経営を忘れた 家電 「ものづくり」

日本製造業の文化 「ものづくり」  

良いものを作れば売れ
「ものづくり」 に磨きがかかりました
反面 経営力は曇り低下しました

シャープは買収され
東芝はじめ家電業界 先行き不透明


 

 
  
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ものづくり」
日本の製造業と、その精神性や歴史を表す言葉である。1990年代後半から企業やマスメディアの間でさかんに使われるようになった。現在の日本の製造業の繁栄は、日本の伝統文化、固有文化に源を発するという史観である。
 
 
 
 

 


 
2017/3
 
 
 

 

 
 
東芝の迷走、何が起きたのか 2017/2
日本の電機大手、東芝の状況は、悪化の一途をたどっている。東芝は14日、2016年4〜12月期に米原子力事業の損失7000億円前後を計上すると発表した。
同社をめぐる混乱が続いた14日、志賀重範会長が取締役と代表執行役から退任することが明らかになり、決算発表は1カ月延期された。そのため3月14日が注目の日となる。
しかし、東芝の年度決算は間違いなく赤字になる。これは疑いようがない。
東芝は資金確保のため、分社化予定のNAND型フラッシュメモリー事業について、外部出資を過半にするよう検討していると明らかにした。
2015年の利益水増し発覚が、相次ぐ問題の発端だった。
何が問題だったのか
多くの人は依然として、東芝を電機メーカーとしてみているが、事業の柱は別の分野に移っている。例えば、海外市場向けのテレビの製造からは撤退しているし、白物家電事業は赤字だ。
東芝は現在、非常に多角化したコングロマリット(複合企業体)だ。最近の一連の問題は、売り上げの約3割を占める原子力事業で出来した。
東芝は昨年12月、米国の原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)による取引から、巨額損失が発生すると発表した。
WHは2015年に、米原発建設会社「CB&I ストーン・アンド・ウェブスター」をシカゴ・ブリッジ・アンド・アイロン(CB&I)から買収した。しかし、買収後に資産が当初の評価を下回っていることが判明したほか、未払い金をめぐって他社と争っていることが分かった。
東芝はさらに、CB&Iの人員の「非効率性」など、費用の押し上げ要因があったと明らかにしている。
では今後はどうなる?
東芝は、別の主力事業が救い主となるのを期待している。スマートフォンやパソコン向けの半導体メモリー事業だ。事業価値は90〜130億ドル(約1兆300億〜1兆5000億円)とみられる。
東芝は韓国のサムスン電子に次ぐ世界第2位の半導体メーカーだ。
東芝は先月27日、NAND型フラッシュメモリー事業の分社化計画を発表。外部からの出資を受け入れることで原発事業の損失埋め合わせの資金を調達する考えを示した。
当初は出資比率を約2割にする予定だったが、状況があまりに悪化したため、より高い出資比率を認めざるを得なくなった。
2割の出資で調達額は20億ドル以上になるが、現在の困難な状況を切り抜けるのには十分ではない。さらに、出資交渉で相手先は安く買い叩こうとするだろう。
出資者の候補として、日本政策投資銀行の名前が挙がっているほか、業界ライバルのキャノンや米半導体大手ウエスタンデジタルも関心を示していると言われる。韓国のSKハイニックスからの出資も取りざたされている。
東芝が最後に好調事業を売却したのは、そう昔のことではない。東芝は2016年に、MRI(磁気共鳴画像装置)や超音波診断システム、X線画像診断システムを手掛ける東芝メディカルシステムズを、キャノンに6600億円余りで売却した。
東芝の評価にはどう響くのか
東芝の誰かが計算を間違ったのか、もしくは原子力事業の問題がいかに深刻かを認識できていなかったようだ。そしてどちらにしても、経営陣の失態であることには変わりない。
これに決算発表をめぐる騒ぎが加わったわけだ。発表は14日正午の予定に間に合わず、1カ月後に変更。ウェスチングハウスの経営者が社内で不適切な圧力をかけた疑いについて調査する必要があるからだと、理由をそのように説明した。
しかし、数時間後には監査法人の承認を得ていない決算見通しを公表した上で、正式な発表は1カ月後になると述べた。
こうした諸問題は、2015年に利益水増し発覚で当時の田中久雄社長が辞任に追い込まれたことも、まだ尾を引いているなかで起きている。
東芝の原子力事業の先行きは?
東芝の原子力事業は2013年以降赤字が続いている。今回の損失は1回限りだが、原子力事業は世界中で苦戦している。
2011年の東日本大震災で起きた東京電力福島第1原発の事故以来、原子力発電には向かい風が吹いている。各国政府は電源構成の原子力の比率を下げてようとしている。台湾のように、原子力発電をやめ、再生可能エネルギーに注力することにした事例もある。
世界中で原子力発電の大規模計画が大幅に遅れている。遅延の理由には、規制を満たすために必要な熟練した労働者が不足していることもある。
例えば、東芝が2006年に買収したウェスチングハウスは、米ジョージア、サウスカロライナ両州で新世代の原子力発電施設を建設しているが、工事は予定より遅れ、予算が当初計画を上回る事態になっている。
昨年12月中旬以来、東芝株は2分の1以下に――株価下落はなぜ問題なのか
株価が下落したのには理由がある。投資家たちは東芝の状況に不安を感じている。格付け会社は東芝の債務格付けを引き下げ、同社の借入コストは上昇した。
株価が下がれば、増資による調達金額も減る。そのため、銀行融資に頼るか、すでに発表されているように事業の切り売りをして資金を得ることになる。
東芝株を昨年末から所有しつづけている投資家にとっては、大幅に価値が下がったのは間違いない。
しかし長期的にみれば、2016年の東芝株のパフォーマンスは年末までとても良かった。12月26日まで、東芝株の上昇率は70%以上で、日経平均株価の採用銘柄で2番目に高かった。12月末の大幅下落によって上昇率は5%まで低下した。 
 
 
日本家電、「衰退した」という論調は正確か? 2016/12

 

中国経済は1978年の改革開放を経て、著しい発展を遂げた。今では中国にも世界に通用する家電メーカーが現れるなど、中国企業の技術力も近年は大きく向上している。
改革開放初期の中国では日本の家電は中国人にとって憧れの存在だったのは事実で、今でも中高年の中国人の間では日本の家電ブランドは高い認知度を誇る。だが近年は中国や韓国の企業が家電分野で業績を伸ばし、日本企業が同分野で苦戦するケースが増えている。そのためか、中国では「日本の家電メーカーは衰退した」といった論調が見られるようになっている。
中国メディアの太平洋電脳は15日、中国で過去に高いブランドイメージを構築し、大人気だった日系家電は本当に「中国企業に打ち負かされたのか」と疑問を投げかける記事を掲載した。
記事は、日系家電メーカーは中国国内で中国メーカーに押され気味であり、市場では苦戦を強いられ、事業構造の調整を迫られていると指摘。それは中国国内で生産するコストが急激に上昇しているためであり、生産コストの上昇に応じて利益は年々縮小しているにもかかわらず、中国メーカーは「技術的には日系メーカーに劣るものの、価格競争を積極的に仕掛けている」と指摘、そのため日系家電メーカーは中国事業で構造調整を迫られているのだと指摘した。
一方で記事は、日本の家電メーカーは中国事業の現状を「手をこまねいて見ている」だけのはずがないと指摘。中国事業を売却する日本メーカーもあるなか、「これは不要な事業や利益の出ない事業は売却し、自社が高い競争力を実現できる事業や成長産業に投資を集中させるなどの対応だ」と指摘した。
また、「聡明な日本企業は製造業が中国で痛い目に遭わされたことから教訓を汲み取り、中国でいかにコストを低減させるか、いかに機動的な事業展開ができるかを考え始めている」と伝え、「日本の家電メーカーは衰退した」という論調は正確ではないと指摘している。 
 
 
 
なぜシャープは鴻海に買収されたのか 2016/10
 日の丸家電“失敗の本質”

 

液晶テレビを初めて世界に送り出したシャープが台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された、とのニュースは多くの人を驚かせた。経営危機の末ではあるが、日本の大手電機メーカーで外資の傘下に入るのは初めてだ。シャープ以外の日本の電機メーカーも、低価格競争に巻き込まれ家電事業は苦戦。各社とも収益性の高い企業間取引(BtoB)へのシフトを鮮明にしている。“日の丸家電”の時代は終わったのだろうか。本紙記者が関西学院大学への「出前講義」で解説した。
液晶の急伸と挫折
20世紀最後の年、2000年に液晶テレビを世界で初めて売り出し、一世を風靡(ふうび)した「液晶のシャープ」。女優の吉永小百合さんを起用したCMは、「20世紀に置いてゆくもの」としてブラウン管テレビを風呂敷に包み、「21世紀に持ってゆくもの」として液晶テレビを紹介し、時代の変化を印象づけた。
シャープの首脳陣が確信したように、液晶テレビの需要は拡大。国内では地上デジタル放送への切り替え特需がシャープのテレビ販売を押し上げ、世界中のテレビも液晶テレビに置き替わっていった。
シャープは、売り上げの約3割を「液晶」で稼ぐようになった。堺市に巨額を投じ世界最大の液晶パネル工場を建設。「オンリーワン」を目指した。
しかし、韓国サムスン電子やLG、中国新興メーカーが通貨安を追い風に猛追し、液晶パネル市場で価格競争が激化。シャープの目算は狂った。
日系電機メーカーは軒並み液晶パネル製造から手を引き、主力のテレビ用を海外調達に切り替え価格競争の影響を抑えにかかったが、「液晶のシャープ」は平成24年3月期に最終損益が3760億円の赤字に転落した。
その後、一時はスマートフォン用の小型液晶パネル需要で息を吹き返したかに見えたが、27年3月期、28年3月期と2期連続で2千億円超の最終赤字を計上し、資産をすべて売っても借金を返せない債務超過に陥った。
日の丸連合≠ゥ外資か
自力再建が絶望的となったシャープに対し、官民ファンドの産業革新機構と鴻海が、それぞれ出資を伴う支援を提案した。
産業革新機構の傘下には、ソニー、東芝、日立製作所の液晶事業を統合し24年に設立したジャパンディスプレイ(JDI)がある。同社設立の際、シャープも合流を打診されたが断っていた。経営危機で“日の丸液晶”に加わる構想が再び浮上した。
鴻海は、米アップルのスマホ筐体製造と組み立てを受注し、郭台銘会長が一代で売上高15兆円規模に成長させた受託製造企業。郭会長は「液晶を手に入れればビジネスが拡大する」と考え、日立の液晶事業買収を試みたことがあるがJDI設立で頓挫。その後、低稼働率にあえいでいたシャープの堺工場への出資、共同運営へと関与を強めていた。
機構と鴻海のシャープ争奪戦は、主力取引銀行2行の思惑も交錯し、情報戦に。機構より不利とみた鴻海の郭会長は、銀行幹部や有力財界人を相次いで訪問、シャープ本社にも足を運び、集まった報道陣の前で多額の出資をアピールし一気に形勢逆転した。
「ガラパゴス」脱出できるか
日本の電機各社は、携帯電話の機能やデザインを競い合い、独自の進化を遂げた「ガラパゴスケータイ(ガラケー)」を生み出したが、世界的なスマホ競争には出遅れた。世界シェア首位を争っているのはサムスンとアップルで、日本メーカーは遠く及ばない。
テレビでもサムスン、LGが席巻。冷蔵庫や洗濯機といった白物家電では、中国企業が今年、東芝の事業子会社や米GEの家電事業を相次いで買収するなど国際的な再編を経て、存在感を高めている。
得意の液晶に将来を賭けたシャープは、新興勢力への技術拡散、製品の低価格化の速度を読み誤った。中国勢が力を増す中、鴻海傘下で世界市場をにらんだ製品開発力とコスト競争力を得られるかに、復活がかかっている。 
 
 
家電メーカー、苦戦なぜ?  2016/4

 

日本の家電メーカーは苦戦している
「特に東芝とシャープの動向が今、注目されています。東芝は当初、2016年3月期に過去最大となる7100億円の最終赤字を計上する見通しでしたが、医療機器部門をキヤノンに売却することで、赤字を多少、圧縮できそうです。また、電気洗濯機や電気冷蔵庫といった我々の生活に身近な製品の国産第1号を生み出してきた家電部門は、中国の家電メーカーに売却します。東芝の室町正志社長は創業時の事業である家電部門の売却について『じくじたる思い』と語りました。また、国産第1号のテレビをつくったシャープは15年3月期決算では2200億円超の最終赤字となり、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業への会社自体の身売り話がようやく決着しました」
「苦戦は2000年ごろから続いていました。日立製作所やパナソニックは7000億円超、ソニーも4500億円超と過去最大の赤字を計上し、リストラを断行しました。09年には三洋電機がパナソニックに買収されました」
苦戦の理由
「1つは日本の人口が減っていることで市場が縮小傾向にあるためです。白物家電の15年の国内出荷額は14年比2.8%減の2兆2043億円と2年連続前年割れとなりました。また、AV(音響・映像)機器などの黒物家電は同6.0%減の1兆2620億円と5年連続の前年割れでした。国内に家電メーカーが多すぎるとの指摘もあります。現在、8社体制といわれますが、韓国ではサムスン電子とLG電子の大手2社に集約されています。世界シェアを見ても、日本メーカーで10位以内に入っているのは5位のパナソニックだけです」
「そもそも、国内各社は1990年代以降、時代の流れを見誤ってきました。半導体では大型コンピューター向けの高性能で高額な製品で先行しましたが、パソコンが主流になるダウンサイジングの流れに乗り遅れました。逆にこの流れに乗ったのが韓国や台湾のメーカーです。安くて使い勝手の良い半導体生産に力を入れました。液晶も同じ構図です。テレビやデジタルカメラの分野ではスマートフォンに機能を奪われてしまう現象も顕著になりました。日本勢はここでも失敗しました」
国内メーカーは、なぜ時代を読み間違えた
「『イノベーションのジレンマ』という言葉があります。成功体験があだとなり、強みだったものがいつの間にか弱みになってしまうことです。国内メーカーは既存の市場シェアにこだわりすぎ、例えばインターネットの時代を見据えた取り組みにも積極的ではありませんでした」
「生産体制の面では世界的な構造変化についていけませんでした。日本のメーカーは関係の深い下請け会社などグループの中で事業を完結させる『垂直統合型』のビジネスモデルを基本としています。しかし、今や米アップルの『iPhone(アイフォーン)』生産に代表されるように、自らの設備投資は抑え、世界各地で生産委託する国際的な『水平分業』にビジネスモデルが移行しています」
家電メーカーの今後の展望
「突破口の一つは『IoT(インターネット・オブ・シングス=モノのインターネット)化』ではないでしょうか。全てのモノがネットにつながることをいいます。英ロールス・ロイスは自社生産した航空機エンジンをネットに接続し、エンジンの状態を常時監視できる仕組みをつくっています。例えば整備が必要な場合は不具合が出る前に航空会社に連絡を入れ、飛行機の運航に支障を来さないよう支援するサービスを提供しています。その結果、現在、航空機エンジン部門の売上高の7割がIoTサービスによる収入となっています」
「日本でも日立などがIoTに注目しています。具体的な取り組みはこれからですが、モノだけでなく、サービスでも稼げるような新たな製造業のビジネスモデルをつくっていくことが、これからの大きな課題になるでしょう」
注 / 韓台中、大規模化で席巻
今やテレビやスマートフォン(スマホ)になくてはならない液晶は19世紀末にオーストリアの科学者が発見したとされている。科学的発見の後、社会的・産業的に価値を見いだしたのは米国人。家電製品に組み込んで初めて製品化したのは日本企業だったが、産業として大規模化し、市場を席巻したのは韓国や台湾、中国だった。
液晶を得意とするシャープが台湾の鴻海精密工業に買収されるのは象徴的な出来事だろう。半導体メモリーのDRAMやスマホの時も同じだった。結局は安価な労働力と巨大な市場を持つ、あるいはそういう市場と近接して機敏に設備投資をした国・地域が最後に果実を手にする、という循環だ。
日本企業の進む道はどこにあるか。デジタル化時代は技術の伝播(でんぱ)が速く「もの」だけで勝負するのはつらい。やはり欧米で芽生えつつある「もの+サービス」のまねされにくい事業モデルの確立が期待される。少子高齢化など課題の多い日本だが、そうした課題の中にこそ、ビジネスの好機はある。 
 
 
三菱電機「絶好調」の理由は「撤退する勇気」 2016/2

 

「選択と集中」「技術革新」と連呼して思考停止に陥り、日本の電機メーカーは次々に倒れていった。だがこの会社だけは、本当に大事なことを知っていた。ただ攻めるばかりが経営ではないのだ。
「業界の内部では、野武士の日立、商人の松下に対して、三菱はあまり闘争心のない『殿様』と長年揶揄されてきました。売り上げも総合電機メーカー3社の中では『万年3番手』と言われ、ずっとパッとしなかった。ですが現在の好調は、そうした社風がいい方向にうまく働いている結果なのだと思います。三菱電機には、『1位を目指さなければならない』という気負いや、『寝食を犠牲にして働く』という必死さが薄い。だからこそ、必要なときに大きな改革に踏み切り、正しい戦略を立てることができた。『プライドよりも生き残ることが大切』と割り切れることが、彼らの強みでしょう」
こう語るのは、東京大学大学院「ものづくり経営研究センター」特任研究員の吉川良三氏だ。
トップランナーの一角・東芝の不正会計問題発覚、死に体となったシャープの身売り・延命問題など、激震が続いている電気機器業界。しかし、混乱を横目に「われ関せず」とばかりに売上高を伸ばし、絶好調を謳歌する企業がある。それが三菱電機である。
2016年度の売上高予想は、過去最高の4兆3800億円。たった3年前の'13年度に4兆円を超えたばかりにもかかわらず、驚異的な伸びだ。営業利益率も約7%と、電機業界でトップを走っている。まさに一人勝ちである。
さらに、すべての幹部が報酬の一部を返上し、一般社員まで給料カットの憂き目に遭った東芝とは対照的に、三菱電機の「破格の役員報酬」は、サラリーマンの羨望の的となっている。
現社長・柵山正樹氏の2億6000万円を皮切りに、役員23人全員の報酬が1億円越え。右の表に、各人の実際の報酬額と氏名・肩書を一覧にして掲載した。
また従業員の平均年収も、800万円弱と高給だ。昨年度の決算でようやく黒字回復した、ソニー社員の平均年収が900万円近いことを考えると、三菱電機の社員はもっと貰ってもいいくらいだ。
「地味な三菱電機が、なぜそんなに儲かっているのか」と疑問に思う向きもあるだろう。たしかに、ソニーや日立、東芝、パナソニックといった他の電機メーカーと比べると、三菱電機の存在感は薄い。代表的な製品は、エアコンの「霧ヶ峰」シリーズや冷蔵庫くらいしか思い浮かばない、CMの内容も「ニクイねぇ!三菱」のキャッチフレーズしか記憶に残っていない、という人が多いのではなかろうか。
だが実は、この「地味さ」こそが、三菱電機の強さの秘訣なのである。
前出の吉川氏は日立製作所や日本鋼管、韓国サムスン電子で長年技術者として働き、サムスンでは常務まで務めた。氏は2代前の下村節宏社長時代、乞われて三菱電機の役員会で提言をしたことがあるという。
「私はそのとき、サムスンが家電事業に集中的に設備投資していることを踏まえて、『家電は激戦になる。撤退を進めるべきだ』と提案しました。当時の電機業界にはまだ、『日本が韓国なんかに負けるわけがない』と考えている人もたくさんいましたが、三菱電機の幹部は私の話を真剣に聞いてくれた。このとき役員だった、前社長の山西健一郎さんと、現社長の柵山さんが、数年後にその提案を実行したのです。その後、家電市場は海外メーカーが席巻し、三菱電機以外の日本勢は案の定、苦戦を強いられることになりました。私の発言で撤退を決めたとは思いませんが、少なくとも三菱電機の経営陣に、『勝てない』と見た分野からはためらわず退く決断力があることは間違いありません」 
 
 
なぜ東芝が白物家電事業を整理する必要があるのか 2016/1

 

「東芝の室町正志社長は28日、産経新聞のインタビューに応じ、採算が悪化している白物家電、パソコンの両事業について実質的に売却する方針を示した。両事業とも、他社との事業統合を検討しているが、合弁会社をつくっても議決権の過半は持たず、東芝の連結決算への影響を抑える。これらにより、平成29年3月期の連結売上高は「5兆円割れの可能性もある」という。5兆円を下回れば、7年3月期以来、22年ぶり。事業規模を縮小し、生き残りを目指す姿勢が鮮明になりそうだ。」
白物家電の市場環境
白物家電の市場環境がどうなっているかを見てみます。会社四季報 業界地図2016年版によりますと、国内は成熟してきており、海外は成長しています。海外では新興国、特に中国が需要を牽引しています。国内は買い替え需要で一定規模が継続しているのが現状です。
また、国内市場にはダイソンやiRobot(ルンバ)などの海外勢が勢力を伸ばしており、決して楽な市場ではなくなっています。
ここから考えられるのは、国内を主戦場にしていると、厳しそうな感じがありますね。
売上高と利益率の推移
次に、東芝の売上高と利益率を見てみようと思います。事業構成が違うので、全体の売上で比較しても仕方ないですが、おおよその傾向はわかると思います。ただ、不正会計問題があるので、正確な数字でない部分がありますが。
それでも、利益はギリギリのラインも経験しています。
競合との関係も見てみます。家電を含む競合としては、日立・三菱電機・パナソニック・シャープが挙げられます。
利益率でみると、今話題の東芝とシャープが下がってきているのがわかります。一方で、パナソニックや三菱電機は、2012年頃に苦戦していたものの、それからは改善傾向になっています。
東芝における家電事業の位置づけ
東芝はいくつか複数の事業を展開しており、最新の報告書を見ると、6つの事業に分かれています。家電は、「ライフスタイル事業」に分類されています。
それぞれの業績を見てみましょう。
   電力・社会インフラ事業グループ
   コミュニティ・ソリューション事業グループ
   ヘルスケア事業グループ
   電子デバイス事業グループ
   ライフスタイル事業グループ
   その他事業グループ
売上高と営業利益を並べてみてみると、家電を含むライフスタイル事業グループだけが赤字になっています。ライフスタイル事業の赤字要因が財務上どこにあるのかは、これ以上詳細にはわかりませんが、売上高の伸び悩みと赤字構造の継続は明らかに課題です。しかも、売上高として締める割合は16%もあります。
そして、東芝は家電の主戦場が国内になっており、海外生産拠点の集約の遅れ、円安の影響でコスト構造が高くなっていたようです。
「現在、白モノ家電の7割〜8割が、日本向けだ。アイロンやオーブンなど、一部製品を新潟などで生産しているものの、冷蔵庫や洗濯機は100%を海外生産に依存している。が、近年の想定を上回る円安によって、輸入採算が急悪化しており、コスト面で厳しい状況が続いていた。」
つまり、市場が成長しているのは海外であるものの、主戦場の比重が国内になっており、売り上げを伸ばすことに苦戦しています。一方で、海外生産拠点・販売拠点を整理できず、高いコスト構造になってしまったようです。
同じような状況だったパナソニックは、早めに事業を整理し、海外で生産を伸ばすとともに、競争力のあるコスト体質を作り出して、業績を回復させています。
「業績回復組の筆頭が、先の薄型テレビ戦争では歴史的大敗北を喫したパナソニック。2014年度は売り上げこそ3%減ですが、営業利益は実に25%増! TV事業の縮小・撤退で得た原資を電池やカーエレクトロニクス、エアコンなどに大注入し、欧米で車載用電池、中国でエアコンが大躍進しています!」
というわけで、いろいろ見てきましたが、調査の過程で経産省の面白い資料を見つけました。少し古いですが、抜粋しておきます。
以下が家電メーカーの利益率の推移です。世界を席巻してきた日本メーカーはどんどん利益率を低下させてきているのがわかります。
そして、低収益になっている原因としてこう整理されています。複数要因を示されていますが、稼げない領域は整理し、稼げるところにスケールを出し、研究開発費などを投資していくことが求められています。
家電事業を売却することで、売上高も下がりますが、事業としてはスリム化されるはずです。不正会計問題から端を発した東芝は、今回の事業整理を機に、業績を回復させることができるでしょうか。 
 
 
日本の電機メーカーはなぜ苦境に陥ったか 2015/9
 成功体験に縛り付けるコア・コンピタンスの罠

 

「両手利きの経営」とは
前回、効果的な経営と効率的な経営の違いを説明した。この話は経営戦略論では古くて新しい議論について、視点を変えて見たものだ。
現在、私の同僚で、以前からガンダム好きオタク経営学者つながりで仲の良かった、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授は、彼の著書『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)の中で「両手利きの経営」という話をしている。
両手利きの経営とは、ハーバードビジネススクールのマイケル・L・タッシュマン教授とスタンフォード大学のチャールズ・A・オーライリーIII世教授が1997年に出版した『Winning through Innovation』(ハーバードビジネススクール出版)に出てきた概念で、企業を取り巻く環境が大きな変化の中にあるか、安定的かという違いによって、探索と深化という二つのプロセスを使い分ける経営を行うこと定義されている。
ちなみに、この洋書には『競争優位のイノベーション』(ダイヤモンド社)という邦訳書があったのだが残念ながら既に絶版になっている。この本の邦訳では「両手利きの経営」ではなく「両刀遣いの経営」と訳されているが、いずれも“Ambidexterity”という語を指していて、現在では「両手利きの経営」という言葉の方が定着している感がある。
タッシュマンらの「両手利き」の議論は日本の経営学者の間でも主にイノベーション研究者の間で良く引用されてきた研究で、著者自身、大学院生時代に博士論文の中でこの議論を引用している。そういう意味では、「両手利き」という概念はそれほど新しいものではない。
しかし、タッシュマンらは仮説提示的に「両手利き」という議論をしていたのだが、近年、アメリカでは定量的に両手利きができる組織やマネジャーのパフォーマンスを計るなど、様々な実証研究につながっている。
企業が置かれている環境によって異なる組織論
さて、この探索と深化という概念は、環境に応じて使い分けるべき経営戦略のプロセスだ。分かりやすくタッシュマンらの議論に即して説明すると、技術、市場、競争環境など企業を取り巻く状況の変化が激しい場合には、「緩やかな(loose)」組織、企業文化、業務形態、働く人の個性が求められ、反対に環境変化が安定的であれば、「厳格な(tight)」組織、企業文化、業務形態、働く人の個性が求められる。つまり、企業は置かれている環境によって異なる2つのタイプの組織を使い分ける必要があるということになる。
この時、緩やかな、あるいは厳格な組織、企業文化、業務形態、働く人の個性が、どのような状況であるかを考えてみよう。
何か新しい事業や製品開発を始めようとするとき、これまでの経験や技術などが活かせない領域に踏み込もうとする局面では、前回話しした効果的な経営による多様性の確保が必要となる。こうしたときに、「いやぁ、必要なのは分かるんだけど、今の組織だと難しいなぁ」とか、「過去のデータをきちっと精査して、きっちり精度の高い事業計画を立てなくては」と言われても難しい。将来がどうなるか分からないからこそ、ある程度のムダを許容して多様性を確保するのが効果的な経営だ。
この時、厳格な組織体制や文化、個人などによるきっちりした組織であったらどうだろう。こういう厳格な組織は組織論では「機械的組織」とも呼ばれる。機械的組織では、ルールや組織制度からの逸脱が許されないので、先に挙げたような新規事業を妨げる状況が生じる。
よって新しい事業や製品開発を始めるとき、つまり企業を取り巻く環境に変化が生じる局面では、緩やかで柔軟な組織体制や文化、個人からなる組織である「有機的組織」が必要となる。
有機的組織の良さは、多様性を確保し、トライアンドエラーをしながら試行錯誤するところにある。このプロセスを「探索(Exploration)」と呼ぶ。つまり、環境変化が激しいときには有機的組織で探索というプロセスを重視し、効果的な経営という結果を得ることが重要であるということだ。
一方、「深化(Exploitation)」とは、一つの専門性を深めていくことで、一つの目標に向かって効率的に進む効果的な経営に向いているという正反対の議論が成り立つ。つまり、前回説明した効果的経営、効率的経営というのは、両手利きの経営の議論における探索と深化というプロセスに対応したそれぞれの結果であるということができる。
技術一流・経営三流以下の理由
繰り返しになるが、探索や深化は、組織が活動するプロセスを示す言葉であるのに対し、効果と効率とは、そうしたプロセスの結果得られる事象を表している。それであれば、本稿のタイトルも探索と深化の経営戦略でいいじゃないか、と思われるかもしれないが、多くの経営者、特に日本の大企業経営者は、耳学問として経営学用語を知っていてもその本質を理解していないことから、あえて「なんのためにそれを行うのか」という目的としての結果を強調したいのだ。
なぜ、日本の経営者の理解が不足しているのか。そこには二つの理由がある。一つは日本固有の問題として、長期雇用制度を前提とした社内昇進システムの弊害だ。ある事業戦略レベル、具体的に言えば、事業部長や部門長と呼ばれる人が持っている能力は特定の事業戦略に対する能力だ。
一方、トップマネジメントに求められる全体戦略の能力は社内の資源配分や、コア・コンピタンスの活用などであり、後者のコア・コンピタンスや、コア・コンピタンスが技術である場合コア技術という言葉も使うが、これらは、(1)企業の中核的能力(技術)であって、(2)多様な事業に応用可能なもの、と定義され、企業の事業多角化の根拠となっている。
しかし、日本の、特に大企業の企業慣行としては、特定の事業で成功した事業部長や事業部門長が当然のごとく、ご褒美として社長や取締役に昇格するような人事がまかり通ってきた。特に技術を売りにしてきたメーカーほど、優れた技術者の長が社長になるのは当然という風潮があり、昨今の日本のエレクトロニクスメーカーの技術一流・経営三流以下の結果を生み出している。
特にソニーのような会社では未だにソニーのトップは技術者出身でなければダメだということを言う社内外の雰囲気があり、執拗に社長交代を迫るメディアもある。だが、彼らの主張の弱いところは、かつて中鉢社長のように部下に慕われ自らも優れた技術者であった人でもソニーの業績は悪化の一途を辿ったという事実だ。現在のソニーで、平井社長を下ろすとして、それではだれが次の社長の器を持ったエンジニアなのか、ということが明確に答えられない。
企業を過去の成功体験に縛り付ける「コア・リジディティ」
少し話はそれたが、メーカーにおいて、トップが技術を知っていることはもちろん良いことだが、それ以上に求められるのは全社戦略レベルの経営能力である。こうした能力を育てるプロセスがない会社や、単純に優れたエンジニアの長を昇進させるような会社では、全社レベルの経営が弱くなるのは当然だ。こうしたとき、社長を支える本社スタッフ部門は一生懸命、経営学者の言うことや流行のビジネス書に書かれたことをもとに、戦略の体裁を取り繕う。
そうか、深化と探索で両手利きが大切なのか、ということになるとそれにすぐ飛びつくということもあり得るのだ。ただ、そうして取り繕った事業計画や中期計画は、あくまでこれからの経営のプロセスを示すものでしかない。経営は結果が問われる。著者が結果としての効果的な経営と効率的な経営にこだわる一つの理由は、逆説的に聞こえるかもしれないが、経営戦略においてはプロセスが大切なのだ。であるからこそ、プロセスを目的化せずに、きちんと目指すべき結果を踏まえた上でプロセスの議論をすべきと考える。
もう一つの理由は、経営学や実務としての経営戦略においては、前述のように、戦略理論が聞きかじりの耳学問でもそれらしく体裁が整ってしまうという面倒くささが存在するからだ。医学や工学など、自然科学の分野、あるいは社会科学でも法律学のように、学問や理論上の専門用語が、日常の会話として用いられる言葉とは明確に異なる単語で定義されている。このため素人がうかつに専門用語を使いにくい状況になっている。
一方、経営学では、戦略、組織、リーダーシップ、モチベーションなど、経営学の専門用語でもある言葉が、日常生活や普段の会社での業務で一般的な用語としても用いられている。我々プロパーの経営学者は、日常用語として使う場合の言葉と、経営学の専門用語として使う言葉は明確に区別し、専門用語の定義は厳格に行う。しかし、経営学研究の成果として執筆された研究書や教科書、あるいはビジネス書などにそれらが書かれた場合、必ずしも経営学者と同レベルに厳格に言葉の定義が共有されているとは限らない。
例えば、「コア技術」のような言葉は日本の製造業の経営者が好きな言葉だ。自社の得意な技術で、他社よりも優れたものという、先に挙げた(1)の定義は多くの人たちの間で共有されている。しかし、(2)の意味を知っている人はそれほど多くない。また、コア技術を多様な商品に応用展開していく戦略をとるときに、長期的な問題点が起こる。それはコア技術に投資を集中すると、技術が陳腐化したときに企業の成長の資産が一気に負債に変わるというものだ。
これは技術に限らず、1992年のドロシー・バートン(執筆当時はドロシー・レオナルド=バートン)教授は、コア・コンピタンスは、長期的には企業を過去の成功体験に縛り付ける「コア・リジディティ」(中核的な硬直性)になるという指摘をしている。シャープの液晶技術が長年、多くの製品に応用されながら技術と製品のスパイラル展開をしてきたが、液晶技術がコモディティ化した今でも液晶一本で硬直化した経営しか考えられないシャープは苦境に陥っているのだ。
「経営学は机上の学問で実務には役立たない」と思っている経営者も少なからずいるかもしれないが、経営学者の立場からは、経営学の表面を救っただけで本質を学んでいないからと言える。日本の多くの製造業の場合、現状苦しんでいる経営上の課題の多くは、大学の学部レベルの経営学の教科書で指摘されているような問題で苦しんでいるに過ぎないのだ。
何の目的のためにどのようなストーリーをつくるのか
どうも、日本の会社には、流行の経営スタイルを真似る傾向があるように見える。カンパニー制が流行ると真似してみる。分社化が流行ると分社してみる。こうした、“組織戦略ごっこ”はたいていの場合、現場の混乱を招くだけで上手く機能しない。チャンドラーの名著『組織は戦略に従う』のタイトルを思い出すだけで十分だ。組織は流行で決めるものではなく、その会社の戦略を実行するという目的のために付随して形成されるものだ。
「確かにそれは正論だけど、組織的に考えると現実的ではないな」という議論をしたことがあるのでは? それは因果関係が逆になっている。もしその正論が正しい戦略であるとすれば、組織はそれに付随して変革されるものだ。
企業の戦略は、その企業が置かれた環境条件や企業が持つ資源によって決まる。これも経営学部や商学部の学生が経営学の授業で初めに学ぶ内容の一つだ。環境条件には産業特性や製品特性もある。
例えば、京セラの稲盛会長は、京セラというハイテク企業をアメーバ型組織という、極めてlooseな有機的組織で成長させた。その稲盛会長が日本航空の再建のため会長に着任したとき、彼は京セラと同じ組織戦略の手法はとらなかった。それは、航空会社は技術・市場の不確実性の高いハイテク産業とは異なり、ルーチンの作業を安全かつ効率的に行うことが求められる産業特性を持っているからだ。産業特性や製品特性を踏まえて、企業の置かれた環境、資源に合わせて柔軟に戦略や組織設計を変えることが重要なのだ。
ただ、現実の会社の中では、場当たり的にスタッフ部門が事業計画や中期計画を作成するときに、ネットや書籍に出てくる経営の「バズワード」を拾い上げてそれらしいプレゼン資料に仕立て上げていないだろうか。
大切なのは、どのような目標に向かって、どのようなストーリーを組み立てるかということだ。ここでいう目標とは、明確な目的とは少し異なる。次回以降詳説するが、探索が必要な状態とは、言い換えれば将来の目的が明確に設定できない状況だ。更に言い換えれば、将来の予測が困難な状況ともいえる。技術や市場などの経営環境が穏やかで、変化が乏しい局面での事業計画は、過去のデータや将来性予測に基づいて効率性を重視すべきだ。逆に言えば、将来性の予測が可能だから、効率化を行えるということだ。
なぜ大企業は新興企業のイノベーションに敗れるのか
しかし、置かれている環境がタービュラントである、例えば、新規事業に取り組むとか、市場環境が大きく変化する気配がある局面では、過去のデータや将来性の予測は多くの場合意味をなさない。こうした場合にこそ、探索が求められ、効果的な経営手法、それに見合った有機的組織の設計が必要になる。
重要なのは、これからの経営戦略あるいは事業戦略がどのような環境に置かれるのか、あるいは、自社がどのような状況を作り出していくのか(既存事業の漸進的な継続なのか、大きな変化をもたらそうとしているのか)、どちらの目標を設定するのか、そこからブレイクダウンしてどのような戦略を構築し、組織を設計するのか、ということだ。
ただ、大企業のような既存の事業での成功体験や、経験の蓄積がある組織ほど、効果的な経営への取り組みは難しくなる。その詳細は次回に回したいと思うが、ポイントは前述したように、これまでコア・コンピタンスであったものが、コア・リジディティになる、ということだ。
企業が技術やノウハウを蓄積するということは、技術や自社の経験に対して投資を行うということだ。こうした投資は固定費だから、一般的に技術やノウハウの蓄積による差別化戦略というものは、大企業に有利な戦略だ。しかし、多くの大企業が、新興企業による新たなイノベーションの前に破れ、失敗に陥っている。
こうしたことが起こり、なぜそうなるのか、どのように防ぐのかは今まで多くの経営学者によって指摘されてきたし、ビジネスパーソンもこうした研究成果を目にしたことがあるはずだ。
1990年代の終わりに、ハーバード大学のクリステンセン教授の著書『イノベーションのジレンマ』が日本のビジネス界でも有名になった。この本のメインテーマも、大企業がなぜ失敗するのか、ということだった。邦訳書の帯には、当時の出井伸之ソニー社長が推薦の辞を述べている。しかし、そのソニー自身が、その後の10年、アップルという後発企業に翻弄される事態に陥っている。
探索と深化の使い分け、というプロセスは多くの人が、耳学問としては理解をしているはずだ。しかし、それを知りながら、失敗をするということは本質を理解していないということなのだ。この連載では、あえて、表面的にプロセスをすくうような「明日すぐ使えるビジネススキル」っぽいものではなく、効果と効率のいずれの目標設定をすべきか、というもう一つ深い本質の理解できるよう、あと数回、いくつかの事例を用いながら、本当の意味で経営戦略のストーリーを作るために必要な、バズワードではない、経営という事象の捉え方、扱い方を考えていきたい。 
 
 
シャープと家電メーカーの苦悩 2015/3

 

シャープが主要取引銀行にDESを求めた。企業再生ファンドの「ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ」に出資を求めるなど事業再生のための金融支援を受ける動きが活発化している。そもそも、ここ数年ソニー、シャープ、パナソニックなど家電メーカーは低迷を続けてきた。(ここにきてパナソニックが出口を見出した感があるが)そもそも、なぜ日本の家電メーカーはリーマンショック以降大きく低迷してしまったのだろうか?
リーマンショック以降の家電業界の動向
グラフは家電業界の当期純損益の推移である。2010年以降立ち直りに兆しを見せる日立、東芝、三菱といった総合電機・重電インフラ系と大きく利益を減少させているソニー、シャープ、パナソニックと言った家電系に2極化していることがわかる。リーマンショック以前はむしろ家電・弱電系3社の利益額のほうが高く、リーマンショック以降に構造変化が起きていることがわかる。ちなみに2014年度についてはシャープは3月の発表では連結最終損益が300億円の赤字になる見通し、ソニーは2月の発表で純損益は1700億円の赤字(営業利益は黒字転換)の見通しとなった。
家電メーカー低迷の原因
家電メーカー低迷の原因はどこにあるのだろうか?
1 デジタル化の進展による技術的優位性の喪失
日本の家電メーカーの強みは高い技術力にあったと言っても過言ではない。しかし、デジタル化の進展で組み込みソフトにより制御された工業製品が増加したため、ソフトウェアごとに各パーツ間のインターフェイスを標準化すれば、パーツを組み合わせることで製品が完成するようになる。結果的に、要素技術やそれらを擦り合わせて統合する技術力がない企業でも、ある程度以上の機能を持った商品を、部品・デバイスを購入して組み合わせることによって比較的容易に開発・製造できることになる。このようなデジタル化の進展は韓国企業などに対する日本企業の技術優位性を喪失させるほうに働いたといえる。この現象はいわゆるコモディティ化と呼ばれているが、家電3社が得意とするテレビ事業はその傾向が高く、一方で例えば昇降機のようなインフラ分野は高い技術力を必要とし韓国企業などの追随の難しい分野と言える。そのことが日立などの総合電機系と家電3社との差を生んだ原因の一つである。
2 テレビ事業の不振
家電3社の不振の原因を商品別に見ると薄型テレビの市場規模は家電エコポイントや地デジ移行による特需の減少で市場規模は大きく縮小している。また、この分野は前述のようにコモディティ化の進展で日本企業の技術優位が失われたことでサムスン電子をはじめとする韓国企業の激しい攻勢を受けている。テレビの市場シェアでは日本企業はサムスン電子に大きく水をあけられている。家電3社は薄型テレビで大型の設備投資を行っており経営悪化の大きな要因になったと言える。
3 新興国市場での苦戦
リーマンショック以降、世界の市場構造も変化をしている。リーマンショック前までは先進国の市場を中心に日本の輸出も伸びていた。しかし、リーマンショックで先進国経済が低迷する中で経済成長を持続したのはアジア(中国や東南アジア)を中心とする新興国市場である。新興国では所得水準は高くはなく先進国向けに開発した製品の機能を落としたとして価格水準を落としたとしても対応は難しい。一方、韓国勢はこれらの新興国を中心に市場開拓を進めており、日本企業は韓国勢に遅れをとっている状況にある
4 下請け構造の高コスト性
電子機器の分野ではEMSという受託生産を行うビジネスモデルが1990年代から急速に拡大している。EMSは契約ベースで製品の生産を受託するためライバル企業からも受託を行う点で下請けとは違っており、そのため巨大設備で大量生産を行うとともに部材調達も独自で行い、低コストの生産を可能としている。このようなEMSの出現により欧米企業では水平分業が進んでいる。欧米では商品の企画設計という上流工程とアフターサービスという下流工程だけを行い、製造はEMSに委託するモデルが広がっている。アップル社のiPhoneは設計・販売のみを自社で行っており、製造は外部に委託している。iPhoneのアメリカでの平均的な販売価格は676ドルである。このうち、製造組立てにかかるコストはわずか15ドル、販売価格の2%強でしかない。設計・販売・サービスに特化するアップルは販売価格676ドルのうち約6割の367ドルを獲得する。ここから間接費用を差し引いても、1台当たり319ドルの利益をアップルが獲得することになる。
一方、日本の企業は下請け構造に代表される垂直統合モデルを取っており生産コストが高止まりして価格競争力を失っていた。日本企業は自社内の自社で高品質の中核部品を開発・製造し、他社に作れない機器を生み出す「キー・デバイス戦略」を取っていたからである。この戦略は当初は技術優位があるが、他社がキャッチアップしてくると優位性が薄れる。一方で自社内用だけの部品の生産のため規模のメリットがなく高コストな体制にならざるを得ない。
シャープの失敗はまさにこのキーデバイス戦略を取ったところにある。
液晶パネルはシャープが2000年ごろに量産化に最初に成功し、液晶テレビでも液晶パネルの技術力の優位性があった。しかし、、2000年代半ばになると、他のメーカーも技術的に追いつき同様の液晶パネルの製造が可能となった。シャープは、堺市に大型工場を建設して技術的な先行性を確保しようとしたものの、すでに技術的に追いつかれていたことから重い投資負担が残り、結局、EMS企業である鴻海(ホンハイ)精密工業に出資を仰ぎ、工場を一部譲渡することとなった。
パナソニック、ソニー、シャープの差はどこにあるのか?
家電メーカーは全体的に低迷しているものの回復速度には差が出ている。もっとも順調に回復しているのはパナソニック。パナソニックはリーマンショックの低迷をへて、住宅関連、自動車関連にシフトをしようとしている。3社のなかではもっとも早く成長分野に舵を切ることができた。ソニーについては映画やゲーム、金融と言ったコンテンツ事業をもっており、そのことがエレクトロニクス事業の不振をなんとかカバーして純損益は赤字であるが、営業利益段階では黒字化した状況にある。また、新たにデバイス事業が医療、自動車関連分野といったところにも進出しているところが一筋の光明になっている。一方、シャープはもともと事業の幅が狭く液晶テレビの不振をカバーできる分野を持っていなかった。起死回生で挑んだ太陽光パネル事業もシェアを落としているばかりか供給過多で価格下落のリスクも孕んでいる状況にある。がっけぷちのシャープの次の一手に期待したい。 
 
   
「日本メーカーの真面目さがアダとなる」 2014
 IoT時代に“日本的ものづくり”が敗北する理由

 

電機メーカーをはじめとしたハードウェア業界の苦戦が続く日本。大前研一氏は世界的な潮流として、ハードウェアがその単体として富を生む時代は終わったと指摘します。スマホやウェアラブル、クラウドの出現が世界にもたらした劇的な変化とは?
強みを見直すと、弱みが浮き彫りになる
自分の会社の強みを見直すと、実はもっていない技術というのが非常に明確になります。先ほど言ったようにAppleさえも、ストリーミングの技術を買わざるを得なかったとかですね。
アマゾンなんかはですね、ロボットの会社を買っています。アマゾンはそのうちにですね、ドローンで本だとかを御宅のベランダまで、あるいは庭まで運んでくるこういうことをして、地をはうような物流をやめようという方向になっております。
こういうような企業買収、M&Aをやるようになっております。これをやるとですね自分の会社にとって足りない技術というのがはっきり見えてくるということですね。
1年に1回はせめて、コンペティターとカスタマー、そして自分の会社・カンパニーを見直すということをぜひやっていただきたいと思います。
結果としてですね、アマゾンが買ったKivaというシステムがありますけれども、日本の小田原のアマゾンの物流センターにも入っておりますけれども、こういうものすごいロボットというものが活躍するとそういう時代になってきています。
今はモバイル、そしてスマホとかそういうところから今度はウェアラブルへとか、まさにインターネットの初期の時に学者の人が言っていたユビキタス、いつでもどこでも誰とでもコネクテッドという時代がついに来たという。
今グーグルグラスですね、評判が落ちてますけれどもやっぱりちょっと煩わらしいですね。ただこちらのバンドとかですね。Appleの次に発表になる時計とかですね。これからまだまだ改善されて、体の一部に溶け込んでいくのではないかと私は思っています。
ソフトウェアとハードウェアの企業が識別不能に
それからもうひとつはですね。製造業とソフトウェアの会社というのがですね、くっついてきております。これはさっき言ったホンハイみたいなですね。
いわいるEMSとか、ODMとかそういうような会社が台湾を中心にたくさん出てきて、ソフトウェアの会社でもアイデアが出てきたときは誰かが短期間で、安く作ってくれるというふうな分業が進んだ結果、マイクロソフトもGoogleも、アマゾンも自分のハードウェアを持つようになっています。
今のファイアテレビとかですね。それからGoogleで言えばChrome。スマホで受けたものをテレビに流すというようなこともできるということですね。それからMicrosoftの場合では、タブレットPCのSurfaceというものをテレビと共有できる。
あるいは遠くにいるおじいちゃんおばちゃんと一緒に楽しむことができるというふうになって、いつの間にかソフトウェア屋さんとハードウェア屋さんが、識別不能というふうになってきて、こういう会社がつくるものの方が安いです。
なぜかというと、メーカーは全部自分のシステムも持っておりますし、人も抱えております。チャイワンに頼んでやると非常に安くつくってくれるということで、意外にこの系統というもの、特にAppleというものは非常に安い値段で作れるようになっております。利益率半分もありますので皆さんの買う値段の半分以下でもって彼らはホンハイから今回購入してると思います。
これはGoogleなんですけれども、こういったような中でですね、Googleは、膨大な情報を蓄積しております。もちろんクラウド上に蓄積しているのですけれども、360度カメラを持って世界中に行ってます。今では砂漠の道とかそういうところがありますけれども、このようにしてですね、北方領土なんかも、Googleマップで見たほうがはるか国後からこうやって望郷の念で見るよりも詳しく見えるということですね。
トヨタ・ホンダとGoogleが競争する時代へ
いずれにしても、GoogleはYouTubeを買っちゃいましたので、そういう意味では映像の方はこれをもって手当てが済んでるということです。
それからこの後Googleは宇宙に行くといいうことを言っておりますし、もうひとつは、自動運転の車。自動運転の車を開発してトヨタとかホンダと競うということを公言しております。
それからもうひとつはスマホがAppleのほうが高いのですけどサムスンも5,6万円、ソニーも6、7万円とこういう時代ですけれども、したがって安い値段でもって設計して100ドルスマホを設計してくれる、こういう会社が出てきています。
こういう会社がいろんな会社の安いスマホ設計してあげて、もはやサムスンとかソニーとか、巨大な会社じゃなくても百貨店が、あるいはスーパーがスマホを提供して月々使用料全部含めて3000円で結構ですよ。その代わりスーパーの広告が時々入ってきますよ。
特にそのスーパーの広告は特に安くなった時だけに、皆さんのためにナローキャスティングやります。ブロードキャスティングではなくて、うちのやつを使ってる人だけに今来てくれたらこんなに安いですよとリアルタイムプライシングをします。そういうことをもってそれなりのメリットがあるということになってきております。
日本メーカーの真面目さが通用しない
それでスマホセントリックのエコシステムというものの中でいろんなデバイスの開発が進んでいると。これは、M2Mの世界といって、マシン・ツー・マシンの中ではセンサーとアクチュエーターこのふたつが重要なのですけれども、何かを感知してブレーキをかけるとか、そういうセンサーとアクチュエーターのところで大きな進歩が見られております。
この前の広島の地滑りなんかも、雨量計にひずみ計を組み込んだやつをM2Mでたくさん置いていれば、あんなのすぐに感知できるということで、急激にその方向に対する興味というのが高まってきておりますし、御嶽山の場合もそういうようなことをしかけておれば、いくら水蒸気爆発と言ったって検知できたはずだと。
日本メーカーは真面目ですよね。真面目だから録音機を作るとレコーダをつくる、ラジオ作ると一生懸命製品別で作る。パナソニックの場合は350の事業部がありました。
このような事業部制というのは非常に考え方が硬直します。例えばラジカセが出てきたときに、松下電器の場合はラジオ事業部と、録音機事業部が喧嘩したんです。「ラジカセはラジオなのか、カセットレコーダーなのか」ということですね。
上の方が采配を振るわないと喧嘩になっちゃうと。今を見てください、ほとんどのものがスマホのアイコンだけになっちゃっております。これをもってビデオもできるし、録音もできるしなんでもできちゃう。
だから日本の電機メーカー、家電メーカーが苦労したのが事業部制的な発想の中で、アイコン一発になっちゃった。その部品をずっとトレースしてくと日本の部品が使われているんですね。
当然ながら優秀な部品ですからそういうことでアイコンになっちゃうと、これはちょっと事業部制とか、工場事業部制とかでやってきた会社には、とてもじゃないけれども追いついていけないとなってしまうのですね。
今はそういうスマホセントリックでどうやってスマホの中に、自分の会社のサービスを特にアプリのアイコンを1人でも多くの人に入れてもらうかがこの競争になっております。それが部品を通じてハードウェアの機能をスマホ上であらわしていくとこういう状況になっております。
VoIPの世界では主客が逆転した
それからもうひとつは、いわゆる通信会社、電話会社というものがですねVoIPの会社、スカイプとかですね。VoIPというのはインターネットプロトコルを使って、声もメッセージも出ていっちゃいますよ、ということです。
WaZappとかWeChatとか、非常に有名ですけれども、日本で言えばLINEですね。楽天がこの前買ったViber、ヨーロッパに強い会社もあります。あまりにものさばるというか、強くなって普及しているので電話会社も守勢に立たされて、今ではスマホを買ったときにLINEのアイコンを埋め込んでおくとこういうふうにして自分たちも便乗しようというところまで。
つまり主客は全く逆転してしまったということですね。それでこれに加えて、3D革命。メーカーズムーブメントそういう動きが出てきています。
個人でもメーカーになれるということで、これは3Dプリンティングとかそういうふうな新しい業態が出てきて、いわゆる最適ロットというもの、あるいは利益を出せる最小ロットというものが日増しに小さくなって今では昔の10分の1以下のボリュームでも利益が出るということになってきております。
これも従来的にですねロットを重視してやってきたメーカーからすると非常にしんどいということになると思います。
新しいエコシステムの必要性
それとインターネット空間とリアルな空間が融合してくる。IoTと言われますけど、Internet of ThingsとかIoE(Internet of Everything)とかすべてのものにですね―たとえば冷蔵庫の中にインターネットプロトコルを入れておいて使った物を全部チェックして自動的に注文に行くとか―そういう時代になってきています。
そういいながらすべてがインターネットに流れるのかというと実はオンライン・ツー・オフライン、オフライン・ツー・オンラインとか、行ったり来たりというのが少なくとも日本なんかの場合はポイントを通じて、非常に活発になってきております。
楽天ポイントというものをもらってですね。例えばサンクスで買うとか、そういうことをする、そうするとポイントがついてサイバー上でも使える。これはTポイント、Pontaこういったものですね、三菱商事系ですけどもこういったものがですね、リアルな店でもサイバーの店でもポイントが貯まっていくという。
そうすると日本の商流というのが系列化されていきます。そういった中で、この中に入るのか。自分で新しいエコシステムをつくるのかということが必要になってきております。
ということで非常に駆け足ではありましたけれども、21世紀の主としてサイバー側から出てきている世界同時並行的な大きな変化というものを見ていただきました。では、日本企業はどうしたらいいのか? 
 
 
なぜ日本企業は韓国、台湾、中国企業に負けた 2013

 

日本敗退の引き金になった理由は円高だけではない。ビジネスモデル転換の遅れ、リスクを取らないリスク、安易な合理的判断の先行。まずはここからの脱却が課題だろう。
昨今のウオン高傾向で韓国経済に斜陽の兆候が出始め、ウオン安で恩恵をこうむっていた韓国経済や韓国企業に、もう一度「日本に学べ」という認識が生まれつつあるとする論調を眼にするようになった。ここでまさか日本の経営者や企業人が、「やっぱり、韓国企業が日本企業を凌駕したのはウオン安のせいだったか(負けたのは、円高のせいだ)」と安堵することはないと思うが、われわれ日本人には往々にして喉もと過ぎると熱さを忘れ、さらに自分に都合の良い解釈をする傾向があるので、あえて注意を喚起したい。
日本企業が数年にわたって次々と韓国や台湾、中国の企業に敗退したのは、円高のせいではない。円高が直接の引き金になったことは否めないが、他に根本的原因がある。その原因として考えられるキーワードは、ビジネスモデル、リスク、合理的判断であり、中でもビジネスモデルが最も重要で基本的テーマである。これらについて、以下検討する。
まず、ビジネスモデルに関わることについてである。日本企業は、中国企業などから資本参加ないしは株式買収を頻繁に仕掛けられている。日本の各産業分野における代表企業である池貝、ラオックス、本間ゴルフ、レナウンなどが経営不振に陥り、中国企業から出資を受け、その傘下に入っている。最近では、シンガポール塗料大手ウッドラム・グループが日本ペイントに事実上の買収提案をした。
さらに主な例として、生産コスト削減を目的にNECが2011年、中国レノボ・グループが51%、NECが49%出資する合弁会社を発足させ、その100%子会社としてパソコン事業を統合した。当初は対等と報道されていたが、実は統合から5年後にレノボ側がNECの合意があれば合弁会社の全株式を取得できる、となっていることが明らかになった。
事業再編の一環として、パナソニックは三洋電機の白物家電事業を、2011年中国の家電大手ハイアール(海爾集団 / Haier)に約100億円で売却した。さらに懸案テーマとして、電子機器受託生産で世界最大手の台湾メーカー鴻海(ホンハイ)グループがシャープ株を取得する話が出て、その交渉期限を3月末に控え、シャープが最近レノボ・グループとテレビ事業で提携する方向で調整に入ったともいわれる。
そして、ものの見事にいずれも成功している。レノボは昨年、パソコンで一時的にHPを抜いて世界首位に躍り出た。ハイアール傘下の旧三洋の現場は、活気を帯びているという。ホンハイ出資のシャープ堺工場は、短期間で黒字化した(日本経済新聞2013.1.22.)。
シャープは液晶テレビやパネルを事業の柱として投資を続け、亀山工場に3500億円、堺工場に3800億円もの巨額投資をしてきた。円高や電力問題もあったが、サムスン電子など韓国勢との激しい価格競争による年30%ほどの製品価格下落に耐え切れず、液晶パネル事業が赤字に陥り、50%の減産体制も強いられ、遂に2012年3月期連結決算で3760億円の赤字に沈んだ。業績の回復を目指して、ホンハイと出資交渉を始めた。その後シャープの株価急落などがあって交渉が膠着状態にある。その間、シャープが米半導体大手クアルコムの出資受け入れを決めている。シャープが2月1日発表した2012年10〜12月期決算では5四半期ぶりに営業黒字を達成したとされるが、今年9月の2千億円の社債償還や10%を切る自己資本比率など経営環境は依然として厳しい(朝日新聞2013.2.2.)。
シャープが凋落した原因として、円高や電力問題、作れば売れる時代の終焉などが考えられるが、根本的には自前主義の垂直型経営という事業モデルの限界を示す。昨年3月27日都内の記者会見で奥田次期社長(当時)は、「これまでのようにシャープが、研究開発から設計、生産、調達、販売、サービスまでのすべてのバリューチェーンを手がけるのではなく、今後はこのバリューチェーンのなかに協業を含めることが大切になってくる」。「シャープ単独の垂直統合では限界があった」と語っている。
同じことが、パナソニックのテレビ事業でも言える。パナソニックの薄型テレビ事業は2012年3月期で4年連続赤字、今期も赤字の見込みだという。その原因として、1つは数量拡大を追求する販売戦略、2つには巨額の設備投資負担である。その背景には、パネル製造からテレビ組立まで一貫して自前主義にこだわる“垂直統合型”の事業モデルがある。
日本企業がテレビ事業で苦戦する中、韓国サムスン電子が液晶とプラズマテレビの薄型テレビで世界シェア26%以上と2006年から6年連続世界一である。背景には、1997年の韓国通貨危機がある。それを契機に韓国はIMFの管理下に入り、IMF指導の下に1業種に参入できる企業を絞り保護したことが、家電メーカーがひしめく日本と異なる。しかし、そうなるとメーカー数が少ないため垂直統合型経営に傾斜しやすいが、彼らは部品を買ってきて組み立てるという、水平分業型経営の発想に全く抵抗感はない。
半導体事業が韓国企業などに敗れたのも、同じ原因だとされる。日本の電機メーカーが半導体産業成長期の垂直統合型産業構造に過剰適応した結果、水平分業型への転換に立ち遅れたことに原因がある。
1980年代末に韓国メーカーが半導体事業に参入し、その後台湾メーカーに製造委託するファンドリー・サービスの時代を迎える。従って、日本半導体メーカーが1990年頃コスト競争で韓国、台湾に敗れた時点で、製造部門を国内にこだわらずアジアに移転し、ファブレス化(開発設計に専念)すれば、生き残ることができたかもしれない。事ほど左様に、日本特有の垂直統合型経営の事業モデルには問題がある。事実、売上高当期利益率の実績比較で、「垂直統合型経営」と「水平分業型経営」の間には、明確な差が見られる。
これらは、ビジネスモデルの問題である。冒頭紹介の池貝などが株式買収されるに至った諸例についても、ビジネスモデル、名門意識、過剰投資などの問題がある。日本企業は、ビジネスモデルの選択を誤ったのである。それは、日本の経営者はビジネスモデルを学ぼうとしないことによる。そこには、主に2つの誤りがある。
1つは、日本人のおごりである。尹大栄静岡県立大准教授の面白い分析がある(Google サイト「弱くなった日本企業、元気な韓国企業」 尹大栄 DAEYOUNG YOONより)。「1989年の夏と記憶しているが、神戸大学経営学部のセミナーに招かれた日本のある大手半導体メーカーのトップが“最近、韓国で細々と半導体を作り始めている財閥系企業(三星電子)があるが、あれは取るに足らない”とコメントしていたことを、私は印象深く覚えている。まるで韓国企業などは競争相手にもならないと言わんばかりの発言だった」。
これが、日本人の共通認識である。そこには、覇者のおごり、ゴーイングマイウエイの頑なな姿勢がある。己のビジネスモデルが最高として、他者を否定する。思考が膠着している。従って、古いビジネスモデルに執着することになる。
2つには、「ビジネスモデルの構築とは、経営におけるサイエンスとも言え」、「まず仮説から出発し、実験によって検証し、必要に応じて修正するという手順である」。しかもビジネスモデルには、差別化によってライバルより優位に立つという戦略が必要だ。でなければ、例えば安値競争に陥って消耗する。その認識が、経営者にはない。経営者は、ビジネスモデルについての認識も研究も足りないから過ちを犯す。傲慢で唯我独尊である上に、検証もせず従って修正もしない、戦略もないビジネスモデルなど用をなさない。
次は、リスクに関わる問題である。日本企業は、長い間リスクを避けてきた。半導体投資についても、日本が不況で控えていた時に、韓国企業が積極的に投資をしてシェアを急伸させたことは有名である。先の尹大栄準教授によると、韓国企業は不況のときに、他企業が投資を減らすのとは逆に、これと思う特定製品(事業)分野、市場(進出地域)に対して極めて大規模な資源投入を伴う積極的な投資をライバルに先行して実行し、景気が上向いたときに一気にシェアを拡大していくという、いわゆる「逆張り経営」が得意である。韓国企業がリスクに強いのは、グローバル市場での競争に勝ち抜いていかなければ生き残れない、という強い危機感を持っているからである。危機感に乏しく、リスクを恐れる日本企業の甘さと対照的である。リスクを取らないことがリスクである、というドラッカーの名言を思い出す。
もう1つのキーワードは合理的判断である。下手な解説よりも、また尹大栄準教授の鋭い分析を引用した方が良さそうである。日本企業が「バブル崩壊によって失ったのは資産価値だけではなかったのである。それまで日本企業の経営を支えてきた人々の気持ちというか、経営に対する基本的な姿勢、精神、あるいは規範とも呼ぶことができる“経営のエートス”が失われてしまったように思えてならない」。「頑張ってもあまり成果(利益)が得られそうにない分野(市場)からは早々と撤退する“合理的な判断”が重視されるように」なったと指摘する。傾聴に値する意見である。
最近は、事業撤退のニュースが相次ぐ。例えば電気メーカーの半導体、テレビ、カーナビ、HD-DVD、携帯電話、光ディスクなどからの撤退である。確かに明日を期待できない事業からの撤退は必須なことであり、日本メーカーの場合はむしろ遅きに失する感さえする。しかし、撤退する事業の反面、明日への新規事業に対する投資があるかというと、はなはだ寂しい限りである。結局、安易な合理的判断ばかりが先行しているのである。
さらに、高付加価値化という大義名分の下に、安値競争から安易に逃避しているのではないか。事実、撤退や逃避はするが、一方で高付加価値製品への投資に対して消極的で臆病な経営者を筆者は数多く見てきた。この背景にも、都合の良い合理的判断が垣間見える。
実は日本企業が得意としてきた技術面で、韓国メーカーが日本企業を凌駕し始めているという重大な事態が起きている。例えば1月8日から開催された世界最大の家電見本市CESで、韓国LG電子は、薄さわずか4ミリで価格1万2千ドルの55型有機ELテレビを3月に北米で売り出すと発表した。日本メーカーは、すでに周回遅れである。さらに、サムスン電子とLG電子はスマートフォンと白物家電を連携させたスマート家電を、日本勢を出し抜いて打ち出した。これらの背景の一つとして、長い期間にわたってリスクを避け、あるいは合理的判断を先行させてきたという日本企業の体質があることは否めまい。
ビジネスモデルについて十分学ぶことなく、その上に傲慢さが加わって多くの選択肢や検証・修正、そして戦略の反映を否定し、加えて危機感も持たずにリスクを回避して、安易な合理的判断に走る経営者では、日本企業はこの円安で一息ついたかに見えても基本的に立ち上がれないだろうし、いずれまた訪れるであろう逆境で、新興国企業にさらに打ちのめされるだろう。 
 
 
「日本の家電」に未来がない理由 2012/8

 

製造業に乗り出す「ITの雄」
「製造業」の定義が急速に変化している。その転機は2007年にあった。
アマゾンという巨大ネット企業を考えてみよう。この会社は1990年代に、オンライン書店としてスタートした。インターネットのウェブサイト上で本を選んでクリックすると、宅配便で本が送られてくる。非常にシンプルなEC(電子商取引)のビジネスだ。これにアマゾンは徹底的な技術的改良を加え、ワンクリックで注文が完了する仕組みや、顧客の過去の購入履歴から最適なお勧めを提示するレコメンデーションなどを実現した。さらに書籍から音楽CDやDVD、さらには日用雑貨やギフト、果ては食料品にまで品ぞろえを増やし、成長を続けてきた。
そしてこの生粋のEC企業は2007年、新たなビジネスモデルへと乗り出した。この年、オリジナルの電子書籍リーダー「キンドル」を発売したのである。このキンドル発売の意味は二つある。一つは同社が電子書籍というデジタルコンテンツの販売に乗り出したことであり、そしてもう一つは、キンドルを製造発売する製造業へと乗り出したことだ。
キンドルは発売から何度となく改良を重ね、さらに昨年秋にはカラー版の「キンドル・ファイア」も発売し、人気を呼んだ。年末のクリスマスシーズン前後に500万台近くも出荷し、一時的にはタブレット市場の16.8%ものシェアを獲得し、アップルの人気商品「iPad」に次ぐ2位につけたほどだった。日本の電機メーカーがグローバル市場で販売しているタブレットにほとんど存在感がなく、市場シェアもわずかしかないことを振り返れば、いまやアマゾンは日本の冠たる大手電機メーカーよりも力のある製造業になったとさえいえる。
これはグーグルも同様だ。同社ももともと、製造業とはまったく無縁のビジネスからスタートしている。米スタンフォード大学の大学院生だった創業者二人が90年代末、検索エンジンのサービスを開発したのが同社の始まりだ。その後、検索エンジン広告という効率のよいビジネスモデルを導入して成功を収め、従来型の広告代理店の規模をはるかに凌ぐ世界最大のネット広告企業となった。
この卓越したネット企業は2007年、「アンドロイド」という携帯電話向けのOSを発表する。この段階では、グーグルがやったのはOSというソフトウェアの開発でしかない。だが2010年初頭には、アンドロイドOSを搭載した自社販売のスマートフォン「ネクサス・ワン」を、英米や香港などで発売した。実際には、グーグルが開発したのはソフトの部分だけで、ハードの設計や組み立ては台湾のメーカーHTCが担当したのだが、製品は「グーグル」の刻印が入れられて販売された。
残念ながらこのネクサス・ワンはあまり売れず、半年ほどで販売終了になってしまう。だが製造業への進出を同社は諦めていなかったようで、今度はオリジナルのタブレット製品「ネクサス7」を発表。やはり台湾のメーカーASUSが組み立てを担当し、この7月から全米で発売されている。
アマゾンもグーグルも、インターネットの業界で大成功を収めた企業である。ECやネット広告で十分すぎるほどの収益を得ており、売上げや時価総額は圧倒的だ。その巨大企業2社が、なぜ畑違いの製造業に乗り出してきているのだろうか?
そもそもスマートフォンや電子書籍リーダー、タブレットといったデジタル家電の世界は、ただでさえ過当競争が酷く、韓国や台湾、中国のメーカーが入り乱れて安値合戦を行なっており、利益を出すのが非常に困難な分野だ。ソニーやパナソニック、シャープなど日本の家電メーカーが大赤字に陥り、苦戦しているのもそういうグローバル市場の「大混戦」が背景にある。
だとすればなぜアマゾンやグーグルは、わざわざ火中の栗を拾いに行くような経営戦略を採用しているのだろうか? すでにタブレットなど大量に出回っているのにもかかわらず、なぜ両社は巨額の開発費を投じてタブレット新製品を市場に投入しているのだろうか?
“ハード”は歯車の一つ
その答えは、「ネットワーク」である。アマゾンやグーグルは、自分たちをたんなる「モノづくり」の企業とは捉えていない。そもそも両社とも工場をもっているわけでなく、グーグルに至っては設計まで外部の台湾メーカーに任せている。だから「モノづくり」へのこだわりなど、まったくもっていない。
そうではなく、彼らはタブレットやスマートフォン、電書(電子書籍)リーダーなどのハードウェア製品を、自社の「ネットワーク」の一部を構成する「歯車」だと考えているのだ。
どういうことだろうか。アマゾンの電書リーダー・キンドルで考えてみよう。「キンドルストア」で購入された本は電書リーダーのキンドルだけでなく、ウィンドウズやマックが動くパソコン用の専用アプリケーションソフトからも読むことができる。iPhoneやiPad、アンドロイドなどのタブレットやスマートフォン向けのアプリも用意されている。さらにはアプリをいっさい起動しなくても、パソコンのウェブブラウザがあれば本の中身が読めるシステムさえある。とにかく、本を読むためのありとあらゆる手段が用意されているのだ。
いったんキンドルストアから本を購入すれば、その本のコンテンツは電書リーダーのなかだけでなく、パソコンやiPhoneのアプリにも自動的に表示されるようになる。ケーブルを接続して自分でコンテンツをコピーしたり、移動したりする手間はいっさいない。つまり機器間の同期は、すべて自動的に行なわれるということだ。
さらに「読み進めたページ」といった読者側の行動までも、きちんと機器間で同期される。たとえばある日、キンドルのリーダー上である本を120ページから128ページまで読み進めたとすると、次に同じ本をパソコンのアプリで開いてみると、ちゃんと128ページが表示されている。パソコンでさらに142ページまで読み進めれば、次にキンドルリーダーで開くとちゃんと142ページが表示される。また、挟んだ「しおり」の場所や書き込んだコメントなども、当然のように同期してくれる。
だからアマゾンのキンドルというのは、たんなる「電書リーダー」という製品を販売するビジネスではない。キンドルストアを中心として電書リーダー、パソコンのアプリ、スマホやタブレットのアプリが大きなネットワークを形成し、そのなかにいる読者が、自分の好きなときに好きな機器を使って、本を読み進められるような仕組みが、うまく作り上げられている。そういうネットワーク環境を作り上げるビジネスなのだ。
このネットワークの中心にあるのは、電書リーダーのキンドルではない。キンドルストアという電子書籍販売システムだ。このキンドルストアを中心としたある種の「生態系(エコシステム)」のようなものを円滑に動かすための歯車の一つとして、キンドルという電書リーダーが用意されているのにすぎないのである。これが、私が先ほど説明した、「製品はたんなる歯車にすぎない」という意味だ。
このネットワーク化された構造をビジネスにするという戦略を最初に発明したのは、マイクロソフトだ。マイクロソフトは1990年代、OS「ウィンドウズ」でパソコンの世界を独占支配したことで知られている。この時代、「収穫逓増の法則」という言葉が流行ったことがあった。通常、たとえば農産物では収穫が行なわれれば行なわれるほど収穫物が減っていく(収穫逓減)のに対し、インターネットの世界では収穫すればするほど収穫物が増えていく、という考え方である。
こういう法則が成り立つ要因は二つあり、第一にはデジタル製品の場合にはどれだけ生産しても、たんなるコピーでしかないため原材料が枯渇しないこと。そして第二には、ネットワーク効果が働くことだ。
ネットワーク効果というのは、たとえば80年代のビデオカセット戦争を思いだすと理解しやすい。ソニーのベータは優秀な規格だと考えられていたが、営業力の強かったVHS陣営が市場シェアを伸ばしていき、VHSが増えれば増えるほど、「みんなと同じVHSにしないと不便だ」と考える人がどんどん増えていった。そしてついにはベータを駆逐してしまったのである。つまり「人の使っているものをみて自分も同じものを使う」というのがネットワーク効果であり、これによって収穫逓増法則は強化されていく。
ウィンドウズもまったく同様で、利用者が増えれば増えるほど使い方などの情報も増え、対応アプリも充実し、利用者はさらに加速的に増えていく。この結果、90年代末にはウィンドウズの市場シェアは90%以上にまで達する結果となった。
マイクロソフトが巧みだったのは、自社はOSのビジネスだけに特化し、その上で動くアプリに関しては他社にオープンに開放したことだった。これによってアプリビジネスが市場として花開き、これがますますウィンドウズの支配力を強化していくという相互作用を生んだ。
このマイクロソフトの手法をさらに推し進めたのが、2000年代のアップルである。アップルは携帯音楽プレーヤー「iPod」の戦略に、このネットワーク構造を大胆に導入した。この結果、それまでこの分野で大きな市場シェアを占めていたソニーのウォークマンを駆逐してしまったのである。
ウォークマンは製品の完成度は素晴らしく、日本の製造業が誇る「匠のわざ」が込められた典型的な日本的技術製品だった。ウォークマンがまだ隆盛を誇っていた2001年、発売されたばかりのiPodに触れた日本の技術者には「つくりが雑だし、細部が美しくない。こんなものは日本では売れないだろう」と捉える人も多かった。製品単体での完成度でいえば、iPodよりもウォークマンのほうがはるかに高品質だったのである。
しかしウォークマンは、その後数年間のうちにiPodにみごとに蹴散らされた。理由は簡単だ。それはアップルがiTunes Storeで楽曲を購入し、それをiTunesというアプリで管理し、iPodやCDプレーヤーやパソコンなどさまざまなデバイスで聴くという非常に使いやすいネットワーク構造を構築してしまったからだ。
考えてみればそれ以前の音楽は、「カセットテープをウォークマンにセットする」「CDをCDプレーヤーにセットする」「CDをカセットテープやMDに録音する」といった方法で聴かれていた。これは音源メディアとプレーヤーが一対一でセットになった単純な図式である。
しかし音楽がCDやレコードでの販売ではなく、インターネット経由の配信になってくると、この図式は大きく変わる。ネットで配信されたものを、音楽プレーヤーやパソコンにダウンロードしたり、あるいはCD-Rに焼き付けるなど、複数の方法で聴かれるようになる。つまり音源とプレーヤーが「一対多」の関係に変わるのだ。そうして、こうした複雑化した関係性は、従来のような「一対一」図式では対応できなくなり、そこでネットワーク構造が必要になってくるということになる。
このような「一対多」をネットワーク構造化する仕組みは、いまやコンテンツビジネスの多くの分野を覆うようになってきている。その一つが電子書籍で、アマゾンのキンドルは、アップルが音楽分野で成し遂げたネットワーク構造化とまさにまったく同じことを電書の分野で実現してしまっている。
利用者のライフログを集める
このようなネットワーク構造化は、今後はテレビなどの動画の世界へと進み、さらにはECにも広がっていくと考えられている。
冒頭でも述べたように、アマゾンは電書リーダーのキンドルに続いて汎用のタブレットである「キンドル・ファイア」を昨年販売し、さらに最近は独自のスマートフォンを開発中だと伝えられている。
この戦略は明確で、書籍と動画、音楽、さらにはECをすべてネットワーク構造化していこうということだ。つまり利用者がどんな場所、どんな時間、どんな場面にいるときでも、ストレスなしに電子本を読めたり動画を観たり、Amazon.comで商品を購入できるようにしてしまおうということなのである。そのためには電書リーダーだけでは不足で、だからこそ汎用タブレットやスマホという「歯車」をさらにはめ込んだ、ということなのだ。
キンドル・ファイアではさらに、利用者がキンドルストアやAmazon.comをみているときだけでなく、ほかのウェブサイトを閲覧しているときの情報まで収集する方向へと進んでいる。これについてアマゾンは公式には否定しているのだが、利用者がどんなウェブページをみて、どんな動画や音楽を楽しみ、どんな商品を購入しているのかというライフログ(生活行動記録)を取得できるようになっている可能性があるのだ。そしてキンドル・ファイアはそれらの情報を自動的にアマゾン側に送信している。これは従来のインターネット・エクスプローラーやファイアフォックス、クロームといった人気ウェブブラウザでは不可能だったことである。
これによって、「利用者が次に何を求めているのか」「何を買おうとしているのか」ということまで予測してしまうことも可能になる。これこそが最近IT業界で流行語になっている「ビッグデータ戦略」だ。
ここまで進めば、アマゾンのネットワーク構造は完成形に近くなってくる。つまり利用者をストアやブラウザやタブレットやPC、スマホなどありとあらゆる機器・サービスで包括的に取り囲み、自社のネットワークのなかに完全に没入させてしまうという世界だ。
だからこの先にやってくる世界では、製造業とIT業界の境目はいっさい存在しない。ITと製造は完全に融合し、ITを制する者が製造も担っていくというビジネス構造に変わっていく。ネットワーク構造がわかっていない製造業は駆逐されていくだろうし、機器という適切な歯車を用意できないIT企業も衰退していく。
これはITのビジネスがめざす一致した方向性だ。これがわかっているからこそ、アマゾンだけでなくアップルやグーグルも躍起になって新たな機器・サービスを開発し、利用者を包括するネットワーク構造の構築をめざしている。最近はSNSのフェイスブックでさえも自社オリジナルのスマートフォンを開発中だと噂されているが、これもまったく同じ夢を見ているのである。
これまでみてきたように、製品というのはいまやビジネスの大きなネットワーク構造のなかに位置する一つの歯車、一つのピースにすぎない。もちろんアップルのつくっているマックやiPadのように、見た目のデザインや美しさは重要だ。だがそうした美学は、いってみれば消費者を惹きつける「蜜」のようなものであり、使い勝手のよさは歯車を円滑に回すための「潤滑油」のようなものである。
それらは大事な要素だが、しかしネットワーク構造においては本質そのものではない。コンテンツを発信し、商品を販売し、さらに情報を消費者側からも集めるためのチャネル(経路)が、いまや電子機器の本質となっているのだ。
「技術力」の定義が変わった
振り返ってみれば、家電のデジタル化が劇的に進んだこの十数年、日本の家電メーカーは最後までこのことを理解できていなかったように思える。
たとえばテレビを考えてみればわかる。音楽や電子書籍と同じように、いまテレビは劇的にネットワーク構造へと進んでいこうとしている。「スマートテレビ」と呼ばれる潮流がまさにそれだ。そこではテレビ受像機はたんなる歯車となり、テレビ番組などの動画を配信するストアやプラットフォームこそが中核となっていく。だからテレビ受像機に今後求められていくのは、ネットワークとの滑らかな連携であり、歯車としての動作を支える秀逸なインターフェースだ。
しかし、日本の家電業界はそうした潮流が理解できず、韓国や台湾、中国メーカーとの安売り競争に敗北すると、3D化に力を入れるようになった。だが3D化などコンテンツがそう簡単に揃うはずもなく、あっという間に失速してしまった。
この失速でさすがに目覚めるかと思いきや、今度はハイビジョンをさらに高画質にした2K4Kという新しい規格に力を入れるようになっている。ハイビジョンでさえもまだ普及しきっていないのに、さらにその先の超高画質を求める消費者がどのぐらいいるというのだろうか。
世界の潮流がわからず、過去に成功してきた製品単体の多機能化、高機能化に邁進し、戦艦大和のように滅亡に向かって突き進んでいるというのが、いまの日本の家電業界の現状なのだ。
振り返ってみれば、日本の産業界は「高い技術力」「匠のわざ」という過去の成功体験にあまりにも引きずられてしまったのかもしれない。いまグローバル市場で求められている技術力は、細部をすみずみまで精巧に仕上げる細工職人の腕のようなものではなく、ネットワーク構造をいかに構築できるかというものだ。「技術力」という言葉の定義そのものが変化してしまっているのである。
日本語の「技術」は、どうしても手先の細工や匠のわざ的なイメージが付きまとう。本質や構造それ自体を変化させるのではなく、目に見える部分だけを工夫するということが「技術」だと思われがちだ。たとえば日本ではパソコンのワープロソフトや表計算ソフトが、たんにキレイな文書をつくるための清書ソフトとして使われているケースが多いというのは、それを象徴しているように感じる。
しかしワープロや表計算の本質は、清書ではなく、文書やデータを構造化し、機械でも読み取れるように標準化することである。これこそが技術の本質だ。技術とは見た目を変えたり手先を工夫することではなく、構造を変化させ、本質そのものを別のものにしてしまうことにあるのだ。
このような「技術」に対する考え方を根底から変え、製品をつくる際のマインドセットをがらりと変えないかぎり、日本の家電エレクトロニクスには未来はないだろう。小手先の「こうすれば何とかなる」「こういう戦略がある」といった工夫で何とかなるようなレベルの話ではないのだ。  
 
 
日本からジョブズが生まれない4つの理由 2012
 戦時中から変わらない日本的組織の謎

 

今、再び脚光を浴びる古典的名著『失敗の本質』。日本軍の組織的敗因を分析した同書は、現代の日本企業の閉塞感の原因も大いに示唆している。当初、無敵を誇った零戦が米軍に攻略されて打ち落とされたように、かつて世界を席巻した日本企業もまたグローバル競争の中で敗北を喫したまま、いまだ浮上できていない。なぜ日本は最初の善戦むなしく、最後には敗れてしまうのか。なぜ、日本から新しいイノベーションは生まれにくいのか。その原因は、日本的組織の特性と密接な関係がある。連載第3回は、イノベーションの芽をつぶす日本的組織について。
日本が陥る閉塞感と、日本的組織の根深い関係
日本企業が苦戦しています。
2012年3月期の決算で、日本を代表する家電メーカーであるパナソニック、シャープ、ソニーがそろって大幅な赤字であることが報じられたことは皆さんの記憶に新しいと思います。パナソニック7,000億円、シャープ2,900億円、ソニーは2,200億円という巨額の赤字です。
昨日(4/10)は、その見通しも下方修正され、ソニーは5,200億円、シャープは3,800億円の最終赤字が発表され、ソニーの1万人規模のリストラも話題となりました。
一時は世界市場を席巻した日本の家電メーカーは、なぜこのような苦境に陥ってしまったのでしょうか?
かつて日本製DRAM(メモリ)が世界シェアの1位だった時期があるにも関わらず、日本に唯一残ったDRAM専業メーカーのエルピーダメモリは、今年2月に会社更生法を申請。現在は支援企業の応札が行われています。
なぜ「高い技術力を誇る」と言われる日本企業が今、市場で敗北を重ねているのでしょうか?
一方でiPhone、iPadなどの大ヒット商品を展開するアップルは、昨年2011年8月には時価総額世界一の企業となり、現時点でもアップル製品は世界中で高い人気を誇っています。昨年11月に死去したアップルの元CEOで伝説のイノベーターであるスティーブ・ジョブズの自伝は日本でもベストセラーとなりましたが、多くの日本人がジョブズやアップルの起こしたイノベーションに強い関心を示している証拠かもしれません。
日本企業は技術で勝ちながらも、イノベーションを起こすことができず事業(販売)で負け続けているとよく言われますが、この指摘は正しいのでしょうか? ならば、どうすれば日本企業は再び競争力を取り戻せるのでしょうか?
名著『失敗の本質』は、日本にイノベーションが起きづらく、組織としてイノベーションの芽をつぶしてしまう根深い問題があることを明らかにしています。今回は、『失敗の本質』が解き明かした日本的組織の特性とイノベーションの関係について紹介しましょう。
閉塞感を打ち破れない企業が陥る「2つの壁」
なぜ日本企業は苦戦し、長い閉塞感を打破できないのでしょうか。
イノベーションについて語る前に、一般的に長期間にわたり問題解決ができない場合、以下の2つのどちらかの状態に陥っていると考えられます。また、非常にやっかいな問題として、この状態に陥ったことに気がついていないことが多いのです。
(1)必要な対策自体が見えていない
問題があり苦戦していることは理解しながら「問題解決につながる対策」自体が見えていないケースです。この状態では、問題解決への積極的な行動を取ることができず、精神的な混乱の中で過去続けてきたことを惰性で続けることが多いのではないでしょうか(そして、次第に問題がないかのように振る舞い始めます)。
このような組織など存在するのかと思う人もいるかもしれませんが、問題があると理解しても対策を考案できないことで、危機から目を背けて「昨日と同じ今日」を維持しながら誤魔化している組織は少なくありません。
大東亜戦争後期、劣勢を打破する方策を発見できない日本軍内では、些末な事務的事項の正確性に、極端に固執する将校が増えていたと言われています。本当の問題から目を背ける歪んだ心理が働いていたのでしょう。
(2)対策として追いかけているものが「実は間違っている」
今直面している問題に対して、企業・組織として取るべき対策の方針が既に決まり、その実現に向けて活動していたとします。けれど、継続して問題が解決されない場合、その集団が想定している解決策自体が誤っていると判断すべきでしょう。
努力を続けて結果が出なければ、その努力は問題解決の鍵ではないことになります。風邪をひいているのに、胃腸薬を飲んでも治ることはなく、あなたが風邪だと思い込んで風邪薬を飲んでも、本当は別の病気であったなら、風邪薬を飲み続けても体調は改善しません。
間違った努力を続けて疲弊するのではなく、正しい努力が必要なのです。第1回の記事でご紹介した、問題自体が誤っている可能性を考える「ダブル・ループ学習」が必要な所以です。
以上の2つのどちらの状態であっても、組織は直面している問題を解決することができません。この状態のままであれば、時間の経過と共に問題はますます悪化していくだけでしょう。
日本の組織が陥りがちな、イノベーションを妨げる4つの特性
次に『失敗の本質』と戦史から推測できる、日本人と日本的組織がイノベーションを苦手とする要因について4つ挙げてみましょう。
(1)練磨・改善の徹底追求
開戦当初、日本軍は白兵銃剣主義を極めることで、香港、東南アジアなどでは快進撃を続けました。また当時の海軍は「月月火水木金金」、つまり週末がないほどの猛訓練を繰り返したことで有名です。
日本の武道が「型」を繰り返し学ぶことで、いつしか型を離れる達人となるように、日本軍は猛訓練により兵士を達人へと育成する思想を持っていましたが、これはのちに過度の精神主義につながり、装備の近代化や科学合理主義を妨げたと『失敗の本質』でも指摘されています。
(2)成功体験の再生産
日露戦争で日本海海戦の勝利に貢献した参謀として知られる秋山真之が起草した「海戦要務令」は、日本海軍では虎の巻のような扱いを受け、ある種の経典のように学習されています。
ところが、第一次世界大戦時と同じ運用方法で大東亜戦争を戦った日本の潜水艦は、戦果を挙げることなく撃沈されていきます。その理由は、米軍の駆逐艦、航空機が対潜水艦攻撃を進化させていたからです。
環境が変化したにも関わらず、過去に成功した行動自体をそのままコピーして実行しても、確たる戦果をあげることができないのは、現代ビジネスにもまさに共通することではないでしょうか。
(3)最前線の実情を無視した上層部の意思決定
日本軍のいわゆるエリート参謀の中には、現地最前線の実情を無視した極めて無謀な作戦を平気で立案した人物が複数存在しています。彼らは現実が変化することを受け入れず、過去に学習した特定パターンの作戦に固執し、教条主義的な思考で敗北を生み出していきます。
イノベーションは夢物語を語ることではなく、現実社会の実情を冷徹に受け入れることで創造されるはずです。武器弾薬や食料がまったく届かない激戦地に、机上の空論のような作戦を押し付ける構造では、劣勢を逆転できるイノベーションが生まれるはずがありません。
(4)異なる意見やアイデアをつぶす組織風土
先にご説明した「海戦要務令」が、ある種の“経典”のような形で組織内に認識されることで、この思想に逆らうアイデア、行動をつぶすような組織風土が形成されることになります。
過去の考え方、やり方で成功できた時期が長ければ長いほど、過去の手法を神聖視する傾向は強化されていきます。その結果、危機を前にしても以前と異なるアイデアや変化に対応するための議論を、組織全体でつぶす選択をしてしまうことになるのです。
無敵の零戦を封じ込めるために米軍が行ったこと
また、戦史からはイノベーション創造の仕組みも見え隠れしています。
零戦は1940年の登場時に中国戦線へまず投入されましたが、当初は圧倒的な性能差で無敵と言えるほどの優秀さを発揮します。初陣の日中戦争では、昭和15年7月から翌年9月までの期間に第12、第14空零戦隊で合計撃墜数103機、地上撃破163機、一方で零戦の被撃墜はほぼ皆無という驚異的な戦果でした(『零式艦上戦闘機』/学習研究社より)。
日本海軍の零戦は(一時期ですが)、米軍が唯一、一対一で遭遇した場合は逃げてもいいと味方パイロットに通達していた戦闘機だったのです。
しかし1942年7月、不時着した零戦がほぼ無傷で米軍に鹵獲(ろかく)され、アメリカ本国でさまざまな性能テストが行われてから状況は大きく変わります。
軽量さゆえの「旋回性能」が極めて優れているという結果等を得て、米軍の零戦対策は一気に進化します(ただし、ミッドウェー作戦、珊瑚海海戦を含めた空戦で、米軍側は段階的に零戦への戦闘法を改善していたことも指摘されています)。
米軍は零戦と同じ「軽さ」「旋回性能」を追求せずに圧勝した
軽量さゆえの高い旋回性能を持つ零戦の「強み」を理解したときに、米軍はさらに軽量で旋回性能の高い戦闘機の開発を目指したでしょうか?
徹底的な分析で、米軍は日本の零戦の「強み」を真似したでしょうか? 軽量化のために防弾装備をなくし、空戦性能を極めた戦闘機を設計したでしょうか?
いいえ、違います。
米軍は零戦の中に内在する「強み」を分析し、その強みが発揮されない「新しい強み」を戦場に導入して勝利を収めていくことになります。例えば、以下のような、零戦に対して優位となる「新しい強み」を生み出したのです。
・零戦1機を2機編隊で攻撃する「サッチ・ウィーブ戦法」
・大馬力エンジンでの高速、高防弾の「新型戦闘機F6F」
・零戦が「左の急旋回」が苦手であることによる回避方法
・「最新のレーダー」を使う待ち伏せ方法
・近くをかすめるだけで撃墜できる「VT信管」
また、零戦対策と似ているものに、日露戦争以降、日本軍の十八番と言われた「夜襲」への対策が挙げられます。日本兵は夜襲のとき、地下足袋を履くことで音もなく近づき、闇の中で米兵が気づいたときには、暗がりのほんの数メートル先にいるような神出鬼没さで当初、米軍を驚嘆させました。
では、米兵も同じように地下足袋を履いて、音をたてないように近づいて日本軍に夜襲をかけたでしょうか。
いいえ、違います。
米軍は照明弾や曳光弾(夜間に弾道が光る)、鉄条網、集音器などの武器、装備を徹底することで、夜襲そのものが機能しない状況をつくり上げて日本軍を圧倒したのです(第2回で紹介したガダルカナル作戦はその典型例です)。
重要なポイントは、米軍が日本軍と同じ指標を追いかけていないことです。彼らは日本軍と同じ指標(強み)を追いかけるのではなく、新しい指標を戦場に導入することで「圧倒的な」勝利を生み出しているのです。
「高い技術」で勝っているからこそ、「他の要素」で負けている
現代ビジネスとイノベーションの話題に戻りましょう。
日本企業が特定製品分野において「高い技術力」を誇る場合、米軍であれば、その「高い技術」という同じ指標を真似る形で日本企業を追いかけることはしないでしょう。
恐らく消費者が購入を決める「別の新たな指標」を導入することで、圧倒的な勝利を目指すはずです。
かつてカラフルなスケルトン・デザインで登場したiMacは、パソコンの販売競争の指標に、性能ではなく「デザイン」を導入した初めてのパソコンとなりました。
携帯音楽プレーヤーとして強固な地位を築いたiPodは、日本のメーカーが得意とした音質の良さではなく、ダウンロードストアであるiTunesと組み合わせた新しいビジネスモデルで、圧倒的な優位性をつくり出したのです。
大東亜戦争の末期まで、日本は零戦への防弾装備を何度も否定します。最前線の日本人パイロットからは幾度も要望があったにも関わらずです。上層部は、軽量であることで高い旋回性能を発揮することが、零戦の勝利の要因だと思い込み続けていたからです。これは先に紹介したように、組織として追いかける問題の解決策自体が間違っていたことを意味しています。
ところが、これまで説明してきたように、米軍とその戦闘機は「零戦の旋回性が高くても」、その強みを問題としない新しい強み(指標)を導入することで圧勝することを狙い、実現していきます。
同じように、どれほど日本企業の製品技術が高くとも、海外メーカーはその強みを優越する形で新しい指標(iMacのスタイリッシュなデザイン、音楽ダウンロードの容易さ等)を導入することで圧勝している現状があるのではないでしょうか。
高い技術力も「市場での強み」に転換できなければ無意味
この議論は、単純に「高い技術力」を否定しているわけではありません。重要な点は、市場の競争に勝つ要素を追いかけることが必要であって、高い技術を誇りながらも販売競争で敗北を続けるのは、旋回性能という一つの要素で勝っていても、撃墜され続ける零戦と同じだということを理解していただきたいのです。
実は大東亜戦争末期にも、達人級の零戦パイロットたちの間では、米軍の最新鋭戦闘機に対して「一撃離脱」「低速での旋回性能」など、零戦の特性を極限まで活かす形で勝ち抜いた人物が存在しています。ちょうど高度な技術力をさらに磨くことで、これからも成功し続ける日本企業が存在するであろうことに似ています。
しかし、これは大多数の日本企業が通り抜けることができる道ではないと感じます。米軍が「高速」「重武装」「複数攻撃」という新しい指標を持ち込んだ時点で、平均以上の日本軍パイロットは加速度的に撃ち落されていったのですから。
米軍は日本軍の戦闘の中に、強さを生み出す要素を発見したら、それを凌駕する新しい要素を戦場に持ち込み圧倒しました。日本企業と日本人が、この新しい時代にイノベーションを使いこなして勝ち抜くためには、ビジネスという空中戦で使える「新しい指標」を見つけなければいけないのです。  
 
 
 
 
株式会社東芝  

 

日本の電機メーカーであり、東芝グループの中核企業。半導体メーカー国内最大手。
東芝は製品の製造からサービスに至るまでの間に、多岐に渡る子会社や関連会社を形成しており、東芝グループの中核に位置する巨大企業である。東芝の事業はテレビや半導体などの他にも、重電機、軍事機器、鉄道車両などの重工業分野にも事業展開をしており大手重電4社(日立製作所、パナソニック、東芝、三菱電機)の一角と呼ばれ、世界的知名度を誇っている。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、炊飯器など家電製品の国産化第1号の製品が多く(電子レンジと炊飯器以外は1930年代に開発された)、白物家電の日本におけるパイオニアであった。だが、2015年に発覚した粉飾決算事件を契機とし2016年に白物家電事業は一部株の売却によりブランドのみとなり、医療機器事業は売却された。
電機メーカーとしては、最初に委員会設置会社に移行した企業でもある(移行した2003年当時は、委員会等設置会社。現在の指名委員会等設置会社)。委員会設置会社となってからは、会長は代表権を有さない取締役会長となっていたが、2016年6月より代表執行役会長を新設した。歴代の社長ら役員は、財界活動に積極的であることも知られている。石坂泰三(第4代社長)と土光敏夫(第6代社長)が経済団体連合会会長に就任し、岡村正(第14代社長)が日本商工会議所会頭に就任するなど、財界四団体のトップを輩出している。そのほか、西室泰三(第13代社長)は日本経済団体連合会のナンバーツーである評議員会議長に就任し、佐々木則夫(第16代社長)が現役社長の頃から内閣府経済財政諮問会議議員に就任するなど、日本の政財界に強い影響力を及ぼしている。特に石坂泰三は「財界総理」との異名を持つほどの影響力を誇り、東芝が財界で重きをなす礎を築いた。
東芝は、三井グループの構成企業であり、二木会(三井グループ傘下各社の社長会)・月曜会(三井グループ各社の役員間の相互親睦と情報交換を目的とする会合)・三井業際研究所・綱町三井倶楽部に加盟している。
歴史
創業者の、初代田中久重(1799年 - 1881年)は、からくり人形「弓曳童子」や和時計「万年時計(万年自鳴鐘)」などを開発し、「からくり儀右衛門」として知られる。初代久重が東京・銀座に工場(諸器械製造所)を興し、弟子であり養子の田中大吉(後の2代目久重(1846年 - 1905年)が東京・芝浦に移転させた。この工場の技術者の中に、後の沖電気工業創業者・沖牙太郎や池貝創業者・池貝庄太郎、宮田工業創業者・宮田栄助らがいた。
1875年(明治8年)- 初代田中久重が東京・銀座に電信機工場を創設。
1882年(明治15年)- 田中大吉(後の2代目田中久重)が東京・芝浦に「田中製造所」を設立。
1890年(明治23年)- 藤岡市助、三吉正一が東京・京橋に「合資会社白熱舎」を創設、日本で最初の一般家庭向け白熱電球の生産を開始する。追従する他社を寄せ付けず市場をほぼ独占していた。
1893年(明治26年)- 三井財閥より藤山雷太を招聘し、田中製作所から「芝浦製作所」として再スタート。
1896年(明治29年)- 合資会社白熱舎が「東京白熱電燈球製造株式会社」に社名変更。
1899年(明治32年)- 東京白熱電燈球製造株式会社が「東京電気株式会社」に社名変更。
1939年(昭和14年)- 重電メーカーの芝浦製作所と弱電メーカーの東京電気が合併し、東京芝浦電気として発足。
1949年(昭和24年)- 石坂泰三が社長に就任。
1950年(昭和25年)- 過度経済力集中排除法の適用を受け、網干工場が西芝電機として分離独立。 5月 - 筆記体の“Toshiba”マーク(東芝傘マーク、傘ロゴ)を制定。全東芝を表す場合と、家庭電器器具に使用。
1956年(昭和31年)12月 - ラジオ東京テレビ(KRテレビ。現在のTBSテレビ)で東芝単独提供によるテレビドラマ「東芝日曜劇場」の放送を開始。
1960年(昭和35年)- レコード会社 東芝音楽工業(→東芝EMI株式会社→EMIミュージック・ジャパン→ユニバーサル ミュージック合同会社 EMIレコーズ・ジャパンレーベル→ユニバーサル ミュージック合同会社 EMI Rレーベル)を設立。
1962年(昭和37年)- 電球に使われていた、東京電気以来の「マツダ」ブランドを廃止し(標準電球除く)、「東芝ランプ」に統一。
1965年(昭和40年)- 土光敏夫が社長に就任。
1969年(昭和44年)2月 - 「東芝傘マーク」を書きやすい形状に部分修正し、方形の背景に白抜き表示を開始。近年まで社員徽章・製品ラベルに見られた。
1969年(昭和44年)10月 - フジテレビ系列で東芝一社提供によるテレビアニメ「サザエさん」の放送を開始。
1969年(昭和44年)11月 - 「東芝傘マーク」が世界の一部の国で誤読を招いた(「Joshiba」と勘違いされた)ことから、現在の「東芝ロゴ」(サンセリフ系)を横長にしたような形状のロゴの併用を開始。
1975年(昭和50年)- 創業100周年、家電製品で「東芝新世紀シリーズ」を販売。
1976年(昭和51年)- 岩田弌夫が社長に就任、リストラの開始(家電製品の総発売元だった東芝商事を、地域別に分割して地域内販社と統合し再編=現在は東芝コンシューマ・マーケティングに再統合=など)。
1979年(昭和54年)- 英文社名表記を「Tokyo Shibaura Electric Co., Ltd.」から「TOSHIBA CORPORATION」に変更、同時に現在の“TOSHIBA”ロゴの原型(横長のゴシック体)が広告用に併用され始める。
1981年(昭和56年)- 佐波正一が社長に就任。
1982年(昭和57年)1月 - 超LSI研究所設置・クリーンルーム建設に230億円の設備投資決定。
1984年(昭和59年)4月 - 株式会社東芝に社名変更、後に本社機能を東芝ビルディング(港区芝浦)に統合。同年、世界初のセレクトルーム付き冷蔵庫「優凍生セレクト」発売。西川きよしをCM起用し、大ヒット。
1987年(昭和62年)- 東芝機械ココム違反事件発覚。
1990年(平成2年)4月 - 「東芝グループ経営理念」および「東芝グループスローガン『人と、地球の、明日のために。』」を制定。
1998年(平成10年)- テレビアニメ「サザエさん」の一社提供を終了。ただし提供自体はその後も継続している。
1999年(平成11年)- ゼネラル・エレクトリックからシックス・シグマの手法を導入、社内カンパニー制採用。東芝クレーマー事件発生。
2000年(平成12年)- 登記上本店だった川崎事業所(神奈川県川崎市幸区堀川町)を閉鎖、東芝ビルディングが本店となる。
2002年(平成14年)9月 - 東芝日曜劇場の東芝単独提供を終了し、同番組の提供を一時降板。7年後に復帰した。
2003年(平成15年)1月 - 東芝の一部門より分社化し株式会社駅前探険倶楽部(現在の駅探)を設立。
2005年(平成17年)6月 - 西田厚聰が社長に就任、積極経営に転ずる。
2006年(平成18年) 1月 - イギリスの英国核燃料会社から、ウェスティングハウスを54億ドル(約6370億円)で買収。原子力発電装置の世界三大メーカーの一つとなる。
   10月 - 「TOSHIBA Leading Innovation >>>」を柱とするコーポレートブランドを制定。
2007年(平成19年) 6月 - 東芝EMI全株式を英EMIグループに売却し音楽事業から撤退。売却後の社名はEMIミュージック・ジャパン(現・ユニバーサルミュージック合同会社/EMI Records Japanレーベル)。
   9月 - 銀座東芝ビルを東急不動産に1610億円で売却を発表。
   12月 - 日本企業で初めて、ワン・タイムズスクエア・ビルの最上部にブランド広告を掲示。
2008年(平成20年) 2月 - HD DVD事業からの撤退を表明。現時点から生産規模を縮小し、3月末で正式に撤退する。これを受け、次世代DVD規格はBlu-ray Discへの統一が決定した。
   4月 - 子会社の東芝ライテックと共に、2010年を目処に、一般白熱電球の製造・販売を中止する予定と発表。
   11月 - リーマン・ショック後、財政状態悪化により東芝ビルディング(本社ビル)や梅田スカイビルを所有する東芝不動産を、野村不動産ホールディングスに1500億円で売却。
2009年(平成21年)7月 - 佐々木則夫が社長に就任。
2010年(平成22年) 3月 - 同年4月1日より住宅用太陽光発電事業に参入すると発表。
   3月 - 1890年から続けていた白熱電球の製造・販売のうち、一般用途向け白熱電球の製造を日本で最初に中止した。
2011年(平成23年) 8月 - 一部メディアにより、携帯電話事業を富士通に売却し、携帯電話生産より撤退する旨が報じられる。
   11月30日 - 半導体生産拠点の北九州工場(福岡県北九州市)、子会社の浜岡東芝エレクトロニクス(静岡県御前崎市)、東芝コンポーネンツ(千葉県茂原市)の3工場を2012年9月までに閉鎖し、半導体事業再編を図ることを発表。
2012年(平成24年) 3月下旬 - ウェスタン・デジタルに東芝ストレージデバイス・タイ社を譲渡し、ウェスタン・デジタルからハードディスク製造設備の一部を取得。
   4月 - 携帯電話事業を富士通に売却。
   4月 - 経済産業省の補助事業「エネルギー管理システム導入促進事業」におけるBEMSアグリゲータに登録される。
2013年(平成25年)6月 - 田中久雄が社長に就任。
2015年(平成27年) 5月 - 決算発表延期および配当見送りを発表。
   7月20日 - 粉飾決算を調査した第三者委員会報告書の全文を公表。「チャレンジ」と称する粉飾決算事件により、田中久雄社長や前社長の佐々木則夫副会長、その前の社長の西田厚聡相談役ら直近3代の社長経験者を含む経営陣9人が引責辞任し、取締役会長の室町正志が代表執行役社長を兼任。
   9月14日 - 東京証券取引所が東芝株を「特設注意市場銘柄」に指定した。
   12月4日 - イメージセンサーを生産する大分工場内の一部の半導体製造関連施設、設備をソニー及び同社の完全子会社であるソニーセミコンダクタに対する譲渡契約を締結。
2016年(平成28年) 3月17日 - 東芝メディカルシステムズの全株式をキヤノンに売却。
   4月1日 - 特許ライセンス関係を除くパソコン事業を、会社分割により東芝情報機器に承継。東芝情報機器株式会社は東芝クライアントソリューション株式会社に商号変更。大分工場のシステムLSI事業の一部を岩手東芝エレクトロニクス株式会社に承継。岩手東芝エレクトロニクス株式会社は株式会社ジャパンセミコンダクターに商号変更。
   5月12日 - 決算発表において、日本の事業会社として過去最大となる7191億円の営業赤字と、東芝として過去最悪となる4832億円の最終(当期)赤字となった。
   6月22日 - 粉飾決算事件を受けて、会計監査人が新日本有限責任監査法人からPwCあらた有限責任監査法人に交代。
   6月30日 - 東芝ライフスタイルから映像事業を会社分割し、東芝映像ソリューション(前日に東芝メディア機器から商号変更)に承継すると同時に、白物家電事業を残した東芝ライフスタイル株式の80.1%を、約514億円で美的集団に譲渡。
   9月 - 東芝山口記念会館を日本テレビホールディングスに売却。
2017年(平成29年) 1月20日 - 東芝が買収を計画していた原子力関連部品メーカー『ニュークリアーロジスティクス』の買収計画断念が報じられた。
   2月14日 - ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー(WEC)の「アメリカ合衆国での原子力発電所建設事業における『のれん代』計上額」における会計処理を巡り、不適切な対応があったという内部通報を受け、監査法人の承認が降りなかったことにより、第3四半期決算発表を急遽延期した。
   3月13日 - 東芝テックの売却が報道されたが、東芝側はこれを否定。
   3月14日 - 過去の決算にも不正の可能性があり、調査を続行するため第3四半期決算発表を4月11日までの再延期を関東財務局に申請し、認められる。
   3月15日 - 東京証券取引所と名古屋証券取引所が東芝株を監理銘柄に指定。
   4月1日(予定) - 半導体メモリ事業を東芝メモリに分社化。