右往左往 消費増税対策

消費増税対策 迷走
大盤振舞い
バラマキ加速

借金返済は後回し 本来の目的霞む


 
 
 
●右往左往の対策
対策全て実行しても いっとき消費は後退します
対策全て中止しても いっとき消費は後退します 
大盤振舞い手にしても 人はムダ遣いしません
税金が増えることで
財布のひもを締めるのが 人の性です
 
 
 
景気後退が怖いなら 消費増税を止める
恐いからといって 筋違いのバラマキ対策
本来の増税目的を忘れた 無責任政策
 
 
 
●「消費税10%」に日本経済は耐えられない懸念 6/4
今年も「骨太の方針」の作成が佳境を迎えている(6月に政府が発表予定、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」)。方針を決める経済財政諮問会議では、2019年10月の消費増税が予定される中で、2014年の増税時のような景気の落ち込みを防ぐ対応策が議論されている。
「消費増税による悪影響」が、正しく認識されていない
この中には、消費増税前の駆け込みと反動減がもたらす「経済の振れ幅」を平準化する対応策がある。だがこれらは本質的な対応とは言えないだろう。なぜなら消費増税の悪影響とは、増税による家計所得の目減りによって個人消費が落ち込むことだからである。
「増税による恒久的な家計所得の目減りを、家計への所得補填政策でどの程度カバーするか」が、増税のインパクトを決する。2%の消費増税分から軽減税率分を引いた4.6兆円程度が、2019年10月から恒久的に家計所得の押し下げに作用する。
一方、予定されている消費増税分のうち、約2兆円については幼児教育や大学授業料無償化などの対策に使われるというのが安倍政権の公約となっている。実際には、増税ショックを和らげる恒久的な家計への所得補填がどの程度の規模になるかは、制度設計によって変わると筆者は考えている。
消費増税とともに実現する、家計に対する所得補填の規模がほぼ明らかになっている政策では、幼児教育無償化に約0.7兆円、低所得年金生活者(対象800万人)に対する支援金などに約0.5兆円が充てられる、と筆者は見積もっている。
以上は増税開始と同時期に始まる見通しだが、この恩恵を受けるのは、子育て世帯、低所得高齢世帯であり、消費性向が高い一部世帯への所得補填は、増税ショックを多少和らげるだろう。
もう一つの所得補填の目玉は、大学など高等教育の授業料無償化、支援金支給などの政策である。だが、これを通じた所得補填については、規模や対象範囲は依然明確になっていない。なお、この制度は2020年4月から始まるので、2019年10月の消費増税には間に合わない。
家計が支払う大学などの授業料の総額は年間3.7兆円と試算され、個人消費の1.5%の割合となる。この対象世帯の範囲によって、授業料無償化による家計への所得補填は数千億円レベルで異なってくる。
結局、家計所得への補填は1兆円程度?
2017年の自民党部会における資料によれば、低年収世帯には「授業料無償化」+「年収300〜500万円世帯へ半額無償化など」で、0.7兆円の財源(=家計への所得補填)が必要と試算されている。この対象となるのは、大学授業料を負担する世帯の2割程度とみられる。
一方、最近の報道によれば、大学などの授業料無償化について、授業料全額無償化は世帯年収約200万円以下に限り、世帯年収380万円まで、年収ごとに段階的に授業料の一部を補填する案が検討されている模様である。
この案だと、大学無償化による所得補填をうけるのは対象世帯の1割以下になるとみられ、上記の自民党案で示された0.7兆円の半分以下の規模に増税時の家計所得補填が抑えられる可能性がある。
これは授業料無償化に限る話で、別途、学生への生活支援の枠組みも検討されていると報じられていることから、ある程度の上積みはあるかもしれない。最終的には、今後固まる制度設計次第ではあるが、霞が関から漏れ伝わる報道を踏まえると、2兆円分とされる消費増税の使い道のうち、家計所得補填にまわる規模は1兆円程度にとどまる可能性がある。
そうなると、消費増税による家計負担は3兆円を超える可能性があり、家計所得の1%超に相当する可能性がでてくる。2014年の消費増税時の8兆円の家計負担と比べると小さいものの、2019年の賃金上昇率がどの程度高まるかで、個人消費に及ぶ影響は異なってくる。
もし賃金が1%前後の伸びの状況で3兆円を超える増税負担となれば、可処分所得の伸びはほぼゼロまで抑制される。2014年ほどではないが、個人消費に相当なブレーキがかかるリスクがある。
1〜2兆円規模の追加国債発行は、ほとんど問題がない
2%インフレの実現が難しい2019年度半ばの時点で、家計所得と個人消費にブレーキをかける緊縮財政政策の妥当性をどう考えるか。教育無償化には人的資産を底上げする性質があり、この恒久的制度の財源を国債発行によって調達する合理性はある。
また、すでに国債発行残高GDP比率は低下しており、1〜2兆円規模の追加国債発行はほとんど問題にならない規模である。そして、日本銀行による現行の金融緩和の枠組みでは、日銀による国債購入が減少していることが金融緩和の効果を弱めている可能性がある。国債発行の拡大は、金融緩和の効果を高め総需要安定化政策の強化となり、遅れている脱デフレを後押しする。
国税・地方税をあわせて、税収規模はすでに100兆円に達しているが、早期に名目GDPが3%程度伸びる経済状況を実現することは、3兆円規模の税収増が確保されることを意味する。であれば、長期的に財政収支を安定させるためには、道半ばにある脱デフレと正常化完遂を最優先することが最も確実なプロセスになる。
1990年代半ばからの不十分な金融緩和政策、緊縮財政政策の帰結としてデフレ不況が長期化してきたことが、公的債務拡大の最大の要因だと筆者は考えている。
そう考えると、総需要安定化政策を徹底する堅実な政策運営が、最終的に将来世代の税負担を減らすことになる可能性がある。政治的な事情が優先され、インフレ率が極めて低い中で再び個人消費に大きなブレーキをかける緊縮政策に踏み出す可能性が高まっているように見えるが、そうであれば脱デフレ完遂を前に日本経済に暗雲が漂ってもおかしくはない。  
 
 
 
 
 
 
 
●首相、19年10月消費税10% 対策指示へ 予算・税制の検討加速 10/15
安倍晋三首相は15日午後の臨時閣議で2019年10月に消費税率を10%に引き上げるための対策を検討するよう関係閣僚に指示する。増税後の自動車や住宅などの購入を後押しし、駆け込み需要と反動減を最小限に抑える。公共投資も増やし、増税後の需要を喚起する。早めに対策を示すことで、事業者に消費税の軽減税率を導入する準備も促す。
政府・与党は15日午前に首相官邸で政策懇談会を開いた。北海道地震などの災害対策費を盛り込む第1次補正予算案の臨時国会への提出を確認した。首相は会議で「公共施設や農地などの復旧を力強く後押しするなど、被災地の復旧・復興に全力で取り組む」と述べた。
公明党の山口那津男代表は政策懇談会後に「(増税対策の)準備を加速させなければならない」と述べた。菅義偉官房長官も15日午前の記者会見で「軽減税率のほか、駆け込み需要と反動減の平準化のための様々な措置の具体化を進める必要がある」と述べた。菅氏はリーマン・ショック級の経済への打撃があれば増税延期の可能性があるとの方針も改めて語った。
政府は増税に伴い、酒と外食を除く飲食料品の税率を8%に据え置く軽減税率を導入する予定だ。小売業者などは10%と8%の複数の税率に対応したレジやシステムの整備が必要になる。首相は事業者の準備が進むよう関係省庁に指示する。
首相はこれまで2度、消費税増税を延期した。19年10月に増税する意向をたびたび示してきたが、過去の経緯を踏まえて事業者の準備が遅れる懸念が出ていた。
駆け込み需要と反動減を抑える対策では、消費者が増税後に自動車や住宅を購入する際の資金を財政・税制面で支援する。中小の小売店などでキャッシュレス決済した際に、消費者に2%分を還元する案も検討している。ポイント還元の資金は政府が補填する。
増税で得る財源の使途を一部変更し、幼児教育・保育や低所得者向けに大学の無償化を実施する。制度が着実に実施されるよう、文部科学省など関係省庁は準備を急ぐ。
政府は第1次補正予算案に加え、防災・減災のインフラ整備費用などを計上する第2次補正予算案も年末に編成する。公共事業を積み増し、増税に向けて需要が落ち込まないよう対策をとる。19年度当初予算案にも計上するため、公共事業費は大きく膨らみそうだ。
14年4月に消費税率を8%に引き上げた際は5.5兆円の経済対策を打った。それでも予想を上回る反動減があった。今回も与党から対策費の増額を求める声が高まる可能性がある。 
 
 
 
 
 
 
 
●防災事業で景気下支え=消費増税対策に活用−政府 11/12
来年10月に予定される消費税率10%への引き上げに関し、政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で12日、インフラ整備で防災対策を進める「国土強靱(きょうじん)化」を増税後の景気下支えに活用する案が示された。ただ野放図な公共投資の拡大は財政健全化に逆行。「増税対策」の大義名分の下に不要な事業が増える事態をいかに防ぐかが課題となりそうだ。
安倍晋三首相は12日の諮問会議で、相次ぐ自然災害を受けて「国土強靱化の緊急対策が喫緊の課題だ」と表明した。石井啓一国土交通相も防災対策の必要性を強調した上で「消費税率引き上げ後の景気下振れを防ぐため、公共投資による下支えも重要だ」と指摘。諮問会議の民間議員は駆け込み需要を助長しないよう、公共事業の実施時期をできるだけ増税後とするよう訴えた。
消費税率引き上げでは、増税前に駆け込み需要が発生し、増税後に消費が冷え込む反動減が懸念される。税率を5%から8%に上げた2014年度には個人消費が大きく落ち込み、その後も低迷が続いた。19年の税率上げでは景気への打撃を最小限に抑える方策が焦点となっている。
政府は既に、消費者に対する増税分のポイント還元や、住宅と自動車に関する減税などの対策を検討。これらに加えて防災関連の公共事業を19年10月以降に積み増せば、受注企業の業績が改善し、設備投資や従業員の給与が増える波及効果が期待できる。政府は今月末にも防災対策を取りまとめ、今後の予算編成に反映させる方針だ。 
国土強靱化を通じた景気対策について、自民党からは「災害と消費税で地方は疲弊している。ぜひやってほしい」(参院中堅)と歓迎する声が上がり、歳出圧力の拡大が予想される。一方、茂木敏充経済財政担当相は12日の記者会見で、今後定める防災関連の計画は、政府の財政健全化目標と「整合的であるべきだ」とくぎを刺し、財政規律を重視する姿勢を示した。 
 
 
 
●消費増税対策の期限切れとオリンピックの終了 11/22
消費増税対策が目白押し
政府は、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げが経済に影響を及ぼさないよう政策を総動員する方針だ。具体的には、従来から決まっていた幼児教育の無償化、軽減税率の導入に加え、キャッシュレス決済時のポイント還元、自動車・住宅購入支援策、プレミアム商品券の発行などが検討されている。
このような対策は、消費税率引き上げに伴う需要の落ち込みを一定程度緩和することが見込まれるが、内容的には問題も多い。たとえば、軽減税率はその対象となるテイクアウトと外食の区別の難しさ、システム改修の遅れ、ポイント還元は対象となる中小企業の線引き、システム対応の問題、プレミアム商品券は費用対効果の低さ、などが指摘されている。
オリンピック前に成長率はピークアウト?
消費増税対策はその中身に加え、期限付きのものが含まれていることも気になるところだ。最近の日本経済は設備投資やインバウンド需要を中心に東京オリンピック関連需要で押し上げられているが、その効果はいずれなくなる。東京オリンピック・パラリンピックは2020年の7月から9月にかけて開催される(オリンピック:7/24〜8/9、パラリンピック:8/25〜9/6)。
夏季五輪開催前後の成長率 ここで、過去の夏季オリンピック開催国において、開催前後の四半期毎の実質GDP成長率(1964年の東京(日本)から2016年のリオデジャネイロ(ブラジル)までの平均。ただしデータの制約から1980年のモスクワ(ソ連)を除く)をみると、成長率のピークは開催2四半期前で、その後1年間は伸び率が低下していることが確認できる。需要項目別には、総固定資本形成は開催3四半期前がピークで、開催2四半期後まで伸び率が急低下しており、個人消費は開催2四半期前をピークに、開催3四半期後まで伸び率が緩やかに鈍化している。
これを機械的に2020年の東京オリンピック・パラリンピックに当てはめると、成長率のピークは2020年1-3月期となる。もちろん、実際の経済はオリンピック以外の要因にも左右されるが、これまで景気を押し上げてきた要因のひとつがなくなることは間違いない。消費増税対策の詳細は年末までにまとめられるが、時限措置の期間が1年となった場合、ちょうどオリンピック開催直後に対策が期限切れを迎えることになってしまう。
過剰な対策は景気の落ち込みを増幅する恐れ
消費増税は家計の負担を増やすことによって政府の収入を増やす政策なので、消費の水準が一定程度落ち込むことは避けられないと割り切ることも必要だ。一時的な需要喚起策は景気の落ち込みを先送りしているにすぎない。
対策の規模を大きくすれば、消費増税後の需要の落ち込みをある程度緩和することはできるかもしれない。しかし、このことがオリンピック終了後の景気の落ち込みを増幅することになっては元も子もないだろう。先の先を見越した経済政策運営が求められる。  
●ポイント還元「5%を9カ月」=東京五輪まで、消費増税対策−安倍首相 11/22
安倍晋三首相は22日、2019年10月の消費税率引き上げに伴う景気対策として実施するキャッシュレス決済時のポイント還元について、20年の東京五輪・パラリンピックまでの9カ月間、還元率5%で実施する方向で検討する考えを示した。還元率は増税分と同じ2%の方向だった。首相が大幅な上乗せを表明した形で、「大盤振る舞い」の批判を呼びそうだ。
自民党の岸田文雄政調会長が首相に党の消費税増税対策を提言後、記者団に明らかにした。
政府は税率引き上げ後の消費の落ち込みを防ぐため、カード決済など現金を使わないで買い物をした消費者に商品やサービス購入に使えるポイントを還元する制度を導入する。
ただ、還元率を5%まで拡大することで、ポイント還元の原資となる公費負担は数千億円規模に膨らむ公算が大きく、財源確保も課題となる。対策費用が過大になれば、増税の必要性を疑問視する声が高まりかねない。 
●首相「ポイント還元率5%を9カ月」検討 消費増税対策 11/22
安倍晋三首相は22日、来年10月に消費税率を8%から10%に引き上げる際の対策として、中小の小売店で現金を使わない「キャッシュレス決済」をした買い物客に対し、ポイントで5%を還元する考えを表明した。期間は2020年東京五輪・パラリンピックまでの9カ月間を想定。税率の引き上げ幅を上回るポイントを還元することになり、利用すれば消費者の負担は事実上、現行よりも下がる。
自民党の岸田文雄政調会長が首相と面会した後、記者団に明らかにした。首相は「引き上げはデフレ脱却への一つの試練であり、思い切った対策をしっかりと行いたい」と述べた。
政府はポイントによる還元を増税する幅と同じ2%とし、半年から1年程度の期間に実施することを軸に検討していた。首相の判断は、5%にすることで魅力を高め、利用者を増やす狙いがあるとみられる。だが制度の詳細はこれからで、対象となる中小の小売店の規模の線引きや決済の種類など課題は多く、利用者が混乱する恐れもある。
首相は岸田氏に、マイナンバーカードを利用した増税対策も表明。政府は「プレミアム商品券」の発行、自動車・住宅ローン減税も検討中で、バラマキ色が強まっている。 
 
 
 
●「消費増税対策」の名のバラマキは避けよ 11/23
年末の政府予算編成・税制改正作業で、2019年10月に予定する消費税率引き上げへの対応策が焦点になっている。安倍晋三首相は20日の経済財政諮問会議で、19年度予算案に十分な消費増税対策を盛り込むよう指示した。
14年4月に消費税率を5%から8%に上げた際、増税前の駆け込み消費の反動減が大きかったことを踏まえ、政府は増税前後の消費の急変動をならす方策を検討してきた。しかし、最近は急変動をならすというよりは「消費増税対策」に名を借りた歳出増圧力が強まっているようだ。
首相は来年度予算案の消費増税対策とともに、公共事業を柱とする今年度第2次補正予算案の策定も指示し、「景気をしっかり下支えできるよう切れ目のない対策を講じていく」と述べた。
19年度前半は増税前の駆け込み需要があり、反動減が起きるのは10月以降だ。年度後半の景気落ち込みを和らげるはずが、いつのまにか「切れ目のない景気対策」になってしまった。
確かに中国など海外経済の減速や株式市場の動揺など景気の先行きに不透明要因は出てきている。だが、財政出動をむやみに積み上げれば問題が解決するわけではない。消費増税後には、20年の東京五輪後の需要減を避けるための対策が必要ということになり、財政出動はいつまでもやめられなくなってしまう。
日本経済の成長力引き上げが重要なことはいうまでもないが、それは規制改革や技術革新による生産性向上で潜在成長率を高めるのが筋だ。財政や税制による対策はそれを側面支援するものだ。
消費増税対策も乱立気味だ。政府は、10月以降にキャッシュレス決済で買い物した人に期間限定でポイントを還元する案を検討している。欧米や中国などに比べ遅れているキャッシュレス化を推進する政策だという。
さらにクレジットカードを持たない高齢者や低所得者に不公平との声が出て、プレミアム付き商品券を発行する案も浮上している。これではキャッシュレス化を推進する効果は薄れてしまう。
消費増税をしても、その対策と称してどんどん財政支出を増やせば、増税の意味はなくなる。消費税の増収分は、増加を続ける社会保障費と財政健全化に充てるべきだ。消費増税対策に名を借りたバラマキになってはならない。 
 
 
 
ポイント還元率5%で検討 消費増税対策の基本方針 政府 11/26
来年10月の消費税率の10%への引き上げを前に、政府は景気の冷え込みを抑える対策の基本方針を示しました。焦点の一つのキャッシュレス決済のポイント還元制度では、安倍総理大臣の意向を踏まえ還元率を5%とする方向で検討を進める方針です。
基本方針では、恒久的な制度として導入が決まっている幼児教育の無償化と、食品と新聞に限って税率を8%に据え置く軽減税率に加え、7つの対策を実施するとしています。
○ 公明党が実施を求めている「プレミアム付き商品券」をめぐっては、低所得者や0歳から2歳の子どもを持つ世帯を対象に発行・販売するとしています。商品券の利用先は発行元の市区町村内であれば店舗の規模は制限しない一方、使用期限を設ける方向で検討しているほか、利便性を高めるため商品券は小額でも購入できるようにするとしています。政府内では最大2万円で2万5000円分を購入できるようにする案が検討されています。
○ 中小の小売店でクレジットカードなどを使ってキャッシュレスで買い物をした際に、その後の買い物で使えるポイントを還元する制度も導入するとしています。政府は安倍総理大臣の意向を踏まえ還元率は5%とし、再来年の東京オリンピック・パラリンピックまでの9か月間に限って実施する方向で検討を進める方針です。さらに自民党の提言を踏まえ、マイナンバーカードにポイントをためて買い物などに使える「自治体ポイント」の加算も対策に盛り込んでいて、キャッシュレス決済のポイント還元などを実施したあとに期間を限定して行うことを検討するとしています。
○ 住宅や自動車の購入者に税制・予算上の支援措置を講じることや、
○ 事業者が増税の前後にみずからの判断で柔軟な価格設定が行えるようガイドラインを整備すること、
○ 公共事業の拡充、
○ 商店街の活性化に向けた支援、なども盛り込んでいます。
安倍総理大臣は会合で「来年度予算案の編成過程における対策の決定に向けて、与党と調整しつつ検討を深めてほしい」と述べ、年末までの対策の取りまとめを指示しました。
ポイント還元
政府が検討している「ポイント還元制度」は、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどを使ってキャッシュレスで買い物をした際、その額に応じて、その後の買い物に使えるポイントとして還元する制度です。
対象の店は、中小の小売店のほか飲食店や旅館なども含まれ、買い物額の上限は設けない方向です。
還元率は増税分を超える5%とし、増税後から東京オリンピック・パラリンピックまでの9か月間続ける方向で検討されています。還元分は国が補助します。
制度を始めるにあたって政府は、小売店がキャッシュレス決済を導入しやすくするため、
○ 決済に必要な端末を導入する費用の大部分を補助するほか、
○ カード会社に対し小売店から徴収する手数料を低く抑えることも求めています。
経済産業省によりますと、国内でのキャッシュレス決済の比率はおよそ20%と、欧米や中国や韓国といったアジアの国と比べても低い水準にとどまっています。
政府としては制度の導入でキャッシュレ決済の普及にもつなげたい考えです。
プレミアム商品券
消費税率の引き上げが所得の低い人や子育て世代の消費に与える影響を緩和するため「プレミアム付き商品券」も発行します。対象は、
○ 住民税が非課税の世帯と、
○ 0歳から2歳の子どもを持つ世帯、とする方向です。
最大2万5000円分の商品券を2万円で購入できる案が検討されていて、差額の5000円分は国が補助します。
商品券は1枚の額面を500円や1000円とするなど小口でも使えるようにする方向です。
商品券は各市区町村が発行します。
買い物ができるのは商品券を発行した市区町村に限られますが、店は小売店だけでなく大型店も対象とし、来年10月から一定の期間に限って買い物に使えるようにする方向です。
マイナンバーカード活用のプレミアムポイント
政府はマイナンバーカードを持っている人を対象に、買い物する際などに使える「自治体ポイント」を加算する制度も導入する方針です。「自治体ポイント」は、
○ カード会社のポイントや航空会社のマイルを自治体独自のポイントに交換したり、
○ ボランティア活動に参加すると自治体からもらえたりするポイントです。
地域の商店街で買い物などをする際に、マイナンバーカードを店舗の端末にかざせばポイントで支払いをすることができます。
この自治体ポイントがマイナンバーカードがたまる際、国の負担でポイントを加算する方向で検討されていますが、どの程度加算するかなどは決まっていません。
マイナンバーカードの普及を後押しする狙いもあり、キャッシュレス決済によるポイント還元制度などの対策が終了したあと、消費の落ち込みを防ぐため実施する方針です。
ただ総務省によりますと、このポイントを導入している自治体は70と全体の4%にとどまっていて、制度がスタートするまでにどこまで普及するかが課題となります。
住宅と自動車の増税対策
金額が大きく消費増税の負担が重くなる住宅と自動車に対しては、増税後に買ってもメリットが出るように税と予算の両面での対策が検討されます。
【住宅ローン減税・すまい給付金】
増税後に新たに住宅を購入する人たちへの対策です。
ローンを組んで購入した人が残高に応じて最大で年間50万円の減税を10年間受けられる「住宅ローン減税」を拡充する方針です。
減税の期間を今の10年間からさらに数年間延長する方向で調整が進められる見通しです。
また年収775万円以下の人を対象に最大50万円を給付する予定の「すまい給付金」の拡充も検討されています。
【住宅ポイント】
増税後に住宅を新築したりリフォームしたりする際、一定の省エネ性能や耐震性、バリアフリーの基準を満たした場合に、買い物などに使えるポイントで還元することも検討されます。
【自動車の燃費課税】
来年10月に今の「自動車取得税」に代わって、燃費性能に応じて課される「環境性能割」という新たな制度が導入されることになっていますが、この課税を先送りしたり、一定の間、税率を引き下げたりする案が検討されます。
また燃費のよい車を対象に「自動車重量税」などの負担を軽くする「エコカー減税」の拡充も検討されます。
経済政策の今後の方向性も示す
一方、政府は26日の会合で、消費税率の引き上げに向けた対策に加えて、経済政策に関連するさまざまな施策の今後の方向性を示しました。
【成長戦略】
来年夏に策定する成長戦略をめぐっては、政権の最大のチャレンジと位置づける全世代型社会保障への改革に向けて、現在は65歳までとなっている継続雇用年齢を引き上げるための検討を継続し、「70歳までの就業機会の確保を図る」としています。また、
○ 新卒一括採用の見直しや中途採用の拡大など雇用制度改革の検討を続けるほか、
○ 高齢者が健康で長生きできるよう疾病予防にも力点を置き、糖尿病や認知症などの予防措置に取り組む自治体などへの支援措置を強化するとしています。
【地方施策の強化】
○ 経営が悪化している地方銀行や路線バス事業者の経営統合を後押しする仕組みを整備するとしたほか、
○ 若者の地方への移住を促す取り組みや、
○ 限界集落の活性化策などを検討するとしています。
【第4次産業革命】
先端技術を暮らしに取り入れる「第4次産業革命」の実現に向けては、「移動弱者ゼロ」を旗印に、
○ 地方でのタクシーの相乗りや完全自動運転のバスの運行、
○ 75歳以上の高齢者向けの新たな運転免許制度の創設、などを検討するとしています。
○ AI=人工知能などの活用を通じた行政手続きの効率化や、
○ キャッシュレス社会を実現するための取り組み、なども検討を継続するとしています。
規制改革の方向性は
政府は今後の規制改革の方向性も示しました。携帯電話をめぐっては、
○ 通信料金と端末の購入代金の完全な分離を図るとともに、
○ すべての販売店などで分離が徹底されるよう法改正を行うことで、より安い料金で利用者のニーズにかなったサービスや製品の選択を可能にするとしています。
○ インターネットを活用して教師が遠隔地の児童・生徒に授業を行う遠隔教育について、5年以内にできるだけ早く希望するすべての小中学校や高校で利用できるよう包括的な措置を講じること、
○ 原油や金などの先物取引を一括して取り扱う「総合取引所」を可能なかぎり早期に実現するため金融庁や経済産業省などの関係省庁が今年度末をめどに方向性を出すべく協議を行う、としています。  
 
 
 
●増税対策2兆円規模 国費負担9項目公表 11/27
政府は二十六日、来年十月の消費税率10%への引き上げで景気が落ち込むのを防ぐための対策を公表した。中小・小規模店でクレジットカードなどを利用した消費者にポイントを還元したり、マイナンバーカードの保有者に地域の商店などで使える「自治体ポイント」を付与したりするなどの九項目。予算規模は二兆円を上回るとの見方もあり、来年の統一地方選や参院選を意識した「バラマキ」の傾向を強めている。
対策には、既に決まっている飲食料品などへの軽減税率導入や幼児教育無償化も含まれる。政府が同日開いた未来投資会議などの合同会議に提示した。安倍晋三首相は「与党からの提言を踏まえ、基本方針を示した。消費をしっかりと下支えしていく」と述べた。
ポイント還元は消費税増税と同時に始め、東京五輪・パラリンピックが開幕する二〇二〇年夏まで続ける方向。消費者がクレジットカードやQRコードなどのキャッシュレス手段を使って中小店で決済した場合、購入額の5%分を次の買い物で使えるようにする。
この対策が終わった後、消費者の負担感が一気に高まらないよう、マイナンバーカードによる自治体ポイントを付与する見通し。上乗せ分を国費で賄う。
このほか低所得者やゼロ〜二歳児がいる子育て世帯を対象に「プレミアム付き商品券」を発行。「国土強靱(きょうじん)化」のための公共事業も実施時期を調整することで景気変動を抑えられるとし、増税対策に位置付けた。
省エネ・耐震機能に優れた新築住宅の購入や改修にポイントを付与する仕組みや自動車税の軽減方針、商店街の活性化支援も盛り込んだ。いずれの政策も予算措置や税制の見直しが必要で、当初予算の編成などを通じて詳細を詰める。
政府が検討するキャッシュレス決済時のポイント還元を巡り「現金払い」を貫いてきた地域の商店街の店主らに不安が広がっている。確実にポイントを得たい消費者は、クレジットカードや電子マネーが使えるコンビニエンスストアに流れるとみられるためだ。
東京都目黒区の「平和通り商店街」。青果店を営む増田進さん(53)は「値段でスーパーやコンビニに太刀打ちできないのに、さらにポイントで差が出るなんて。品物の良さで選んでもらうしかないね」と嘆く。カードを使わない高齢者らの利用が多い増田さんの店に決済端末はなく、やりとりは全て現金。増田さんは「ウチにキャッシュレス決済は無縁だよ」と話す。
政府はカード端末などを導入する中小事業者への支援も検討するが詳細は未定だ。一方、コンビニの本部は大企業が大半だが店舗はフランチャイズ契約を結ぶ中小事業者の経営が多い。キャッシュレス決済が可能な小規模スーパーもあり、中小店支援も目的の国の政策が、かえって商店街衰退に拍車を掛けかねない。
二十六日の衆院予算委員会でも無所属の会の大串博志氏が「『キャッシュレスで購入した人だけにポイント還元するなんて言われたら、お客さんは来なくなっちゃうよ』と言う地方の人がたくさんいた」と懸念。麻生太郎財務相は政府の消費税増税対策を挙げ「総合的に考えれば十分な(影響)緩和策になる」と答弁したが、「現金主義」の小規模店の不安は大きい。
増田さんの青果店近くで菓子店を営む猿倉孝司(さるくらたかし)さん(75)も「元気な人は遠くてもポイントがもらえる店に行っちゃうかも。ウチみたいなお店はもういらないのかな」と寂しそうな表情を浮かべた。 
●消費増税対策のポイント還元、カード業界が猛反発なぜ? 11/27
政府は平成31年10月の消費税増税に合わせ、景気対策の一環としてキャッシュレスでの買い物を対象にポイント還元を検討している。キャッシュレス決済は電子マネーやスマートフォンで読み取るQRコードなど幅広く対象となる見通しだが、主力は普及が進むクレジットカードとみられている。構想が明らかになった当初、クレジットカード業界には歓迎ムードが広がった。ところが最近では、カード業界から猛反発の声が上がっている。一体何があったのか――。
「われわれが進めようとしている『キャッシュレス化推進』に弾みがつくのであれば、歓迎したい」
当初は歓迎
全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は10月18日、東京都内で開いた記者会見で、政府が検討するキャッシュレス決済を対象としたポイント還元策に期待感を示した。
カード会社を傘下に置く大手銀行は多く、また、さまざまなキャッシュレス化も進めている。ポイント還元が明らかになった当初は、カード業界の間には、おおむね歓迎する雰囲気が漂っていた。
政府が検討しているキャッシュレス決済を対象としたポイント還元の仕組みを説明するとこうだ。
消費者が中小の小売店や飲食店などでクレジットカードなどを使って決済すると、国の支援で通常のポイントに上乗せされる。消費税増税に伴う消費低迷と、中小零細店の支援、キャッシュレス推進という“一石三鳥”の施策が売りだ。
とくに国内では、キャッシュレスでの決済手段は「約8割がクレジットカードが占める」(カード会社関係者)とされる。それだけにポイント還元に伴って取り扱い量が増えれば、カード会社への恩恵も大きい。
しかし、政府が検討している施策の詳細が明らかになるにつれ、カード会社からの反発が強まった。
割に合わない投資
「何もいいことがない……」ある大手カード会社の幹部はこうつぶやく。
反発を招いた大きな要因は、巨額のシステム改修が必要になることだ。
ポイント還元は今のところ、中小の店舗を対象としている。政府は「中小」の定義を関係法令に沿って資本金などで決める見通しだが、カード会社には「中小企業」という分類がないため、大がかりなシステム改修が必要になる。
消費税が引き上げられる来年10月までにシステム改修をする必要があるが、それまでに時間が短いことも不安視されている。
システム改修が間に合ったとしても、「消費税増税後の景気対策という暫定的な措置に、巨額の投資は割に合わない」(カード会社関係者)との声も上がる。
このため、中小クレジットカード事業者の入る協同組合連合会日本商店連盟は11月2日、ポイント還元のためのシステム対応は「不可能だ」と訴える要望書を自民党に提出した。
また、カード会社は加盟店から手数料を徴収している。手数料は数%で、店の信用力やコストによって異なる。これまでは高い手数料を嫌ってカード導入を避ける中小店舗も多かった。
仕組み作り曲折も
政府は中小店舗が参加しやすいよう、カード会社が受け取る手数料の引き下げを求める方針。しかし、手数料はカード会社の収益に直結するだけに、多くのカード会社が手数料引き下げに反発を強めている。
ただ、政府は「カードを導入する店舗が増えれば、(手数料を下げても)トータルでカード会社の収益にプラスになる」(経済産業省幹部)とみている。またカードを持つ消費者にとっても、中小を含めた多くの店舗で使えるようになれば利便性は増す。
政府はポイント還元の制度設計に向け、カード会社との意見交換を進めている段階だ。「来年度の予算編成の過程で議論して決める」(世耕弘成経産相)方針だが、仕組み作りにはなお曲折がありそうだ。  
 
 
 
●消費増税対策は「やり過ぎ」、ポイント還元や商品券は無駄金だ 11/28
安倍首相は消費税率を2019年から10%に引き上げる際の対策として導入するポイント還元制度について、還元率を5%にし、増税後、2020年の東京オリンピックまでの9ヵ月間、実施する考えを表明した。
「今度引き上げに失敗すれば、二度と消費増税はできない」「純額で増税になる消費増税の成功体験を作りたい」ということから、経済に与える影響を緩和するために検討されているさまざまな対策の一つだ。
だが前回の増税に比べて景気への影響は大きくはないし、軽減税率が導入される上に、プレミアム商品券やポイント還元などをするのはやり過ぎだ。
税率10%引き上げで家計の負担増は2兆円と少ない
消費税率の8%への引き上げ、さらに10%に上げる増税は、税・社会保障一体改革で行われる、「初めてのネット(純額)増税」だ。
消費税導入時や、税率3%から5%への引き上げの時は、ともに所得減税とセットだったので、経済への影響は基本的に中立だった。
14年4月の税率8%への引き上げが、駆け込み・反動減などの混乱を招き、景気回復に時間がかかったことは事実だ。消費増税は今回だけに終わらないだけに、今回の引き上げで経済への悪影響は避けたい、何とか消費増税の「成功体験」を持ちたいという政権の気持ちは理解できる。
しかし今回は、税率引き上げ幅は2%である。
14年度は増税幅が3% 、家計の負担増は 8.2 兆円とされた。消費や景気の落ち込みを防ぐ対策は打たれたが、公共事業中心で一般国民にはほとんど還元されなかった。 
だが今回の10%増税では、食料品などには1兆円規模の軽減税率(8%)が導入され、また年金生活者支援給付金、教育無償化などが予定されている。日銀レポートでは家計のネット負担額は、2 兆円程度と大きなマイナス効果は予想されないとしている。
多くの民間エコノミストも、世帯当たりの年間負担増は4万円強と計算している。
消費税収の使途変更も行われ、増収分のうち国債償還に充てる割合は減らされ、教育無償化などに使われる。その政策パッケージを見ると、図の通りである。
(図表1 消費税率引き上げで実現する政策)
幼児教育の無償化は、全ての3歳から5歳までの幼稚園、保育所などの費用を無償化、0歳〜2歳児について住民税非課税世帯には無償化、高等教育についても一部無償化するなど手厚い内容になっている。
焦点が定まっていない増税対策 商品券の効果は限定的
問題は、それに加えて、住宅の取得や改築、自動車などの耐久消費財購入の際の減税や、さらにはクレジットカードなどで代金を支払った利用者に対し、代金の5%をポイントで還元したり、低所得者に対してはプレミアム商品券を配布したりすることもあわせて検討されていることだ。
だが税金を使っての政策である以上、「論理(スジ)が通り、効果が期待され、公平で国民が納得するもの」でなければならない。
今検討されている対策はバラマキ・無駄金と言わざるを得ない。単年度だから許されるというものでもない。
翻って見ると、軽減税率は、多くの食料支出をする高所得者ほど有利な制度で、国民や事業者、国税当局に多大のコストをかけるものだ。欧州では、EU委員会など何度も軽減税率の非効率性を指摘してきた歴史がある。
12年の税・社会保障一体改革の「3党合意」や税制改革法では、「低所得者対策として、給付付き税額控除か軽減税率の導入を検討する、それまでの間は簡素な給付措置で対応する」とされた。
つまり軽減税率は、低所得者への給付・給付付き税額控除の代わりに導入されたものである。
軽減税率に加えて、商品券などの「給付」も行うということになれば、あまりに過剰ではないか。
政策目的も、小売事業者の近代化の促進から、キャッシュレス化の推進(ポイント還元)、さらには地方商店街の振興(プレミアム商品券)など焦点が定まらない。
商品券の交付はキャッシュレス化と明確にバッティングする。どちらを取るのかという優先順位もはっきりしない。
商品券の効果が限定的であるというのは多くのエコノミストのコンセンサスだ。
また小売りの現場などでは、複雑さが増し、中小小売店などの店頭での混乱も予想される。
ポイント還元は、クレジットカードや電子マネーによる利用を想定するというが、ポイントが付かないカードもあるし、対象事業者は中小店で、大手の百貨店やスーパーは対象にならないという。公平で国民が納得するものなのか、疑問が残る。
消費者も混乱するだろうし、5%のポイントを還元すると、消費税率はいまの8%から5%になるようなものだ。軽減税率が適用される食料品などは税負担が3%になるということをどう考えるのか。
「対策」には多くの疑問や課題がある。
「日本型軽減税率」のほうが まともなアイデアだ
思い起こされるのは、今から3年以上前の15年9月、財務省が提言した「日本型軽減税率」だ。
「買い物時に消費者は10%を支払うが、飲食料品に関しては、後から一定割合分を払い戻す。ただし低所得者に限定する」という案を提案した。下図のような仕組みだ。
核となるのは、会計の際にマイナンバーカードを店舗の端末にかざし、カードに記載されたICチップを読み取ることで本人確認をすることだ。
最大のメリットは、マイナンバーカードを所得情報と結びつけることができるので、「還付対象者を一定の所得以下に絞ることができる」点である。
消費段階だけで判断できるので、あらゆる取引段階で大きなコストを生じさせる軽減税率に比べて、事業者のコスト負担ははるかに少ない。外食サービスも対象に含めていたので、線引きの問題(混乱)は生じない。
なにより、もう1つの政策目標は、マイナンバーやマイナンバーカードの普及だった。
当時は、マイナンバーカードの普及が十分ではないことや、カードをかざすとマイナンバーが漏れる可能性があるという国民のプライバシー上の不安(番号を使うわけではないのでこれは誤解で)などから反対があったが、今から考えれば、はるかにまともなアイデアだった。
マイナンバーカード活用を税と社会保障の一体化が不可欠
今回のポイント還元などで、莫大な税金を投入して導入したマイナンバー制度の活用が本格的な議論となっていないのは問題だ。今後、税と社会保障を一体的に設計していく上でマイナンバー(番号)とカードの普及は不可欠だ。
マイナンバーカードはいまだ1500万枚程度しか発行されていない。ましてやカードを使って個人が開くマイナポータルに至っては、ほとんど周知されていない。
しかし今後はマイナポータルに医療費支払情報や生命保険料控除の証明書などが入ってくる仕組みに移っていく。
そう考えると、今回、政治的な思惑から、低所得者にポイント還元をするということになれば、マイナンバーカードの普及の促進、たとえばマイナンバーカードを使ってプレミアムポイントを受け取る人はプレミアム率を高くするとか、マイキー(マイナンバーカードに付いている個人認証機能)を使ったポイント制の活用を検討していくべきだ。
政府部内で検討が始まったという報道もある。
今後、税と社会保障を一体的に設計していく上で、マイナンバーカードの普及は、キャッシュレス化の推進より格段に重要な施策だ。 
 
 
 
●消費増税対策 本来の目的がかすむ 11/29
来年10月の消費税率引き上げに伴う政府の経済対策は9項目に膨らんだ。借金を抑えて社会保障制度の安定を図るという本来の目的はかすむ一方だ。大盤振る舞いが目に余る。
とりわけ問題なのはキャッシュレス決済時のポイント還元制度である。還元率は当初検討した2%から5%に上積みする方針を安倍晋三首相が突如打ち出した。中小店舗を対象に、クレジットカードなど現金以外で支払った場合、5%分をポイントで還元する。
消費税率10%で5%をポイントで戻せば負担は実質5%と、事実上の減税になる。軽減税率で8%に据え置かれる飲食料品などは実質3%と、さらに下がる。カードなどを使えるかどうか、店舗や消費者によって負担が変わる。複雑な上、公平さを欠く。
期間は東京五輪開幕直前の2020年6月末まで9カ月間としている。実施した場合、本当にそれで終わるか疑わしい。対策が切れた後、負担は一気に5%増す。五輪後の景気の落ち込みも懸念される中、引き続き対策の必要性が唱えられるのではないか。
ポイント還元には、海外に比べて遅れているキャッシュレス決済を広げようという意図がある。政府は外国人観光客の消費喚起や店の省力化につながるとして普及を後押ししている。増税対策に便乗して国費を投じる格好だ。
自民党の提言を受けて盛り込んだ「プレミアムポイント」も同様である。マイナンバー制度の個人番号カードにためて地元商店などで使える「自治体ポイント」の上乗せを支援する。番号カードの普及を狙っている。
最大2万円の負担で2万5千円の買い物ができるプレミアム付き商品券は住民税非課税の低所得者に加え、0〜2歳児の子育て世帯も対象になった。
それぞれ、どれほど消費刺激の効果があるかも疑問だ。統一地方選や参院選を来年に控え、ばらまきが止まらない。
19年度予算案に上乗せする経費は2兆円程度と見込まれる。増税に伴う家計の実質負担増加額にほぼ相当する。経済対策の名目で財政支出が膨らむのでは本末転倒である。財政健全化はますますおぼつかなくなる。
高齢化に伴い社会保障費が増大する一方、現役世代は減り、負担が重くなっていく。将来世代への付け回しに歯止めをかけるのがそもそもの目的だ。政府は来月上旬にも対策の概要を決める。原点に立ち返り、練り直す必要がある。  
●消費増税対策 ばらまきに終わらせるな 11/29
政府が来年10月の消費税増税に向けた経済対策案をまとめた。
増税前後の駆け込み需要や反動減の発生を抑制し、景気に与える影響をできる限り排除することが狙いである。
ばらまきに終わらせず、消費の変動を押さえ込む実効的な対策としなくてはならない。
クレジットカードなどを使ったキャッシュレス決済でポイント還元するほか、プレミアム付き商品券の発行などが柱となる。
中小小売店を対象とするポイント還元をめぐっては、安倍晋三首相が当初の増税相当分の2%から5%に拡大する意向を示した。消費の変動を防ぐ一定の効果は期待できるが、食料品などの税率を据え置く軽減税率も同時に導入することに留意が必要だ。
複数の税率の商品が店頭に混在し、販売現場では混乱が予想される。政府は、制度の周知や準備を促す取り組みを徹底すべきだ。
対策の目玉となるポイント還元は、中小小売店で現金を使わずに決済した場合、買い物客に後で使えるポイントを還元する。費用は国が負担し、小売店が導入する決済端末の費用も助成する。
安倍首相は、増税後の9カ月間にわたり、増税分以上の5%を還元する方針を表明している。
ただ、このポイント還元には需要の先食いという側面もある。対策が切れた後に需要を急減させない工夫も必要となろう。
ポイント還元終了後に実施するマイナンバーカードにためられる自治体のポイント制度などもうまく活用したい。
消費税増税に伴う実質的な家計負担を日銀が試算したところ、今回は軽減税率を導入し、税収を教育無償化などにも回すため、前回の増税時よりもその負担額は3分の1以下にとどまるという。
だが消費税率が2ケタに上がる心理的な影響も考慮し、景気を下支えする対策には万全を期さなくてはならない。
そのためにも、対策は厳しく選別すべきだ。プレミアム付き商品券は過去にも同様の対策が講じられたが、費用対効果が低いと試算されている。公共事業も、防災や経済効果について、十分な吟味が必要である。
増税分の価格転嫁も事業者が主体的に判断できる仕組みづくりが不可欠だ。総額表示などを含む多様な取り組みを求めたい。 
 
 
 
●消費税の増税対策 財政審意見書に耳傾けよ 12/2
2019年度の予算編成・税制改正作業が本格化してきた。
来年10月の消費税増税を控え、景気の腰折れを防ぐための対策が焦点になっている。対策は不可欠だが最大の懸念は、ここにきて消費税増税対策に名を借りた歳出圧力、ばらまき色が一段と強まってきたことだ。消費税を上げても、対策のために財政支出を無節操に拡大していけば増税の意味がなくなる。
折しも、有識者で構成する財政制度等審議会が平成の30年間の財政を総括した意見書を提出した。財政が悪化し続けた平成の税財政運営について「財政健全化どころか一段と財政を悪化させてしまった」と批判した上で、「過ちを二度と繰り返してはならない」と異例とも言える厳しい文言で警鐘を鳴らした。
重い指摘だ。財務省をはじめ各省庁、与野党議員は謙虚に耳を傾け、大局的見地から平成最後の予算編成、税制改正大綱づくりに臨まなくてはならない。
各省庁が今夏、財務省に提出した19年度予算の概算要求総額は102兆8千億円で、過去最大だ。消費税増税に備えた経済対策や教育無償化の予算は別枠扱いで数兆円規模に上る可能性があり、一般会計で初めて100兆円を超す公算が大きい。
一方、歳入の柱の税収は18年度の見込みが59兆1千億円で、多額の国債発行で税収不足を補う構図は変わりようがない。
積み上がった国債残高は、本年度末には883兆円に達する見通しだ。平成が始まった1989年度の161兆円から実に5・5倍に拡大している。
それなのに目下の議論では、消費税増税による景気後退を避けるため「あらゆる施策を総動員する」との安倍晋三首相の号令の下、全体を見ない無秩序な便乗的施策がどんどん増えている。一体、どうしたことか。
クレジットカードや電子マネーなどキャッシュレスでの買い物を対象に与えるポイントの還元率を当初予定の2%から5%に引き上げることや、政府が一定額を上乗せするプレミアム商品券の発行に加え、自動車や住宅関連の減税も検討され、歯止めなき歳出増の様相を呈してきた。これでは財政健全化は見果てぬ夢に終わってしまう。
国債残高はいずれ返さねばならない国の借金だ。財政審は「共有地の悲劇」という表現で、今の世代が後の影響を考えず、誰もが利用できる共有地のように安易に財政資源を自分たちのために使ってしまえば、付けを負わされる「悲劇の主人公」は将来世代だと警告している。
何のための消費税増税か、今こそ出発点を再確認したい。それは際限なき負担先送りに終止符を打つ一歩ではなかったか。 
 
 
 
●山本幸三・元地方創生相 消費増税対策に「賃上げ5%」 12/3
自民党の山本幸三・元地方創生担当相は毎日新聞ニュースサイト「政治プレミア」に寄稿し、来年10月に予定される消費増税による景気の冷え込みを乗り切るため、来春に5%の賃上げを実現すべきだと訴えた。「賃上げが十分でない企業や下請けいじめをしている企業には留保金課税をする」とし、非協力的な企業にはペナルティーを科すことを提案している。
山本氏は消費税率引き上げによって実質所得が減少し、個人消費に大きな影響が出ると懸念。プレミアム付き商品券などの短期的な対策だけではなく恒久対策が必要で、5%程度の大幅な賃上げが望ましいとした。
安倍晋三首相は経済界にたびたび賃上げを要請しているが、毎年2%前後の賃上げにとどまっている。一方で企業の内部留保は増加傾向にある。
このため、山本氏は「行動しない企業に国民の怨嗟(えんさ)の声も高まりつつある」と指摘。企業に「プレッシャーをかけるしかない」として、十分な賃上げをしない企業の内部留保に課税することを提案した。
また日本の主要企業の大株主になっている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や日銀が、5%の賃上げを企業に求めることも検討すべきだとしている。  
●借金返済は後回し?消費増税が迷走するワケ 12/3
2019年10月の消費税率10%への引き上げをめぐり、安倍晋三政権が迷走している。景気の落ち込みを抑える経済対策では、飲食料品に軽減税率が導入されるにもかかわらず“大盤振る舞い”が目立つ。
最大2万円で2万5000円分を購入できるプレミアム付き商品券を低所得世帯と子育て世代向けに発行するほか、中小小売店でクレジットカードなどによるキャッシュレス決済をした人へのポイント還元率を当初予定の2%から5%に上積みした。
借金返済の1年分が吹っ飛ぶ
住宅や自動車の購入に対する減税や給付金も大幅に拡大。経済対策は総額2兆円を超える見込みで、消費増税の本来の趣旨である借金返済の1年分が軽く吹っ飛ぶ計算だ。
混迷ぶりはそれだけではない。来年10月から消費増税の増収分を使って始まる幼児教育・保育の無償化。その財源負担をめぐり国と地方が対立を深めている。
原因は無償化の成り立ちそのものにある。安倍首相が突如、消費増税の使途を一部変更し、従来の借金返済から教育無償化に変えると公表したのは昨秋。それを争点にして解散総選挙に踏み切り、与党が大勝した。
国は来年度後半の半年分と、導入時に必要な事務費を全額負担するが、2020年度以降は従来の幼児教育・保育への拠出割合に応じて地方も負担することを求める。だが地方側は反発し、2020年度以降も国が全額負担するよう求めている。
地方の主張は明快だ。2012年の税と社会保障の一体改革で、国は地方と一緒に今回の消費増税やその使途について決めた。だが教育無償化については、後から国が変更したものであり、国の責任において全額を国費負担すべきだと主張する。
開始まで1年を切っても財源負担の原則が決まっていないのは異例だが、それもこれも安倍政権が一体改革のスキームを壊し、付け焼き刃で教育無償化を決めたことが原因だ。
裏目に出た財務省の戦略
一体改革時には予定になかった軽減税率が導入されたことも同様の構図にある。
現在、与党税制調査会は、軽減税率で穴があく1兆円の代替財源を探している。だがここに挙げられる代替財源は過去に決定したたばこ増税などで、つじつま合わせの感が強い。そもそも軽減税率がなければ、それらは純粋な税収増になったわけで、1兆円の穴はやはり埋まらないと考えるべきだろう。
今回の迷走はどこから始まったのか。安倍首相が2度の消費増税延期を決めた後、財務省上層部では、「安倍首相が消費増税をむげにするのは、オーナーシップ(当事者意識)の感覚がないからだ」という議論が起こった。
そこで、安倍首相が重きを置く教育無償化の財源を消費増税の増収分とする案が、財務省上層部から示されたという。
ただ、結果的に安倍首相の支出拡大欲はむしろとどまるところを知らなくなった。財務省の戦略は裏目に出たというほかない。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


2018/12
 
 
●日本の消費税議論
 
制度の趣旨
この項では、現行制度の趣旨、沿革および問題点について述べる。
物品税と消費税
一般消費税導入以前には、奢侈品・贅沢品とみなされるものについて、個別消費税の一種である物品税が課されていたが、対象となる物品の範囲、税率、指定のタイミングなどをめぐって企業側から不公平感が指摘されることもあった(真に新しいカテゴリの商品のうちは対象にならず、法令の改正などを経るためにある程度普及してから課税対象になる。そのことが可処分所得が相対的に少ない世帯にとって新商品の入手をいっそう困難にする結果となるなど)。この問題は、広く財を対象にする消費税では生じにくい。しかし、物品税は贅沢品を中心に課税され、食品などの生活必需品は課税されなかったことから富の再分配にかなう利点も存在した。
物品税は、1988年の税制改革による消費税の導入に伴い、1989年4月1日に廃止された。
導入された理由
国家による税の再分配機能の視点から考えたとき、所得課税(法人税を含む)には所得の再分配機能、消費課税(酒税等を含む)には消費力の再分配機能、資産課税(固定資産税や相続税)には資産の再分配機能があるとされている。
年金や生活保護等の社会保障制度は、消費力を再分配しているため、再分配機能の視点からは消費税が合致していると考えられている。実際に社会保障制度が充実している欧州国家では消費税率が高いところが多い。現実問題としても日本は将来予想される少子高齢化にともない社会保障支出が高まることが分かっていたことがある。
また、シャウプ勧告以後から続いた所得税などの直接税中心の制度から、消費税のような年金生活高齢者や貯蓄生活者層などを含む幅広い各層からも広く薄く徴収することのできる間接税とのバランスが取れた税体系に変えるべきだという議論があった。概ねこれらの理由を中心とした議論から消費税が導入された。
消費税は元々は直間比率の是正という文脈で説明されてきたが、その後は社会保障→財政再建→被災地復興→世代間の公平な負担と変化している。
資源配分の歪み
経済学者の伊藤元重は「消費税の場合、消費に税を課すことにより、消費者が支払う価格は、企業のコストに消費税が上乗せされたものになる。消費価格と生産者価格のギャップをもたらす消費税は、資源配分に様々な歪みをもたらす」と指摘している。
経済学者の原田泰は「消費税は、他の税と比べればGDPを引き下げる効果が小さい税である。ヨーロッパ諸国では付加価値税が広く採用されているのは、これが効率的な税だからである」と指摘している。
逆累進性
直接税は、所得の低い人ほど負担が少なく、所得がある人は負担が重い累進性が出る。所得の多い人ほど高い税金を払う所得税と異なり、消費税は消費のみによって決まる税制であるため、所得が多い人も少ない人も消費額に対しては同じ税率となる。しかし実際には消費税(売上税)は所得が少ないほど不利な税制(逆累進的税制)だという指摘がある。というのも所得の少ない人は貯蓄する余裕がなく、所得の多くの割合を消費に回してしまう傾向があるので、所得に対してはより高い割合で消費税を払わねばならなくなるからである。消費税は収入が無い人でも消費する際に課税されるため、所得が低い人ほど負担感が大きくなる。実際、利潤、利子、配当などの資本所得を得られる金融投資には消費税はかからないため、こうしたものに投資する余裕がある人(≒所得の多い人)ほど有利な(所得に対する税負担が少ない)税制となる。また貯蓄を切り崩して消費に回せばそこに消費税がかかるが、一生使われなかった貯蓄には(相続税は控除しきれない分に課されるが)消費税はかからないことも、消費税が、貯蓄から消費に回す額が相対的に多い人(≒所得の少ない人)に不利な税制と言われる原因である。
日本の事例では2002年の総務省「家計調査」にもとづく勤労者世帯の所得階級別消費税負担率と所得税負担率の計測によれば、所得がもっとも低い分類階層においては所得の2.8%にあたる消費税を負担しており、これは最高所得分類階層が2.1%であったことから逆進性の存在が確認できる。所得税については負担率が4%に対し最高所得階層では12%であり累進的である。またこの消費税率が10%に上昇した場合、年収1300万円世帯の消費税負担は4%程度、年収125万円では9%程度と逆進性が高まるとの試算もある。
もっともこの種の議論は一時点での所得を念頭にしていることが多く、少子化時代における税負担の衡平性を考えるさいにはとくに生涯所得に対する負担の公平性に気を配る必要があり、引退して勤労所得がない人の担税能力が勤労世帯より貧しいとは限らず、逆進性を一時点の所得水準で計測することには問題があるともいえる。特に、スポーツ選手など現役の短い期間だけ高所得となる場合にはこの問題が大きくなる。なお日本では、所得が非常に高い世帯では不動産や株式の譲渡所得や配当による所得の割合が高い傾向がある。不動産等の譲渡所得税率(20-39%住民税含む)あるいは株式等の譲渡所得・配当にかかる分離課税(10-20%住民税含む)は累進の上限税率より低いため、日本の所得税課税構造は年間所得が1億円超程度の階層の実質負担率がもっとも高くなっている。これをこえる階層では、不動産や株式の譲渡所得が中心となることから、年間所得の合計が増えるに従って負担率が下がっていく結果となっている。
経済学者の松原聡は「高所得者ほど支出が多いと考えれば、消費税は公平な税制である」と指摘している。
経済学者の岩井克人は「消費税は、消費額に応じて負担するという意味での公平性があり、富裕層も多い引退世代からも徴収するという意味で世代間の公平性もある」と述べている。
経済学者の吉川洋は「社会保障は低所得者ほど給付が大きい。生涯にわたる所得でみれば消費税の逆進性は深刻ではない」と述べている。
森永卓郎は「低所得者からたくさん取っても、最終的にはその低所得者に多く分配されるから結果的によいと言いたいのであろうが、本来社会保障とは、所得の高い人から低い人に所得移転が行われていなければ、体をなさないものである」と指摘している。
経済学者の高橋洋一は「消費税は、広く課税するため一人ひとりの負担度を正確に把握できない。消費税を財源として社会保障政策を行うとしても、負担と給付の関係が不明確である」と指摘している。
経済学者の飯田泰之は「消費税は貧困層に負担が大きいため、本来ならもっと下げるべきであり、理想としてはなくていい」と指摘している。
複数税率
贅沢品か生活必需品かによって税率を変える多段階方式の消費税を導入する事で低所得者層の負担に配慮している国も多い。ただしこうした税制はどこからを贅沢品とみなしどこからを生活必需品とみなすかで議論が紛糾し、政治問題化する。という問題や、記帳申告実務に多大な労力を要するという問題もある。これらの事情から5%引き上げ時に多段階税率方式が見送られた経緯もある。
現在、与野党の税制調査会や各政治団体等で、税率アップの議論に伴いこれら話題が活発に議論され始めている(詳しくは政治動向の欄を参照)。
インボイス
インボイス方式とは「課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式」であり、複数税率が導入されている欧州各国で採用されている。インボイスは、古くから国境を越える取引が盛んに行われてきたヨーロッパでは、商取引慣行として定着してきた。欧州連合の前身である欧州共同体において、1960年代後半より仕入税額控除を組み込んだ付加価値税システムを導入される際に、仕入税額を確認するのに最適な書類。
日本は消費税導入時に日本の取引慣行や納税義務者の事務負担に配慮するといった観点から、帳簿上の記録等に基づいて控除する「帳簿方式」が採用されていた。しかし、「帳簿方式は実態として十分に機能しているが、納税者自身が作成した帳簿を要件にして税額控除ができるというのは消費税制度に対する信頼性の点で疑問であるとの国民の声が大きい」との指摘があり、「帳簿の保存に加え、取引の相手方(第三者)が発行した請求書等という客観的な証拠書類の保存を仕入税額控除の要件とする方式」である「請求書保存方式(日本型インボイス方式)」が導入されている。
欧州の付加価値税で導入されているインボイスを、日本の消費税方式においても導入を望む意見もある。日本はインボイス方式が導入されていないため、付加価値税の徴税の正確さが劣っている可能性が高いとの指摘があるが、必ずしもインボイス方式を導入したからといって消費税制度の正確性が向上するものではない。
高橋洋一はインボイスを導入していないため、3兆円程度の税収漏れが発生していると指摘しており、同制度を導入すべきと提言している。高橋は、インボイス方式の導入が所得捕捉の向上にも寄与し、消費税収の向上につながると指摘している。
中央大学大学院法務研究科教授で元財務官僚の森信茂樹はこの3兆円という金額は誤った計算方式による算出であるとの指摘をしている。森信は、インボイス方式の導入が所得捕捉の向上にも寄与するという「インボイス神話」は、仕入税額控除制度の在り方に関する冷静な議論を誤らせるものであり、問題であると指摘している。
欧州におけるインボイス制度の問題点
コンプライアンス事務負担の増大 - 欧州では、インボイス制度を導入することによる「税務コンプライアンスコスト」の増大が、企業の生産性を著しく低下させているとの指摘がある。
不正行為の横行 - インボイス自体が金券となるため、既にインボイスが導入されている欧州では、「偽造インボイス」や「インボイス飛ばし」等の不正な手口が横行し脱税行為が問題になっており、ドイツでは消費税収の10%相当分が徴税漏れとなっているとの指摘もある。
消費地課税主義
生産と消費は一対の取引として行われるものであるが、これらが国境をまたがる場合には、どの時点で課税するかによって、制度の趣旨が変化することになる。日本の現行制度は、生産時点で一旦課税したものを消費地課税主義に基づいて調整するものであるが、その過程で輸出企業に対して還付が行われることから、消費地課税主義に対して批判がなされることがある。なお、生産地課税に基づき輸出取引に課税した場合(輸出取引について仕入税額控除を認めない場合を含む)、輸入消費税はその課税根拠を失うことになる。
輸出事業者むけの消費税還付制度が一種の「補助金」に当たっており不公正だとの主張もしばしば見られる。たとえば税理士の湖東京至(元関東学院大学法科大学院教授)は平成18年度予算を元に、消費税全体の税収が地方消費税を入れて5%で計算すると約13兆円。そのうち約23%の3兆円が輸出企業に還付されていると試算しており、ジャーナリストの斎藤貴男や湖東京至は、消費税は輸出企業への補助金としての側面があり、日本経団連が消費税増税を主張する理由のひとつであると主張している。しかし還付金で儲かるわけではないのでなんら補助金ではなく、これは値下げで儲かるのと還付金で儲かるのとを混同した誤った主張である。
高橋洋一は「こうした仕組みはどこの国にもある。企業は、受け取った消費税分から支払った消費税分を引いた金額を納税(マイナスになれば還付)するため、還付されたからといって収益に変化はない。輸出に対して輸出企業に恩恵を与えているわけでない。国としても、輸出で消費税を還付したとしても、輸入では逆に消費税を課せるため、国内の消費を課税ベースとする消費税では損も得もない」と指摘している。
 
制度上の諸議論
この項では、課税技術上の諸議論について述べる。
益税問題
消費税は間接税であるため、実際の取引と納税処理との間に差異があると、制度の趣旨に反する形で事業者が利益を得ることがある。このことは益税問題と呼ばれる。 益税問題には、免税点制度、簡易課税制度、95%ルールなどがある。
経済学者の八田達夫は「日本の消費税は自営業者に『追い銭』を与えており、消費税が上げるほどクロヨン問題は悪化する。クロヨン問題の解決には徴税体制の整備が不可欠である」と指摘している。
免税点制度
基準期間における課税売上高が1000万円以下である事業者は、消費税の納税義務が免除される。小規模事業者の納税事務負担に配慮して設けられた制度である。
2004年度から免税点売上高が3000万円→1000万円と引き下げられた。
簡易課税制度
簡易課税制度は、課税売上高の一定割合を仕入れとみなして、事業者の事務処理上の煩雑さを除去することにより、納税事務負担を軽減するために設けられた制度である。免税点制度と同じく、小規模事業者の納税事務負担に配慮して設けられた制度であるが、みなし仕入率が高すぎることに対する批判が強い。2004年度から課税売上高の制限が2億円→5000万円と引き下げられた。
売上高に、業種に応じたみなし仕入率を乗じて、簡易に税額を算出するもの。適用上限となる売上高は、5,000万円。通常納付する消費税額は、売上に係る消費税額から課税仕入に係る消費税額を控除して計算するが、基準期間における課税売上高が5000万円以下である事業者は、みなし仕入率を用いて仕入税額を計算することができる。そのため、みなし仕入率による仕入税額と実際の仕入税額との差額が発生する場合に、自らの利益(損失)となる。
ドイツ等においても簡易課税制度は存在し、みなし仕入率は損税が発生するように設定されている。簡易課税制度においては、帳簿等の保存が軽減されており、この浮いた経費と損税が相殺されるように調整されている。
日本のみなし仕入率
90% - 卸売業
80% - 小売業
70% - 農林水産業、鉱工業、建設業、水道光熱業、製造業
60% - 金融保険業、飲食店業、外注加工業、その他
50% - 不動産業、運輸通信業、サービス業
2015年度から一部業種においてみなし仕入率が引き下げられることが決定している。
95%ルール
一定の取引については消費税を課さないこととされており、また仕入税額のうち非課税売上に対応する部分については控除対象とならない。ただし、課税期間における課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上である事業者は、仕入税額を全額控除することができる。そのため、要件を満たす事業者が要件を満たさない事業者と同水準の価格を設定した場合、要件を満たす事業者は仕入税額相当額を自らの利益とすることができる。
なお、2012年度から課税売上高の制限(5億円)が設けられた。
無形資産の輸入・国外からの役務提供
消費税は、付加価値が生産された場所ではなく消費された場所に基づいて課されるものであるから、国外で生産され輸入される有形資産には消費税が課されている。しかし、無形資産の輸入・海外からの役務提供に対しては消費税が課されていないため、国外の事業者は消費税相当額を自らの利益とすることができるか、あるいは値引きの原資とすることで国内事業者との差別化を図ることができる。
情報産業の発達に伴いこの種の取引が急速に拡大しているため、国内の事業者から不公平であるとの批判が強い。
非課税
先述の通り、一定の取引については消費税を課さないこととされており、また仕入税額のうち非課税売上に対応する部分については控除対象とならない。このことについて、事業者が消費者の負担を肩代わりする「損税問題」が発生していると主張されることがある。しかし、同種の取引について同種の課税がなされている以上、市場はそれを前提に構成されており、仕入税額は本体価格として消費者に転嫁されていると言える。従って、経済的実態は課税取引の場合とほとんど変わらない。
ただし、後述の社会保険との関連については留意する必要がある。
輸出免税
輸出売上等については消費税が免除されるが、輸出売上にかかる仕入税額も税額控除の対象となる。これは、付加価値が生産された場所ではなく消費された場所に基づいて課税するという目的に従ったものである。この結果、輸出売上割合が大きい事業者については課税額より控除額が大きくなり、控除しきれない額を還付することとなる。
消費地課税主義を認めない立場からは、還付という現象を捉えて益税問題であると主張されることがある。
社会保険との関連
先述の通り、非課税自体は制度上の問題ではない。しかし、非課税取引のうち医療・介護など報酬額の定めがあるものについては仕入税額を直接消費者に転嫁することができず、仕入に際して負担した消費税は、診療報酬等を通して配分されることとなる。このため、消費税と診療報酬等との関連付けが不十分だと、医療機関等の経営が不安定になりかねない。
これに対し、これらについて仕入税額控除を適用することにより、税制の変化にかかわらず医療機関等が課税仕入を行うことができるようにすべきであるという主張がある。仮にこの方法を取ると、医療機関等の自由度(仕入との対応関係)が増す一方で、平等性(売上との対応関係)が損なわれることとなる。消費税の趣旨だけでなく社会保険の趣旨にも関わるため、どちらが適切であるか一義的な結論を導くことはできない。
二重課税
狭義の消費税と個別消費税との間で二重課税が指摘されることがある。個別消費税には、狭義の消費税の課税標準に含まれるものと含まれないもの、従量税と従価税が存在するため、以下の3区分に分けて述べる(課税標準に含まれる従価税は存在しない)。なお、政策目的が異なる場合、ある消費行為に関して複数の税を課すことが必ずしも妥当でないとは言えないことに注意が必要である。
課税標準に含まれる従量税
酒税、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税などが該当する。個別消費税相当額についても狭義の消費税が課されるため、消費者から見れば一方の税率が変動すると乗法的に負担が変動することとなる。
ガソリンにはガソリン税(53.8円/L)がかかり、さらに加えて石油税(2.04円/L)、原油関税(0.17円/L)がかけられるが、それらを含めた販売価格に対して消費税がかかる。2004年7月21日の石油連盟発表資料では、本体価格に対する消費税が5700億円、石油諸税にかかる消費税が1800億円としている。
課税標準に含まれない従量税
入湯税、ゴルフ場利用税、軽油引取税などが該当する。相互に独立しているため、問題を指摘されることは少ない。
課税標準に含まれない従価税
新築家屋に係る不動産取得税、新車に係る自動車取得税が該当する(建設者・製造者が取得した場合にも課税されるため、流通税ではない。ただし中古物件・中古車に係るものは個別流通税にあたる)。狭義の消費税と同じく従価税であるため、消費者から見れば実質的な複数税率状態となっている。このうち自動車取得税については、消費税率の引き上げに伴い2017年4月に廃止される予定。
軽減税率の導入
日本では、食料品、衣類なども課税対象となっている。この点、低所得・低資産の家計に配慮する観点から軽減税率を導入すべきとの考え方がある。標準税率が15%台を超えている諸外国では食料品等については軽減税率又は非課税が導入されている例が多い。他方、飲食サービス(レストランでの食事等)といわゆる持ち帰りとの区別をどのようにするかという問題がある。アメリカの吉野家などでも軽減税率の適用を受けるため、店内をマクドナルド方式にしているという奇妙な事態も発生している。
軽減税率は、所得が低いほど消費に占める生活必需品の割合が大きいことに着目した制度であるが、高所得者にも軽減税率が適用されるため、金額ベースでは絶対的な消費が大きい高所得者がより多くの恩恵を受けることとなる。このため、必ずしも富の再分配の観点から、好ましいとは言えないという批判がある。
経済学者の石弘光は「(消費税の)税率アップと軽減税率はどこの国でもワンセットである。軽減税率は中高所得者の税負担も軽くする」と指摘している。
岩本沙弓は「消費税は国内消費を減退させ、内需関連事業者から徴税するため国内景気を一気に冷やす。軽減税率の適用では根本的な問題の解決にはならない」と指摘している。
経済学者の伊藤元重は東京大学法学部、平成26年度の「経済学基礎」の講義において「どの品目を軽減税率とするかで圧力団体ともめたり、また軽減税率を採用した時にかかる税務署職員の人件費が増えたりと、軽減税率導入によるコストと税収をプラス・マイナスしたらそれほど大きな税収にはならないのではないか」と述べている。
政治学者の加藤淳子は東京大学法学部、平成26年度の「政治学」の講義において「累進的な課税制度を導入するよりも、逆進的な課税制度の下、税を再分配するほうがより目的を達成できる」と述べている。
経済学者の竹中平蔵は「低所得者への負担を解消する手段として、軽減税率が議論されているが、全所得階層の負担が軽減されるのでは本末転倒である」と指摘している。
八田達夫は「食料品の消費税の非課税は、富裕層の外食や高級食材の消費を促してしまう。低所得者も、教育・住居・交通などに支出するため、食料品だけの非課税は所得の再配分として効果が無い」と指摘している。
経済学者の土居丈朗は「軽減税率は、格差是正につながらず、税収を減少させる。軽減税率導入で税収が失われる分、標準税率のさらなる引き上げが必要になる。また、軽減税率のほうが、他国の例で示されているように、事務コストが大きく、不正・脱税の温床となる傾向にある」と指摘している。
高橋洋一は「軽減税率を導入する場合、その適用を巡って『レントシーキング』が横行し、利権が発生する」「軽減税率は、租税特別措置法と同じで利権の固まりになる。こうした利権の裏には、天下りがある」「所得の低い人の税負担を減らすためには、一定額の税額を控除する『給付付き税額控除』の方がよい」と指摘している。
国際通貨基金(IMF)は「効率性を阻害し、事務コスト・行政管理コストを増大させ、恒久的な歳入損失をもたらす」と指摘し、低所得者対策は「低所得者層に対象を絞った補助金で対処されるべき」としている。
 
消費税増税問題
この項では、消費税率の引き上げと関連事項について述べる。財政赤字削減議論において税率引上げの第一の検討対象となっているのは消費税である。この点については「無駄な歳出をまず削減すべき」という点には、一般的にコンセンサスがあり、政府・与党においても歳出削減策から検討が進められている。また「増税はまず法人税や相続税など、負担能力のあるところからやるべき」という立場からは批判が強いとされている。
国際通貨基金(IMF)の見解
2010年5月、国際通貨基金は、日本の消費税率は2011年度以降に、景気回復にあわせた上で段階的に引き上げるべきであると提言している。日本の財政状態を改善するためであるとされる。2010年7月14日にもIMFは、日本へ消費増税を提言する発表を行っている。このときには、消費税率の目標値が具体的に示された。それは、税率15%を軸に14%から22%までを最高税率の選択肢とするものであった。この発表に伴い、一部報道などでは、日本の財務省の主wがIMFの提言に反映されているとみなす見解が示されている。
2012年1月30日、IMFは、日本が2015年までに消費税率を15%に引き上げることを提言した。日本の莫大な公的債務を減らすためであるとされる。この税率15%について、IMFのアヌープ・シン アジア太平洋局長は、「(日本の消費税率が)より他の国々の税率と沿うものになる」と述べている。なお、アメリカのように連邦消費税がない国や、シンガポール、台湾など税率が一桁の国、地域の存在には触れていない。
2013年8月5日、消費税率を2015年までに2倍に引き上げる日本の計画に対し、IMF理事らは総じて日本の消費税引き上げ計画を支持しているものの、一部の理事は成長に悪影響を及ぼす可能性について懸念を示している。
IMFの篠原尚之副専務理事は2014年の消費税率8%引き上げについて「大変結構でG20でも歓迎される」と評価している。
経済協力開発機構(OECD)の見解
2011年4月21日、経済協力開発機構(OECD)は2011年の対日審査報告書を発表し報告書で、日本の公的債務残高は一般政府ベースで対GDP比200%に達しているとして「財政健全化に向けた取り組みを加速することが必要」と指摘し、日本の「歳出削減の余地は限られており、消費税を中心とした包括的な税制改革を通じた歳入の増加が必要」としている。消費税率については「20%相当まで引き上げることが求められるかもしれない」と指摘している。
2013年7月8日、アンヘル・グリア事務総長は、日本が早期に財政再建を達成するため「消費税率を直ちに10%に引き上げるべきだ」「日本の法人税率は(世界的に)高く、消費税率は低い。消費税に引き上げ余地があるのは明白だ」と言及、東日本大震災の復興や、福島第一原子力発電所事故の対応で日本は税収増が必要だとし「もともと(個人的には)15%への引き上げを提案していた」と述べている。
2014年10月23日、IMFアジア太平洋局地域研究課の幹部は、日本は財政の信頼を維持するため、2015年の消費税引き上げを実施すべきとの認識を示し、「消費増税を進めることは非常に重要である」と述べた。
税収の試算
飯田泰之は「内閣府モデルでも、消費税増税によって所得税・法人税・地方税合わせて大体、7兆円減収になると出ている。13.5兆円の消費増税をして、大体6兆円の税収増。そもそも、13.5兆円も取れると思っていないが、仮に13.5兆円の負担増でも6兆円しかならず、それでも、13.5兆円の使途は決まっている。財政危機が深刻化しているのにどうするんだという話である」と指摘している。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、2014年4月からの消費税率8%の増税によって日本はG7諸国中唯一、所得税や法人税ではなく消費税を最大税収源とする国になると報じている。
税率
経済学者の小林慶一郎は「経済学者のシミュレーションでは、100年程度先まで財政を破綻させないようにするには段階的に消費税を引き上げ、ピーク時には30%以上が必要だとの研究もある。増税による税収は国債の利払いなどで国民に還元される。国が破綻するよりは国民が負担するコストが小さいと捉えられる」と述べている。
経済学者の清家篤は「(消費税の)最終税率は先進国の相場からいうと、だいたい20%程度である」と述べている。
経済学者のアダム・ポーゼンは、日本政府は消費税率を20%まで引き上げる必要があるとしている。ポーゼンは「財政を安定化させるための最善の選択は、消費税率を20%以上に引き上げることである。国会は消費税を6カ月ごとに0.5%ずつ引き上げ続けることにコミットすべきである」と指摘している。
経済学者の池尾和人は「持続可能な財政の姿を考えれば、国民の負担は今よりも重くなり、支出はスリム化するしかない。消費税換算で30%ぐらいまで、すなわちあと25%の増税をすれば、プライマリーバランスの黒字を実現して、財政の持続可能性は回復できる」と指摘している。
経済学者・財務官僚の小黒一正は「日本国債は95%が国内で消化されているから大丈夫」という趣旨の論が根強いことを指摘した上で、それは間違いであると主張し、消費税を5%に据え置いた場合は、近い将来に国債の国内消化が行き詰まることが想定できるとしている。また、イタリア公債の国内消化が過去10年間で8割から4割に低下したことを指摘し、「欧州危機は対岸の火事ではない」と述べている。また、日本の現状(2013年)は近い将来の「消費税25%」の可能性も考える必要があり「これ以上、増税を先送りすべきではない」と述べている。小黒は「財政を安定化、対GDPでの政府債務を発散させずに一定比率に安定化させるためには、消費税率は20%を超える。5年おきに段階的に消費税率を5%ずつ引き上げていき、ピーク時の税率を32%にしなければならない。これは年金給付などの削減などを前提としている。増税スケジュールを遅らせれば、若い世代・将来世代の負担が増す可能性がある」と指摘している。
竹中平蔵は「日本は、最低でも消費税を段階的に最低でも14%にしなければならない。ヨーロッパ諸国の消費税は17-25%であり、14%という数字はそれほど高くない」と指摘している。また竹中は「財政再建を社会保障改革なしに消費増税だけでカバーしようとすると、税率を30%以上にしなければならないという試算もあるが、これは現実的ではない」と指摘している。
エコノミストのロバート・フェルドマンは「1%の消費税率引き上げで税収増効果を2.5兆円と見積もり、すべてを消費増税でカバーしようとすると消費税率は34%となるためハードルが高い」と指摘している。
経済学者のケネス・ロゴフは「将来、日本はヨーロッパの水準よりはるかに低い5%の消費税率を引き上げなければならなくなるだろう。ただ、長期の低成長が続く中で、増税が適切な選択かどうか疑問は残る」と指摘している。
伊藤元重は「他国の消費税率は日本より高いので、日本も上げても構わないではあまりに乱暴な議論である。上げるとすればなぜ引き上げをしなくてはいけないのか、より細かく検討する必要がある」と述べている。
高橋洋一は「欧州が消費税に依存しているのは、人の移動の自由が確保されているからである。住所を定めて徴収する所得税・資産税などの直接税にあまり依存できない」と指摘している。
森永卓郎は「財務省の発表の『付加価値税率の国際比較』、いわゆる消費税率比較は標準税率で行っているが、食料品などは非課税という国も多い。これを補正すると日本の間接税の負担は決して低くはない」「日本の国全体の消費税収の割合は、消費税率25%のスウェーデンよりも高くなっている。標準税率だけを比較して消費税を上げるべきという議論は安易である」と指摘している。
経済学者の浜田宏一は「日本の財政事情が、税率の低さによるものとは限らない」と指摘している。浜田は「中長期的には消費税を上げざるをえない」と前置きしながら「税率を上げたからといって税収が増えるとは限らない」と述べている。
高橋洋一は「消費税が高ければ財政が健全化されるわけではないのは、消費税が23%のギリシャを見ても明らかである」と指摘している。
景気への影響
2013年4月12日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会は財政制度分科会で、財政健全化に向けて消費税率の引き上げが必要だとの認識で一致し、分科会長の吉川洋東大教授は会合後の記者会見で「消費税を上げても経済全体がマイナスの影響を受けることはないとの考え方が総意である」と述べている。
エコノミストの安達誠司は「消費税率引き上げの経済に与えるネガティブな影響について、多くのエコノミストが根拠としているのは、1989年と1997年に実施された過去2回の消費増税の経験、及び欧州諸国の事例である。これらのケースにおいて、消費増税そのものが景気を大きく押し下げた明確な理由は見当たらない」と指摘している。
小黒一正は「(消費)増税が成長率を低下させるとは限らない。1989年4月の消費税導入時(3%)と、1997年4月の増税(消費税率3%から5%)の2回の増税では、実質経済成長率のその後の動きが異なる。1997年の増税では、増税前後の1996年から1998年までの3年間で、実質経済成長率は2.6%(1996年)→1.6%(1997年)→マイナス2%(1998年)と推移し、一貫して低下しているが、1989年の消費税導入時、増税前の1988年から1989年にかけて、実質経済成長率は7.15%(1988年)から5.37%(1989年)と一時的に低下しているものの、増税後の1990年には5.57%に上昇している。1991年以降に実質経済成長率が急低下しているのは、バブル崩壊の影響である」「消費税増税で景気が停滞すると危惧する人もいるが、その主張は税収増による将来不安の解消などのプラスの面を無視した話である。一時的なショックを除き、消費増税で景気停滞は起きない」と述べている。
経済学者の富田俊基は「消費税の引き上げだけで、景気が悪くなることはない。引き上げ前には需要を先食いする駆け込み需要があって、引き上げた直後は反動で経済成長率が悪くなるかもしれないが、全体をならして考える必要がある」と述べている。
岩井克人は「消費増税は、短期的には消費に対してマイナスとなるだろうが、法人税減税などと組み合わせれば、インパクトを最小限に抑えることができる」と指摘している。
「景気が悪い状態で増税をしたらさらにひどくなるのではないか」という議論について、土居丈朗は「消費税増税によって1997年に家計の消費が減少したという現象は観察されないという経済学の研究がある」「消費税が引き上げられるということが予告されれば、人々はできるだけ早めに買い物をしようとするのでデフレが止まる」「消費税増税を含む緊縮的な財政政策は、円安要因につながるということが経済学では知られているので、輸出が増え景気に対する影響は軽微で済む」と指摘している。土居は「(消費税)増税により後世に債務のツケを回さないようにした分だけ消費が減るのは、今を生きる世代が世代間の責任を全うするコストである」と指摘している。
エコノミストの岩田一政は「消費増税は短期的に見れば明らかに景気にマイナスの影響があるが、欧州では財政破綻が現実に起こっており、日本も潜在的にそのリスクを抱えている」と指摘している。
経済学者の小幡績は「当時(1997年)、消費税率引き上げが景気にマイナスに働いたことは間違いない。重要なことは、純粋に経済効果だけを考えれば、すべての税金は経済成長にマイナスという事実である。これを忘れて税制の議論を行なっているため、経済的な議論と政治的な議論が混同されている。1997年と同様、消費増税以外の要因で景気が悪化しても『消費増税が間違いだった』ということにされるからである。そうなれば、景気がありえないほどよくない限りは消費税率を上げるべきではないということになってしまい、今後、増税の機会は永遠に失われる」と述べている。
経済学者の野口悠紀雄は、2015年10月に予定されていた消費増税について「景気に関係なく上げるべきである。消費税が経済に悪影響を与えるのは当たり前であるが、増税しないと財政に対する信頼が失われ、金利が高騰する。その方が日本経済にとってはるかにダメージが大きい」と指摘していた。しかし、2014年12月に消費税再増税延期を決定した後も、長期金利は低水準の状態が続き、2016年2月には初めてマイナスを記録した。
経済学者の井堀利宏は「(消費税を)一度に上げると、駆け込み需要とその反動が起きる可能性が高い。特に耐久消費財は駆け込み需要とその反動が大きく、民間の経済活動に悪影響を与える」と述べている。
高橋洋一は「消費増税は、増税前に駆け込み需要をもたらし、増税後はその反動減とともに増税による可処分所得の減少を通じて需要の減退がある。駆け込み需要とその反動減は、ならしてみれば影響はないが、増税分の消費減少効果がある。それは『消費増税による需要減』である」と指摘している。高橋は「消費増税すると景気が落ち込むのに、それをやらないと金利の高騰によって景気の腰が折れてしまう。この二つの意見が正しいとすると、消費増税はやるにしてもやらないにしても、景気が悪くなってしまうことになる」と指摘している。また高橋は「政府・日銀の試算では、(消費)増税してもたっぷり財政支出も増やすので、景気は落ち込まないとなっている。民間シンクタンクでも、増税しても景気が落ちないという結論は、増税しても派手にバラマキをするという前提である。マクロでは税金を集めて政府がすべて配れば景気の影響はなくなるはずだが、政府が金を民間から吸い上げて政府が配るというのはまともではない方法である。具体的にいえば、消費税増税を負担する一般庶民が泣いて、減税や公共支出で潤う既得権者が得をするという不公平なものである。こうしたことをやると結局、経済成長はできなくなる」と指摘している。
エコノミストの片岡剛士は「消費税増税は、増税前に駆け込み需要が生じる一方で、増税後に駆け込み需要分だけ反動減が生じるため民間消費支出・民間住宅投資に影響を与える。また、消費税増税分に対応した物価上昇によって実質所得が低下し総需要を減らす」と指摘している。また片岡は「消費税増税を行なうと、課税対象品目の価格が増税分だけ上昇する一方で、課税対象品目への需要が減少することで逆に価格が下落する効果もある」と指摘している。
浜田宏一は「消費税の税率が2倍になると、社会的な損失は2倍ではなく、その2乗つまり4倍となる」「(消費)増税して景気がよくなったという例はないし、増税しても歳入が増えるとは限らないというのが橋本政権のときに行った増税以来の答えである」「財務省は経済を刺激しても税収は増えないという試算している。税率を何%上げるかというようなことだけに終始している。消費増税についても消費が減ることを考慮していない」と指摘している。
高橋洋一は「1989年4月(3%)、1997年4月(3%から5%)のいずれの消費税増税も、増税前後を比較すれば、成長率が低下している。それはGDPの大きな構成要素である消費が低下するからである。消費税増税前後2年間の平均で見ると、実質GDPでは1989年の増税前の6.2%が増税後に5.3%、1997年の増税前の2.5%が増税後に-0.8%へとそれぞれ低下し、低下幅はそれぞれ0.9%と3.3%となっている」と指摘している。また高橋は「1989年の消費税創設では、物品税を同時に廃止したので、消費増税の影響は中和されている」と指摘している。
安達誠司は「消費税率引き上げは、ポリシーミックスを考えると、金融政策(量的緩和政策)に大きな負荷をかける」と指摘している。
試算
消費税増税による景気後退も指摘される。コンピュータ上で再現した内閣府や民間シンクタンクによるいくつかの経済分析モデルにより、消費税増税をシミュレートしたところ、内閣府モデルのみは比較的軽度であるが、いずれのモデルでも消費は冷え込むとの結果が出ている。
消費税増税により可処分所得(手取り収入)が減少することを根拠に、個人消費支出が減少し消費財の市場が縮小し、経済成長率の低下やマイナス成長をもたらすとの主旨の説は正しい可能性が高く、政府や民間シンクタンクがGDPを押し下げる結果になると試算しており、特に民間シンクタンクによる試算では顕著な傾向が読み取れる。
2013年、内閣府は消費税の1%引き上げでGDPが約0.5%ポイント、300億ドル(約3兆円)減ると試算している。内閣府の短期日本経済計量モデルによると、3%の増税は実質GDPを0.9%減少させることになる。
2014年4月の消費税率8%引き上げ後、消費の冷え込みや駆け込み需要の反動減による景気の腰折れが懸念されているが、民間エコノミストの大半は「腰折れしない」との見解を示しており、増税後の2014年度の実質経済成長率は1.9-0%と予想している。民間エコノミスト41人の平均予測では、消費増税後の2014年4-6月期実質GDP成長率は前期比・年率で約5%落ち込むと予想され、最悪のケースではマイナス8%成長と試算、経済産業省の試算ではこれをはるかに超える大幅な落ち込みを示している。
原田泰は「消費税1%で2.5兆円の増税なので、民間の所得を7.5兆円政府が吸い上げることになり、その6割すなわち4.5兆円の景気悪化効果があるだろう。これはGDPを1%程度引き下げることになる」と分析している。原田泰、大和総研は「消費税率の2%引き上げは、実質GDPを0.54%押し下げる」と指摘している。
経済学者の宍戸駿太郎は、消費税増税3%が実施されると2015年から経済が縮小を始め、5年後にはGDPにマイナス5%の悪影響が出て、さらに10%まで消費税を引き上げた場合、マイナス幅は8.5%まで広がると予測しており、他の民間シンクタンクなどでも消費増税5年後のGDPに及ぼす影響はマイナス4-6%と試算している。宍戸は「政府の試算は新興国の財政再建用に使われる計量モデルがベースであり、成熟国にあてはめると誤った結果が出る」と指摘している。
2014年8月13日、2014年4-6月期のGDPは前期比マイナス1.7%、年率換算マイナス6.8%となり、東日本大震災があった2011年1-3月期(前期比マイナス1.8%、年率換算マイナス6.9%)以来の大幅な落ち込みとなった。前回の消費増税時の1997年4-6月期(前期比マイナス0.9%、年率換算マイナス3.5%)と比べ落ち込みは大きく、1-3月の年率6.1%から6.8%のマイナスに転じ、大きな反動減となった。2014年12月8日、内閣府が発表した7-9月期のGDP(季節調整済み)改定値は、実質で前期比0.5%減、年率換算で1.9%減となり、速報値から下方修正された。
2015年1月13日、内閣府は報告書「日本経済2014-2015」を公表し、消費税増税に伴う物価上昇について「実質所得の減少をもたらし、恒久的に個人消費を抑制する効果を持つ」と指摘した。2014年4-6月期・7-9月期の消費押し下げ効果は、1兆円程度発生したとしている。
1997年の消費税増税の影響
1997年の消費税増税のその後、税収全体は1997年には50兆円強あったところから、2011年には40兆円強というところまで約10兆円減った。1997年の消費税増税後、日本経済のデフレ不況が深刻化し、法人税や所得税が減ったため、税収は1997年の水準を一度も回復していない。1998年(平成10年)、1999年(平成11年)の所得税・法人税の税収減については、法人税(両年)・所得税(1999年(平成11年)のみ)の双方で減税が実施されているため、それによる減収分も含まれている。当時の首相であった橋本龍太郎は後に「私は平成9年から10年にかけて緊縮財政をやり、国民に迷惑をかけた。私の友人も自殺した。本当に国民に申し訳なかった。これを深くおわびしたい」「財政再建のタイミングを早まって経済低迷をもたらした」との自責の念も示している。
八田達夫は、1997年の消費税率引き上げが家計の資金制約に影響を与え、半耐久消費財・耐久消費財、住宅投資を下落させたとしている。住宅着工件数は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が増加した1996年には、バブル期並みの164万戸まで拡大した一方で、1997年以降は駆け込み着工による反動・景気後退により、1997年は139万戸、1998年は120万戸、1999年は121万戸と急減している。
安達誠司は「1997年の日本は消費増税を実施後に大不況を経験し、その後15年超にも及ぶデフレのきっかけとなったが、これも消費増税が理由か否かは必ずしも明確ではない。多数の専門家は同年夏に発生したアジア通貨危機の影響の方がはるかに大きいと結論づけており、アジア通貨危機がなければ、1997年の消費増税も景気に影響を与えなかっただろうと考えている」と指摘している。
経済学者の中里透は消費が急激に落ち込んだのは、金融システム不安定化(北海道拓殖銀行と山一證券の破綻)が生じた1997年(平成9年)11月以降であって、消費や生産の動向をみるかぎりは、消費税率の引き上げがその後の景気の落ち込みの主要因になったとは考えにくく、金融システムの不安定化にともなう景況感の悪化が、1997年末から1998年にかけての不況の深刻化をもたらしたとしている。そして留意点として、消費税率の引き上げや特別減税の廃止等の負担増が将来にわたる家計の可処分所得を減少させる要因として認識され、消費抑制に影響した可能性があるとしている。よって消費税率引き上げは将来にわたる家計の可処分所得の減少要因として認識された可能性はあるものの、消費への影響は限定的であると指摘している。
森信茂樹は、竹中平蔵らが提唱する消費増税が歳入を増やすことはないとする説は間違っていると主張している。森信によれば、1997年の消費増税後の歳入が増加しなかった理由は、小渕政権における減税(所得税・法人税)と小泉政権における財源の地方移譲が、消費増税による歳入の増加分を打ち消したからであるという。
竹中平蔵は「1995-1996年の日本経済は、一種のミニ・バブル状態であった。1997年の消費税率引き上げによって経済が悪化したという一部の指摘は誤りであり、ミニ・バブルの崩壊が原因である」と指摘している。
元日銀審議委員の中原伸之は1997年以降の不況の原因について「『増税ではなくアジア通貨危機などの金融危機である』という人がいるがまったく逆である。そのようなリスクを予想しないで増税したことで、金融危機が来たときに日本経済はもろくもやられてしまった。それが引き金で山一証券などの大型倒産に発展した。国家経営も会社経営も、重要なのは不確実性に備えることである」と指摘している。
片岡剛士は「消費税率引き上げの経済に与える影響について、1997年の経験を考えると、経済に与える影響は一時的かつ小さいものとは考えられず、かつ早期の消費税率引き上げは緩やかな回復基調にある日本経済を、再び失速させる可能性が高い。1997年に消費税率を引き上げた際には消費税収は増加したものの、景気悪化により所得税収および法人税収が減ることで全体の税収は減少している」と指摘している。
高橋洋一は「消費税だけの増税面だけではなく他の税・財政支出と総合的に見るべきであり、1997年の消費税引き上げを捉えて、それだけが景気悪化の要因というのは適切ではない。ただし、消費税増税が他の所得減税などで相殺されてネットでは増税でなかったとしても、その後のアジア危機などの経済変動で景気が悪化したのも事実である」「1997年の消費税増税では景気に影響がなかったという学者が多いが、それは『増税して政府が使ったから景気の落ち込みはなかった』というのをキモとしている。そんなまともじゃない方法をとったせいで、その後の経済成長が上手くできなくなった点を見落としている」「アジア危機の震源地である韓国は、たしかに危機時は景気が落ち込んだが、少し経つと回復している。一方、日本は回復していない」と指摘している。
エコノミストのリック・カッツは当時の景気後退の71%は消費の3.5%縮小が招いたものだと見積もっている。
経済学者の田中秀臣は「1997年の消費増税で起こったのは、名目GDPが減少するという不況であり、それに伴い、結局税収全体が減るという事だった」「財務省は『消費税を上げると、翌年の税収がガクンと減るという論者がいるが、その後は穏やかに回復していく』と言う。財務省は、全体の税収の変化を見ずに、消費税収の変化だけをとらえて、消費税を増税すれば、税収が上がると言っている」と指摘している。
経済学者の若田部昌澄は「橋本龍太郎内閣だった1997年に、消費財の引き上げなどによって、約9兆円の国民負担の増加があった。これはそのときのGDP比で約2%であり、その後の景気後退に影響を与えたとみられている」「あのとき(1997年度に実施した消費増税)に不況に陥ったのはアジア通貨危機が主因だという話になっているが、負担の増加が悪影響をもたらしたことを否定できる人は少ない」と指摘している。
竹中平蔵は、1997年の消費税引き上げで経済が一気に悪化し、橋本政権の責任が問われたと指摘している。
経済学者の浅田統一郎は「1996年から1997年にかけてインフレ率が1年間だけ約2%上昇したが、それは、橋本政権下で消費税が3%から5%へ引き上げられたことを反映しており、このことが、その後のデフレ不況の悪化を助長させてしまった」と指摘している。
森永卓郎は「1997年の5%への引き上げの際、それ以後、15年に及ぶデフレが続き、名目GDPが1997年の時点より55兆円、率にして11%落ちた。その間に、日本の株式市場の株価や不動産価格は半値になってしまった」と指摘している。
上げるタイミング
安達誠司は「デフレ、及びそれに近い金融危機による信用収縮という大きな経済ショックから十分に立ち直る前に消費増税を断行した事例はほとんどない」と指摘している。
経済学者のポール・クルーグマンは、不景気である只中に増税を行えばデフレ・スパイラルを加速させると述べ、消費増税は財政拡張(雇用増を目的とした歳出の拡大)を行った後ですべきであると主張している。クルーグマンは、1998年の景気の落ち込みのきっかけは前年の消費増税にあったとみているが、経済が良い状態になったときに消費増税することには賛成している。また「2014年に8%、2015年に10%の消費税引き上げはタイミングが悪すぎる。いずれ上げなければいけないが、この時期に消費税を上げたら、消費が落ち込み、経済が悪化することは目に見えている。他国でショックが起きたときにはかなりきつく影響が波及する」と指摘している。
飯田泰之は「現在(2011年)の景況で消費税の即時増税をすることには大きな危険性が伴う」と指摘している。
浜田宏一は「橋本政権の消費税増税は税収アップの助けにならなかった」「せっかく上がりかけた景気が(消費)増税でぽしゃってしまう例は、日本の歴史だけでなく世界の歴史にもある。ブレーキをかけて歳入(税収)の上昇が止まれば、消費税は率を上げただけで、何のためにもならない」「(景気が)心配なときは(税率を)1%ずつ、なだらかに上げていく」と指摘し「法人税を下げて消費税を上げていく方向にしないといけない」と、中長期的な消費税増税を主張している。
経済学者の岩田規久男は「まず(成長によって)税収を上げ、それでも財政が再建できないところを見極めてから消費税増税で遅くない」「デフレのまま消費税を上げても税収は増えない。そんな増税に意味がないことは、火を見るよりも明らかである」と述べている。
高橋洋一は、最も簡単な増税策とは「すごいインフレにして、経済が過熱してしまうので、『冷や水かけろ』ということで増税する」ことであると述べている。
片岡剛士は「消費税率引き上げというと、財政赤字抑制といった観点から消費税率引き上げの是非が報道されるが、消費税率引き上げの際のタイミングを失すると財政赤字がむしろ拡大する可能性もある。経済・財政・社会保障の一体的な改革を進めるために必要なのは、早急な増税策の実行といった手段の議論ではなく、デフレから早期脱却し、政府が掲げる成長シナリオを消費税増税下でも確保できる経済状況を達成することである。安易な増税議論ではなく、景気動向とのタイミングを考慮し経済成長との両立を図りつつ、現制度の問題点を改善するための税制や社会保障の検討こそが求められている」「消費税増税を強行したことが結局日本経済を冷やしデフレ脱却を遠のかせてしまうとすれば、恐らく今後消費税増税を行うことは絶望的となるだろう。むしろデフレからの完全脱却を優先して、名目経済成長率4%、実質経済成長率2%といった状況が確認できるまで消費税増税には踏み込まない方が賢明である」と指摘している。
経済学者の伊藤隆敏は「財政再建は喫緊の課題だ。もはや日本の財政は危険水域に入っている。44兆円の財政赤字を、消費税に置き換えれば15-20%分である。現在(2010年)の5%の消費税率を20-25%に引き上げてようやく返せる莫大な額を、毎年将来世代から借りているわけである。借金は消費増税を遅らせれば遅らせるほど、雪だるま式にふくれ上がっていく。地道に増税で返済していくほかない」と指摘している。
井堀利宏は「毎年1%ずつ税率を上げていくのがよい。一度に上げようとすると『景気が回復していなければ駄目だ』などの政治的な抵抗で先延ばしになったり、不十分な税率のまま終わり、結果として機能しない恐れもある。景気動向と無関係に毎年上げることが大切である」と述べている。
岩田一政は、毎年1%ずつ税率を引き上げ税率15%にすべきであると提案している。
明治大学公共政策大学院教授の田中秀明は「消費増税は、その影響の程度はともかく、経済にデフレ効果をもつ。経済に悪影響を与えるのに反対であれば、永遠に増税や財政再建などできない」と述べている。
イギリスの例
高橋洋一は「イギリスは2010年1月と2011年1月に財政再建のために消費税増税したが景気低迷している」「イギリスはカーメン・ラインハートとケネス・ロゴフの論文の主張に沿って財政再建のために消費税を増税した結果、景気が低迷している。景気の腰を折るような消費増税はやるべきでない」と指摘している。
安達誠司は「イギリスは、2011年1月より、消費税率(VAT)を17.5%から20%に引き上げた。またそのほかに公務員数の49万人削減、年金支給年齢の引き上げ、公立学校の授業料の値上げ等の緊縮財政を断行した。消費税率引き上げ後、イギリスの実質経済成長率は徐々に低下し、2011年終盤にはほぼゼロ成長まで落ち込んだ。これは、消費税率引き上げをはじめとする一連の緊縮財政政策の影響だと考えられる。このような景気減速をうけて、イングランド銀行は断続的に量的緩和政策を拡大させていった。その後タイムラグはあったものの、イギリス経済は家計消費を中心に回復基調に戻った」と指摘している。
対策についての議論
伊藤元重は「3年後からの消費税の引き上げであれば、それまでに駆け込み需要が期待できる。消費税を10%に引き上げれば12兆5000億円ほどの税収が見込める。その2年分程度、つまり25兆円をケインズ政策として将来の日本をよくするための投資に回す。これによって景気刺激策が期待される」と主張している。
高橋洋一は対策として、消費減税(税率引き上げ分)、全品目の軽減税率(税率引き上げ分)の導入・適用、所得税減税、増税した分をすべて使い切るような減税・財政支出を挙げている。高橋は「消費税増税のマイナス効果を緩和するためには、金融政策と財政政策によるマクロ経済政策で景気対策をするしかない。消費税増税という財政政策は有効需要を減少させるため、減税・給付金などによる同じ財政政策で中和するのは正しいが、間違った増税には愚かな財政支出が必要になるのは皮肉である」「消費税を巻き上げておいて、それを国民にばら撒き、増税後の経済の落ち込みを少なくするというのは馬鹿げた話である。低所得者に1万円を配るといった『簡素な給付措置』など愚の骨頂である」と指摘している。
原田泰は「消費税増税の効果を打ち消したいのであれば、減税しかない。増税して減税するなら財政赤字はたいして減らないがそれでは意味がない。また、増税して公共事業を増やすのも意味がない」と指摘している。
中原伸之は「『消費増税で景気が落ち込むから補正予算を組め』という議論もあるが、右の手で取って左の手でばらまくだけの話なのでやるべきではない」と指摘している。
片岡剛士は「政府では5%の消費税増税による経済への悪影響を緩和するため3-5兆円の補正予算を打ち出すとの話だが、増税しつつ増税の悪影響を緩和するために歳出を増やすというのは、単に政府が使える金を増やすだけであって、そのことが逆に財政再建への信頼を毀損しかねない」「経済対策が必要というほど消費税増税の悪影響を懸念するのならば、悪影響を懸念しない増税幅での消費税増税を行なうか、予定どおり消費税増税を行なっても問題がない段階まで日本経済が回復するまで増税を先送りするのが筋であり、消費税増税ありきの5兆円経済対策はナンセンスである」「設備投資を刺激するために投資減税や法人税減税を行なったとしても、そもそも設備投資が増える環境にないため政府が想定する経済効果をもたらさないだろう。消費税増税が恒久的な性格をもつ以上、一時的な給付金や減税策で消費税増税の悪影響を十分に抑制するのは困難である」と指摘している。
ポール・クルーグマンは「急速に少子高齢化が進んでいる日本では、今後さらに所得税よりも消費税のほうが重要になってくることは確かである。そうした状況を踏まえれば、例えば、一定年収以下の所得税を減らすことを提案したい。収入が一定以上ある世帯は、消費税が上がっても消費が極端に減ることはないので、消費が落ち込むこともないだろう」と指摘している。
片岡剛士、田中秀臣は「消費増税が恒久的な性格を持つため、一時的な給付金・減税で増税の悪影響を十分に和らげることは困難である」と指摘している。
浜田宏一は「金融緩和をせずに消費税率を上げれば、国民の実質上の所得が減りその結果、税収が減り、税収が減った結果、日本経済は破綻に向かう」と指摘している。
消費税増税の対策としての金融政策について、高橋洋一は「金融政策の効果は、タイムラグが大きく財政政策ほどに即効性はないため、短期的な景気変動の対応策としては力不足になってしまう」と指摘している。高橋は「(消費)増税なしの金融緩和と、増税してマイナス効果の中での金融緩和は明確に区別しなければいけない」と指摘している。
景気刺激策としての提案
経済学者の小野善康は「(消費)増税で税収が増えた分の一部は、借金の返済ではなく新たに人を雇うのに使った方が所得が増えて税収も増える」「増税で失業者に仕事を作り、家計に所得で戻す。増税されても、それが失業者に渡って消費されれば、マクロ経済学的には必ず就業者の所得増となって戻ってくる」と主張している。
消費増税の代替案
成長率を上げる
竹中平蔵が示す財政再建策は、日本の名目経済成長率を3-4%に上げることであるが、長期的には消費税の引き上げは不可避であるとの考えを示している。2013年には「自分は、今まで消費税率の引き上げに賛成したことはないし、消費税率を引き上げずに財政再建はできる」と述べている。
高橋洋一は「財務省の試算では税収の弾性値(名目GDP1%増で税収が何%増えるかを示す数値)を1.1として、景気回復局面での税収増を低く計算している。過去15年間の税収弾性値は3-4くらいなので、名目成長率3%くらいだと、消費税増税なしでも、2016年度のプライマリー収支対名目GDPは1.4%程度に下がり、遅くとも2018年度までには赤字解消する」と述べている。
飯田泰之は「消費増税導入の前提条件『平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度』が達成できていれば、そもそも増税はいらなくなる」と指摘している。
デフレからの脱却
浅田統一郎は「日本の国債累積問題の解決策は、デフレ不況からの脱却であり、消費税の増税ではない」と述べている。
飯田泰之は「財政再建を増税だけで達成することはできない。増税はむしろ税収の減少を通じて財政状況を悪化させる可能性がある。とくにデフレと、それによるゼロ金利状況において緊縮財政の景況への悪影響は大きい。財政状況の改善のためにではなく、将来の財政負担に対して消費税を充てるのは望ましいが、プライマリーバランスと将来の医療・年金支出を混同したままに、デフレという特殊状況を考慮せずに増税へと進もうとする方針はきわめて危うい」と指摘している。
森永卓郎は「景気が悪いときに消費税を上げてはならないというのは、経済政策の基本だ。増税よりも先行して取り組むべきなのが、デフレ脱却による自然増収である。このまま経済成長もせず、歳出削減のための改革も先送りにすれば、底に穴のあいたバケツに税金をつぎ込むことになり、財政赤字が増大し、再び増税への道を歩まざるを得なくなる」と指摘している。
小黒一正は「あの程度(10%)の消費増税では、デフレ脱却が成功した場合、金利が上昇し、利払費の増加に対応できなくなる」と述べている。
歳出の抑制
竹中平蔵は「抜本的な社会保障改革を行ない歳出を制御しない限り、消費税をいくら引き上げても財政は再建しない」と指摘している。竹中は「増税(消費税率の10%引き上げ)しても問題は解決しない。歳出をこのまま放っておくと、社会保障費が毎年1兆円ずつ増えていく。必要なのは歳出の抑制である」と指摘している。竹中は「現行(2014年)の社会保障制度を続けたら、消費税率を30%以上にしても財政が健全化しないことが、専門家の試算によって明らかになっている」と指摘している。
原田泰は、消費税増税より社会保障給付費の削減が必要であると主張している。原田は「20兆円の支出増に対して、消費税を5%上げても、1%で2.5兆円の税収とされているので12.5兆円の増収にしかならない。予算を使わないようにすることが一層大事である。高齢化による社会保障支出の増加はやむを得ないという反論があるが、2007年から2012年までに65歳以上の高齢者は12%しか増えていない。社会保障費は予算の3割であるから、全体の予算は0.3×12%で4%しか増えないはずである。児童手当の増額による歳出の増加は1.7兆円に過ぎない。なぜ20兆円も歳出が増えたのかをよく考えない限り、いくら増税しても財政再建など到底無理である」「なぜ20兆円も歳出が増加してしまったかと言えば、消費税増税に賛同してもらうために予算を配ったからである。膨らんだ歳出の穴を埋めるために消費税増税が必要になると納得してもらうためである。結局、歳出を20兆円膨らませて12.5兆円埋めるだけだ。財政赤字は増えてしまっている」「消費税をいくら上げても、税収が増加した分を使ってしまっては、いくら増税してもきりがない。財政再建のためには歳出を増やさないことが肝心だという認識に立たない限り、本当の意味で財政再建はできない」と指摘している。
野口悠紀雄は、日本の財政状況は極めて深刻であるので、消費増税だけで財政再建をすることは困難であると分析している。野口によれば、消費税率を10%に上げたとしても、10年ほどで国内での国債消化は行き詰まることになる。野口は、社会保障制度の抜本的な改革を実行することが必要であると述べている。
井堀利宏は「歳出を抑制できずこのままならば、消費税を25%に設定しないと維持できない」と述べている。
小野善康は「(消費)増税は必要であるが、同時に歳出削減して雇用を減らしたら逆効果となる」と述べている。
相続税
経済学者の鈴木亘は「増税するにしても(消費税より)相続税の方がよい。今(2013年)は相続対象者100人のうち4人の割合でしか払っていないのを、もっと多くの人に払ってもらう。高齢者は残さず使おうと考えるため、景気への影響は少ない。今の年金は高齢者たちが支払った分よりも高い金額を戻し、コストは若い世代が負担しているが、この世代間不公平も解決する」と指摘している。
所得税
竹中平蔵は「通常、普通の人が払う所得税は税率10%以下である。所得税全体で普通の人が占める比率は、イギリスで15%、ドイツ・、アメリカで30-40%であるが、日本は80%にもなる。つまり、ほとんどの人は税金を払っていない。高額所得者だけが高い税率を課せられ、所得税が空洞化している。普通の人にも所得税を払ってもらわないと税は成り立たないが、政治家はそう言えないから、なんでもかんでも消費税と言っているわけである。この欠陥をどう補えるかが非常に重要なポイントになる」と指摘している。
環境税の導入
経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは消費税は消費を冷やす「悪い税金だ」と指摘し、消費税よりも二酸化炭素の排出量に応じて課税する「環境税」のほうが税収につながるという見方を示している。
明治大学国際総合研究所フェローの岡部直明は「ヨーロッパでは、多くの国で環境税が導入されており、年金財源に充てられている」と指摘している。
岩田規久男は「環境税による税収増は、財政再建のための消費税増税の必要性を低下させる」と指摘している。岩田は「環境税は、使途を特定する理由がなく、一般財源として使える。所得税・消費税の減税財源として使える」と指摘している。
そのほか
田中秀臣は「税の徴収漏れ・社会保険料の徴収漏れなど、官僚のシステムが機能していないところがある。納税者番号制度などの導入によって、数兆円の税収の改善が図れる」と指摘している。
高橋洋一は、税理論として不公平の是正・歳入庁の創設が先であり、また政治姿勢として無駄の削減・行革・資産売却・埋蔵金発掘が先であると指摘している。高橋は「歳入庁・納税者番号を導入すれば、消費税増税が必要なくなるほど税収は上がる」と指摘している。
国際社会・国債への影響
2013年8月30日午前、麻生太郎財務相は閣議後会見で「消費増税をしなかった場合、日本は財政再建をする気はないと取られて、株を一斉に売り浴びせられ、国債が下がることも考えられる」と述べている。黒田東彦日本銀行総裁は「法律で一度決めたことをやめて違うことをやるとなれば、どういう影響が市場に及ぶか予測しがたいし、変更した内容を100%実行すると市場が信認するかはわからない」と述べている。
岩井克人は「重要な点は、消費増税によって財政規律に対する信頼を回復させ、長期金利を抑制することである。実際、消費増税の実施が決定的となった2013年9月には、長期金利は低下している」と指摘している。2013年10月1日、安倍首相は、首相官邸で記者会見し、2014年4月から消費税率を8%に引き上げる決定を発表している。
清家篤は「日本の財政はすでに危険領域に入っている。消費税を引き上げると景気にマイナスの影響はあるかもしれないが、仮に国債金利が上がるとそれでは済まされない。長期金利が暴騰すると単に景気が悪くなるというだけでなく、市場がクラッシュし財政が発散してしまう」と述べている。
伊藤元重は「もし日本の公的債務が将来膨れ上がっていくと考えれば、市場で日本の国債は売り浴びせられる。そうなっていないのは、政府の財政規律が働いており、日本の財政運営が破綻することはないと市場が信じているからである。財政再建で最も重要なのは、市場の信頼を損なわないことである。財政健全化に向けて努力する姿勢を持ち続けることで、市場に安心感を与えるのである。たとえば、消費税を10%に引き上げる法案だが、景気悪化を理由に消費税引き上げを先送りするようなことにでもなれば、日本の財政再建の姿勢はその信頼性を大きく損ねることになりかねない」と述べている。伊藤は「消費税の引き上げのタイミングを遅らせると、国債市場に大きな影響が及ぶ可能性が出てくる。地方の金融機関は、預貸率が低く多くの国債を購入している。経済が混乱するようだとその影響は地方に特に強く及ぶ。また、地方経済は国の財政への依存度が大きいことからも、財政の混乱の影響は地方により大きく及ぶことになる」と指摘している。
「(消費税)増税しないと投資家が日本国債を失望売りするため金利が高騰し、日本国債の暴落を招く」という議論について、高橋洋一は「小泉政権は増税しないと言って何か問題が起きたのか。増税しないと言ったが経済成長したので、どの政権よりも財政再建ができた。財政の信任は経済成長がキモで、増税ではない」と指摘している。
エコノミストの山崎元は「消費税率の引き上げを見送った場合に、格付け会社が日本国債の格付けを引き下げて国債が暴落するとの声を聞く。金融監督レベルで国債のリスクが変わらなければ、高利回りの日本国債は、金融機関・機関投資家にとっては相変わらず魅力的な運用対象であり、インフレ率から大幅に上方乖離した利回り水準は継続しないだろう。また、国内資本の格付け会社は日本国債の格付けを高く据え置くだろう。加えて、消費税率の引き上げを見送った場合、景気の拡大で税収が回復する公算が大きい。総合的に見て、国債暴落を防ぐために消費税率引き上げはやむを得ないという意見の説得力は乏しい」と指摘している。
中原伸之は「『消費増税しないと国債が暴落する』『国際公約だ』など議論が定型化・類型化されている。消費税を政治ゲームにしてはいけないし、国際公約などに拘束されることはなく、最後は国益が優先される」と指摘している。
小幡績は「『日本国債のリスクが高まるのであれば、消費税引き上げ延期は避けるべきである』というのがもっとも誠実な議論である。『海外投資家が売り浴びせるから、消費税を上げるべき』という議論は、脅しのように聞こえるから悪いのではなく、将来の投資家行動を予言できると考えている点で誤りであり、同時に政策哲学・政策立案側の戦略として『負け』の戦略である」「『投資家の失望につながる』という理由で消費増税を行なうことは、投資家の行動を恐れて政府が自分の行動を変えることであり迎合である。市場では迎合したほうが必ず負ける。そして、いったん投資家に主導権を握られれば、政府は永遠に投資家の言いなりになってしまう」と述べている。
消費増税と国際公約
消費増税について「国際公約だから実行すべき」「先送りすれば日本の信認が失われる」といった議論がある。2013年7月23日、麻生太郎は閣議後の記者会見で、2014年4月に予定されている消費税率引き上げについて「国際公約に近いものになっているから、変えるというのは大変な影響を受ける」と述べている。
G7、G20などの国際会議では、その場で新たな約束を各国間で行うのでなく、既に各国で決められている内容を披露する場であり、先進国では政府の権能は国会の議決の範囲内であるため、国際会議で国会の意向を無視して勝手に国として約束することはできないというのが基本である。
高橋洋一は「『国際公約』とは、国内で決まったことを一方的に国際会議の場で宣言することである。国際会議において各国ともに『国際公約』として一方的な宣言をするが、仮に国内法によってそれが変更されても、各国ともに変更した国を非難することはない。消費増税して経済成長率が下がったり、落ち込みを防ごうと無茶な財政支出を行って財政が悪化したら、そのときこそ日本の信認は失われることになる」と指摘している。
片岡剛士は「国際公約といった指摘は、消費税が内国税であり他国が干渉できない国内問題であることに留意すべきである。国際公約違反といった批判は詭弁である」と指摘している。
経済学者の本田悦朗は「(日本の)財政再建は国際公約だと言われるが、国際的には条約や協定、コミュニケといった国際的約束以外には拘束されない。だから、国際公約だから予定通り消費税増税をやらないといけないという嘘で国民を騙してはいけない」と指摘している。
福祉財源
消費税率引き上げにより福祉財源を賄うという方針は、自民党からに再三にわたって示されてきた。民主党政権においても、菅総理は、自民の方針に近い考えを表明している。
伊藤元重は「一定率の消費税を国民皆が負担すれば、富む者も貧しい者も、同等の権利として教育や社会保障のサービスを受けられる。これが社会保障政策や教育政策による国民のあいだの再配分政策である。それを維持するためには、安定的に税収を確保できる消費税が好ましい」と述べている。エコノミストの西沢和彦は「(社会保障の財源を)全国一律にあらゆる世代から集められる消費税でまかなうのは妥当である」と述べている。
若田部昌澄は「消費税は薄く広くとる性質があるため、負担は広範に薄くなっているのに、社会保障は限られた人たちに行く。負担と給付のバランスが崩れている」「社会保障が大事だから、消費税を増税するという考え方は短絡的であり、社会保障の財源の話と、消費税の話は分けて考えるべきである。財源が必要であるなら、景気に悪影響を与えないようなやり方もある。人々の所得・雇用が減ってしまうと、貧困者層には大きな打撃を与える。それでは増税の意味がない」と指摘している。
鈴木亘は「(社会保障の)不安解消どころか、消費税増税が仇となって社会保障費ばらまきの道を開いてしまう。増収のたびに支出を追加するなら消費税は将来30%を超えてしまう」「国民は負担が増すことに不安を持っているのではなく、どこまで将来負担が増えるのか、どこまで(社会保障の)給付が削減されるのかが解らないのが最大の不安なのである。まずは情報をオープンにして、財政状況を正直に話した上で、負担を求めるのが筋だ」と指摘している。竹中平蔵は、このまま消費増税案にのれば、日本は「低福祉・重税国家」となると主張している。
社会保障目的税
高橋洋一は「消費税を上げるロジックとして、社会保障にくっつける発想には無理があり、社会保障を人質にして消費税を増税するための屁理屈にすぎない。本来の消費税は一般財源が普通で、社会保障などの特定財源にしている国はほとんどない」「消費税を社会保障目的税にするのは、先進国ではまず例を見ない奇妙なものだ。消費税を社会保障目的税化して国のサービスに固定すると地方分権ができにくくなる」と指摘している。
森永卓郎は「社会保障財源を保険料から、税金に(完全に)切り替えたら会社の負担が無くなる」「庶民は収入の80%を消費に回しているのに対して、金持ちは20%しか消費していない。社会保険料は収入にかかるのに対して、消費税は消費にかかる。消費税が10%になった場合、庶民の支払う消費税は、80%×10%で収入の8%となるが、金持ちが支払う消費税は、20%×10%で収入の2%でよい、つまり、社会保障財源を消費税に移すだけで、金持ちの負担は4分の1になる。(社会保障財源を保険料から、税金に完全に切り替え)企業負担が無くなれば、8分の1となる」と指摘している。
片岡剛士は「消費税増税は低所得者に対して厳しく、弱者を救う目的の一つである社会保障制度の財源にはそぐわない」と指摘している。また片岡は「消費税は社会保障制度を維持するための安定財源ではない。2013年度の社会保障給付費は総額で110兆円であるが、毎年増加を続けており、消費税率を5%から10%に引き上げても、毎年社会保障給付費は3-4兆円増えるため、数年後には再び赤字額が拡大する。研究者の試算によると、将来の社会保障制度維持するために必要な消費税率は30-40%程度と言われている。社会保障制度を維持するために消費税を利用するのであれば、毎年消費税率を引き上げる必要があり現実的ではない」と指摘している。
飯田泰之は「そもそも社会保障費の方が消費税収よりも多いため、目的税にはしようがない」と指摘している。
原田泰は「税と社会保障の一体改革の議論は、増税すればこれまでの福祉を続けられるという筋道になっているが、超高齢社会ではそうはならないことを認識しなければならない。増税されれば、その増税分は現在の高齢者に分配され、将来の高齢者には分配されない。それならば何もしない方がマシである。現実的な消費税増税幅と社会保障支出のカット率を考えなくてはならない」と指摘した。
年金の財政
岩田規久男は「基礎的年金財源を目的消費税に置き換えれば、現役世代は基礎的年金保険料を支払わずに済むようになるが、受給世代である高齢者の消費税負担が増える。基礎的年金目的消費税の導入は、世代間の不公平を是正し、将来世代の負担を和らげ、年金の持続的可能性を高める。低所得者の税負担を高めるという議論については、『給付付き税額控除制』の導入によって解決できる」と指摘している。
飯田泰之は「(野田内閣)政権の財政運営は、目先の年金財政における歳入欠陥を埋めるために増税し、今後も財源不足になったら増税するという半永久的な「繰り返し増税」を基本としている」と指摘している。
代替案
森永卓郎は「年金給付の財源に税金を充てることには賛成である。ただし消費税以外に方法はある。例えば所得税の最高税率の引き上げ、法人税の引き上げ、金融資産に課税するなど代替策はいくらでもある。せめて公平に課税した税金を財源に充てるべきであって、所得の低い者に厳しい消費税を上げるべきではない」と指摘している。
税率の試算
「日本の消費税率5%は、国際的にみて低すぎる」「福祉先進国のスウェーデンの5分の1、欧州各国の4分の1」との指摘がある。しかし、国税収入に占める消費税収入の割合をみると、スウェーデンは約22%と日本と同程度である。これは、日本の消費税が医療や福祉などの一部非課税項目を除けば網羅的に課税されているのに対し、欧州各国の付加価値税は、医療・教育から住宅取得・不動産・金融など幅広い非課税項目があることと、食料品や医薬品などの生活必需品は軽減税率をとっているためである。
エコノミストの鈴木準は「物価が上がった時に年金の水準を据え置くなどの限られた給付抑制策だけでは、2030年代に消費税を25%程度まで引き上げたとしても、税収で政策的経費を賄えない。公的な皆保険や皆年金を最低限にして民間の保険・サービスの利用が広がれば、民間の伸びで成長率を維持することができ、消費税は20%程度で抑えられるかもしれない」と述べている。
原田泰は「財政赤字を増税によって賄おうという議論はいいが、増税分を社会保障に回すとの考えは根本的に間違っている。社会保障給付費の対名目GDP比を見ると、1970年は4.6%だったものが、2010年は24.6%までに上昇した。2060年には53.5%までに達する。消費税1%はGDPの0.5%の税収に相当する。そうなると社会保障給付費は現状から28.9%まで上昇するためそれを0.5%で割ると57.8%となる。現在(2012年)の消費税率が5%に57.8%を上乗せした62.8%が、2060年時点の消費税率という計算が成り立つ。このような増税が可能だとは思えない。つまり、現在の社会保障を維持するために必要なお金を、増税のみで賄うのは不可能である。あまりにも高税率になると経済効率が低下する上、税金を納めるのがバカらしくなり、節税と脱税行為が横行する。結果税率をあまりに引き上げると、逆に税収が減ることになる。高齢者1人あたりの社会保障支出を減らさざるを得ない」「高齢化はこれまで以上のペースで進んでいくことを考慮しなければならない。高齢化がほぼピークになる2050年に必要な消費税増税を15%、現行(2011年)の消費税と合わせて20%とあらかじめ決定し、その範囲内での財政支出しか行わず、消費税増税を順次行っていくべきだ」と指摘している。
総合研究開発機構主任研究員の島澤論は「2011年時点で社会保障費の支出は約108兆円で2030年には226兆円になると予想されている。消費増税だけで赤字を解消しようとすると、2030年の消費税は37-41%程度になる」と指摘している。
そのほか
竹中平蔵は「法人税は企業の国際競争力を削ぐため引き上げられず、所得税もフロンティアの時代であり引き上げられない。つまり、消費税を上げるしかない」と指摘している。
土居丈朗は、2015年10月に予定されている消費税率10%への引き上げについて「消費税率を予定通りに引き上げなかった場合、国の信認の維持、社会保障制度を次世代に引き渡していくという責任、子育支援がまっとうできなくなる。その上、国債金利の急騰、金利上昇に伴う企業の資金繰り難、社会保障給付の抑制といった支障が国民生活に及ぶ可能性がある」と指摘している。
飯田泰之は「消費税はとりっぱぐれが無く効率のいい税制であり、税収を安定させるという意味では必要である。給付付き税額控除やベーシックインカムという制度と同時でやるなら賛成である」と指摘している。
森永卓郎は「消費税を上げることで、法人税率引き下げ・研究開発投資支援拡充のための資金を確保したいのだろう。給料が上がらずに苦しんでいる庶民から金を取り上げて、大企業に所得移転をするわけである」と述べている。
経済評論家・経済学者である植草一秀は「日本政府が欧州政府債務危機に便乗して、日本の財政危機キャンペーンを実施している」と主張している。植草は、「累積債務1000兆円に短期債務が含まれている」「中央政府だけで簿価ベースで647兆円もの資産を保有している」「日本の経常収支が巨額の黒字を計上し続けている」という三つの点を挙げ、「日本の財政がPIIGS諸国同様の危機に瀕しているというのは大きな間違い」「財務省の天下り利権を切らずに消費税増税を実現してしまおうと邪な考えに基づく大増税政策が景気回復の好機を吹き飛ばしてしまう」と主張している。
三橋貴明は、増税とは税率の引き上げや新税導入によって政府の歳入を増やそうとする発想のことであるとし、デフレーションの国が増税すると実際に税収増とならないと指摘しているそれでも財務省が増税をしたがる理由は「増税と軽減税率のセット」によって、天下り先を確保するためだと述べている。
田中秀臣は「日本の場合、高齢者の投票率が圧倒的に高い。消費税増税というのは、高齢者の低負担という利益にかない、また不況のような将来不安があるときには、高齢者対策となる。これが世界でも珍しい補強の中での増税議論の実体である」と指摘している。
高橋洋一は「エコノミストたちには、消費増税の影響が軽微と言いたい事情がある。多くのエコノミストは金融機関の子会社にいるが、親会社の金融機関は財務省に弱い。また、金融機関は、外為資金の運用・取扱、国債入札や財務省オペの対象、財務省の事実上の内部組織である国税庁・国税局と税務上のトラブルを避けたいため、財務省には弱い立場にある」と指摘している。
日本経済団体連合会の主張
日本経済団体連合会は、「消費税法改正法の成立は、持続可能な社会保障制度の確立、財政の健全化に向けた一歩」と高く評価すると同時に、法定実効税率の約25%まで引き下げとその後の更なる減税や、消費税率引き上げまでに自動車取得税と自動車重量税を廃止することや、10%までは単一税率とし低所得者に対しては10%の段階で給付付き税額控除を検討する、所得税の最高税率の引き上げは慎重に検討、相続税は国民の合意を得ながら必要な見直し。贈与税は経済活性化のため負担軽減等を提言している。
2014年10月20日、経団連の榊原定征会長は、2015年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて「議論があるが引き上げは必要だ」と述べ、増税先送り論を牽制した。榊原会長は、2015年10月に予定される消費税の10%への再増税について「国家的な課題として、再引き上げは避けて通ることはできない」「日本のためには絶対に必要である」と述べている。
マスメディアの主張
2012年日本新聞協会は「現状(税率5%)以上の税率引き上げは、民主主義体制の維持と発展に果たしてきた新聞の役割と公共性を損なう」として、新聞の税率引き上げに反対している。新聞には軽減税率を適用するよう求める大会決議を採択している。
朝日新聞は社説で、「所得税や法人税収にくらべ消費税収は安定しているため、福祉の財源に適しているともいわれている」ことを根拠に挙げ「国債がこれ以上増えないようにするのは難事業であり負担増は避けられない」「それはやはり消費税を中心にせざるを得ない」と主張している。
南日本新聞は社説で、消費税が10%に上がると年収300万円4人家族の場合、10万6700円の年間負担増になるとの試算結果を挙げ、「所得税と比べると、所得の少ない人にも同じ税率がかかるため、低所得者ほど相対的に負担が重くなる。この「逆進性」の問題を解決することが何より重要だ」と主張している。
ジャーナリスの横山渉は「新聞社は『自分たちだけは税金を安くしろ』と言っているわけである」「各社は新聞を軽減税率の対象にすべき理由として『活字文化の存続』や『知る権利』などを挙げているが、今や新聞社だけが情報取得手段の担い手ではない。インターネットの普及で、情報は多様化している。また、速報性でもネットメディアは力を発揮している。新聞が軽減税率の対象になるとすれば、それは新聞社の既得権以外の何ものでもない」と述べている。
 
消費税率8%および10%への引き上げ
2013年8月から、2014年4月に消費税増税を行うかどうかの決定に関する経済財政諮問会議が開かれた。消費税増税反対派は宍戸駿太郎など少数であった。日本の経済学者の多くは増税に賛成した。例えば伊藤隆敏は、1997年の消費税増税ではアジア金融危機などがその後の景気低迷の原因であったとし、予定どおり消費税率を8%に引き上げることに賛成した。土居丈朗や吉川洋も消費税率引き上げに賛成した。
そして、2013年10月1日に首相の安倍晋三は消費税率の8%への引き上げを表明した。この消費税増税が日本経済に再度のダメージを与えるのではないかと懸念されている。その増税の影響についてはエコノミストらの間で議論が継続している。
8%への増税後、景気は悪化した。2014年10月現在、一時的な消費低迷なのか、景気後退へ突入したのか判断が分かれている。
消費税率8%への引き上げ後の景気への影響に関する議論
日本銀行政策委員会審議委員である佐藤健裕は、2014年4月に消費税が増税されても一時的に消費は落ち込むが6月から9月にかけて景気は回復し始めると述べた。けれども消費税増税によって物価動向の観測は難しくなるとし、日銀は物価の動向を数カ月注視していくとしている。佐藤は、1997年に比べて2014年現在の日本経済は消費税増税に十分耐えられるほど堅固であり、消費税率を8%に上げても1997年の再来はないと主張し、増税で景気が落ち込んでも追加の金融緩和を講じる必要はないと示唆した。
ポール・クルーグマンは、デフレのために依然として実質金利が高止まりしており、日本経済がデフレを脱し健全な経済成長をするまでは消費税の増税をするべきではないとの見解を示している。もし脆弱な景気回復の中で消費増税を行えば、一時期の回復が自滅的な結果に終わってしまう可能性があることが懸念される。財政規律という名目で、回復傾向にある日本経済を不況に逆戻りさせることは愚かなことだとクルーグマンは論じる。
ローレンス・サマーズは、2013年における日本のデフレからの脱却路線が永続的かそれとも一時的なものかは不明瞭だと述べた。2014年4月の消費税増税は日本政府による緊縮財政であり、これの悪影響を打ち消すだけの消費拡大の策を打たない限りは、この増税は日本にとって大きなリスクになるとサマーズは説く。サマーズは2014年3月にアブダビで開かれた会合で、2014年4月の消費税増税による悪影響が予想以上のものになるのではないかとの懸念を示し、また、増税後の景気回復の見込みについても過大評価されているのではないかと述べた。
ジョセフ・E・スティグリッツは、5%から8%への消費税増税が1997年の再現になるのではないかと危惧する。日本経済は依然として脆弱であり、早すぎる増税によって経済成長が損なわれてしまうリスクがある。第2次安倍内閣は2.4%の法人税減税などトリクルダウン理論によって消費税増税の負のインパクトを緩和するつもりだが、仮にそれを米国や英国で行ったとしても高所得者のおこぼれが低所得者にしたたりおちることはなく、現実には大企業はそれを自分たちのボーナスとするだけであるとスティグリッツは述べる。
日本政府は増税と同時に5兆円規模の景気対策を行い増税の悪影響を緩和するつもりであるが、みんなの党の浅尾慶一郎は増税が日本経済にダメージを与えることがわかっているなら、何故わざわざ増税をするのかわからないと述べる。
消費税率10%への引き上げに関する議論
2014年10月31日、9月の家計調査で全世帯の実質消費支出が対前年比で5.6%減となり、同日に日本銀行は追加金融緩和に踏み切った。日銀総裁の黒田東彦は「日本経済はデフレ脱却に向けて正念場にある。」と述べた。ブルームバーグは、日本銀行出身の馬場直彦、熊野英生や日銀審議委員に推挙されたことのある河野龍太郎などの話として「消費税増を最終判断するときの支援」「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の新資産構成との連携」との見方を伝えた。
11月6日、ポール・クルーグマンが首相の安倍と会談し増税の延期を進言。
首相の安倍晋三は11月13日、消費税再増税の先送りと、衆議院を解散する方針を決定。
11月14日、民主党はこれまでの方針を転換し増税先送りを容認する方針を固めた。これに関して、官房長官の菅義偉は「驚きましたですよね。予算(委員会)の色々な議論を見た上で、『えーっ!』って感じ。これに尽きます」と述べた。
11月14日、ローレンス・サマーズが「消費税増税の先送りを決定することを歓迎する」と語った。
増税先送り決定後に首相官邸と財務省の間で、景気弾力条項と呼ばれる附則18条をめぐるさや当てが始まり、首相側近の一人は「景気弾力条項がなければ、未曽有の大不況でも増税しなければならなくなる」と反発した。
点検会合
2014年10月27日、日本経済新聞は税率再引き上げに関して意見を聞く点検会合のメンバーを報じ、取材によると約40人のメンバー中で数人が増税に反対であるとした。10月29日に選抜メンバー42人が正式に発表され、日本経済新聞の事前報道に加えて、昨年の会合で2014年度はゼロ成長になると主張していた片岡剛士などが入った。財政制度等審議会会長の吉川洋や日本銀行出身の武田洋子、西岡純子なども前回に続いて選抜メンバーに入った。日本銀行副総裁である岩田規久男はインフレ目標達成に懐疑的な民間識者を「足し算エコノミスト」と批判しているが、今回点検会合のメンバーに選ばれた吉川は「物価は足し算だ」と日本経済新聞のインタビューで述べ、貨幣数量理論を否定した。
2014年11月4日から始まった消費税に関する点検会合には、45人が参加した。初日の点検会合で増税に反対した荻上チキは、財務省内で新たな広報が始まっていて、これまでの経済団体などに加えて「発信力の高い個人や、大学、NPO、地方の経済団体」に対象を広げ、バイラルマーケティングが行なわれていると指摘している。この会合にはNPO関係者3人+地方関係者5人(首長が4人)が参加しているが、8人中6人が増税に賛成した。NPO関係者の中では、インクルいわて理事長の山屋理恵が、被災地や低所得者への影響が大きいとして反対。三鷹市長の清原慶子は態度表明しなかった。また女性エコノミストが3人、女性学者が2人参加しているが、増税賛成率は100%だった。NPO関係者でかつ学者である大日向雅美は増税に賛成した。内閣官房参与の浜田宏一や片岡剛士は増税に反対した。11月17日、内閣府は7-9月期実質GDPを発表し、前期比‐0.4%、年率‐1.6%(ロイター予想+2.1%)となり、「驚くほど低い」数字となった。消費税率引き上げ後の4-6月期に続いてさらに悪化したことになる。「個人消費」は、東日本大震災の時を超える大幅な落ち込みだった4-6月期からわずか0.4%しか回復しておらず、「住宅投資」は4-6月期から-6.7%だった。「驚くほど低い」GDPが発表された17日の消費税再増税のための点検会合では、日本銀行出身の西岡純子が「財政再建先送りで良いことはない」と増税に賛成するなど賛成派が6人で、増税に反対したのは片岡剛士と若田部昌澄の2人だけだった。内閣官房参与の本田悦朗は、もはや増税の議論をしている場合ではなく、経済対策に集中すべき時だと語った。
メディアの論調
朝日新聞は、社説で増税支持を表明した上で「再増税を最終判断する安倍政権は、自民党内でも『1強』と呼ばれる基盤を誇ってきた。その政権が増税を先送りするようでは、増税それ自体が困難になりかねない。」と主張した。
ロイターの田巻一彦らは「ハードル引き下げ論」があると主張し7-9月期のGDPが年率+2%程度なら増税を行うとした。
日本経済新聞は「消費税率は予定通り10%に上げる環境にあるとの指摘が多い」と述べ、夏の天候不順によって消費増税後の個人消費が弱くなっていると主張した。これについては、結論ありきの試算で天候が消費に与えた影響はほとんどないという批判もある。
世論調査
2014年10月26日、日本経済新聞の世論調査で消費税率の10%への引き上げについて70%が反対していることが分かった。
朝日新聞の世論調査によると消費税を「引き上げられる状況だ」との回答が16%にとどまった。NHKの世論調査でも、増税に賛成する人は20%となった。
福島民報によると、女性では増税の「賛成」がわずか9.5%で、反対理由は家計の厳しさだった。
 
日本の国会に議席を有する政党の消費税への姿勢
自由民主党
党内には上げ潮派と増税派が混在するが、2012年以前においては消費税導入や引き上げは全て自民党政権の下で行われてきた。2009年の総選挙においては、麻生首相は、消費増税の前に景気対策や国会議員の定数削減など歳出の削減を行うと表明しつつも、その後で税率を上げることは避けられないとする主張であった。この選挙において、自民党は、消費税を4年間上げないと明確に公約した鳩山代表が率いる民主党に、歴史的大敗を喫することとなった。野党となった自民党の谷垣執行部のもとでは、税率10%への引き上げを党議決定している。2012年6月、消費税増税法案を民主党ならびに公明党と合同で提出。消費税増税法案は、衆議院で採決を行い賛成多数で可決された。
民主党
結党当初は、新進党が提出した増税中止法案に反対していた。岡田代表時代は、年金目的消費税を主張していたが、小沢一郎が代表に就任してからは、これを凍結。2007年の参議院選挙では、消費税引き上げを否定している。鳩山代表が就任後の2009年の総選挙では、無駄を省けば歳出を大幅に減らせるとして、4年間は消費税率を引き上げないと公約している。しかし、鳩山内閣において歳出の削減は進まず、鳩山の突然の辞任後に成立した菅内閣では一転して消費税引き上げを示唆することとなった。次の野田内閣では、野田首相が財政規律を重視し消費税率引き上げを表明した。民主党内には、小沢派など消費増税反対派が半数を占めていたため、党内採決をとらず前原政調会長がとりまとめを一任するという形で議論を打ち切ったことで党内の溝が深まった。2012年6月、消費税増税法案を自民党、公明党と合同で提出し、党議拘束をかけて衆議院で採決を行い可決された。この動きに対して、党内の最大派閥である小沢派などが造反した。
2014年11月14日、民主党は幹部による会合で、消費税再増税の凍結を容認する方針で一致させた。
公明党
2009年の総選挙時にはマニフェストにおいて消費税率引き上げを示唆している。翌年の参議院選挙ではトーンダウンして財政再建目的での増税には反対を表明し、社会保障のあるべき姿を先に議論すべきとしていた。2012年6月、消費税増税法案を民主党ならびに自民党と合同で提出。消費税増税法案は、衆議院で採決を行い賛成多数で可決された。
公明党代表山口那津男は、8%への消費税増税に合わせて復興増税の法人税上乗せ部分を終了させることでの税収総額確保に係る批判を行っている。
2014年8月26日、山口代表は、消費税率10%への引き上げは、予定通り2015年10月に実施すべきだとの認識を示した。
2014年9月23日、山口代表は2015年10月の消費税率10%への引き上げについて「消極的な選択をしたときの色々なリスクも考えておくべきだ」と述べ、先送りに否定的な考えを示した。
2014年10月31日、公明党の上田勇経済再生調査会長は、消費税率10%への引き上げについて、「来年10月は厳しいのではないか。景気が腰折れしてしまえば元も子もない。慎重に判断すべきである」との考えを示した。
日本共産党
基本的に公共事業費や防衛費を削減することや大企業や大資産家への増税による財政再建を主張しており、一貫して反消費税の立場をとる。
社会民主党
導入された「日本社会党」時は消費税そのものに反対し、消費税廃止法案まで提出するほどであった。「社会民主党」改称後の自社さ連立政権時代には一転して消費税引き上げを容認。連立を解消し、再び消費税率引き上げが行われるムードになると増税反対を表明し、共産党に歩調を合わせて直接税の増税を主張している。
新党改革
2010年の参議院選挙において2020年頃には複数税率などの条件付きで税率を10%以上にせざるを得ないとしているが、代表の舛添氏は社会保障の切り込みが不十分であるとして野田内閣の増税路線には批判的である。
日本維新の会
党の維新八策で、消費税の地方税化(と地方間財政調整制度)を基本方針に掲げている。
次世代の党
2014年7月7日、石原慎太郎は、2015年10月に予定している消費税率の10%への引き上げは「やらないといけない」と強調している。
日本の政治的な動向
(導入 - 2014年現在に至るまで)
1988年(昭和63年)12月 - 消費税法が成立。1989年(平成元年)4月1日より税率3%で施行される。
1989年(平成元年)
6月に竹下首相が退陣し、宇野宗佑が後任の首相となったが、7月の第15回参議院議員通常選挙で消費税廃止を公約した日本社会党が躍進し自民党は大敗。宇野首相も退陣に追い込まれる。
12月 - 野党が過半数を占めていた参議院において消費税廃止法案が可決されるが、衆議院では与党が多数を占めていたため廃案となる。
1990年(平成2年) - 第39回衆議院議員総選挙で自民党を含む全政党が食料品などへの非課税を公約。選挙の結果、社会党が議席を伸ばすも自民党が多数を維持。その後家賃など一部のものが非課税になるも、食料品への非課税という公約は果たされなかった。
1994年(平成6年)
2月3日 - 細川首相(日本新党)が深夜の記者会見において、消費税3%を廃止して税率7%の国民福祉税を導入すると発表(国民福祉税構想)。しかし、事前の根回しを全くしていなかったため連立していた社会党、民社党、新党さきがけや世論の反発を受け翌日撤回。
6月 - 非自民非共産連立政権は崩壊し、日本社会党を首班とする村山内閣(自民党と新党さきがけが連立)が発足。同年9月この政権は1997年(平成9年)4月から消費税率を5%に引き上げることを決定し同年11月に法案を可決・成立させる。翌年の第17回参議院議員通常選挙で日本社会党は大敗北。
1996年(平成8年)
1月 - 村山首相が退陣し橋本龍太郎自民党総裁が自社さ連立政権を継承。橋本首相は9月に衆議院を解散。野党第一党の新進党は20世紀中は消費税率を3%に据え置くことを公約したものの、党の公約と候補者の公約にねじれがあったことを自民党に突かれるなどの影響で新進党が後退し、自民党が大幅に躍進する。
6月25日 - 橋本内閣は「1997年4月1日から消費税を5%に引上げる」ことを閣議決定。
1997年(平成9年)4月1日 - 消費税税率が5%に引き上げ。消費税引き上げに伴う消費の落ち込みや、同年夏のアジア通貨危機、秋には不良債権問題を要因として大手金融機関が相次いで破綻した影響で、バブル崩壊後緩やかに回復基調にあった景気が腰折れする。結果、増税による増収効はその年だけに留まり、財政はかえって悪化した。
1998年(平成10年)の第18回参議院議員通常選挙では、日本共産党は消費税率を3%に戻すことを公約。選挙の結果野党第一党の民主党及び共産党が大幅に議席を伸ばし、一方で景気対策が二転三転した自民党は議席を激減させ参議院の過半数を割り込む。橋本首相は敗北の責任をとって退陣。その後日本共産党や自由連合により消費税減税法案が提出されるが、成立はしなかった。一方与党自民党は、小渕内閣により所得税や法人税を減税するも、景気対策という名目で大型予算を組むなどしたため財政再建はますます困難となった。
2003年(平成15年)の自由民主党総裁選挙において小泉純一郎首相は「任期である3年間は消費税率の引き上げを行わず無駄な税金の使い方を正していく」と公約し再選された。公約通り増税はされなかったものの財政再建は達成できなかったとされる。
民主党及び民主党代表就任直後の岡田克也は、2004年(平成16年)の第20回参議院議員通常選挙で「消費税を8%に上げる」と公約。その参議院選挙では辛勝したが、翌年の第44回衆議院議員総選挙(郵政選挙)で小泉劇場の前に民主党は大敗した。その後、2007年(平成19年)の第21回参議院議員通常選挙では小沢一郎代表のもと「消費税率の据え置き」に方針を変更し、同年の参議院選挙では大勝した。
2006年自民総裁選で、谷垣禎一財務相は「2010年代には消費税を10%にする」「社会保障目的税化」と表明した。同選挙で当選した安倍晋三官房長官(当時)は消費税議論に関しては明言を避けていた。
2007年(平成19年)、テレビ番組に出演した 安倍首相は「消費税を上げないと言ったことはない」「税制の抜本改革は近いうちに信を問うことになっている(=国民に審判を仰ぐ)」と税率を上げる可能性があることを示唆した。直後には、「出来るだけ上げないように努力する」と発言している。
同年10月、内閣府直属の経済財政諮問会議が「財政を黒字化した上で医療・介護給付の水準を維持するためには2025年度に約14-31兆円分の増税が必要となり、消費税でまかなうなら11-17%まで税率を引き上げる必要がある」と現行と比べて最大12パーセント消費税率を引き上げる可能性がある試算を公表した。
2008年(平成20年)10月30日、麻生太郎首相は消費税率について、「大胆な行政改革を行った後、経済状況を見た上で」と断った上で、「3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と述べた。また、2009年(平成21年)2月3日には衆院予算委員会で、生活必需品などに配慮する複数税率についても言及。
2009年(平成21年)の第45回衆議院議員総選挙では、自民党は「景気回復後に消費税引き上げ」と公約、一方、民主党の鳩山由紀夫代表は「4年間は引き上げず、議論もしない」と公約した。選挙の結果民主党が圧勝し、自民党は大敗して下野した。
2010年(平成22年)6月18日、就任間もない菅直人首相は民主党本部に主要閣僚を呼び、福祉財源獲得のために消費税を、谷垣総裁率いる自民党が2010年(平成22年)の第22回参議院議員通常選挙で公約したのと同じ10%まで引き上げる案を提示。同時に年収400万以下であれば納税額を全額還付する方式や食料品に低めの税率(軽減税率)を設定するなど低所得者への配慮を盛り込むことを主張した。また鳩山前首相の「4年間は引き上げない」といった公約を撤回し、最速の場合は2012年(平成24年)の秋にも増税を実施するとした。これに対し日本総研は社会保障の機能を強化するためには10%では足りないとの試算している。
消費税を導入した直後に行われた1989年(平成元年)の参議院選挙で宇野内閣を構成する自民党が、5%増税後に行われた1998年(平成10年)参議院選挙で橋本内閣を構成する自民党が、10%増税論議となった2010年参議院選挙では菅内閣を構成する民主党、国民新党がいずれも惨敗している。このように、消費税率の引き上げ問題は近年では(1989年以降参議院では政権与党が単独で過半数を維持していないため)ねじれ現象を起こし政治空洞化の遠因となっている。
2011年(平成23年)
1月 内閣改造を行う。菅首相は2011年(平成23年)半ばまでに消費税引き上げ問題に関する結論を出すと表明している。また、たちあがれ日本を離党した増税論者である与謝野馨を閣僚に登用するなど増税路線を明確にした。菅総理は、社会保障と税制の一体改革について「6月までに成案を得る」と表明で説明。「消費税(率)引き上げを実施するときには国民の審判を仰ぐと従来言っており、その方針に変更ない」と述べた。
6月30日、政府・与党は「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」ことを決定。国民新党は会議で反対したが打ち切られ、同じく反対した与党会派の新党日本は議事録がとられなかったとしている。また内閣府は同年5月、逆進性対策としての食料品への軽減税率適用は「他の手段による対応に比べ、効果が小さいという見方が一般的」だとして、否定的な見方を示した。
9月19日、野田佳彦総理は消費税増税は社会保障の財源確保のために行うべきであり、東日本大震災の復興財源を確保するための臨時増税からは除外する考えを示した。また同年6月の菅内閣による増税案について民主党は、2013年10月に7-8%、2015年度中に10%とする案を軸に検討し政府の合意を得る方針。同総理はフランス・カンヌで始まったG20首脳会議の場で(2011年11月3日午後、日本時間同日夜)、「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」と表明し、関連法案を2011年度内に提出すると明言した。
12月30日、民主党税制調査会は社会保障と税の一体改革に伴う消費税率の引き上げについて、当初原案(2013年10月に8%、2015年4月に10%)で示した増税時期を半年先延長させ、「2014年4月に8%、2015年10月に10%とする」ことで決着。党として一体改革の税制部分の素案が決定した。
2012年(平成24年)
2月17日、政府が消費増税を柱とした税と社会保障の一体改革の素案を大綱として閣議決定した。
3月30日午前、政府は消費税率引き上げ関連法案を閣議決定した。
6月15日夜、民主党・自民党・公明党は消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の修正で合意した。社会保障制度改革は事実上先送りされた。
6月21日、民主党・自民党・公明党の幹事長が会談を行い、先に実務者間の協議によって合意に至った項目について、あらためて誠実に実行することが確認され、三党合意が成立した。
6月26日、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案が衆議院本会議で採決され、民主党・国民新党・自民党・公明党の賛成多数で可決された。なお、民主党から57名の反対、16名の棄権・欠席者が出た。
7月19日、消費増税法案を巡る参議院の審議で、安住淳財務相は新聞の社説を根拠に消費増税の必要性を訴えた。
8月10日、同法案が参議院本会議で採決され、民主党・国民新党・自民党・公明党の賛成多数で可決・成立した。なお、民主党からは数名の反対・欠席者、自民党及び公明党からは数名の棄権・欠席者が出た。
8月22日、同法が公布された(平成24年法律第68号)。
2013年(平成25年)
1月4日、安倍晋三首相は、年頭記者会見での質問に対して、「消費税の引き上げの実施については、4-6月の経済指標を含め、経済状況を総合的に勘案して判断をしていく」と述べた。
4月19日、麻生太郎財務相は、ワシントンで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議の記者会見で「予定通り消費税を引き上げる決意を説明した」と述べ、消費税増税を国際社会に公約し財政再建をアピールした。
8月8日、8月23日、消費税率引上げに係る経済状況等の総合的勘案の参考とするため、幅広く国民各層の有識者・専門家を招いて集中的に意見を伺うべく、「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」を同年8月26日から同月31日まで総理大臣官邸で開催することとされた。なお、有識者・専門家には、学者やエコノミスト、首長ら計59人が選定されたが、後日、横倉義武日本医師会会長が追加された。
8月28日、甘利明経済財政・再生相は消費増税の影響を巡る集中点検会合後の記者会見で、消費増税賛成の意見が多くなっていることについて「なるべくバランス良く(賛成派と反対派の)人を入れようと相談したが、人選をしていく中で反対派の対象者が少ないことは実感した」と述べた。
8月31日 政府の「集中点検会合」は最終日の議論を終え、7回に及んだ会合で計60人の有識者が意見表明、予定通り増税を容認したのは7割超の44人で、増税時期の先延ばしや税率上げ幅の変更などの見直し案は11人、増税反対は3人で、2人は賛否を明確にしなかった。
自民党の石破茂幹事長は、消費増税について、「引き上げは党として決定している」と述べた。
9月3日 安倍首相は、甘利明経済財政・再生相から「集中点検会合」の報告を受け、消費増税について、「判断は10月上旬にする」と表明し、10月1日に日本銀行が発表する全国企業短期経済観測調査(日銀短観)を「最後の経済指標として確認したい」述べた。なお、10月1日には、日銀短観の他、完全失業率、有効求人倍率、家計調査、毎月勤労統計調査(賃金の動向)の8月分結果も公表され、同日までに主要な経済指標の最新結果が出そろう。
自民党の高市早苗政調会長と野田毅税制調査会長は、国会内で会談し、消費増税に関する党内ヒアリングを9月9日に実施することで一致、政府から消費増税の影響を検証する集中点検会合の報告を受け、出席者から意見を聞き取るが消費増税はすでに党議決定済みとして意見集約はしない方針を示している。
9月8日、安倍首相は、2020年夏季五輪・パラリンピックの東京開催決定が消費増税の判断に与える影響について、「直接、関係はない」と述べた。さらに、(消費増税は)経済情勢を見極めてこの秋に判断していくという方針に変わりはないと示した。
9月12日 朝日新聞、読売新聞、共同通信、時事通信、中日新聞、東京新聞、夕刊フジなどは、安倍首相が消費税率を予定通り2014年4月に8%に引き上げる意向を固めたと報じた。
菅義偉官房長官は記者会見で、安倍首相が消費税率を予定通り2014年4月に8%に引き上げる意向を固めた、との一部報道に関して「首相が決断したという事実はない」と述べた。
ロイター通信は、政府が2014年4月に消費税率を8%へ予定通りに引き上げる方針を固めたと報じた。
9月13日、毎日新聞・スポーツニッポンは、安倍首相が2014年4月に消費税率を8%に法律通り引き上げる方針を固めたと報じた。
9月16日、読売新聞は、安倍首相が消費税率を2014年4月から予定通り8%に引き上げる意向を固めたと報じた。
9月18日、産経新聞は、安倍首相が消費税率について、2014年4月に8%に引き上げることを決断したと報じた。
9月20日 フジテレビは、安倍首相が消費税率を2014年4月に8%に引き上げる意向を固めたと報じた。同日、朝日新聞は安倍首相が消費税を2014年4月に8%に引き上げることを決断した報じた。
菅官房長官は記者会見で、2014年4月からの消費税率引き上げを安倍首相が決断した、との報道について「総理ご自身がもう決断したということは私はまったく聞いていない」と述べた。
9月21日、NHKは、安倍首相が消費税率を2014年4月から8%に引き上げることを10月1日に表明する見通しとなったと報じた。
9月22日、時事通信は、安倍首相が10月1日に8%への引き上げを正式表明する方針と報じた。
9月23日、読売新聞は、安倍首相が10月1日に消費税率を8%へ引き上げることを発表する方針と報じた。
9月24日、安倍首相は「消費税を引き上げるかどうか決めていない」と同行記者団に語った。
9月25日、時事通信は、安倍首相が消費税率を予定通り、2014年4月に8%へ引き上げる方針について、10月1日午後6時から記者会見をして正式に表明すると報じた。
9月30日 産経新聞は、安倍首相が10月1日夕に記者会見を行い、消費税率を2014年(平成26年)4月から8%に引き上げることを表明すると報じた。
共同通信は、政府が「消費税率を2014年4月1日に8%へ引き上げることを確認する」と消費税増税に関する閣議決定案に明記したとし、安倍首相は10月1日夕に記者会見し、増税方針を説明すると報じた。
10月1日午後、安倍首相は、官邸で開かれた政府与党政策懇談会で、2014年4月に消費税率を8%に引き上げると表明し「経済政策パッケージの実行により、消費税率を引き上げたとしても、その影響を緩和することができ、日本経済が再び成長軌道に、早期に回復することが可能と考えている」と述べた。同日、安倍首相は、首相官邸で記者会見し、2014年4月から消費税率を8%に引き上げる決定を発表し「社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するために財源の確保は待ったなし」と述べ、増税に理解を求めた。
2014年(平成26年)
4月1日、消費税率が8%に増税。
7月22日、麻生副総理兼財務相は、横浜市内での講演で、2015年10月に予定されている消費税率10%引き上げについて「財政再建にはあと2%増税をやらなければならない」と予定通り行うべきだと強調し「(安倍政権は)約束したことを実行することで信任を得ている。将来はよくなるという確信のもとに、国民の信頼を得ている」と述べた。
9月13日、自民党の谷垣禎一幹事長は、消費税率10%への引き上げについて「上げなかった時のリスクは打つ手が難しくなる」と述べ、予定通り実施すべきだとの考えを示した。
11月14日、東京新聞は、安倍晋三首相が2015年10月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げを延期し、一年半後の2017年4月からとする意向であることが分かったと報道した。
11月18日、安倍晋三首相は記者会見で、消費税再増税の先送りを正式に表明した。 
 
●メディアが報じない「消費税のカラクリ」 2016/9
「もっともシンプルで、公平な税制度」──しばしば、そんなふうにも説明される「消費税」。安倍政権は今年6月に増税の延期を発表しましたが、「増税」そのものについては、「いっそうの高齢化社会に向けて、社会福祉の財源を確保するためにはやむを得ない」というのが一般的な認識ではないでしょうか。しかし、ジャーナリストの斎藤貴男さんは、これに真っ向から反論します。「消費税は、まったくシンプルでも公平でもない、『弱い者いじめ』の税制度だ」──その理由をうかがいました。
消費税は「常に弱い者に負担が行く」不公平な税制度
編集部 安倍政権は今年6月、消費税の税率10%への引き上げを2019年10月まで約2年半延期すると発表しました。斎藤さんは以前から消費税増税に強く反対するとともに、『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)というご著書などで、消費税の仕組み自体の「おかしさ」についても指摘されていますね。
斎藤 本を出してから6年になり、もう6刷で累計3万5千部と今どきにしてはけっこう売れています。しかし、書評もまったくしてもらえません。新聞も雑誌も、この問題についてはほとんど書かせてくれないですね。もちろん、増税反対の論調は時々載るけれど、僕が本で書いているような、そもそも消費税は仕組みとしておかしい、という話はいっさい載らないんです。最たる例が、「消費税は、実は転嫁できない、弱い者が自分で負担するしかない税制だ」という話です。
編集部 どういうことでしょう?
斎藤 多くの人の理解は、消費税というのは消費者が何かものを買ったときに払うもので、お店の人は代金と一緒に税金分を預かってそのまま納める、というものだと思います。だから、本来なら税率が上がったら、小売業者はその分を売値に転嫁して、税込み価格を上げないといけないわけです。でも、今のように安売り競争が激しい中で、「消費税率が上がったから」といって、本当に値上げができるでしょうか。運賃や光熱費などの公共料金は政治的に決まるから、増税されればその分を上乗せして値上げ、となりますが、一般の商品やサービスの値段は市場原理で決まるわけで、近くに激安スーパーがあるのに「増税されたから値上げします」とはなかなか言えません。結果として、売値は据え置き、でも年間売り上げ1000万円以上の業者には納税義務はあるから、小売業者が自腹を切って納税するしかない──ということが、あちこちで起こるわけです。しかも、ややこしいことに財務省などに言わせれば、これは「増税分はきちんと転嫁できている」ことになるんですね。
編集部 えっ? だって、売値は上げられていないわけですよね。
斎藤 でも、自腹を切ってでもなんででも、増税分はきちんと「納めている」わけだから。つまり、実質上は小売業者が単に自分の利益を削っているに過ぎないんだけど、帳簿上は無理矢理「本体価格を値下げして」転嫁した、という扱いになるんですよ。たとえば、本体価格1000円のものなら、5%のときの消費税は50円ですね。それが8%に増税されたら80円になるので、本来の税込み価格は1050円から1080円になるわけだけど、値上げができないのでそのまま1050円で据え置いたとする。でも税金は80円に見合った金額を払わないといけないから、その差額は小売業者が自腹を切って払うしかない。この場合、帳簿上は「本体価格を値引きして972円にして、そこに消費税8%分を乗せて1050円で売った」という計算になるわけです(※)。
※消費税8%のときの税込み価格は(本体価格×1.08)円で表せるので、税込み価格を1050円にする場合、本体価格をX円として、以下の計算式が成り立つ。X円×1.08=1050円、ゆえにX=972・2222… 。つまり、本体価格1000円のものを税込み1050円で売った場合、帳簿上は本体価格を972円に値引きし、そこに消費税8%(78円)を乗せて販売した、という計算になる。
編集部 消費税はちゃんと8%分もらっているから、転嫁できているじゃないか、という理屈ですね。でも、実際には小売業者の利益が削られているわけで、そんなことが長続きするとは思えません。
斎藤 だから、消費税というのは納税義務者の滞納がすごく多いんです。これは国税庁のホームページにも出ているデータですけど、国税の滞納額全体のうち、60%近くが消費税なんですね。国税収入のうち消費税が占める割合は25%くらいに過ぎないのに、これはどう考えても異常です。消費税というのは、法人税や所得税とは違って、利益ではなく取引にかかるので、利益が上がらず赤字になったときでも払わなくてはならない。だからみんな自腹を切って払うわけですけど、その余裕もなくなれば滞納するしかないですよね。そうした「払おうにも払えない」人がたくさんいる、無理のある税制が消費税だということなんです。いわば、中小零細企業いじめと言ってもいい。
編集部 消費税が上がると、倒産する中小企業が増えるというのはそういうことなんですね。そして、そんなに滞納者が多いのなら、税制としても失敗というべきではないでしょうか。弱い立場の人に負担を押しつけている、という気がします。
斎藤 今お話ししたのは、どちらかといえばデフレ状態で値上げができないときの話ですけど、逆にある時期やある商品が非常に売り手市場で、少々値上げしても大丈夫だという状況のときは、当然ながら買い手である最終消費者が増税分を負担することになるし、どちらにしても、「弱いほうが負担する」ことには変わりがありません。財務省はよく、消費税は広くて薄くて公平で中立な税制だみたいなことをいうけど、「広く薄く」はともかく、全然公平でも中立でもないんですよ。夏の参院選で自民党が圧勝したのは、増税延期をありがたがった中小零細企業の人たちがそっちに流れたというのもあるんでしょうが、そもそも増税を決めたのは政府ですよね。それなのに「増税を延期してくれた」と喜ぶのは、さんざんナイフで突きまくられたのに、最後の一撃を心臓に食らう前に手を止めてくれたからと、相手に感謝するようなものだと思います。
消費税が「社会保障の財源になる」のは本当なのか
編集部 一方で、増税延期についての是非はともかく、増税自体や、まして消費税そのものに正面から反対する人は決して多くはないですよね。「大変だけどしょうがない」という感じで…もちろん、お話しいただいたような問題点が知られていないということもありますが、「社会保障の財源にするための増税」という認識が強いことも一つの理由ではないでしょうか。
斎藤 そこがまた厄介な点で。いわゆるリベラルといわれるような人でも、むしろ消費税増税には賛成だったりするんですよね。僕自身は、仮に本当に全額社会保障に使われるとしても、今お話ししたような「弱い者いじめ」の税制はおかしいだろうと思うので反対ですが、もし仮にちゃんと実行されるのであれば──たとえばスウェーデンのような福祉国家を目指すから、税制もスウェーデンをマネするんだというのなら、それはそれで筋は通っていなくもないかな、とは思えます。それでも単純すぎるぐらいですけれど。でも、税率だけはどんどん上がるのに、「スウェーデンのような高福祉国家を目指すんだ」なんて、政治家は誰も言わないでしょう?
編集部 たしかに、「スウェーデンは素晴らしい」という話はあっても、「日本もああするんだ」という話は聞いたことがないかも。
斎藤 数年前にも、読売新聞の一面に「いかにスウェーデンの福祉社会が素晴らしいか」という記事が載っていました。スウェーデンにおける消費税である「付加価値税」が非常に社会福祉に役立っており、高負担でも国民は納得している──という内容で、日本とヨーロッパ各国の消費税率を比較したグラフを示して、「それに比べて日本の税率はまだまだ低い」というんです。でも、別に政府は「スウェーデンのような社会福祉国家を目指す」なんて一言も言ってないんだから、インチキこの上ない記事ですよ。むしろ、どんどん社会保障は削られてアメリカ型の社会になっていっているのに、消費税の話をするときだけスウェーデンを持ち出すのはどう考えてもおかしいでしょう。それをいうなら、アメリカには合衆国レベルでの消費税は存在しないんですから。一見似たような税制はありますが、それは小売段階にしかかからない、しかも州単位の地方税です。そもそも「社会保障の財源のために増税」という話にも、カラクリがあるんです。たしかに、消費税引き上げを決めた2012年の三党合意の時点では、「増税分は全額社会保障に充てる」という附則が、税制改正法に明記されていました。ところが、5%から8%への増税後、初年度(2014年)の税収は5兆円増えたにもかかわらず、社会保障費は5000億円、つまり増えた税収の1割分だけしか増額されなかったんです。
編集部 「増税分は社会保障に充てる」んじゃなかったんですか?
斎藤 ところが、これも政府に言わせれば「増税分はきちんと全額社会保障に充てた」ことになる。というのは、増えた税収5兆円のうち5000億円を除いた残りはどこに行ったかというと、それまで別の財源を充てていた社会保障施策に使われたんですね。つまり、新しく増えた分はたしかに全額社会保障に使われたけれど、一方でこれまで社会保障に使われていた分の財源を、別の用途に使っちゃったわけです。たしかに、「増税分を社会保障に充てる」とは言ったけど、「今社会保障に充ててる財源はそのままで」とは一言も言ってないから、嘘ではない、という理屈ですね。
編集部 えーっ。詐欺! と言いたくなります。
斎藤 今だって、10%への増税延期で低年金・無年金の人たちへの救済措置が先送りになるとか言われていますけど、本来なら8%に増税した時点で、それくらいどうにかするのが当たり前でしょう。もともと社会福祉に使っていた分を他に回したからいけないのであって、「年金生活者の生活」を口実にさらに増税しようというのはひどい話ですよ。こんな与太話に騙される国民もどうかと思うし、政府の言い分をそのまま伝えたマスコミに至ってはもう、犯罪だと思いますね。ここまでお話ししてきたような話は、消費税の「イロハのイ」みたいなものなんだけど、それさえもまったく報じないんだから。
源泉徴収制度の起源は「戦費調達」!
編集部 報じないメディアの責任についても後ほどうかがいたいのですが、それだけではなくて、私たち自身がまず税の問題にそれほど関心がない、という問題もあるように思います。「なんだか難しそう」だからまあいいや、と流してしまったり…。
斎藤 そうなんです。誰かに話をする機会があっても、「消費税は転嫁ができなくて…」とか説明しだすと、それだけでもうなかなか聞いてもらえない(笑)。
編集部 でも、自分たちの生活に直結する問題ですよね。
斎藤 そのとおりです。たとえば、「交通費込み」の給料で働いている派遣労働の人などは、自分で確定申告して交通費を経費として申告すれば、源泉徴収されたうちの結構な額が返ってくるはずなんですよ。でも、確定申告の仕方や仕組みなんて学校でも教えないから、それさえ知らない人が多い。結果として「取られ損」になっちゃってるんです。一方で、正社員の人たちは所得税の納税なども全部会社任せだから、なかなか興味も持てないし。僕だって、新聞社に勤めてたときはほとんど興味がなくて、庶務課から「生命保険の控除証明を持ってきたら還付金がありますよ」とか言われても「めんどくさい」というだけの理由で何もしなかったくらいですから。
編集部 それが、会社を辞めてフリーになって変わられた。
斎藤 もう、なんとか経費として認めさせようと、必死に領収証を集めるようになりましたね(笑)。それに一時期、年収が1000万を超えて課税業者になったことがあって、そうすると自分が消費税を納めなきゃいけないでしょう。それなのに、原稿料とか印税収入とかに消費税の分を上乗せしてくれない出版社などがいくつもあったんですよ。つまり「転嫁できていない」という状態ですよね。「原稿料は消費税分を払ってもらってないのに、僕は納めなきゃいけない。これっておかしくないですか」と税理士さんに聞いたら、「おかしいよ。だけどそういうおかしな税制を国会で通しちゃったのが日本国民なんだから、しょうがないだろう」と言われて。それが消費税の仕組みのおかしさに気がついた最初ですね。
編集部 会社員も、全員自分で確定申告をするというシステムになれば、少しは関心が高まるのかもしれません。
斎藤 まったく違うでしょうね。グローバルスタンダードでいえばそれが当たり前。アメリカだってイギリスだって、みんな自分で申告していますよ。ちなみに、源泉徴収や年末調整の制度は、もともとはナチスドイツが戦費調達のために発明したものなんですよ。
編集部 そうなんですか! 取りっぱぐれがないから、ということですね。
斎藤 日本も、日中戦争のさなかの1940年に源泉徴収だけを導入して。年末調整はないまま、「取りっぱなし」の制度でした。それで敗戦後に「日本の税制はあまりに封建的だ。ちゃんと市民一人ひとりが自分で確定申告をするのがデモクラシーだ」と、GHQにさんざん批判されたんです。大蔵省はかなり抵抗したけれど、最終的には折れるしかなかった。そのときに、バーターとして導入されたのが年末調整なんです。史料によると「日本人はバカだから、自分たちで申告なんてできない。そんなことしたらみんな脱税をする」という意味の主張を日本側がしたんですよ。敗戦まではずっと「日本人は世界一優秀だ」と言ってたのにね(笑)。
編集部 それがそのまま、今でも続いているんですか。
斎藤 本家本元の西ドイツは、戦後に選択制を導入しました。つまり、会社にやってもらうこともできるけど、確定申告を自分でしたい人はそうできる、と。日本は今も、正規雇用の会社員の場合、年収が2000万円以上の人や2カ所以上の会社から給与を得ている人、あとは家を買ったなどの特別な事情があるときしかできませんからね。本当は、これだけ非正規労働者が増えているんだし、ユニオンなどが主導して「確定申告運動」みたいなのを始めてもいいと思うんだけど。さっき言ったように、交通費の分を申告するだけでもかなりの金が戻りますから、影響力は小さくないと思います。  
 
●「報道の自由」と軽減税率の危ない関係 2016/9
新聞への軽減税率適用。 何が問題なのか
編集部 さて前回、消費税制度の「おかしさ」とともに、それについてまったく報じてこなかったマスコミの責任にも言及されましたが、それと深く関連するのが、生活必需品など一部の商品に標準の税率よりも低い税率を適用する「軽減税率」の問題です。昨年12月の閣議決定では、酒類・外食を除く飲食料品と並んで、新聞の定期購読料が軽減税率の適用対象とされましたが、斎藤さんはこのことを厳しく批判されていますね。
斎藤 マスコミの現状については、言いたいことがたくさんあるのですが(笑)、中でもきわめて重要で、かつほとんど知られていないのが、この軽減税率の問題です。閣議決定のとき、マスコミは食料品への軽減税率適用についてはかなり詳しく報道しました。外食は適用対象外だけど、じゃあコンビニの飲食スペースはどうなんだとか、テイクアウトで頼んだけど席が空いたから食べて帰ることにしたケースは、とか…。一方で、新聞への適用については、文化人を使った広告などで「新聞は活字文化の中心だから」「日本人の知的水準を維持するために必要だ」といった主張を繰り返すばかりでした。僕も活字の世界で食べている人間ですし、そうした主張にまったく共感できないわけではありません。ただ、それでも今回の新聞業界のやり方には、大きな問題があると考えています。
編集部 新聞の読者としては、増税されても購読料が高くならないならありがたい、とも思ってしまいそうですが…。具体的に、何が問題なのでしょうか。
斎藤 最大の問題は、権力に報道内容に干渉する余地を与えることです。日本新聞協会は、1989年の消費税導入のときから、一貫して「軽減税率の適用」を要求してきました。いわば政権与党、とりわけ税制調査会への「おねだり」を続けてきて、それが今回通ったわけですが、常識として強いものにお願いをするときには、何か「お礼」をしなきゃなりませんよね。
編集部 どういうことでしょう?
斎藤 「新聞は活字文化の中心だから」というけれど、あらゆる業界はそれぞれ何らかの存在意義をもっているからこそ存続しているわけです。どこの業界だって、「うちは重要だから軽減税率にしてくれ」と主張しますよね。食品みたいに「買えないと死んでしまう」ような分かりやすいものだけではなくて、たとえば「過疎地では自動車がないと生活できない」とか「ラップは食品を売るときの必需品だから、同じように軽減すべきだ」とかいう主張だってできるわけです。そう考えると、これは「どこの会社が」というのではなくて一般論ですが、あらゆる業界が永田町や霞ヶ関に日参し、さまざまな「バーター」を提案しに行くということになるに決まっている。その中で、業界としては大きいといえない新聞を優遇するんだったら、お金とか天下りとかよりも、「おまえのところの新聞の論調はどうにかならないか」という話に当然なりますよね。僕が安倍政権の人間だったらそう考えます。
編集部 「軽減税率を適用する代わりに、政権批判は控えろ」とか…。
斎藤 最近、新聞の「首相動静」の欄などで明らかなように、マスコミ各社幹部が首相としばしば会食していることが指摘されていますが、そこでこの軽減税率とその「バーター」について話し合われてきた可能性はきわめて高いと思っています。今回の増税延期で、軽減税率の適用も延期になったわけですけど、これはいわば「鼻面にぶら下げられた人参」が逃げていったようなもの。であれば、その人参をポイッと捨てられてしまわないように、人参がもらえるまでずっと言うことを聞きます、ということになるんじゃないか。
編集部 そうなると、メディアの重要な役割であるはずの「権力の監視」なんて、できるはずがないということになってしまいますね。ただ、新聞に軽減税率を適用するというのは、ヨーロッパなどでも一般的だと聞きます。
斎藤 新聞協会も、軽減税率適用の根拠としてその話を挙げています。それはたしかにそのとおりで、特にイギリスでは、新聞だけではなくすべての出版物が「ゼロ税率」なんです。ただ、そこに至る経緯は日本とは大きく違っています。イギリスでは18世紀、新聞というメディアが初めて現れて勃興したときに、それによって市民が知識をつけることに危機感をもった政府が、厳しい弾圧をしたんです。そしてその一環として、税の仕組みを変えて新聞に重い課税をしようとした。それに対して市民社会が「自分たちに知識や知恵をくれる新聞を弾圧するなんて、ふざけるな」と声をあげて。チャーチスト運動(※)の中心人物なども加わり、何人も投獄されるような事態になりながら、150年くらいかけて勝ち取られたのが、現在の「出版物ゼロ税率」なんですよ。
※チャーチスト運動…英国で1830年代後半に起こった、労働者階級の普通選挙権獲得運動。世界最初の労働者による組織的政治運動といわれる。
編集部 新聞社ではなく、読者からの声によって実現した制度なんですね。
斎藤 だから、それに倣うというのであれば、同じように読者の、市民社会の支持があって初めて、「軽減税率を適用してくれ」という資格があるのであって。どこからも求める声があがっていないのに、自分たちだけで「我々は日本の文化の中心だ」みたいなことを主張するのはまったく話が違うと思うんです。
編集部 ちなみに、新聞だけではなく出版業界からも軽減税率適用を求める声が上がっているそうですが…。
斎藤 こちらは、主に有害図書の扱いをどうするかがネックになってペンディングの状態になっています。たしかに、アダルト本は除くなどのある程度のゾーニングがないと一般的に理解は得られないでしょうが…。ただ、こうした「線引き」は非常に危険なものでもあります。業界内だけでやっている間はいいのですが、税制などにからめてしまうと「この記事はいいけどこっちはダメ」と、権力に口を出させる余地を与えることになる。ある雑誌に掲載される記事が気に入らないから、巻頭グラビアのヌード記事を口実にして取り締まるなんてこともできるようになってしまいます。もちろん、権力がなんだってけちを付けようと思えばいつでもできるんですけど、わざわざその種をこちらから与えているようなものではないでしょうか。
「メディアであること」よりもビジネスを優先させてきたマスメディア
編集部 消費税以外の問題についても、マスメディアの「萎縮」ムードは顕著です。
斎藤 NGOの「国境なき記者団」が発表する「報道の自由ランキング」の2016年版で、日本は72位でした。2010年には11位でしたから、この落ち方はすさまじいとしか言いようがありません。その後、国連人権委員会特別報告者のデービッド・ケイ氏が来日して記者会見し、日本における報道の自由や表現の自由への懸念を示しました。このとき指摘されていたのが、「高市発言」(※)に象徴される安倍政権からの圧力、そして特に3・11以降に広がるメディアの萎縮ムードです。マスコミ業界の人間はどちらかというと「政権からの圧力」を強調したがりますし、それは僕も事実あると思いますが、それだけで片付けてしまうのには不満がありますね。
※高市発言…2016年2月の衆院予算委員会で高市早苗総務大臣が、テレビ局が「政治的公平性」を欠く放送を繰り返し、行政指導にも応じなかった場合、放送法違反を理由に電波停止を命じる可能性に言及したことを指す。
編集部 というと?
斎藤 現政権が特にひどいというのはあるとしても、権力というのは常にそういうもの、メディアに対して圧力をかけるものでしょう。それをいまさらどうこう言っても始まらないし、そんなことで萎縮してしまうんだったらプロじゃない。圧力がかかったときこそ記者クラブなどで団結して、抵抗するのがメディアの職責だろうと思うんだけど、全然そうはならないんですよね。これは、メディアがメディアであるよりも、企業であること、つまりビジネスを最優先させてきた結果。消費税のおかしさについて誰も報道しないのも、一つには記者もサラリーマンで関心がないからでしょうけど、仮に「おかしいな」と思った記者がいても、経営的には書かせたくないので書かせてもらえないということもあると思います。
編集部 政府からの圧力だけではなく、読者からの批判──罵声罵倒に過ぎないものも含め──に対する耐性も非常に弱くなっているように感じます。
斎藤 本来、メディアなんて批判されて当たり前のはずですよね。15年くらい前、朝日新聞社の月刊誌『論座』に原稿を書いていたときに、ある編集者がやたら「こんなこと書いたら『諸君!』に何て書かれるか」と気にしていたことがあって、「バカじゃないか」と思っていたんだけど(笑)。最近では、ネットでの反応をすごく気にするようになっていて。「何を書かれるか」と心配するというよりも、「ちょっとでも危なそうなテーマはやらない」という感じになってきていますね。耐性がないにもほどがあると思います。
編集部 2014年に特定秘密保護法が施行されたときにも、「これでますます報道の自由が制限される」と懸念の声がありましたが…。
斎藤 もちろんそれはあるでしょうが、本当に「特定秘密保護法違反だ」といって逮捕されるような記者がいればたいしたもんだと思いますよ。僕にもできないから言えた義理ではないけれど。実際にはいないから問題なのであって。僕は、もしこれから権力批判の報道をしたことが理由で逮捕されて有罪になるような記者がいれば、業界で賞金を出せばいいと思っています(笑)。法律に触れたのは事実だから刑には従うけど、メディアにはそれとは違う価値観があるんだから、ということです。今は、政治家相手に隠し録りをすることもすべて問題視されたりするけれど、そんなのはばかばかしいですよ。極端に言えば、権力の犯罪を暴くためなら、権力に対しては何をしたっていいとさえ、僕は思っています。それがジャーナリストの義務なんですから。
ジャーナリストの存在意義は「強いものに立ち向かう」こと
編集部 ちなみに斎藤さんご自身は、どんなきっかけでそのジャーナリストという仕事を選ばれたのですか?
斎藤 僕は、もともとはなんの志もありませんでした(笑)。僕の家は東京の池袋にあった鉄くず屋だったんです。親父は明治生まれで、丁稚奉公に来てそのまま婿入りした人。戦後にシベリアに送られて、昭和31年の末に帰ってきて、その翌々年に僕が生まれました。そんなわけで、僕もずっと「中学出たら地方の鉄くず屋に丁稚奉公に行って、帰ってきたら後を継げ」と言われて育ちました。僕もそのつもりだったんだけど、いざ中学を出るときになったら、高校全入時代だったし、まだ働くのは嫌だなあ、と思って。「よりよい商人になるために」という口実で、高校、大学と進学させてもらったんです。
編集部 じゃあ、卒業後はお父様の後を継ぐ予定だった…。
斎藤 ところが、その親父は僕が20歳のときに亡くなり、店もたたんでしまったので、後を継ぐ必要がなくなっちゃったんです。それで卒業前に、一度は一般企業に内定をもらったんですが、なぜか途中で連絡が途絶えてしまった。こちらから連絡したら「君は内定取り消しだ」って言われて。理由も教えてもらえませんでした。後日、ジャーナリストになってから、ネタ元だった公安のおまわりさんに何気なくこの話をしたら、「そりゃ、シベリア帰りのせがれが普通の会社に入れるわけはないよ」と笑われました。シベリア帰りの人間は基本的に、全員ソ連のスパイだという扱いをされるのだそうです。
編集部 ええ?
斎藤 「いや、親父はたしかにシベリア帰りだけど、小学校しか出てない男なのに、どうやってスパイなんかできると思うんですか」と言ったら、「いや、そういう下層階級の出身だからこそ、国家に対してルサンチマンがあると我々は考えるんだ」。なるほどなあ、と思っちゃいました。それでともかく、別の職を探さなきゃいけないというので、一般企業より少し試験の遅かったマスコミを受けることにしたんです。もともとジャーナリズムには憧れがあったし…結果、産経新聞にだけ受かって、その系列の「日本工業新聞」に入社することになりました。そこで「鉄くず屋のせがれだから」という理由で、「鉄」を担当することになったんです。最初は、せっかく経営者にアポイントを取っても、何を聞いていいか分からなくて黙り込んじゃうようなこともありましたが、1年もやっていると業界の「事情通」みたいな感じになってくる。そうしたら、やたら接待を受けるようになって、「これはまずい」と思ったんです。
編集部 というと?
斎藤 僕はまだ20代前半の若造なのに酒席で、もう還暦を過ぎた大企業の重役が「斎藤さん、お流れをください(目上の人に酒を注いでもらうこと)」って正座して、頭を下げてくるんですよ。こんなことをずっとやってたら人間が腐る、と思って。それで配置換えを希望したんだけど通らなくて…つてをたどって「週刊文春」に入れてもらったのが、ジャーナリズムの世界のもろもろを考えながら仕事をするようになった最初です。
編集部 そこから、一貫して権力批判を続けてこられて…。
斎藤 それは、いろんな問題を追いかけるうちに、せざるを得なくなったというほうが正しいですね。ジャーナリストというのは、つまるところ強い者に立ち向かうという点にしか存在意義がないと思うんですよ。特に、今はこれだけのネット社会でしょう。かつては、企業の新製品発表とか行政や警察からのお知らせなどを載せて広く知らせるのもメディアの役割だったけど、今はそれぞれがネットで直接発信できてしまうから、そんな必要もなくなった。その中で、メディアが生き抜いていく余地があるとしたら、それはやっぱり調査報道でしかないと思うし、僕もそれを着実にやっていくしかないと思っています。