江南旅情 / 祖詠

  楚山不可極
  歸路但蕭條
  海色晴看雨
  江聲夜聽潮
  劍留南斗近
  書寄北風遙
  爲報空潭橘
  無媒寄洛橋 

   江南こうなん旅情りょじょう
  楚山そざん 極きわむ可べからず
  帰路きろ 但ただ蕭条しょうじょうたり
  海色かいしょく 晴はれて雨あめを看み
  江声こうせい 夜よる 潮うしおを聴きく
  剣けんは南斗なんとに留とどまりて近ちかく
  書しょは北風ほくふうに寄よせて遥はるかなり
  為ために報ほうず 空潭くうたんの橘きつ
  洛橋らくきょうに寄よせんに媒なかだち無なし

 

 

   
 
   

2010/4/25

 

剣留南斗近 / 晋の張華が南斗の付近に紫の気がただようのを見て、雷煥らいかんという占星術の名人に占ってもらったところ、宝剣の精気が天までとどいているのだと答えた。そこで宝剣があるという予章郡の豊城県を探し、名剣を手に入れたという『晋書』巻三十六、張華伝にみえる故事をふまえている。