時和氣潤 (臨書・書譜の一部分)
    

 

   
 
   

2010/7/24


  書譜
孫過庭(7世紀頃活躍)、名は虔礼、字は過庭、河南陳留の人であるというが、一説には、名は過庭、字は虔礼、浙江富陽の人であるという。本巻に作者自ら記した題には、呉郡の人、名は過庭とある。生まれは貧しく、不惑を迎えてようやく出仕の機会を得て府録事参軍の職についたが、高潔な人柄がかえって誹謗される結果となり退官した。その後は書法の研究に専念した。
本巻の巻首題は「書譜巻上。呉郡孫過庭撰」、巻尾題は「垂拱三年写記」。書法を学んだ経験や書譜の要旨、書法を学ぶ際の基本原則などが主な内容である。一般に本巻(上巻)が「序」とされる。宋元明代の間に二巻に分割され、厳嵩の手に渡ってから一巻にまとめられた。下巻は「譜」、作者存命中に完成しなかった。
孫過庭は、専ら王羲之の草書を学び、その熟達した筆法は唐代に並ぶ者がなかった。本巻は紙、墨ともにすばらしいもので、輝きを放つかのようである。優美な文体のすぐれた書論であるのみならず、草書芸術の理想的な典範でもある。質朴さと美しい書風が融合し、運筆は中鋒と側鋒が併用され、筆先が見えたり隠れたり、たちまちにして起こされたかと思うとまた横になり、変化に富んだ運筆は観る者を飽きさせることがない。筆勢は縦横に洒脱で、「心手相忘(書き手の精神と技術が調和統一されている状態)」の域に達している。
書譜の「時和気閏」部分 / 第八紙
用多變。濟成厥美。各有攸
宜。篆尚婉而通。隸欲精而
密。草貴■■流而暢。章務
檢而便。然後凜之以風神。溫
之以妍潤。鼓之以枯勁。和之以
閑雅。故可達其情性。形其
哀樂。驗燥濕之殊節。千古
依然。體老壯之異時。百齡俄
■■■■■■。嗟乎。
不入其門。詎窺其奧者也。又
一時而書有乖有合。合則流媚。
乖則雕疎。略言其由。各有
其五。神怡務閑一合也。感
徇知二合也。時和氣潤
三合也。紙墨相發四合也。偶
然欲書五合也。心遽體

書譜の臨書・伝/空海