バブル崩壊からの脱出

浮かれて踊り疲れ 
土地ころがしでは付加価値は生まれませんでした 
持ち慣れないお金の運用の知恵もありませんでした 
 
建前は使えない社員から解雇 
あたりまえですが覚えめでたい方々は残りました 
 
人員削減経費削減組織再編では限度がありました 
失われた10年です 
やはり輸出頼み 
安い労働力をもとめてのアジア展開でした


 
人員削減
 
能力のない人
 
稼げない 
管理できない 
PCを使えない 
知識知恵が出ない 
がんばれない
 
経費削減
 
組織再編
 
儲からない部署の整理 
ブルーカラーは当たり前 
ホワイトカラーの削減
 
 
個人の能力スキルアップ
 
勉強会研修会
 
能力の品質管理 
能力主義
 
PC環境の整備・活用
 
組織の連携 
情報の共有化 
ネットワーク型組織 
元気の出る組織・運営方法論
 
新分野の模索
 
ニーズ・シーズの総棚卸し 
ニーズ 新製品コピー新製品 
開発力 
開発期間の短縮 
自社潜在能力の再評価
 
接点有無の総点検 
伸びる企業 
伸びる業種業界
 
従来製品のお化粧直し 
コスト削減 
ヤレ防止 
在庫整理 
販売方法 
広告手段 HP・迷惑メールPRの活用
 
グループ会社の統廃合
 
重複組織のスリム化
 
組織活力の明確化
 
不要資産の売却
 
 
原理原則 
思えばあたりまえの 今にも通じる対応でした 
痛さ加減が全員に共有されれば大成功
 
 
 
DTPの普及で印刷業界から版下・写植屋さんが消えました 
写真製版業の付加価値が消えました

 
2009/ 
会社員の想い出 
 
 
5万円で5000枚の新聞折込チラシがまける!
「印刷業界」というと、大日本印刷や凸版印刷といった大手、もしくは街場の小さな印刷会社のいずれかを想像される方が多いだろう。どちらも昔からある「オールドエコノミー」の代表例で、市場規模が徐々に縮小している業界でもある。そんな印刷業界で今、注目されているベンチャー企業がラクスルだ。自らは印刷設備を持たず、インターネット経由で顧客から名刺やチラシなどの印刷を受注し、連携した中小の印刷会社に印刷を依頼するモデルを確立。中小の印刷会社の設備の稼働率は常に低く、非効率なところに目を付け、工場の空き時間を有効活用しようという試みだ。提携する印刷会社は11月時点で1600社にまで増えた。今年の春以降は、新聞の折込チラシやポスティングを低価格で提供するサービスも開始。詳しくは後述するが、5〜10万円程度で、指定したエリアに5000枚の折込チラシを配れるという低価格を実現。これだけ安ければ、個人経営の店舗なども、販促に折込チラシを手軽に利用できるようになる。元外資系コンサルティング会社出身で、「他の人ができることはいい。自分だけができることをやりたい」と話すラクスルの松本恭攝社長に話を聞いた。  
―――最近のベンチャー企業というと、スマホのアプリやネットサービスなどと思いがちですが、松本さんは「印刷」に目を付けられた。これはどうしてですか?  
松本:私は2008年にA.T.カーニーという外資系のコンサルティング会社に新卒で入ったのですが、ここではコスト削減に関するプロジェクトに多く携わったんです。コスト削減といっても、いろんな費用項目がありますよね。私は、直接財より間接財を中心にコストを削減するところをやっていたんです。  
間接財といっても、ロジスティックスだったり、プロモーションコストだったり、賃料、光熱費、販管費、システム開発、通信費など、非常に幅が広い。ここをすごく細かいところまで見たのですが、その中で「印刷費」が非常にコスト削減効果が高いということに気付いたんです。  
印刷業界の市場規模はまだ6兆円もある  
調べてみると、非常に面白いんです。印刷業界は、非常に非効率、不透明な業界なんです。それでいて市場が6兆円もあるんです。6兆円もある産業って実はそんなにないと思うんですよ。  
大日本印刷、凸版印刷などの大手があり、以前はその他に3万社も印刷会社があったんです。直近の数字だと、2万社程度に減っているようです。2009年、2010年前後で、一番倒産件数が多いのは印刷会社だったんですね。  
数がだんだん減っているけれど、まだ2万社もある。巨大なガリバーがいて、中小が非常にたくさんあるという、いびつな構造なんです。ここは、インターネットを使うことで大きく変えることができるのではないかと考えたわけです。
―――もともと起業したいと考えていたのですか?新卒で入社されたのは外資系コンサルティング会社ですね。  
松本:大学のとき、有名な教授や名だたる大人の方々から「無理」と言われながらも、日中韓の学生でビジネスコンテストを開催できた経験がものすごく影響しています。「ゼロから1」は意外に普通の人でも作れるんだと。そして、それをやっているのは、ものすごく楽しいことなんだと身をもって体験したわけです。  
私の世代は、実は、起業するという選択肢があまりない世代だったんです。私は2008年入社なんですが、就職活動は2006年夏ごろから始まったんです。その年の1月にはライブドアショックが起きているんです。なので、「ベンチャーって危ないなぁ」といったイメージを持つ人が多くて、ポジティブなイメージを持ってなかったんです。そういったこともあってコンサルティング会社に入ったわけですが、「ゼロから1」を作るという思いがなくなりきらずに起業したわけです。  
最初の半年は、会社設立代も食費も賃料も込みで200万円で過ごす  
スタート時は、何をやるか、ビジネスモデルがまったく決まっていなかったんです。コンサルタントらしからぬ起業なんですね。2009年の9月に会社を作ってからの最初の半年間は、資本金200万円で、会社設立代も食費も賃料も全部込みで半年過ごしました。24歳だったので、何とか乗り切ることができたんです。  
最初半年はそういう状態の中で、印刷業界の何が問題なのかを徹底的にヒアリングしました。見えてきた課題の1つが、圧倒的に「回し仕事」の多い業界だということです。これは下請け仕事のことです。5重6重で発生することもあり、「自分が外部に出した仕事が、自分のところに帰ってくる」という話さえあるんです。  
その間でマージンとるわけですから、最終的な価格はものすごく高くなります。先ほど出荷額ベースでは6兆円になると話しましたが、生産額ベースだと4兆円強なんですね。2兆円近い開きがあって、これがまさに「回し仕事」のせいなんです。  
実は、1台の印刷機が対応できる印刷物の幅は、そんなに広くないんです。印刷機は安いものではなくて、億円単位でかかるのですが、例えば名刺を刷る印刷機と、封筒を刷る印刷機は違います。封筒とチラシも違います。また、印刷機って、A版とB版があって、B版の印刷機で、A4を印刷すると、たくさん版のロスだったり、紙のロスが発生するんで、高くなるんです。だから、取引のある他の会社に流していくわけです。  
あと、印刷の需要は、新年度が始まる前の3月が一番大きくなります。印刷業はどの会社も設備投資をするのが好きで、3月需要に合わせて設備投資をするのですが、5月6月は需要が急減するんですよ。当然、稼動率もグンと下がる。
―――最初は、印刷の価格比較サイトから始められたそうですね。その後、自分のサイトで印刷を受注する印刷通販のポータルを立ち上げた。  
松本:最初は、特定の印刷会社さんの販売代理店をやったり、印刷会社の価格情報を集めてきて、最安値保証をしたブローカー(仲介業)をやったりしました。そうしたら、「ブローカーをやるくらいなら、印刷の価格情報を有料で使わせてくれ」という話になったんです。価格の比較情報にすごく需要があったんですね。だったら、価格比較情報を無料でインターネット上に載せてみようと思ったわけです。そうしたら、お客さんからも印刷会社さんからも非常に反響があったんです。当時は、インターネットに、印刷に特化した本格的なポータルサイトって存在していなかったんです。  
この価格比較サイトは今もやっています。いわば価格コムのようなモデルです。広告収入をいただきながら運営して、黒字化にも成功して、いい形で事業を展開しておりました。印刷を依頼するお客様、それに印刷会社さんの登録もいっぱい増えて、たくさんご利用いただくようになったのですが、ここで問題が発生したのです。  
印刷工場を持たない強みもある  
発注者側のお客様がお金を支払ってくれない、といった問題が出てきたのです。うちは、単に印刷会社を紹介しているだけなので、発注者と印刷会社の両方に対して何もサービスを提供できなかったんですよ。単純なマッチングでは、お客様に対しても、印刷会社さんにとっても、いいサービスを提供しきれないと痛感したわけです。  
インターネットで印刷を発注できるより便利な環境、打ち合わせなど不要でその場で買えて、すぐに届くようなサービスを我々で作っていったほうがいいじゃないかと。それで、自社で直接販売していく流れに変えたんです。これが、今年3月に開始したラクスルのサービスです。  
名刺、チラシ、ポスターなどをラクスルのウェブサイトで注文を受け付け、提携している印刷会社に印刷を発注します。今年11月時点で提携している印刷会社は約1600社あります。我々は印刷機を持っていませんが、各印刷会社の印刷能力を利用させていただいているわけです。
―――提携している印刷会社にとっては、自社の設備を有効活用できるモデルになっているのはよくわかります。ただ、印刷を発注するお客様から見ると、自社で印刷機を持っている他の印刷通販会社と同じに見えませんか?  
松本:印刷機を保有していないからできることもあります。例えば、弊社で行っているサービスで、4時間以内に名刺をお届けするというサービスがあります。  
普通の印刷会社さんでも、出荷時間を約束しているところはあります。しかし、“手元に届く”時間は約束できないんです。なぜなら、印刷する工場からの距離によって、同心円状に配送時間が変わってくるからです。ですが、我々は提携する印刷会社さんが複数ありますから、注文主に近い印刷会社を選べます。生産に1時間、バイク便で1時間、それにバッファーを2時間とれば、4時間以内に届けられます。工場を1カ所しか持っていないと、そういうことができないんです。  
新聞の折込チラシを低価格で実現  
「自分たちでしかできないことをやる」というところは、いつもものすごく考えています。今年の4月からは、指定したエリアで新聞折込チラシができるサービスを始めました。  
例えば、相模大野と町田の間の半径700メートルのエリアで、11月10日に、A4サイズの両面の印刷物を4750枚印刷して、読売新聞と毎日新聞に入れて配布するというのが、5万円でできるんですよ。
―――これは安くないですか?10年ほど前の話ですが、マンションの営業担当の人に、チラシを1回まくのに200万円くらいかかると聞いたことがあります。当時、私は、折込チラシに載ったキャンセル住居のマンションを買ったんです。若干値引きしてもらったのですが、その際にチラシの費用の話を教えてくれたんです。もう1回チラシをまくことを考えれば、その費用くらいは値引きできるというわけです。配布枚数などは違うでしょうから単純比較はできませんが、昔は百万単位の費用が必要だったものが、今は5万円でまけるんですか。驚きですね。  
松本:そうなんです。印刷データさえいただければ、5万円でチラシが印刷されて、相模大野のこのエリアに半径7キロの圏内で4750枚が配布され、11/10に新聞を開くとチラシが入っているわけです。  
5万円の案件で4万円以上が原価になるんですが、営業が間に入ったら営業効率が悪すぎてペイしないですよね。でも、インターネットを使えば営業部分を全部除くことができるんです。小ロットの折込チラシや、ポスティングが低価格で可能になります。  
5000枚のチラシを5万円でまけるんだったら、ラーメン屋さんでもまけます。マッサージ屋さんもまけます。こういうリテールの商売をしている中小企業の人たちが、ビジネスの集客手段を持つことができるわけです。  
従来の折込チラシは、ある程度の規模のデベロッパーだったり、スーパーだったりでないとまけなかったんです。だから、どこに行っても、新聞に入っているチラシは、洋服の青山、ユニクロ、イオン、イトーヨーカドーなどで一緒ですよね。
個人店舗が折込チラシなんて、ありえなかった  
―――利用者側から見ても、チラシでの発見が増えます。新しく店ができたけれど、認知されないままに畳む店も多いじゃないですか。私の妻の妹はケーキ屋をやっているんですが、最初は集客に苦労したんですよ。  
松本:まさに、そういう店舗さんに使っていただきたいんですよ。今はパン屋や動物病院などでも使ってもらってます。店舗商売されていて集客に苦労している人は非常に多いと思うのですが、折込チラシをまくなんて発想として思い浮かばない。頭からできないと思い込んでいる。それがインターネットを使えばできるようになるんです。
 
ハウステンボスの再建 
メッセージの集中  
1992年、総工費2,200億円をかけて長崎県佐世保市に開業したハウステンボス(以下、HTBという)は開業以来18期連続で赤字でした。その間、実質的な経営破たんを三度しています。バブルの負の遺産、九州最大の不良債権といわれたHTBを旅行代理店HISとそのグループが再建することになります。  
2010年4月、HIS創業者で現会長の澤田秀雄さんが社長に就任。すると10年9月期決算(変則の半年決算)でいきなり黒字決算。11年9月期も3・11大震災があったにもかかわらず、二期連続で黒字となりました。メディアはこれを“澤田マジック”と呼びました。  
11年12月、この澤田マジックを学ぼうと日経BP社が現地訪問セミナーを開催。筆者(福永)は澤田さんの講演や現地視察が行われた後、ランチェスター戦略の専門家の立場で澤田マジックを解説する講義を行いました。後講釈は誰でもできるものですが、手品の種明かしを試みました。  
澤田さんはHIS創業の1980年代初頭にランチェスター戦略を学び、自社の戦略に取り入れます。今も筆者が常任幹事を務めるランチェスター戦略学会で顧問をお引き受けいただいています。HTB再建にもランチェスター的な思考が活かされているということから、筆者が解説することとなったのです。  
ハウステンボスとはオランダ語で「森の家」という意味で、オランダの街並みを再現したテーマパークです。敷地面積は152万uと我が国最大級。一日最大3万人が収容され、3,000人が宿泊できます。96年には年間380万人が訪れ、東のディズニー、西のHTBともいわれましたが、その後、ジリ貧。赤字が続きます。  
なぜ、赤字なのか。商圏が小さく、アクセスが悪く、広いのでコスト高と、そもそも条件が三重苦だからです。商圏は首都圏の二十分の一です。アクセスは福岡市から車で二時間。長崎空港からバスで一時間。遠いし、飛行機代は高く、便数も少ない。敷地面積の広さは維持管理費も高くつきます。  
街並みは本家オランダよりも美しいものですが、オランダそのものではありませんので本物にはかないません。ミッキーマウスのようなキラーコンテンツ(集客力のある魅力的なソフト)もありませんので、一度は行っても二度、三度と訪れる人が少なかったのです。  
構造的に黒字になりにくく、三度も実質的な破たんしたことで負のイメージがつき、空き店舗も目立っていたHTBを澤田さんはいかにして再建したのか。10年4月、社長に就任した澤田さんは、スタッフに3つの基本方針を示しました。  
1 掃除をしよう  
2 明るく元気に仕事をしよう  
3 経費を2割下げ、売上を2割増やそう  
実にシンプルです。澤田さんはいいます。「あれもやれ、これもやれといきなりいわれても、社員は混乱します。大将はまず大きな目標をバシッと示す。細かい指示はその後です。とにかくシンプルで伝わるメッセージにしなければなりません。」  
メッセージはお客様に対しても従業員に対してもシンプルでわかりやすくなければ伝わりません。ランチェスター戦略でいうところの一点集中主義です。メッセージも集中すべきなのです。次号以降で3つの基本方針の詳細を解説し、五回のシリーズでHTB再建をランチェスター戦略の視点で解説します。 
凡事徹底とは差別化戦略  
2010年4月、ハウステンボス(以下、HTBという)再建のため社長に就任した澤田秀雄さん(HIS会長)は、スタッフに3つの基本方針を示しました。(1)掃除をしよう、(2)明るく元気に仕事をしよう、(3)経費を2割下げ、売上を2割増やそう、という実にシンプルなものでした。  
第一の「掃除をしよう」とは「発展している会社はきれい」という澤田さんの経験則から打ち出されたものです。HTBはテーマパークです。お客様に見える部分はもちろん、きれいでした。でも、バックヤードはまだまだと澤田さんは感じました。お客様に見えない部分まできれいにしようというものです。  
掃除をすれば儲かると唱える人がいますが、それは精神論のみならず、理論的に裏付けられます。掃除とは整理、整頓、清掃、清潔の四つの要素で構成されます。  
・整理・・・要るものと要らないものを区分けし、要らないものを処分する  
・整頓・・・要るものを所定の位置に所定の方法で配置し、管理する  
・清掃・・・ホコリなどを掃き清める  
・清潔・・・拭き掃除などで磨き上げ、衛生的にも美的にも美しくする  
四要素の掃除をすることで、スタッフの規律が保たれ、よい習慣が身に着くことで礼節がよくなり、安全性や衛生面も向上します。人は誰もが自分に関心があり、仕事中であっても頭のなかはプライベートなことを考えてしまったりするものです。一心不乱に掃除をすることで自分の内側(プライベート)に向きがちな関心を外側に向けます。すると、スタッフの「気づき、気配り、気働き」がよくなります。お客様のみならず、同僚への配慮も行き届くようになるのです。「愛他精神、利他の心」が育まれます。  
組織には誰がやるのか、はっきり決まっていないけれど、誰かがやらなければならない仕事が山ほどあります。こういった仕事は愛他精神がなければ、誰かがそのうちやってくれるだろうとなり、ポテンヒットのようなエラーが生まれてしまいます。愛他精神があれば、気づいた人が率先してやるのでエラーが生まれにくくなるのです。  
誰がやってもよい仕事を進んでやることを「組織市民活動」といいますが、これが活発に行われればエラーは減り、生産性は上がり、お互いがお互いを配慮していると連帯意識が高まり、働きやすくなるので従業員満足は高まります。このような組織の業績が上がらぬはずはありません。  
第二の「明るく元気に仕事をしよう」ということも、テーマパークという性格上、ごく当り前のことです。スタッフは明るく元気に振舞っているつもりでした。でも、外部から来た澤田さんの目には不充分に映りました。創業以来、赤字続きで社員に負け癖がついている印象でした。「ウソでもいいから明るくやろう、しんどい時こそ明るくやろう、嫌々やってもよい仕事はできっこない。カラ元気でもいいから、と訴えたのです(澤田さん)。」  
掃除も明るく元気もテーマパークとしてはごく当り前のことで、いわば凡事です。ただ、この当り前のことを徹底して継続してやり抜くと、圧倒的な、絶対的な差となります。凡事徹底は差別化戦略です。そして企業繁栄の基礎、基盤となるのです。  
差別化戦略というと大向こうを唸らせるアイディアを考えたくなるものですが、基礎のもろいアイディア勝負は長続きしません。凡事徹底の基盤の上に立つアイディアこそ生きるのです。 
選択と集中とスピード  
ハウステンボス(以下、HTBという)再建のために澤田秀雄さん(HIS会長)が示した3つの基本方針の第三は、経費を2割下げ、売上を2割増やそう、というものでした。これも実にシンプルなメッセージで、どんな組織でもこれが出来れば赤字にはなりませんが、言うは易し、行うは難しの典型です。  
通常は経費を下げれば売上も減ります。これを「縮小均衡」といいます。一方、売上を上げたければ経費も増えます。売上を上げながら経費を下げれば黒字化することは誰でもわかりますが、やるのは至難の業です。  
「わかりやすくするために2割、2割といいましたが、トータルで4割改善できればよいのです。売上が3割上がって、経費が1割下がっても4割の改善です」と澤田さんは言われますが、どのようにしてそれを成し遂げたのか。まずは、経費削減策から。  
澤田さんが再建を引き受ける時点で、HTBは開業19年目です。今後、大規模修繕費がかさむことは間違いありません。これに加えて過去の負債を継承し、固定資産税を払いながら再建することは不可能です。負債を処理し、税金相当額の補助を行政から受けて、実質借金ゼロで事業を受け継ぎました。単年の黒字で修繕費を賄えれば、二度と経営破たんすることはありません。  
次に仕入原価を見直します。これまで仕入は地元企業優先でした。HTBは毎期赤字でしたが、仕入会社は黒字でした。再建のためには仕入先にも理解をえ、地元優先ではなくコスト優先で仕入先をゼロベースで見直します。仕入原価は削減できました。  
日本最大級の敷地面積は、それだけ維持管理費も大きなものとなります。長年の不振でテナントも一部、埋まらず、歯抜け状態でした。そこで、全敷地面積の三分の一をフリーゾーンとして単なる公園とし、有料スペースを三分の二に絞り、テナントをそこに集約。維持管理費を大幅に削減しつつ、歯抜け状態は解消され、賑わい感が出ました。いわば「選択と集中」です。広めれば薄まります。「狭く濃く」はランチェスター弱者の戦略そのものです。  
こうしてコストの大幅圧縮に成功しました。ただし、何でもかんでも減らしたわけではありません。安全と美観の観点から修繕費は減らせません。集客と売上増のために宣伝費やイベント費は減らしませんでした。コスト配分も選択と集中です。  
コスト削減の次は効率化です。マネジメントの単位を職能制からエリア制に変更します。HTBには遊戯、飲食、物販の機能があり、職能別にマネジメントをしていました。これをエリアで区分して職能を超えたマネジメントに変更したのです。例えば、飲食店が混んで人が足らなくなったら、近くの小売店から応援を出すことができます。敷地が広いうえに、混雑の時間帯が一致しやすい職能で区分していてはできなかったことです。また、各エリアはよい意味で競争するようになり、全体として活性化しました。  
前回、掃除が「組織市民活動」を活発化させる旨、書きました。掃除はエリア制マネジメントをも裏付けるのです。また、ペンキがはがれていたら、自分たちで塗るなど、内製できるものは内製し、外注費の削減も行います。  
スピードも重視します。「今までよりも仕事のスピードを2割速くしようと訴えました。そうすれば経費を2割削減したのと同じ効果があります。私自身も電動アシスト自転車でパーク内を駆け回ることで率先垂範しています(澤田さん)。」  
「意思決定は即断即決が基本。早く決断したら、結果も早く出る。たとえ失敗しても、すぐ修正ができます。歴史をみると、戦いもそうでしょう。速いほうがたいてい勝つ。戦いはスピード。経営もスピードなのです(澤田さん)」  
スピードも差別化戦略です。 
選択と集中とスピード  
ハウステンボス(以下、HTBという)再建のために澤田秀雄さん(HIS会長)が示した3つの基本方針の第三は、経費を2割下げ、売上を2割増やそう、というものでした。前回は経費削減策を解説しました。今回は売上拡大策を解説します。  
テーマパークの売上は「客数×客単価」で決まります。まず、客数を上げるために澤田さんは入場料を下げる決断をします。3,200円を2,500円に2割強下げます。入場料を下げれば客数は増えるかもしれないが、客単価が減るので、これまでの経営者はなかなか踏み切れないでいました。澤田さんは入場料を下げることと、キラーコンテンツ(集客力のある魅力的なソフト)の二本柱で、まずは客数を増やし、次に滞在時間を長くすることで客単価を上げる策を講じます。  
・ワンピース・・・今、子供に一番人気のアニメの海賊船を常設し、ファミリー層に訴求。  
・AKB48・・・今、若者(特に男性)に一番人気のアイドルのコンサート開催  
・花と庭園・・・・従来からのチューリップ(早春)に加えて、百万本のバラ(初夏)、ガーデニング世界大会(秋)でミドルからシニア層に訴求。  
・夜景・・・・・・従来から冬の夜はイルミネーションがあったが、規模を拡大し世界一のイルミネーションに。(電球820万球)  
以上のような、ここにしかないオンリーワン・コンテンツや、ここが一番のナンバーワン・コンテンツを次々に投入。若者男性、シニア層といった従来、弱かった客層も取り込みました。また、HISの力もあって、中国をはじめとする海外からの来場者も増えました。夜景を名物化することで弱かった夜間を強化し、一客当たりの滞在時間も増えました。結果として、客数も客単価も増えたのです。  
こうして、10年9月期、HTBは開業以来、19期目にして黒字決算をします。次期も順調に推移していましたが、11年3月11日、東日本大震災が起こります。九州のHTBは全く被災しませんでしたが、深刻な影響が出ました。大震災に伴う原発事故の影響で、増えていた海外からのツアー客が壊滅。世間の自粛ムードで団体客も壊滅。東日本からの個人客も激減。一週間で一万室のホテルがキャンセルされます。  
このままでは11年9月期は赤字に逆戻りです。澤田さんは戦略転換します。全ての集客活動を大震災の影響の少ない西日本の個人客に集中。それでも客数増は難しいので、客単価を上げる仕掛けを次々と投入。結果、11年9月期は前期比で客数は7%増の180万人と微増にとどまりましたが、売上は三割増で、二期連続黒字決算を果たします。スピード経営、集中戦略で危機を突破できました。  
戦略とは仮説と予測に基づくものです。その前提が崩れたら、直ちに戦略を立て直す必要があります。 
志と夢  
ここまで4回に渡り、ハウステンボス(以下、HTBという)の再建のために澤田秀雄さん(HIS会長)が行った三つの基本方針(1)掃除をしよう、(2)明るく元気に仕事をしよう、(3)経費を2割下げ、売上を2割増やそう、を解説しました。  
実は、この三方針を示す前に、社長就任の第一声として従業員に示したことがあります。それは「志」と「夢」です。理念こそ究極の差別化と筆者は唱えていますが、澤田さんは従業員に次のように語りかけたといいます。  
皆さんは、何のためにHTBで働いてきたのでしょうか?  
長年、赤字で給料が増えなくても、ここで頑張ってこられたのはなぜですか?  
お客様に喜びや驚きや癒しといった感動を提供することを自らの「志」としているからではないでしょうか。  
皆さんには、HTBをこうしたいという「夢」があるのではないでしょうか?  
私にも夢があります。私はHTBを「東洋一のきれいな観光ビジネス都市」にしたいという夢が描けたから、再建をお引き受けしました。  
皆さんにも、夢があるでしょう。  
私は再建の第一線に立ちます。  
皆さんと「志」と「夢」を共有して、共に再建を果たしましょう。  
HTBにはミッキーマウスはいません。商圏も小さいです。テーマパークという土俵で戦う限りは、ディズニーランドにはかないません。しかし、HTBにはディズニーランドにはないものがあります。東京は遠いけれど上海は近いです。事業ドメインを変え、市場を変えればナンバーワンになることは可能です。このことを澤田さんは「夢」と語りました。具体的には  
・教育観光  
・医療観光  
・ビジネス利用  
・アウトレットモール  
・上海・長崎航路の定期就航  
など、単なるテーマパークではなくなることで、新たな需要を創出し、競争の次元を変えればナンバーワンになれるということです。  
「ハワイに行きたいと思わなければ、ハワイには行けません。やりたいことをイメージし、設計図化すれば、今、何をやるべきか、そのことが見えてくる(澤田さん)。」  
HTBにはメリーゴーランド(回転木馬)があります。施設自体はどこの遊園地にもあるものと変わりません。ただ、HTBの回転木馬の運行管理をするお兄さんは、かぶりものをして、木馬が回っている間、ずっと、木馬にまたがる子供たちに手を振ったり、ひょうきんなダンスをします。一日中です。子供たちの笑顔のために、一日中、踊っているのです。  
聞けば、誰に命じられたものでもないという。澤田さんの「志」と「夢」を共有し、基本方針の一つ「明るく、元気に」を、自分の立場で取り組もうとしたときに、彼は踊りだしたのです。HTB再建の象徴だと筆者は感じました。これで五回に渡って連載したハウステンボスの再建を終えます。