トラも生き方 ハエも生き方

派閥 縄張り  徒党を組む 
虎の威を借る  尻馬に乗る 
お零れ 分け前にあずかる 
一蓮托生  死なばもろとも 
 
社会人の生き方の一つです


 

 
 
「トラ」の資質 
能力 物で売る 顔・手練手管で売る 
人柄 有能な取り巻き・サポーター 業界人脈 
金勘定 資金調達力 
最後に時の運 
したがって殆んどの人が トラにはなれません
  
順番こ サラリーマン社長はトラではありません
  
 
日本固有の文化  
「茶坊主」 
現代では 能力のない人の最後の生き方
  
  
生き方も様々 
腰巾着 / カバン持ち / お供 / たいこ持ち / 草履取り / 側近 / 取り巻き / べったり / ゴマすり / イエスマン / こばんザメ / 子分 / 金魚のフン / 尻にくっつく 
  
「トラとハエ退治」 (2013/6/5)  
附驥尾而行益顕 (驥尾に附して行いますます顕る) [ 出典 / 『史記』 伯夷列伝篇 ]  
[要旨] 優れた人物のあとに付き従うことで、後世に名を残すこと。また、先輩の取りなしによって、後輩の名が益々高まること。「驥(き)」とは、1日に千里を走るという西域で産する駿馬のことで、悍馬(かんば・暴れ馬)のことです。この名馬の尻尾に付いていけば、自力では遠くまでは飛べない蠅(あおばえ)でも、1日に千里のかなたでも付いて行き、想像もつかない遠地までも至ることができるのです。  
司馬遷の『史記』に「蒼蠅(そうよう)驥尾に付して千里を致す」「伯夷・叔齊は賢なりと雖も、夫子を得て名は益々彰れ、顔淵は篤学なりと雖も、驥尾に附して行い益々顕る(伯夷・叔斉は賢人ではあるが、孔子(夫子)が二人を賞賛したことで、その名前が世間に益々知られるようになり、顔回(顔淵)はよく学問に励んでいたが、孔子というすぐれた師に従って学問に打ち込んだことによって、その行いがますます世に知られるようになった)」とあるのに基づきます。簡単に「驥尾に付く」とも言います。  
顔回は言わずと知れた孔門十哲の一人で、芸術家肌で清貧で勉学に一心に励み、もっとも孔子に愛された弟子でしたが、惜しくも夭折してしまいます。  
伯夷・叔斉という二人は、殷代末期の孤竹国の王子の兄弟で、高名な隠者であるとされます。儒教では聖人扱いとされています。  
伯夷が長男、叔斉は三男ですが、父親から弟の叔斉に位を譲ることを伝えられた伯夷は、遺言に従って叔斉に王位を継がせようとしました。しかし、叔斉は兄を差し置いて位に就くことを良しとせず、あくまで兄に位を継がそうと辞退します。そこで伯夷は国を捨てて他国に逃れますが、叔斉も位につかずに兄を追って出国してしまいます。  
二人が周の国を訪れた時、先王・文王が崩御し喪も明けないのに、次王・武王が戦闘準備に就き殷の紂王を討つことを不孝・不仁であると諫めた人物です。この後、二人は周の粟を食べる事を恥として周の国から離れ、武王が新王朝を立てた時は首陽山に隠れて薇(ぜんまい)など山菜を食べていたが、最後には「あの首陽山に登って、その薇を採って暮らしている。暴力によって暴力にとってかわり、その間違っている事に気づきもしない。神農や舜帝、禹王が作った美しい世の中は今はない。私はどこに帰依すればよいのだろう」という逸詩「采薇の歌」を残して餓死したとされます。  
孔子は『論語』において、伯夷・叔斉は事を憎んで人を憎まない人であるから、怨みを抱いて死んだのではない、というように述べています。  
一方、、司馬遷は『史記』において「采薇の歌」を挙げ、伯夷列伝を『史記』列伝の筆頭に置いています。『史記』を貫く一大テーマのひとつともいえる「天道是か非か(正しい人が不幸な目にあうこと)」の象徴とされています。  
司馬遷は「彼らは怨みを抱いて死んだのではないか?」と問おうとしているのです。伝説上の五帝の一人黄帝から前漢の武帝まで約二千年の歴史を司馬遷は宮刑による出獄から4−5年で書き上げます。紀元前91年には約130篇536,500字の書が成立して、4−5年後の紀元前87−86年に没しています。完成した『史記』とその副本(写し)は司馬遷の娘に託され、武帝の逆鱗に触れるような記述があるために隠匿されることとなり、宣帝の代になり司馬遷の孫の楊ツがようやく公表したとされています。  
驥尾に付して千里に至った「蒼蠅」とは、顔回に対して言われていますが、ハエ(あおばえ)に喩えられた顔回も可愛そうな気もします。まあ、無理をして早くに夭折してしまったので、後の孟子のように書物などで、その業績と思想を残すこともできませんでしたから仕方がないといえばそうかも知れません。しかし『論語』では、良いところを見せて師である孔子の思想を上手く引き出す重要な役目が与えられていますから、その存在意義は  
「蒼蠅」に喩えられたのでは少し可愛そうになります。  
話は大きく変わりますが、中国共産党の総書記に就いた習近平氏は、党員の腐敗に関しては「老虎(トラ)と蒼蠅(ハエ)」を同時に叩くことで、決して大きな腐敗も小さな腐敗も見逃さない、と最近何度か重要講話として述べています。  
それは、中国に君臨する党が庶民からの支持や黙認、発言回避すら得られず、近い将来必ず党の存亡が取りざたされる事態がやってくることが危機感として認識されているからです。そうした意味では、党の内にいる者と外に置かれた者との格差が顕在化して、党の内にいる者ですら自らの立場に醒めた冷たい目が注がれていることを認識せざるを得ないところに来ているのでしょう。  
かつては国の復興と発展、災役や政治の冒険からの復帰、改革開放といった未来志向の御旗を掲げることで、党内の人々への目を逸らすことができました。彼らは密かに階層優位を愉悦できたのです。  
密かな愉悦を踏みはずし、目立ちすぎた者や庶民の利益を奪いすぎたり傷つけたりしてやりすぎた者達が見せしめとして「落馬官僚」の汚名を一身に担って、その他大勢の人達の安寧を担保させたのです。  
ごく最近の中国の若い優秀な学生の、官僚や100余りの統廃合が繰り返されて再編・巨大化した国営企業への就職指向が顕著だといいます。顕在化した優位性を中国人は無視できません。勝ち馬に乗る、つまりいつものように「砂糖に群がる蟻」状態がしばらくはバブルのように続き、次の情勢の変化によりやがて急速にしぼんでいくはずなのです。かつての有名民営企業や起業への意識は旗色が多少悪くなっているようです。  
「蒼蠅」とは、小さな腐敗(庶民の周囲でブンブンうるさく飛び回るような煩わしい小さな腐敗を行う中央や地方の小官僚達)のことですが、老虎とは中央地方の要職を務める有名幹部たちによる腐敗のことです。大小や虎蠅にかかわらず、不正や横暴を働く党幹部や党員の処分は、身内の者(一家人)に対する処罰となりますので、周囲の人間関係や利害も絡んで大変な困難を伴う面があります。しかし、そのことを放置しておいたり、見て見ぬふりをすると「党」への信頼を失い、いずれ嫌悪や憎悪の対象に置かれることになります。いつか、腐った卵を売る店が中国本土にも現れる日が来るかも知れません。  
台湾では、店で売っている腐卵は食べられる生卵よりも高く売られているそうです。それは、不正を働いた政治家に投げつけるための卵だから貴重なのです。  
ひとは見ようとするものしか見ることができないといいます。  
庶民の周囲にも「老虎と蒼蠅」はようやく見える範囲に存在し、日本の時代劇にある悪代官と三河屋の癒着や横暴の弊害は、いずれ市井に身をやつす仮の姿の遠山謀や鬼平や大岡某や天下の副将軍やはたまた暴れん坊将軍が成敗してくれることが望まれます。そうすれば庶民の長年の胸の支(つか)えも晴れるはずですが、まずそんなことは滅多なことでは起こりえません。仮に不正を働く者も、中国の人間関係の絆の強い社会では、幾多の人の利害を代表しているに過ぎない場合が殆どなのです。  
芋ズル式に根絶やしにするには、古代のように親類縁者、内通者を皆殺しにしてしまうしかありません。古代では、残虐なようですが、それが粛正した側に累が及ばない一番の方法であることが知られていたからです。まあ、それでも一族やその地の居民の間には怨みが残ったといいますから、完全な排除や駆除はほぼ不可能というものです。  
しかし、現在こうした方法を採ることはできませんから、粛正する側と粛正される側の妥協が、法を使って上手く収めるしかありません。または、暗黙の契約によって、絡む利得や利権を特定取引や粛正する側が温情で目をつぶって適正な比率で分け合うことが考えられます。不正を犯したからといって、すべてを奪ってはならないということです。中国伝統の知恵で、せめて面子は潰さないでおこうというわけなのです。  
「ハエ」にすら「反腐」の戦いはやっかいだと思えるのですから「トラ」へのトライアル(挑戦)は大変にハードルが高いことが推測されます。習近平氏はどうやって手を着けようとするのでしょうか。すでに、十分な証拠固めに動いているのでしょうか。  
それとも、掛け声やキャンペーンだけで終わるのでしょうか。まあ、しかしその選択は、ああまで仰るのですから、当然あり得ないでしょう。  

 
2014/8 
 
習近平総書記「確固不動として腐敗を懲罰」(2013/1/23)  
習近平中共中央総書記(中共中央軍事委員会主席)は22日、中国共産党の第18期中央紀律検査委員会・第2回全体会議で重要談話を発表した。  
習総書記は「全党同志は第18回党大会の趣旨に従い、トウ小平理論、重要思想『3つの代表』、科学的発展観を指導に、個々の対策と抜本的対策の併用、総合的対策、懲罰と防止の併用、予防重視の方針を堅持して、より科学的、効果的に腐敗対策を行い、確固不動として党風廉政建設(清廉な政治を行う党風樹立)と反腐敗闘争を深めていかなければならない」と強調した。  
習総書記はさらに「われわれ党員・幹部の主流は一貫して良い。一方、いくつかの分野で依然腐敗が頻発し、いくつかの重大な規律・法律違反事件が悪質な影響をもたらしており、反腐敗闘争は依然厳しい状況にあり、人民大衆はまだ多くの不満を抱いていることにも冷静に目を向けなければならない。党風廉政建設と反腐敗闘争は長期的で複雑な、極めて困難な任務だ。反腐倡廉(腐敗との闘いと清廉な政治の推進)は常におこたらず押さえ、腐敗を拒み変節を防ぐには長く警鐘を鳴らし続けなければならない。肝要なのは『常に』と『長く』だ。常に押さえ、長く押さえなければならない。われわれは腐敗と汚職を必ず取締り、腐敗蔓延の温床を取り除き続け、実際の成果によって人民の信頼を得る決意を固めなければならない」と指摘した。  
習総書記はまた「確固不動として腐敗を懲罰することは、わが党に力があることの現れであり、全党同志と無数の大衆の共通の願いでもある。厳格な党内統制には、懲罰の手を決して緩めてはならない。『トラ』と『ハエ』を共に叩き、指導幹部の規律・法律違反事件を断固取り調べて処分すると共に、大衆の身の回りで起きる不正傾向と腐敗の問題を的確に解決しなければならない。党規と国法に例外なしの方針を堅持し、誰に波及するのであれ徹底的に取り調べるべきであり、断じて大目に見てはならない。引き続き腐敗懲罰・防止システムの構築を全面的に強化し、反腐倡廉の教育と清廉な政治文化の建設を強化し、権力運用の制約・監督システムを整え、反腐敗の国家立法を強化し、反腐倡廉の党内法規・制度整備を強化し、腐敗問題の多発分野・部分の改革を深化し、法定の権限と手続きに基づく国家機関の権力行使を確保しなければならない。権力運用に対する制約と監督を強化し、権力を制度の檻に閉じこめ、腐敗に走る勇気をなくす懲戒メカニズム、腐敗できない防止メカニズム、腐敗に容易に走らなくする保障メカニズムを構築しなければならない」と述べた。  
中国共産党の第18期中央紀律検査委員会・第2回全体会議は中央紀律検査委員会常務委員会の主宰で21日に北京で開幕。王岐山氏が中央紀律検査委員会常務委員会を代表して「第18回党大会の精神を踏み込んで学習・貫徹し、党風廉政建設と反腐敗闘争に新局面を切り開くべく努力しよう」と題する活動報告を行った。 
習近平の反腐敗 「虎もハエも叩く」 誰が「虎」か 外界が注目 (2013/1/27)  
深刻化の一途を辿る中国の腐敗問題に対し、人々はただ当局の腐敗一掃の力度が不十分であるとの認識にとどまっていました。先日、習近平総書記は共産党中央規律検査委員会(中紀委)の会議において、“虎”も“ハエ”も一緒に叩くと明言しました。では、習総書記の指し示す“虎”とはいったい誰なのでしょうか。  
中国共産党の代弁者・新華網の22日の報道によると、習近平総書記は中国共産党中央規律検査委員会(中紀委)の会議で反腐敗問題に言及した際、“虎”も”ハエ“も一緒に叩き、誰に波及しようとも徹底的に調査し、見逃すことはないと強調しました。しかし、どのクラスの官僚が”虎“であるかは明確に示しませんでした。  
では、習氏が退治しようとしている“虎”はいったい誰なのでしょう。様々な推測が出されています。  
香港『文匯報』(ぶんわいほう)の報道によると、中国人民大学反腐敗および廉政政策研究センターの毛昭暉主任は、今後一定期間内に中国共産党は最も重い拳を2匹の“トラ”―金融領域と省・部クラスの高官の汚職に振り下ろすだろうと分析しています。  
ある海外メディアによると、旧正月の後、反腐敗行動は金融業界の高官から始まる予定で、リストもすでにできているそうです。  
情報によると、第十八回共産党大会の終了後間もなく、海外のツイッターでは、中央規律検査委員会の王岐山書記の反腐敗の第1ターゲットは、党内序列第5位で政治局常務委員の劉云山の息子・劉楽飛および、前政治局常務委員・李長春の娘・李彤のプライベートファンドではないかとの情報が伝い出されました。  
香港誌”動向”の最新情報では、中国国務院常務会議において、李克強)副首相は中央国有企業の大手5社である中国石油、Sinopec(シノペック)、中国海洋石油(SCOOC)、チャイナ・テレコム(中国電信)、チャイナ・モバイル(中国移動)の名をあげ、縁故者採用、多額の公的資金乱用、官商結託、別会社を作り”家族業務”を行う等を指摘したと伝えています。  
李副首相はまた、”整頓せず、大きく改変しなければ、大きな問題が生じ、誰も責任を負うことが出来ない”と警告したそうです。  
李副首相のこの話は、習近平総書記の”反腐敗”運動に協力したもので、矛先は周永康に向けられており、周永康とその家族が隠した巨額の腐敗汚職が明らかになりつつあることを指していると、外部は見ています。  
在米社会問題学者の張健さんは、反腐敗運動は江沢民元国家主席や李鵬元中央政治局常務委員、中央政治局常務委員7人、および周永康など血の債務がある人物から始めるべきと指摘します。  
情報よると、1992年、江沢民が政権と軍を掌握すると、長男の江錦恒に多額の利益を流しました。江錦恒は中国の民衆から“中国一の汚職者”と呼ばれています。  
”新唐人”の時事評論家・ジェイソンさんは、中国当局の大々的な反腐敗運動は、新指導者になった習近平氏の威信を打ち立てる方法のひとつにすぎないと示します。  
時事評論家 馬傑森さん  
「彼はこれを利用して、人心をつかみ、同時に自分の権力を集中することもできます。しかし、虎とハエを一緒に退治できるのかどうか。これが問題なのです。その可能性は実に疑わしいのです。これは彼(習近平)の威信を打ち立てるための方法であって、別に彼が本当に中共の腐敗官僚全員を打ち倒すわけではありません。中共が清廉な政党になるのは不可能です」  
時事評論家の史達さんは、反腐敗運動は共産党内部のことで、民衆とは何の関係もないので、あまり期待しないほうがよいと促します。なぜなら、反腐敗運動は党が生きながらえるためであって、民衆の為ではないからです。  
時事評論家 史達さん  
「皆さん考え方を変えて、一度考えてみてください。民衆は反腐敗に対し、発言権があるかどうか、監督権があるかどうか、何かできる事があるかないか。私はないと思います。前回、民衆が積極的に反腐敗に参加し、ネットに実名で告発をしました。しかし、最終的な結果はどうなったのでしょうか。やはり中共に否決され、鎮圧されました。巻き添えになった人もいるでしょう」  
史達さんは、共産党が腐敗暴露を通じて汚職官僚を叩いて民心を集めようとしても、すでに遅いと述べます。今の共産党の反腐敗はただの”面子プロジェクト”にすぎず、まるでオオカミ少年が”オオカミが来た!”と叫んでいるようなものだと指摘します。 
習近平のトラ退治とハエ駆除 (2013/2/1)  
「党と国家の存亡の危機」を回避するための反腐敗闘争  
2013年1月22日、習近平総書記は中国共産党第18期中央紀律検査委員会第2回全体会議で“反腐敗(腐敗反対)”に関する重要演説を行った。習近平は中国共産党の党員に蔓延する腐敗の取り締まりに関して、「共産党を厳しく管理し、厳しく処罰し、決して手加減しないことを誓う」として次のように述べた。  
「“老虎(トラ)”と“蒼蠅(ハエ)”を同時に攻撃することを堅持し、指導幹部の紀律違反や違法行為を断固として調査し処罰せねばならない。また、一般大衆の身辺で発生する不正の風潮や腐敗問題を適切に解決しなければならない。党の紀律と国家の法律の前では例外はないという原則を堅持し、それが誰に関わるかにかかわらず、徹底して調査を行い、決して見逃すことがないようにしなければならない」  
大きな腐敗も、小さな腐敗も  
この重要演説は中国メディアによって大きく報じられたが、中国のネットでは習近平が重要演説で言及した“老虎”と“蒼蠅”とは何を指すのかが議論の的となった。その正解は、“老虎”とは庶民の上に君臨して大きな腐敗を行う指導幹部を指し、“蒼蠅”とは庶民の周囲で小さな腐敗を行う官僚たちを意味するのだという。  
中国では“老虎”による大きな腐敗も“蒼蠅”による小さな腐敗も同時に多発しているため日常茶飯事化しており、庶民は腐敗に慣れて反応が鈍くなっている。その一方で、庶民には腐敗を問題として提起したくても提起する力がなく、共産党は腐敗を管理したくとも管理できないのが実態である。このため、反腐敗を唱えても腐敗は進む一方で、腐敗に反対すればするほど腐敗は増すばかりで減ることはない。だからこそ、こうした悪循環を断ち切り、“老虎”と“蒼蠅”を同時に取り除くことによって、中国共産党員による腐敗を根絶しようというのが習近平演説の主旨である。  
中国における従来の反腐敗闘争は、“殺一儆百(一人を殺して大勢の見せしめとする)”とか“殺鶏給猴看, 以警后人(鶏を殺すのを猿に見せて、後に続く人を戒める)”という形で、適当な誰かを見せしめとして処罰することで腐敗を抑制してきた。その適当な誰かとは往々にして“高官大貪(大きな汚職を行った高官)”であり、“抓大放小(大物を捕まえて小物を放置する)”という方式が主流だった。  
しかし今では、“大貪大腐(大きな汚職や大きな腐敗)”を行うのが高官たちだけに許された特権ではなくなり、“村官郷官(村や郷の役人)”といった小役人までが“大貪大腐”を行うようになっている。そうなると従来のような“殺一儆百”といった見せしめ方式では多数の腐敗役人を野放しにすることになり、腐敗で捕まるのは運が悪いからという投機的な心理を増幅させることにつながっていく。腐敗をしても捕まらなければ儲けは大きいから、腐敗をしない方がおかしいことになり、本来は清廉な役人もいつの間にか朱に交わって腐敗役人と化す。これは世の常と言わざるを得ないが、その原因は腐敗を容易に生み出す環境をただ漫然と放置していることにある。  
さて、“村官郷官”といった小役人までが“大貪大腐”を行うようになったと述べたが、これは別に今に始まったことではない。中国が皇帝によって統治されていた王朝時代においても、各地に根を張る“土皇帝(地方のボス)”や“土覇王(地元の権力者)”は「“天高皇帝遠(中央の政策が及ばない辺境な地)”」であるということを理由に、官職は低いのに奢り高ぶり、皇帝は“大事(重要事項)”で忙しいから辺境な地の“小事”に関わっている暇はないとして、無法の限りを尽くし、自身の欲望の赴くままに、“魚肉郷民(村人を食い物にする)”して懐を肥やした。  
生き残った土皇帝や土覇王  
こうした人々は1949年に中華人民共和国が成立した後の改革によって根絶やしにされたはずだった。しかしながら、新中国になっても“土皇帝”や“土覇王”は生き残り、今や堂々と復活を遂げ、“蒼蠅”は“老虎”に変身するご時世なのである。彼らは小役人の地位を活用して莫大な富を蓄積し、その富をばらまくことで上位の役人たちを籠絡し、あたかも独立王国のごとき様相を呈している者さえもある。そうした者たちの中で、習近平の重大演説を踏まえて脚光を浴びたのは、中国で最も悪質な“土皇帝”と称される“範士国”である。  
北京市に隣接する河北省廊坊市の管轄下にある三河市の“泃陽鎮”は三河市人民政府の所在地である。“泃陽鎮”の人口は2011年末で5.24万人、このうち都市部に居住するのは6570人で、都市化率は12.5%にすぎない純然たる農村地帯である。“泃陽鎮”には48の村落があるが、範士国はそのうちの“大閻各庄村”(人口3000人)の“村主任(村民委員会のトップ)”である。範士国は2000年に就任してから現在まで13年間にわたって村主任の地位にあり、その地位を利用して私腹を肥やし、絶大な権力を欲しいままにしている。このため人々は範士国を“土皇帝”、“地下市委書記(裏の市党委員会書記)”、あるいは“三河市老二(三河市党委員会書記に次ぐ2番手)”と呼んでいるのである。  
大閻各庄村の人々は長年にわたって範士国の専制的な振る舞いに我慢に我慢を重ねていたが、遂に忍耐の限度を超えたとして、2011年7月に6人の農民が立ち上がり、範士国を職権濫用による土地の転売や公金横領などで告発したのだった。その後も彼らはネットの掲示板に範士国に対する告発文を掲載すると同時に、ネットメディアを通じて告発の動画を流すなどの運動を展開しているが、告発を始めてから1年半が経過した現在も範士国は依然として安泰で、その“土皇帝”の身分には何の変化もない。だからこそ、人々は“老虎”と“蒼蠅”を一挙に打倒するという習近平の重要演説による変化に一縷の望みを託しているのである。  
彼らが範士国を“土皇帝”として告発した理由のうち代表的なものを挙げると以下の通りである。  
【1】大閻各庄村には約3000畝(約2平方キロ)以上の“基本農田(食糧確保のために国家によって開発が厳しく制限されている耕作地)”があったが、範士国はそれを私物化し、1000畝を転売して数十億元(約400億〜500億円)を懐にした。また、村有企業である耐火レンガ工場を私物化し、レンガ原料の粘土を採るために耕作地の土を地下数十メートルまで削り取り、1000畝もの基本農田を完全に破壊した。さらに1000畝の基本農田に塀を巡らせて私物化し、値上がりを待って転売しようとしている。これらすべては『基本農田保護条例』の重大な違反行為である。  
【2】大閻各庄村の南にある50畝(約3.3万平方メートル)の基本農田を“風水宝地(風水が良い土地)”であるという理由で私物化して豪邸を建設した。豪邸の規模は驚くべきもので、食堂だけ見ても、その広さは縦70メートル以上、横30メートル以上で、一度に3000人が食事をすることができるほどである。  
【3】その豪邸の北側にある30畝(約2万平方メートル)の基本農田には3棟が連結した豪華な別荘が建設された。これを地元の人間は“範氏皇宮(範氏の宮殿)”と呼ぶが、その建物は豪華絢爛で、内部の壁面は純金の箔で装飾されて光り輝き、床にはクリスタルガラスが敷かれている。宮殿に対する範士国の熱の入れようは相当なもので、家具の搬入時には汗かきな作業員には立ち入りを許さなかったほどであった。  
【4】範士国は“悍馬(ハマー)”、“奔馳(ベンツ)”、“宝馬(BMW)”、“陸虎(ランドローバー)”といった高級車を数十台も所有しており、その総額は数千万元(約4億〜5億円)にも上っている。  
【5】2000年に河北省唐山市と通県を結ぶ国道上に駐車場、車輌検査場、貨物の積み下ろし場を設置し、国道を往来する貨物車輌から保護費を徴収している。保護費を支払わない車輌に対しては過積載などの名目で罰金を強制的に徴収しており、その収入は1日当たり20万元(約270万円)にも上っている。一方、保護費を支払った車輌が過積載などの理由で交通警察官によって運行が阻止されると、手下のならず者を差し向けて交通警察官を打ちのめすので、交通警察も範士国には手出しできなくなっている。  
【6】範士国の娘が結婚した際には、結婚式の手伝いに出向いた人々に合計で数十万元(約400万〜500万円)の心付けを配ったし、その後に息子が結婚した際には心付けの合計は百万元(約1400万円)にまで膨れ上がった。  
鼻薬を効かせて有力者をコントロール  
上記のような範士国の無法がまかり通っている理由は、範士国から利益の分け前をもらう人々が範士国を擁護しているからである。三河市の交通局長や司法局副局長、さらには“三河市人民法院(裁判所)”の副院長などは範士国から土地の便宜を図ってもらい住宅を建設したし、三河市の“防暴大隊(機動大隊)”の大隊長は範士国に土地を融通してもらって自身が経営する運輸会社の建屋を建設した。  
そればかりではない。三河市を管轄する廊坊市政府の運輸関連部門の“処長(部長)が三河市の運輸行政を検査した際に、範士国が国道で徴収する保護費に問題を提起した。これに怒った範士国は暴力を振るって同処長の脚を骨折させたが、後に同処長に慰謝料を支払っただけで事件を収拾させた。三河市を管轄する廊坊市政府の処長と三河市に属する村落の村主任ではその地位は大きく異なるが、下位の範士国が上位の処長を負傷させたにも関わらず、何のお咎めもなく、慰謝料の支払いだけで幕引きとすることができた背景には、範士国が廊坊市の指導幹部にも鼻薬を効かせていることが容易に想像できる。  
範士国によって基本農田を失った村人たちは農業という生活手段を失い、出稼ぎにでるか小さな商売をすることで生計を維持するしかなくなっている。肥え太るのは範士国とその分け前を受けている輩だけであり、村人たちはやせ細るのみ。こうした状況を打開するには範士国の無法ぶりを大閻各庄村が属する泃陽鎮政府およびその上部機関である三河市政府に訴えるしか方策はないと、鎮政府と市政府に問題を提起したが、門前払いで取り上げてもらえていない。そこで6人の村人が範士国を中国社会に告発する挙に出たのだが、現状のところは三河市を管轄する廊坊市政府からも何の反応もないのが現状である。  
中国メディアによれば、1月22日に習近平の重大演説が行われた後に、記者が三河市党委員会書記の“張金波”、泃陽鎮党委員会書記の“金景輝”および泃陽鎮紀律検査委員会書記の“劉士従”にそれぞれ電話を入れたが、彼らの携帯電話はつながらなかったという。  
1月22日に著名なブロガーの“胡顕達”が自身のブログ“論道書斎”に掲載した「習総書記 “老虎”と“蒼蠅”を一緒に打倒するにはどんな深い意味が隠されているのか」と題する記事によれば、中国の反腐敗闘争は従来の“老虎”退治から“蒼蠅”駆除にその焦点を移してゆくことになるだろうと述べている。庶民にとって最も疎ましいものは身近で起こり、自分たちが直接に影響を受ける“蒼蠅”による腐敗であって、“老虎による腐敗ではない。その“蒼蠅”たちが駆除される可能性が少ないことで増長し、庶民が損害を被(こうむ)る事件が頻発しているのが中国の現状であり、それが庶民の不満をますます増大させているのだという。  
社会安定にとってハエ駆除が不可欠に  
ネット時代の到来により、庶民はネットを通じて不満を広く社会に訴えることが可能となり、問題を容易に告発できるようになった。そうした時代の変化に対応して庶民の不満の根源である“蒼蠅”を駆除することは社会の安定にとって不可欠なものとなったのである。  
昨年11月15日に総書記に選出された“習近平”は、11月17日に開催された18期中央政治局第1回集団学習会で演説を行い、深刻化する幹部の腐敗に触れて「物が腐れば、後に虫が湧く」と述べて、腐敗問題がより深刻化すれば「最終的には必ず党と国が滅ぶ」と危機感をあらわにした。  
習近平が1月22日の重大演説で提起した“老虎”退治と“蒼蠅”駆除の同時進行は、彼の反腐敗闘争に向けての決意表明と評価できる。ただし、問題はそれを実際に貫徹して、反腐敗闘争を勝利に導くことができるかであり、それができなければ自身が提起した「党と国家の存亡の危機」は現実のものとなりかねないのである。 
全人代から読み解く習近平政権の内実と対日政策 (2013/3/22)  
3月5日に始まった中国の全人代(全国人民代表大会)は3月17日に閉幕した。この日から習近平新政権が本格的にスタートする。  
「中国国盗り物語」はちょうど1年前の全人代からスタートした。その1年後の全人代の閉幕を見届けて最終回としたい。今回は全人代から見えてくる習近平政権の課題と内実、そして対日外交を読み解くこととする。  
人事の注目点――李源潮が国家副主席になった意味  
この大会で選ばれたのは国務院(中国人民政府)という中国の行政を司る機関を構成する人事だった。その結果は、2012年11月29日に公開した本連載の「新たなチャイナ・セブンに隠れた狙い―実は胡錦濤の大勝利」で予測した結果と完全に一致した。何よりもホッとしたのは国家副主席人事が的中したことである。  
3月14日、全人代では国家副主席などの重要なポストの選挙が行われたが、国家副主席に当選したのは李源潮。昨年の党大会で「チャイナ・セブン」(中共中央政治局常務委員)に抜擢されるだろうと早くから期待されていた共青団のホープだ。利益集団に果敢に切り込み、あちこちから恨みを買っている。  
幹部を断罪するか否か、実際に決定してきたのは胡錦濤時代のチャイナ・ナインで、その指示を受けて中共中央紀律検査委員会が取り調べを行うのだが、処罰に関する宣言をするのは中共中央組織部の長である李源潮だったため、利益集団は彼を嫌った。その結果が投票数にも如実に表れている。  
たとえば習近平の国家主席就任に関する票決は2956票中、「賛成:2952票、反対:1票、棄権:3票」に対して、国家副主席にノミネートされた李源潮に対する投票結果は「賛成:2829票、反対:80票、棄権37票」と、議場に軽いどよめきが起きるほどに反対票が多かった。  
胡錦濤が李源潮を推し、習近平が支援していなければ、ノミネートさえされなかっただろう。李源潮は政治局常務委員ではなく、単なる政治局委員だ。通例は常務委員でなければなれない国家副主席に李源潮がなった意義は大きい。  
その背景にあるのは「チャイナ・セブン」に関しては妥協するしかなかった胡錦濤派閥の事情だ。習近平と連携している胡錦濤率いる共青団は、江沢民に代表される利益集団と対立した。それを補うためのパワーバランスであったと思う。  
ただ、となると「チャイナ・セブン」でない国家副主席が、どのような役割を果たすかということになる。飾りだけだと批判する者もいるが、それは少し違うだろう。なぜなら中共中央には多くの直属組織や特定分野の「領導小組」(指導グループ)がある。その中の「中共中央外事工作領導小組」の組長は一般に国家主席が、副組長は国家副主席が担う。李源潮は今でもすでに中国の特別行政区である「香港・澳門(マカオ)・厦門(アモイ)」を管轄しているので、外事を担いながら国家主席を補佐することになろう。  
国家主席が事故や病気で公的行事に出られない時には国家主席代理として登場するのも国家副主席だ。決して「形だけ与えておいてやろう」といった利益集団の思惑通りにはいかない。  
李源潮を国家副主席に持ってきた意味は、「利益集団に切り込む姿勢」を人民に見せるメッセージでもある。習近平体制はチャイナ・セブンの顔ぶれに代表される利益集団寄りではなく、彼らを解体し、政治体制改革を断行するのだ、というメッセージだ。こうして現体制に対する国民の不満を解決する方向のシグナルを発したと言っていいだろう。  
10年後のトップは胡春華  
胡錦濤系列の周強(共青団)を最高人民法院院長(最高裁判長)に指名したのも、利益集団に有利な判決が出ないようにするためだとみなしていい。  
周強はかつて、10年後の国家主席(&総書記)として胡春華とともに宿望されていた人物の一人。この胡春華に関する詳細は本連載の2012年11月2日「間もなく党大会。チャイナ・ナインの空席は最大7つ」にある小見出し「10年後の国家主席? 胡春華」の部分をご覧いただきたい。  
また2012年11月29日に公開した「新たなチャイナ・セブンに隠れた狙い――実は胡錦濤の大勝利」の中の小見出し「5年後を見据えたグランドデザイン」でも胡春華というキーパーソンに関して説明している。  
筆者は10年後の後継者としては周強ではなく胡春華だと、2012年1月の時点で断言していた(『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』)。なぜなら胡錦濤との結びつきと信頼度が群を抜いているからだ(それに周強には悪いが、国家主席になるには、実は「マスク」にそれなりのカリスマ性がなければならないからでもある)。  
周強が昨年の党大会で中共中央政治局委員に入っておらず、胡春華が入っていた時点で、胡春華の線がなお一層濃厚になってはいた。しかし今般の周強と李源潮の職位決定により、利益集団に偏っていたチャイナ・セブンの布陣を、他の要職に共青団を就けることによってバランスを取ろうとしていることが見えてきた。  
現在の中国政権の対立軸は共青団と利益集団。習近平は太子党ながら理念は「反利益集団」だ。ということは共青団と理念を共有している。  
チャイナ・セブンを決定する昨年の党大会までは利益集団の代表である江沢民が最後の抵抗を見せ、チャイナ・セブンに自分の傘下の重鎮を入れることに成功。かたや胡錦濤は逆にチャイナ・「ナイン」をチャイナ・「セブン」にすることによって江沢民の牙城である中共中央政法委員会の降格に成功している。おまけに潔く中共中央軍事委員会主席を退いたために、習近平は胡錦濤に対して尊敬と、ある意味「借り」を作ったことになる。  
こういった力関係と本連載でご説明したグランドデザインという視点から見ると、今般の李源潮、周強の登用によって10年後の国家主席(&総書記)は胡春華になると断言できるのである。そのつもりで今後の5年間、そして10年間を読み解いた方がいい。  
李源潮の国家副主席就任は、そこまでの断言を可能にさせてくれる大きな意味を持っていた。  
国務院機構改革を読み解く2つのポイント  
全人代で大きく注目されたものの中に、国務院機構改革がある。27あった中央行政省庁が25に統合再編され、職能改革を行った。  
その中で注目される二つを考察しよう。  
一つは腐敗の温床として名高い鉄道部の解体である。鉄道部は「独立王国」と呼ばれてきた。1949年10月1日に中華人民共和国が誕生する前の革命戦争(解放戦争、国共内戦などの別称)において、中国人民解放軍のための鉄道線路の構築・破壊は鉄道兵が担ってきた。そのため鉄道部は革命戦争期には中共中央軍事委員会の中に組み込まれていた。  
建国後は国務院という人民政府の中央行政省庁の中に位置づけられたが、建国後最初に設置された中央行政省庁として特別の位置づけにあった。まるで鉄道部自身が一つの政府であるかのごとく「独立王国」として振る舞い、改革開放がメスを入れることのできない最後の砦と化していたのだ。その利権を江沢民傘下の利益集団が独占していたため解体が断行できなかった。  
今般、遂に鉄道部解体にこぎつけたことは、利益集団の解体と江沢民勢力の衰退・消滅を意味している。ただし、鉄道部解体によって「政企分離」(政府と企業経営の分離)は実現したものの、三権が分立していない中国にあっては「司法が党の指導の下にある」ため、腐敗が根絶することはないだろう。  
注目される機構改革の二つ目に国家海洋局の統合再編がある。  
国家海洋局はこれまでファイブ・ドラゴンと呼ばれてきた5つの命令指揮系統により動いていた。ファイブ・ドラゴンとは「1:国家海洋局、2:中国海監(中国海洋環境監視監督船隊)、3:公安部辺防海警(公安部国境海洋警察)、4:農業部中国漁政、5:税関総署海上密輸取り締まり警察」のことを指す。  
これらを統合して中央行政省庁の一つである「国家国土資源部」に新たに国家海洋局を設けた。これまでは、ある行動を起こそうと思っても、その行動に相当した命令指揮系統の許可を得なければ動けなかった。日本からすれば、「あの領海領空侵犯は、いったいどこからの命令なのか」といった疑問や、漁船の領海侵犯が「偶然なのか、それとも命じた背景があるのか」といった疑念を抱かせた。  
今後は、国家海洋局は自らの意思一つで決定指示ができ即戦力が高まったことになると同時に、命令指揮系統が明確になり、日本としては分析が容易になったという側面も持つ。  
その職能としては、中国海警局の役割を果たしながら海洋権益を保護し、公安部の指示なしに警察行為が可能となることなどが挙げられる。要は海洋権益の強化を図ったということである。  
目的は海洋環境、法による海洋資源保護などを挙げているが、何と言っても領土問題に関する速戦的行動=即応性の向上にあるだろう。「速戦」と言っても、国家海洋局は中共中央軍事委員会管轄下の中国人民解放軍とは異なるので、企業の即戦力といったニュアンスの「速戦的行動」ではあろう。  
しかし2013年2月7日に本連載の「中国の『レーダー照射』『領空侵犯』は何を意味しているのか」で述べたように、海空軍と国家海洋局は強力な連携プレーで動いているため、「速戦」の「速」の文字ではなく「戦」の部分にも警戒は必要となろう。  
習近平政権が抱える3つの課題  
習近平政権が抱える三大課題は、「党幹部の腐敗」「貧富の格差」そして大気汚染等の「環境問題」だ。  
昨年11月8日の第18回党大会初日、中共中央総書記としての最後の演説で、胡錦濤は「腐敗を撲滅しなければ党が滅び、国家が亡ぶ」と語気を荒げた。そのために政治体制改革を断行しなければならないと強調したのだが、しかし前述したように「三権分立を絶対に認めない共産党体制」で市場経済原理に基づく自由競争を遂行すれば、特権乱用を招き、利益集団が生まれるのは不可避。腐敗の根絶は困難だと思う。  
全人代会期中の3月10日、最高人民検察院(最高検察庁)検察長・曹建明は、収賄や横領などの汚職で摘発された公務員は4年連続で増加し、2012年は4万7338人にのぼったと報告した。過去5年間では21万8639人が立件されている。胡錦濤政権の第一期である2002年から2007年の5年間よりも4%の増加である。  
そのうち、地溝油(下水油)や豚肉の赤みを増やす違法食品添加物など、食品の安全を脅かす犯罪者も1万人以上おり、監督のずさんさが浮き彫りになっている。対策として、国務院行政改革の中で食品衛生に関しての機構改革も行われた。  
たとえば一つの饅頭(まんとう)(餡のない肉まんのような中国人にとっての主食)が人の口に入るまでに、小麦の育成から乾燥、小麦粉製造、饅頭という製品に至るまでの製造過程、運搬(物流)、販売に関して9つ以上の行政省庁の管轄があり、問題が起きた時には責任回避ができるとともに監督の空隙を生み、犯罪の温床になっている。そこで監督機関の一本化が全人代で決議された。  
こうしたコンプライアンスの対策をとる際に、中国で問題になるのは監督権だ。省庁、機関の上の監督権が「党の指導」にある限り、これもまた利益集団同様、根治は困難である。  
したがって憲法では保障されているはずの「人民による監督権」が「暴動」によってしか表現できない。ここに、中国共産党政府の根本的問題がある。年間の暴動件数が18万件(1日約500件)という天文学的数値は、「憲政」の実現を切羽詰まった課題として習近平政権に突き付けている。  
政府の環境対策に“叛乱”  
公費で飲み食いする「節約令」(ぜいたく禁止令)も強化されている。三公消費というのがある。三公とは「タクシー券、接待、出張」などを公費で賄う消費のことだ。公費だから知ったことではないとばかりに贅沢の限りを尽くすことが公務員の間で慣習化していた。  
1日にレストランで捨てられる食べ残し料理の量は、その日の食事にも困っている2億人を1日食べさせることができる量に匹敵すると言われている。「盛菜」(セン・ツァイ)(盛大な料理)を同じ発音の「剰菜」(セン・ツァイ)(食べ残した料理)に置き換えた新語が生まれたほどだ。  
「貧富の格差」や「環境問題」の根源も、すべては利益集団にある。格差は説明するまでもないだろうが、環境問題もまた利益集団が目先の利益を優先するために招いた結果だ。環境を重視する技術を入れればコストがかかる。そのコストを節減して利益増加を優先したこれまでの成長モデルが限界に来ている。  
それを象徴するかのように、全人代始まって以来の「反乱」のような投票結果が3月16日に現れた。環境資源保護委員会委員を選ぶ投票で、なんと「反対:850票、棄権:125票」という前代未聞の意思表示があったのである。約1000人が政府の環境対策の現状に、「手ぬるすぎる」と「ノー」を突き付けたのだ。  
反対票は、利益集団がもたらした結果に対する非・利益集団層の「ノー」でもある。「人民」による公的な場での初めての叛乱と言っていいだろう。全人代の「全国人民代表」の中には非共産党員が30%ほどおり、その中には農民工(出稼ぎ農民)、工場労働者あるいは農民の代表もいる。  
全人代では経済発展モデルの転換が議論され、量より質を、という方向で多くの決議が成された。人民の要望に寄り添うメッセージが中央テレビ局CCTVで毎日のように放映されている。  
しかし利益集団の解体と憲政の本道の実現による「人民の監督権の保障」を本気で断行しない限り、人民が満足する社会は来ないだろう。三権分立を許さない社会主義国家の限界が、そこにはある。  
最後に、何と言っても気になる対日政策を見ていこう。  
日本人がまず大きな関心を示したのは国防費の10.7%増だろう。金額的には7406億元(約11兆円)。2010年には7.5%増とひとケタ増に落ち、また2011年の12.7%増、2012年の11.2%増と比較すると減速しているのだが、3年連続のふたケタの増加であることは確かだ。大雑把に過去25年間を見れば、連続して増加を続け、額で見ると10年間で約4倍になっている。  
ただ、中国の国内総生産(GDP)の増加傾向と重ね合わせると伸び率はほぼ一致している。たとえば1980年と2012年を比べるとGDPは20倍になっており、2002年と2012年という10年間を比較すると2.7倍になっている。中国の国防費増加は金額の絶対値だけを見たのでは、全体像を把握することはできない。経済成長が激しい時期は人件費や材料費も高騰するので、それを考慮に入れることも必要だろう。  
それでもなお、GDP成長7.5%を上回る国防費の増加は、日本だけでなく全世界が懸念する対象の一つであることに変わりはない。  
国防を強化する理由として中国は「かつての民族の屈辱は中国の軍事力が弱かったからだ。二度と再び民族の屈辱を受けないために軍事力強化は必要」とし、かつその目的は「平和維持のため」としている。  
環境対策は関係改善の切り札になるか?  
しかし実際は「アメリカに追いつけ追い越せ」を目指しているように見える。東シナ海では日米同盟に対抗しなければならないし、南シナ海でもやはりアメリカの軍事力を凌駕しなければ国益を守りきれない、と考えているのだろう。もし中国が「平和維持のため」と言うのなら、尖閣諸島の領海領空侵犯などの威嚇行為をやめてほしいものである。日本の軍備強化を正当化させるだけだ。  
国家海洋局の再編を受けて、中国国家測量・製図局副局長は「釣魚島(尖閣諸島)に測量隊員を派遣し、標識建設も目指す」と宣言した。  
3月17日には習近平は国家主席として初の演説を行った。その中で習近平は「中国の夢」という言葉を何度も繰り返した上で、領土主権を守り、愛国主義教育を強化し、軍と武装警察を強化する富国強兵の方向性を示した。人民が安心して呼吸することができないような環境破壊を抱える中、共産党統治の求心力を高めるためのメッセージだろう。  
その環境問題に関して過去の経験と改善技術を持っている日本は、「環境問題改善にこそ前安倍政権時代に中国と交わした戦略的互恵関係を実行するチャンスがある」と考え、PM2.5に関して技術協力を打診したようだ。しかし2013年3月2日、石原伸晃環境相によると、日本が申し出ている技術協力に対し、中国は難色を示しているとのこと。  
中国のネット界にも「中国を助けるなんて言っているが、結局はただの商売根性、金儲けの口実だろ」「まず自国の原発問題を解決してくれ。世界中の人たちが放射能に汚染された魚を食べる羽目になるから!」「日本以外に技術提供できる国はないのか?なぜわざわざ敵人に助けを求めねばならないのか?」「中国の環境問題で日本の手を煩わせる必要なんてないんだ。環境対策という大きな経済利益を、敵国の日本に渡してはならない」といった日本攻撃の書き込みがすぐに充満した。  
反日という国民感情は、領土問題があり、政府がそれを「民族の屈辱」と結び付けている限り、何をしようと収まらない。新政権スタート時に少しでも親日的言動をすれば、ネット言論からさんざんな非難を浴びる可能性が大きい。2002年、胡錦濤は政権発足時に「対日新思考」を発表させたために売国奴呼ばわりされて、慌てて親日姿勢を引っ込めた。「最初に親日的な姿勢を見せてもいいことは何もない」と、習近平は学習しているはずだ。  
李克強も国務院総理として初めての内外記者会見を17日に行った。民生を重視した政策を唱えながらも、やはり「領土主権は断固として守る」という言葉を最後に強調している。  
中国は本気で尖閣諸島が中国の領土だと思っている。いつから論理のすり替えを行い始めたのか、静かに自省する心理的ゆとりは見られない。  
安定政権の元、首脳会談の実現を  
本連載の2月14日の記事「中国共産党も知っていた、蒋介石が『尖閣領有を断った』事実」と、2月22日の記事「人民日報が断言していた『尖閣諸島は日本のもの』」で述べた事実を中国はしっかり見つめ直してほしいと思う。  
中央行政省庁の中の外交部長は王毅と決まった。王毅氏は日本語が堪能な日本通。しかし一方では国務院台湾弁公室主任であったことから、台湾との対日共闘姿勢を示す可能性もある。親日的態度など示せるはずがない。  
日本側について言えば、安倍内閣には、それでも平和的手段で日中間に横たわる領土問題の解決に当たってほしいと思う。国際社会は日本の内閣支持率に敏感だ。支持率が高く安定していれば国際的信用度は増す。5月末にソウルで日中韓首脳会談が開催されることになっており、中国からは李克強国務院総理(首相)が出席するようだ。そこが一つの切り口になりうるのではないか。 
中国軍トップが失脚〜習近平が抱く2つの目論見 (2014/7/10)  
中国共産党中央軍事委員会の前副主席、徐才厚氏が6月30日、党籍を剥奪され、収賄の疑いで送検された。同氏は2012年まで、中国で最も権力を持つ20数人の党中央政治局委員の1人だった。中国国営メディアの報道によると、徐氏は昇進の便宜を図る見返りに金品を受け取っていたという。  
軍トップを失脚させることで、習近平国家主席は一石二鳥を狙ったようだ。習国家主席は、この失脚劇で軍への支配を強めるとともに、腐敗撲滅運動の旗手としての信任を高めることができる。  
共産党は6月30日と7月2日に、徐氏のほか、公安部の元次官や国有石油会社の元経営幹部、国有資産監督管理委員会の元主任など、6人の党籍剥奪を発表した。いずれも、2012年まで中国の公安責任者を務めた周永康氏に近い人物だ。周氏は、9人しかいない党中央政治局常務委員の1人でもあった。  
これとは別に、主要都市の1つ広州市の共産党委員会書記を務め、力をつけてきていた若手の万慶良氏も党籍を剥奪された。  
胡錦濤・前国家主席や江沢民・元国家主席は、蔓延する腐敗は党による指導体制を崩しかねない脅威であるとたびたび述べていたが、その拡大を抑え込むことができずにいた。習国家主席は単に、前任者が残したこの課題に取り組もうとしているだけなのかもしれない。  
単なる腐敗根絶か、抜本的な改革の一歩か  
しかし、狙いがもっとほかにあることを示す手掛かりもある。これまで失脚させられた人物の多くは、過去の指導者と近い関係にあった者たちなのだ。徐氏は、軍指導部の中で江沢民氏に非常に近い同盟者だった。古い人脈を解体すれば、習国家主席自身の腹心を各所にもっと送り込むことができる。そうすれば、既得権益を持つ者たちを苛立たせずにおかない広汎な改革計画を、一層進めやすくなる。  
習国家主席は既に、古い集団指導体制――数人の指導者が責任と決定権を共有する――と決別している。かつては複数のトップを戴いていた数々の政策「指導集団」において、単独のトップとしての権威を掌握している。  
周永康氏の取り巻きを失脚させ、また大方が予測するように、今後、周氏自身を失脚させることで、習国家主席は、軍だけでなく、国家公安組織も指揮下に収めることになる。  
この動きの最大の欠点は、おそらく、こうしたことが一般国民の目にどう映るかだ。確かに、習国家主席があらゆるレベルの腐敗を断固として根絶しようとしている、との印象を強く与えることだろう。しかし、それだけで終わるとは思えない。  
この動きを進めれば、今では誰もが知っていること――すなわち、体制自体が芯まで腐っていること――を認めているという印象を与えてしまうのだ。 
虎よりも恐ろしいもの=韓国 (2014/7/21)  
習近平・中国国家主席は今月に入って14回もの首脳会談を行った。韓国に行ってくるやいなや米中戦略対話に参加し、ドイツのメルケル首相に会うといつのまにかギリシャを経てブラジルまで行っている。ところで忙しさで言えば王岐山・中央規律委書記も、2番目なら嘆くこともないだろう。腐敗との戦争の責任を負って毎日のように公職者に軍人、企業家、今や国営テレビのアンカーまでつかまえている。  
ところで先日会ったK教授は「忙しいことなど1つもないなんて、それほど容易なことがどこにあるか」と言った。「中国は古い昔から清白吏(清廉潔白な役人)のいない国だ。誰でも調べてみれば、みな(何か)出てくることになっている」ということだ。誇張の混じった表現かもしれないが、古今の中国史に博学な専門家の話であり、そんなものだろうと思った。  
最近報道された何人かの地方役人の事例を見ながら、K教授の言葉が改めて思い浮かんだ。  
内モンゴル自治区の法制主任をつとめた人物の自宅からカバンが1つ出てきたが、その中にマンションのカギ33個が入っていた。北京など都市と地方の各地はもちろんカナダにまでマンションを購入しておくのはたやすいことだった。彼は家に仏堂を整えていたが、そこから各種の骨董品・宝石・名品など2000点が押収された。金額で換算すると本人の月給の300年分だった。見間違ったのかと新聞を目の前にして確認しても確かに30年ではなく300年だった。ひょっとして印刷の誤植からもしれないと新華社通信の原本記事を探してみても同じだった。やはり大国ではスケールが違うと思った。  
何度か暴力の前科がある男は2009年、河北省のある村の村長に選ばれた。住民たちを脅迫して投票用紙を奪い、自分の名前を書き込んだ結果だった。その日からこの男は村長の仮面をかぶった公共の敵になった。上級機関から降りてくる予算を着服するだけでは満足できなかったのか、住民たちにさまざまなことを負わせた。家屋の改良をするからと強制的に家の修理をさせてお金を着服し、春節には爆竹を売り付けてお金を取った。家畜の取引も必ず彼の手を経なければならず、さらには腐ったトウモロコシを買わされた。話を聞かない住民たちには、暴力の洗礼を加えた。申告しても、すでにグルになっていた警察は動かなかった。絶えられなくなったある青年が彼を殺害した。すると村民全員が連名で嘆願書を提出して救命運動を展開した。  
これほどであればむしろ盗賊を村長の席に座らせたようなものではないのか。これは私だけの嘆きではない。「腐敗した地方役人たちは盗賊と同じ」と話したのは『許三観賣血記』を書いた著名作家・余華であった。そういえば習近平主席が腐敗清算の意志を明らかにしながら「虎とハエを一緒にひっ捕まえる」という表現法を使ったのにも、それ相応の理由があるようだ。「老百姓」、言いかえれば中国の庶民には遠くにいる虎よりも近くにいるハエのほうが恐ろしいのだ。汚い物は避けてしまえばそれだけだというが、ハエはずっとたかり続けるので、それがさらに恐ろしい。 
韓国紙もあきれる中国の虎とハエ (2014/7/23)  
7月21日の韓国・中央日報のグローバルアイ「虎より恐ろしいハエ」を紹介しコメントしたい。今日も期限切れの食品や床に落ちた材料を、平気で再生産して輸出する上海・食品工場の実態が報道されていた。金儲けのためには、何でもありの国のようだ。  
「中國で、習近平・中国国家主席に次いで忙しいのは、王岐山・中央規律委書記である。腐敗との戦争の責任を負って毎日のように公職者、軍人、企業家、今や国営テレビのアンカーまでつかまえている。  
先日会ったK教授は、“中国は古い昔から清廉潔白な役人のいない国だ。誰でも調べてみれば、みな何か出てくる”という。誇張した表現かもしれないが、中国史に博学な専門家の話であり、そんなものだろう。  
最近報道された何人かの地方役人の事例を見ながら、K教授の言葉が改めて思い出されて。内モンゴル自治区の法制主任をつとめた人物の自宅からカバンが1つ出てきたが、その中にはマンションのカギ33個が入っていた。  
北京などの都市はもちろん、カナダにまでマンションを購入していた。彼は家に仏堂を整えていたが、そこから各種の骨董品・宝石・名品など2000点が押収された。  
金額で換算すると本人の月給の300年分という。間違いかと新聞を確認しても確かに30年ではなく300年だった。中国はやはり大国、スケールが違う。  
暴力での前科者が2009年、河北省のある村の村長に選ばれた。住民たちを脅迫して投票用紙を奪い、自分の名前を書き込んだ結果だった。その日から、この男は村長の仮面をかぶった公共の敵になった。  
彼は、上級機関から降りてくる予算を着服するだけでは満足できなかったのか、住民たちにさまざまなことを負わせた。家屋の改良をするからと強制的に家の修理をさせて金を着服し、春節には爆竹を売り付けて金を取った。  
家畜取引も必ず彼の手を経なければならず、腐ったトウモロコシを買わされた。言うことを聞かない者は、暴力の洗礼を受けた。訴えても、すでにグルになっていた警察は動かなかった。  
“腐敗した地方の役人は盗賊と同じ”と話したのは著名な作家・余華であった。習近平主席が腐敗清算の意志を明らかにしながら“虎とハエを一緒に捕まえる”という表現法を使ったのにも、それ相応の理由がある。  
中国の庶民には、遠くにいる虎より、近くにいるハエのほうが恐ろしい。虎は避けてしまえばそれだけだが、ハエはずっとたかり続ける。その方が恐ろしいのだ。」  
韓国も相当いいかげんな国だが、その韓国紙が「さすが大国」と言って驚嘆する不正の規模。不正に購入したマンションのカギが33個、収集した骨董品の価格が月給の300年分。いつかまた、革命が起きるかも。