたとえた表現。 
思いの丈 思いのすべて。思慕や愛情のすべて。「思いの丈をつづる」 
思いの種 心配、苦労、嘆きなどを起こす原因、もと。 
思いの珠(たま) (念珠(ねんず)の訓読み)数珠(じゅず)。 
思いの露(つゆ) 人を思慕する気持からこぼれる涙を露にたとえた表現。人の思想、感情などのさまざまなあらわれを露にたとえた表現。 
思いの火 悲しみや思慕で燃えたつ心を火にたとえた表現。 
思いの淵(ふち) 深い思い。多く激しい悲しみや愛情に関していう。「思いの淵に沈む」
思いの外(ほか) 思いがけないこと。意外。思いがけず。案外にも。 
思いのまま 物事の進行が思う通りであるさま。思いどおり。 
思いの道 物思いの深く続くことを道にたとえる。 
思いの山 積もる思いを山にたとえる。 
思いの闇 思いの心がつのり思慮分別を失うこと。おもに、子を思う心にいう。 
思い邪(よこしま)なし 私心なく公平である。思うことをそのままいいあらわして飾らない。 
思いを致(いた)す 考えを及ぼす。 
思いを掛(か)ける 執着する。執心する。思慕の情を向ける。心配をさせる。 
思いを遂(と)げる 望むことをやりとげる。願っていたことを果たす。 
思いを馳(は)せる 遠く離れているものに自分の気持を向ける。思いやる。 
思いを晴(は)らす 胸に積もっていた不満な気持を散らし消す。 
思いを潜(ひそ)める 心の内に深く考える 
思いを遣(や)る 不満な気持を慰める。 
思いを寄せる あるものに自分の気持を向ける。
   
【志】(こころざし)

 

心中で、こうしよう、ああしようと思う心の働き。心が、ある方向を目ざすこと。 
ある方向に向いている心の働き。しようと思う気持。意向。 
高潔で、むやみに変わることのない気持。高尚な精神。志操。 
目的をはっきりとさだめ、その実現のために努力しようとする気持。 
信心や芸道をめざす気持のあついこと。信仰、修行の方面でつとめはげむこと。 
相手に好意を寄せる心の働き。 
相手に寄せる好意。相手のためになるような計らい。厚意。親切。配慮。 
ある特定の人に対して抱く恋情。愛人をしたう気持。 
親子兄弟など肉親の間の情愛。親子の情。 
先方の厚意を感謝する気持。お礼の気持。 
死んだ人を悲しみ痛む気持。 
性質。人柄を表わすような心の働き。 
死者への追善供養。冥福を祈るための仏事。 
気持を表わすための金品。 
謝意や好意を表わすために贈ったり奉納したりする金品。お礼の品。 
故人の追善供養のための金品。喜捨。布施(ふせ)。
志合えば胡越(こえつ)も昆弟(こんてい)たり 志が合えば他人同士でも兄弟のように親しくなれる。 
志の命日 死者の供養をする日。法事をいとなむ日。こころざす日。 
志は髪(かみ)の筋 どんなにわずかな物でも、それをくれた人の真心がこもっているなら、ありがたく感じられるの意。 
志は木(き・こ)の葉に包め ごくわずかな物でも、贈り主の真心がこもっているならりっぱな贈り物である。 
志を得る 目ざしていた地位、職業などを得る。 
志を立てる ある目的を実現しようという気持を確立する。 
志を遂(と)げる 心に決めた目的を成し遂げる。心中にめざしたことを成し終える。
   
【魂・魄】(たましい・たましひ)

 

人間、さらにはひろく動物・植物などに宿り、心のはたらきをつかさどり、生命を与えている原理そのものと考えられているもの。身体を離れて存在し、また、身体が滅びた後も存在すると考えられることも多い。霊魂。「死者の魂」 
人だま。死者の霊魂が、夜など、光りながら飛ぶといわれるもの。また、それをかたどった歌舞伎芝居の小道具。 
心のはたらき。精神。思慮分別。才覚。「一寸の虫にも五分の魂」「魂を打ちこむ」 
心の傾向、状態をいう。性質。性格。「三つ子の魂百まで」 
心の持ちかた。根性。しょうね。 
刀の異称(武士のたましい)。
魂尽(つ)く 命が絶える。死ぬ。驚きや喜びで茫然となる。 
魂分(わ)く 才覚があり、物事に分別がある。 
魂を入(い)れ替(か)える 性根(しょうね)を入れかえる。心を改める。改心する。 
魂を消(け)す 心が消えいるような思いがする。心からさびしく思う。 
魂を冷(ひ)やす 非常に驚き恐れる。肝をひやす。たましいを消す。
   
【恋】

 

人、土地、植物、季節などを思い慕うこと。慕うこと。 
異性(時には同性)に特別の愛情を感じて思い慕うこと。恋すること。恋愛。恋慕。 
和歌、連歌、俳諧などで恋愛を題材とした作品。
恋に上下の隔て無し 恋愛には身分の上下の区別はない。 
恋の歌 恋愛を主題とした歌。恋心をよんだ歌。恋歌(こいか)。 
恋の重荷(おもに) 恋愛のためにつのる堪えがたい思いを、重い荷を背負う苦しさにたとえた語。 
恋の敵(かたき) 自分の恋のじゃまをする者。 
恋の絆 恋慕の情にひかれ、離れがたいこと。 
恋の句(く) 恋愛を主題とした句。恋心を詠(よ)んだ句。 
恋の煙(けぶり) 恋いこがれる情を、物が焦げて煙るのにたとえていう語。 
恋の坂 恋の気持がだんだんと高まっていくことを坂にたとえた語。 
恋の鞘当(さやあて) (遊里で一人の傾城(けいせい)をめぐって二人の武士が鞘当する歌舞伎の題材から)恋敵同士が争うこと。
恋の関 互いに恋い慕う仲を隔て妨げること。 
恋の関守 恋を妨げる人を関所の番人にたとえた語。 
恋の大海 恋の深く広いことを大海にたとえていう語。 
恋の端(つま) 恋の手がかり。恋のきっかけ。 
恋の峠 恋の情熱が頂点に達したことをたとえていう。 
恋の仲立 恋人同士の間に立って、その恋のとりもちをすること。 
恋の慰(なぐさ) 恋する心をなぐさめること。また、そのもの。 
恋の初風 人を恋いそめる心。初恋の心。
恋の花 恋を花にたとえていう語。 
恋の淵(ふち) 恋心の深いことを淵にたとえていう語。 
恋の蛍 恋いこがれる思いを蛍の火にたとえていう語。 
恋の奴(やっこ) 奴風の遊女。恋に夢中になって心を奪われること。恋のとりこになっていること。 
恋の山 積もる恋の思いを高い山にたとえていう語。恋の山路。 
恋の病 相手を恋い慕う気持のつのるあまりに、心身が病気かかったような状態になること。恋わずらい。 
恋の山路(やまじ) 恋のなやみをけわしい山路にたとえていう語。 
恋の山には孔子(くじ)の倒れ 恋のためには、聖人すら過失を犯すことがあるの意。 
恋の闇 恋のために理性を失った状態を闇にたとえていう語。 
恋の世 恋愛の盛んな世の中。
恋の分里(わけざと) 遊里をいう。わけざと。 
恋は曲者 恋のためには心も乱れ、思いがけないことをしでかすというたとえ。 
恋は思案の外 恋は常識では律しきれない、恋のなりゆきは常識でおしはかることができないの意。 
恋はし勝ち 恋は積極的にしかけたものが勝ちで、競争相手への遠慮は無用であるの意。 
恋は盲目 (Love is blindの訳)恋は人を夢中にさせ、理性や常識を失わせるものだというたとえ。 
恋は闇 恋は人の理性を失わせるの意。また、恋の逢瀬には闇がふさわしいなどの意に転用されることがある。
   
【身】

 

人間、または他の動物のからだ。身体。肉体。 
骨、皮に対して、人間や鳥、獣、魚、貝などの肉をいう。「白身」 
その人のからだの意から転じて、その人自身。自身。特に他人に対して、自分自身をいう。「身に覚えのない罪」 
その人自身の有様、または位置。その人の立場。身の上。身のさま。「相手の身になって考える」 
その人自身が世に占める地位。その人自身の分限、程度。身分。分際。身のほど。 
命あるからだ。生命。*源氏‐御法「残り少なしと、身をおぼしたる御心のうちには」 
からだのこなし。身ぶり。恰好。また、声色などと同様に、見せ物としての身振りをもいう。 
その人に関係のある者。その人の縁者。身内。また、自分の側に属する人。味方。また、博徒、やくざの用語で、一家の者。 
容器、外殻、外観などに対してなかみをなすもの。内容。実質。 
刀剣の鞘(さや)の中におさまっている部分。刀身。「抜き身」 
容器の蓋(ふた)に対して、物をいれる側。また、昔の鏡などのように蓋つきの器物で、蓋に対して本体の方。「蓋と身」 
自称。中世、近世において男子がやや優越感をもって、自分をさしていう語。接頭語「お」「おん」を伴って相手をさしていう語。→おみ・おんみ。
身が入(い・はい)る 気が乗って一心になる。一所懸命になる。熱中する。実が入る。「仕事が身に入る」 
身が持(も)てぬ 身持や品行が悪くなる。また、身代を保てない。 
身から出た錆(さび) 自分の行為の報いとてして禍災を被る。自分の悪行の結果として自分が苦しむこと。自業自得。 
身に余(あま)る 分不相応である。過分である。また、自分の身には耐えられない。「身に余る光栄」 
身に染(し)む 骨身にしみとおる。しみじみと身に味わう。痛切に感じる。身に入る「親切が身にしみる」。寒気、冷気などが強く身に感じられる。深く心に思いこむ。心からうちこむ。 
身に付く 飲食物が自分の血肉となる。栄養になる。自分のものになる。長く自分のものとして持っている。「悪銭身につかず」 知識・技術・習慣などが自分のものとして自由にできる。熟練する。服装・態度などがしっくりと調和し似合う。「身に付いた着こなし」 
身に付(つ)ける からだにつけて持つ。所持する。着たり、はいたりする。知識・習慣・技術などを自分のものにする。ならいおぼえる。身につまされる 他人の不幸などが、わが身に引きくらべて同情される。他人のふしあわせなどが、ひとごとでなく思われる。身に当たる。
身になる その身になりかわる。和歌では多く草木の実をかけていう。親身になる。味方になる。真心をこめる。和歌では多く草木の実をかけていう。からだの血や肉になる。栄養になる。 
身のうち からだの内部。からだの一部分。「腹も身のうち」からだじゅう。からだ一面。 
身の錆(さび) (「身から出た錆」による)身に負った罪悪。 
身の後(のち) 死んだあと。死後。身後(しんご)。 
身のひし 身にふりかかる災難。また、身のまわりに鉄菱(てつびし)をまかれたように身動きのできないこと。 
身の振(ふ)り方 将来の生活に関する自分の方針、わが身の処置のしかた。「身の振り方が決まる」 
身の回(まわ)り 衣類・かぶり物・はき物など身につけるもの。日常手もとに置いたり携帯したりするもの。また、広く日常生活に必要なもの。 
身は習わし 人は習慣・環境次第でどのようにも変わるということ。
身一(ひと)つ 自分のからだ一つ。自分一人。「身一つで上京する」 からだが一つであること。 
身二(ふた)つになる 妊婦が子どもを産む。出産する。 
身も蓋(ふた)もない 露骨すぎて、情味も含蓄もない。直接すぎて、話の続けようがない。実も蓋もない。 
身も世もあられず 自分の身のことも世間の手前も考えていられない。 
身を誤る 間違った行動をする。生き方を誤る。 
身を合(あ)わす 一体となる。一致する。合体する。 
身を入(い)れる 物事を、心をこめてする。一所懸命にする。専心する。親身になる。「勉強に身を入れる」 
身を打(う)つ 身を滅ぼす。耽溺(たんでき)する。 
身を売る 身代金(みのしろきん)を受け取って、芸者や遊女などになる。売春をする。
身を固(かた)める 身の守りを固くする。振舞いを固くつつしむ。身持をよくする。身なりを整える。しっかりと身じたくをする。また、武具などを身につける。結婚して家庭を持つ。また、定職につく。 
身を切(き)られる つらさや寒さなどが非常にきびしく、からだが切られるように感じる。骨身にこたえる。 
身を砕(くだ)く 力の限り骨を折って努力する。非常に苦労する。身を粉にする。一身を顧みないで仏に仕える。身を捨つ。 
身を削(けず)る 非常に苦労する。苦労や心配で身をやせさせる。骨身を削る。 
身を焦がす 思慕の情に堪え切れずもだえ苦しむ。恋い焦がれる。 
身を心ともせず 自分のからだを自分の心の通りにしない。 
身を粉(こ)にする 労苦をいとわずに、一心に努める。粉骨砕身する。 
身を殺して仁(じん)をなす (「論語‐衛霊公」による)一身を捨てて仁のために尽くす。自分の生命を犠牲にして、人道の極致を成就する。
身を沈(しず)める 水中に身を投げる。身投げする。入水する。失意の境遇に身をおく。身を沈倫(ちんりん)させる。身を落とす。身売りして、芸者・娼婦などになる。「苦界に身を沈める」 
身を知る雨 わが身の上の幸、不幸を思い知らせて降る雨。多く涙にかけていう。 
身を捨ててこそ浮かぶ瀬(せ)もあれ 一身を犠牲にするだけの覚悟があって、初めて活路を見出し、物事に成功することができる。 
身を捨(す)てる 一身を投げ出して顧みない。一身を犠牲にする。命を捨てる。身を失う。世をのがれる。出家する。 
身を立(た)てる 立身出世する。身を起こす。生活の手段とする。生活を立てる。「学問で身を立てる」身のあかしを立てる。わが身の潔白を証拠だてる。 
身を尽(つ)くす 心身の限りを尽くす。まごころを尽くす。一身をささげる。生命をかける。和歌では、多く「澪標(みおつくし)」にかけて用いる。 
身を抓(つ)む わが身の苦痛に比べて他人に同情する。自分の身に思い比べて他人の身を思いやる。
身を投(とう)じる 身を置く。物事に打ち込む。熱中する。「革命運動に身を投じる」 
身を投(な)げる 身投げをする。投身する。入水(じゅすい)する。体を投げうつようにして速く走る。ころげるように走る。身を捨てる。わが身を顧みず物事に熱中する。心を打ち込む。 
身を填(は)む 身をうちこむ。満身の愛などを注ぐ。 
身を退(ひ)く 身を後方に移す。後ろにしりぞく。これまでしてきたことと関係を断つ。遠慮してかかわらないようにする。 
身を持ち崩す 身持ちを悪くする。不品行でだらしのない生活をする。 
身を以(もっ)て 直接、自分のからだで。一身を投げうって。「身を以て手本を示す」 危く。かろうじて。やっとのことで。「身を以て難をのがれる」 
身を寄せる ある人の家に住みこんで世話になる。「知人宅に身を寄せる」 
身を分(わ)く 一つの身を二つに分ける。人のからだを分けて中へはいる。
   
【色】

 

物に当たって反射した光線が、その波長の違いで、視覚によって区別されて感じとられるもの。波長の違い(色相)以外にも、明るさ(明度)や色付きの強弱(彩度)によっても異なって感じられる。形などと共に、その物の特色を示す視覚的属性の一つ。色彩。 
その物の持っている色彩。 
ある定められた衣服の色彩。中古、階級によって定められた、衣服の色。特に、殿上人以上が着用を許された禁色(きんじき)をいう。喪服のにび色。近世、婚礼や葬儀の際、近親者が衣服の上に着用した白衣をいう忌み詞。 
物事の表面に現われて、人に何かを感じさせるもの。 
気持によって変化する顔色や表情。そぶり。 
顔だちや姿。特に美しい容姿。 
はなやかな風情。面白い趣。また、それを添えるもの。 
人情の厚いさま。外に現われる思いやりの気持。情愛。 
それらしく感じられる気配、様子。 
(声、音などの)響き。調子。 
能楽で、気持をこめて、節(ふし)と詞の中間のように謡う部分。修飾的な節まわし。 
男女の情愛に関する物事。 
中古では多く、「いろ好む」の形で、主として異性にひかれる感情、恋愛の情趣。近世は、もっぱら肉体関係を伴う恋愛。情事。 
正式の婚姻でなく通じている男女の関係。また、情事の相手。情人。情夫または情婦。 
遊女。遊里。色里。
色上がる 染物がよく染め上がって、色が鮮やかになる。色が美しく染まる。 
色揚(あ)ぐ 色のさめた布などを染めなおして美しくする。 
色有(あ)る 色のついた。美しい。おもむきがある。容色が美しい。異性をひきつける魅力がある。芸妓などの美人が多く集まって、はなやかである。愛情を通じ合う。情を交わす。 
色がさめる あせて、色が薄くなる。心変わりがする。愛情が薄れる。 
色が深(ふか)い 恋の道によく通じている。 
色濃(こ)い 色が濃い。特に、衣服の紫や紅などの色が濃い。あくどい。しつこい。濃厚だ。恋愛の経験が豊かである。恋愛の修業を積んでいる。状勢がある方向に強く傾いている。「敗戦の色が濃い」 
色添(そ)う 色がひときわ濃くなる。物事の味わいや度合が深くなる。 
色違(ちが)う 驚きや恐れで顔色が変わる。 
色と欲との二筋道(ふたすじみち) 女の容色と財産の両方を手に入れようと、二またかけて、女を誘惑すること。 
色無き風 秋風。
色に出(い)ず 心の中に思っていることや感情が、顔色やそぶりに現われる。恋心がおもてに現われる。色づく。色彩に現われる。 
色に出(い)だす 心の中に思っていることを顔色やそぶりに表わす。 
色に耽(ふけ)る 肉体的な楽しみに夢中になる。女色などにおぼれる。 
色の粉(こ) 「きなこ」をいう女房詞。 
色の白いは七難隠す 色白の女性は、少しぐらい醜い点があっても、目立たない。 
色の丸 「小豆」をいう女房詞。 
色の水 「味噌汁」をいう女房詞。 
色の物(もの) にび色のもの。喪服。醤油の異称。 
色は思案の外(ほか) 恋愛は常識で判断できない。情事はとかく分別を越えやすい。恋は思案の外。
色深し 色が濃い。色が濃く美しい。容色、容貌が美しい。愛情が深い。志が深い。色気が多い。また、色欲が強い。 
色許さる 束帯の袍(ほう)以下の装束で、公卿所用の色目(いろめ)、地質、文様の使用を許される。女房装束の唐衣(からぎぬ)以下の地質の色目に、赤色、青色の使用を許される。 
色を失う ものの色がなくなる。色が見えなくなる。驚き恐れて顔色が青くなる。意外な事態にどうしてよいかわからなくなる。 
色を売る[鬻(ひさ)ぐ] 身体を売る。売春をする。 
色を易(か)え品を易う さまざまに手を尽くす。さまざまに手段を講じる。手をかえ品をかえる。 
色を変(か)える 怒り、不安、喜びなどのために顔色を変える。 
色を損(そん)ず 不機嫌な顔色になる。機嫌を損じて顔色を変える。 
色を正す 様子をきちんと正しくする。顔つきを真剣にする。
色を作(つく)る 化粧をする。顔作りをする。髪や服装にこり、おしゃれをする。しな(科)をつくる。情人を持つ。 
色を付(つ)ける 物事の扱いで相手に温情を示す。多少の祝儀を出す、値を引く、景品を付けるなどにいう。 
色を取(と)る いろどる。彩色する。色を失わせる。顔色を青ざめさせる。 
色を直(なお)す 元気をとり戻して顔色がなおる。元気を回復する。激していた顔色をやわらげる。怒りがとける。 
色を作(な)す 顔色を変えて怒る。 
色を見て灰汁(あく)をさす むやみに事を行なわないで、時と場合に応じて適当な手段をとる。 
色を結(むす)ぶ 怒りの表情をあらわす。気色ばむ。
  
【情】(なさけ)

 

人間としての感情。人間みのある温かい心。人情。情愛。 
他にはたらきかける感情、あわれみ、思いやりなど。好意。親切。「お情にすがる」 
情趣・風流を理解する洗練された心。みやびごころ。風流心。 
ふぜい。おもむき。情趣。趣味。 
男女がひかれあう心。恋心。愛情。 
恋愛。情事。好色事。
情け後(おくる) もののあわれを知る心がうすい。情愛に乏しい。思いやりがない。 
情けが仇 思いやりがかえって悪い結果を生むこと。 
情けに刃向(はむ)かう刃(やいば)なし 情をかけられると、だれもはむかうことができない。仁者に敵なし。 
情けの兄 義理のある兄。義を結んだ兄。 
情けの糸 情に引かされることを糸にたとえていうことば。 
情けの末 情の恵みがおよぶ末端のほう。情愛のおよぶ末端。 
情けの種 人情の根源。人情のもと。腹にやどした情人の子。 
情けの露 情愛のうるおいを露にたとえていう語。 
情けの錦 美しい情愛を錦にたとえていう語。 
情けの文 情をかわす手紙。恋文(こいぶみ)。艶書。
情けの負け あわれみをかけて負けてやること。おなさけで負けてやること。 
情けの道 人情の道。また、恋の道、色の道。 
情けは人の為ならず 情を人にかけておけば、それがめぐりめぐってまた自分にも善い報いが来る。 
情けを売る 色を売る。遊女が客の心に従って身をまかす。情を人にかける。自分の利益などを考えて、人に情を施しておく。 
情けを掛ける 情を含んだことばをかける。いたわる。かわいがる。また、あわれみをかける。あわれんで助けてやる。 
情けを交わす 情愛をかわす。思いをかけ合う。愛し合う。親しみ合う。 
情けを知る 人の情のこまやかさを知る。色の道に通ずる。また、情事を経験する。

 


   
出典「マルチメディア統合辞典」マイクロソフト社
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