一帯一路の挫折

中国 一帯一路の挫折
お金がなくなりました

日中関係
日米関係
中国は一党独裁の国


 
 
 2018/11

一帯一路協力は「自己責任」 
 中国の技術覇権を米が警戒 日本はカントリーリスク見直しを
先の日中首脳会議では、「一帯一路」に日本が協力すると報じられた。だが、これは中国側の説明だ。マスコミによっては、本邦企業に中国進出を推してきた経緯もあるので、注意して読む必要がある。
安倍晋三首相の訪中に500人以上の日本の財界人が同行したことは、習近平国家主席を満足させただろう。中国側の発表では、「一帯一路を共に建設することは、中日協力の新たなプラットフォームとなる」と語ったという。
一方、安倍首相は「開放性や透明性という国際社会共通の考え方を取り入れることを期待する」とクギを刺し、一帯一路という言葉を避け、「第三国民間経済協力」と述べた。
今回の日中首脳会談にあたり、安倍首相はトランプ米大統領と事前協議しているはずだ。
米中貿易戦争は、いまや単なる経済紛争の枠を超えて安全保障を含めた覇権争いになっている。ここで、中国との距離感を間違うと日本政府も大変な目に遭う。
これまで筆者は、政府としてはできるだけ一帯一路にコミットせずに、あくまで民間の自発的な行動になると説明してきたが、今回の訪中もその通りだった。米国の対中国戦略を意識していたからだ。
民間の自発的な参加というのは、企業の自己責任という意味だ。もし民間企業が参加して、米国に敵視され報復されても、それは自業自得ということになる。投資活動なのだから、それが海外の第三国であっても企業の自己責任というわけだ。
特に日本の民間企業は技術水準が高く、軍事技術に転用可能なものも少なくない。米中貿易戦争で、当初から米国は中国の知的財産の収奪に焦点を当てているが、それは中国が技術で覇権を持つことを許さないという米国の意志である。安全保障上の米国の優位性を揺るがしかねないからだ。
日本企業が、中国に技術移転をする場合、細心の注意が必要となる。もし軍事転用可能なものを安易に中国に提供するようになったら、米国から制裁を受ける可能性は少なくない。これは、日本国内でも中国国内でも、第三国でも同じであることを日本企業は肝に銘じるべきだ。その意味で「一帯一路」に協力しても自己責任である。
日本の財界人にとって、中国は魅力的な市場に見えるだろう。ただし、これは経済的な視点からの話だ。法制度からみると中国は一党独裁で、民主的な西側先進国とは、全く異質の国だ。
かつては、いずれ中国も経済成長すれば民主的な国になるとの楽観的な予想も米国にあったが、これは完全に的外れになった。そのため、米国の対中戦略も大きく変わったとみていい。
だからこそ、日本の財界人も中国のカントリーリスクを見直す必要が出てきた。そして、今やそのカントリーリスクとして、米国の報復を受ける可能性まで考慮しなければいけない時代だ。 
 
 
 2018/10

 

習近平とは「友達解消」 トランプの対中切り札は中国高官の不正蓄財
昨今のアメリカと中国との対立は、一般的に「貿易戦争」として語られることが多い。だが、対立に絡む一連の動きを見ていくと、実態はむしろ「政治戦争」と判断せざるを得ない。
9月中旬、米司法省が中国国営の新華社通信とCCTV(中国中央電視台)の国際放送部門CGTNを、中国政府のロビー活動を手掛けるエージェントと認定。外国機関登録法に基づく登録を命じた。この2つの機関は報道機関を装っているが、実際は中国共産党の世界進出の意思を代弁。自国政府のために他国の世論を操作するプロパガンダ機関と見なされたわけだ。
実際、これらの機関に所属する人々はほとんどが何らかの形で中国政府の諜報機関とつながっている、とアメリカの識者たちは指摘する。
時を同じくして、米政府は中国軍の特殊機関と軍高官に対し資産凍結などの制裁を科した。米政府は9月20日、ロシアから戦闘機などを購入したとして、中国人民解放軍の兵器管理と調達を担う共産党中央軍事委員会装備発展部とそのトップ、李尚福(リー・シャンフー)部長を制裁対象に指定。昨年8月に成立した対ロ制裁法に基づき、トランプ米大統領が発動を命じる大統領令に署名した。
装備発展部は昨年12月、ロシア国営の兵器輸出企業ロスオボロンエクスポルトから最新鋭戦闘機スホーイSu35を購入。今年1月にはS400地対空ミサイルシステムを買い上げた。購入を主導した李は、中国軍の宇宙利用を担う戦略支援部隊の副司令官。無人月探査機打ち上げにも携わった名将で、習近平(シー・チンピン)国家主席の側近だ。購入は中国最高指導部の意思表示とみていい。
こうしたアメリカの対中措置は、経済分野とは無関係な政治的メッセージ性の強いものだ。新華社通信とCCTVは一党独裁政権の正統性や共産主義を広めようとする情報機関。東西冷戦が終結し、ソ連側の主張を展開していたモスクワ放送が鳴りを潜めて以降、唯一巨大な影響力を発揮してきたのは、北京発のプロパガンダだ。
通信社やテレビ局の記者だけではない。中国政府が世界各地に設立している語学学校「孔子学院」の教師も政府の国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢弁)に所属し、世界各国で親中派を育成している。
新華社通信とCCTVにエージェント登録を命じる前から、FBIが既に孔子学院を捜査対象とするなど、アメリカは中国の政治的干渉に警鐘を鳴らしてきた。
中国軍の機関と軍高官に対する制裁も、単に中ロの軍事交流にくさびを打ち込むためだけではない。中国政府自体への警告と理解すべきものだ。人民解放軍は国家の軍隊ではなく共産党の私兵で、政権維持の基盤。その軍隊への制裁は、「政権は銃口より生まれる」と固く信じる中国政府へのメッセージとなるからだ。
中国はアメリカからのこうした政治的な警告の意図をくみ取らなかった。自重するどころか、中国政府系の英字紙チャイナ・デイリーの広告記事を米中西部の地方紙に紛れ込ませて、「対中貿易戦争は米農家に打撃を与えている」とトランプの経済政策を批判。アメリカの農業地帯に対するこうした世論操作は、11月の米中間選挙に対する干渉であり、火に油を注ぐものとみられても仕方がない。
9月下旬以降、トランプは国連で「習とはもはや友達ではないかもしれない」と発言し、共産主義への警戒を呼び掛けた。トランプの敵意は経済的領域を超えて、政治イデオロギーの域に達している。
アメリカの攻勢に対し、中国は今のところ有効なカードが切れていない。アメリカには切り札がいくらでもあるからだ。中国の高官はほぼ例外なく、アメリカの銀行に不正蓄財を保有。子弟をアメリカの大学に留学させている。清廉潔白を装う高官たちの天文学的な資産が暴露・凍結され、「人質」となった子弟が口を割った日に、習政権は震え上がるだろう。 
安倍訪中に経団連の利権あり......「一帯一路」裏切りの末路

 

安倍晋三首相による10月25日からの訪中を前に、興味深い数字が公表された。日本の言論NPOと中国国際出版集団が8〜9月に日中の両国民を対象に実施した共同世論調査だ。
日本に「良い」印象を持つ中国人は「どちらかといえば」を合わせて42.2%。05年の調査開始以来、最高となった。
一方、中国に対する印象が「良い」と答えた日本人は「どちらかといえば」を合わせて13.1%。「良くない」という人は「どちらかといえば」を合わせて86.3%に上る。
調査結果はある意味、日本人のクールな処世術を物語っている。中国は世界第2位のGDPを誇る大国になったが、覇権主義的な振る舞いをする指導者と観光客のマナーが日本で反感を買っている。訪日客が急増していた数年前には東京・銀座を闊歩しながら唾を吐き、植え込みに排泄する姿が話題になった。
日本人は中国人民ならともかく、人民元を熱烈歓迎し続けている。中国の指導者が愛用する「もっと文明的な行動を取るように」といった言い回しで、安倍首相は習近平(シー・チンピン)国家主席に要請してくれないか、と訪中に期待する日本人もいるかもしれない。
「安倍首相はもっと戦略的な話を中国政府とするだろう」と夢を抱く人々もいるはずだ。ウイグル人を弾圧し、100万人規模で「再教育センター」と称する強制収容所に送り込むなどの蛮行を中止するよう人権外交を進めてほしい、と願う人も大勢いる。
実際はどちらも期待薄だ。日本の経済界を代表する経団連は親中派で固まっており、銀座で金を落としてもらうだけでは満足しない。9月12日、中西宏明会長率いる経団連と日中経済協会、日本商工会議所の合同訪中団は、中国の首都北京で李克強(リー・コーチアン)首相と会談。自由貿易の堅持が必要との認識で一致したという。
会談の冒頭、深々と頭を下げる日本の財界人と無表情の李首相との会見の様子は皇帝に謁見する前近代的な「朝貢使節」のようだった。それにも懲りず、10月10日にも中西会長は福田康夫元首相と北京を再訪して李首相と会談した。
経団連と日中経済協会は中国が推進する「一帯一路」巨大経済圏構想に乗って、ユーラシアからアフリカまで世界を席巻しようとの空論を信じているのだろうか。
経営者たちはいまだに、欧米から「エコノミック・アニマル」と揶揄された頃の野心に突き動かされているかのようだ。
今回の安倍訪中も財界に突き動かされた感じは否めない。日本が第二次大戦後に構築してきた民主主義の理念を独裁国家に伝授することなく、ひたすら金儲けの話に終始しそうだ。
そもそも習近平が主導する一帯一路は世界各地で拒否されるようになっており、日本は中国のジュニアパートナーとして道連れにされるだろう。中国は、日本が今まで築き上げてきた信用を利用して、「日中合作」という仮面をかぶって中国のプロジェクトを展開したいだけだ。
スリランカやキルギス、パキスタン、ラオス、ジブチなど、中国マネーの「債務の罠」に陥りつつある国に対し、日本の経団連傘下の企業はどんなほほ笑みを見せるのだろうか。
経団連は中国による裏切りの歴史を忘れている。日中平和友好条約が締結されて40年。その間に低金利の円借款は実質上の戦後賠償として、中国の近代化を支えてきた。だが中国人は「自力更生」と信じ込んでいる。
89年にケ小平が天安門広場で民主化を求める学生と市民を虐殺。欧米が中国に制裁を科したのに対し、日本はいち早く天皇を訪中させて孤立から救い出した。だが中国は「打倒小日本(ちんぴら日本をつぶせ)」というスローガンを掲げる「愛国無罪」の理念を放棄しなかった。
そして今、トランプ米政権に制裁で窮地に追い込まれつつある習近平が、日米分断を図ろうと日本政府に接近してきている。安倍首相は経団連の言いなりではなく、冷静に中国を見る日本人の声に耳を傾けるべきだろう。 
「三方良し」だった日中会談… 

 

 北の非核化や拉致にも言及、中国の人権問題や海洋進出にも釘刺す
安倍晋三首相は、日本の首相として7年ぶりに中国を公式訪問した。両国にとって首脳会談の意義は何だったのか。
日中会談とともに、注目されたのが500人規模の日本の経済界リーダーが同行したことだ。これに対する中国からの期待が大きかった。他方、日本側の中国でのビジネスチャンスにかける希望にも沿っている。なお、安倍政権内で中国重視派は自民党総裁選で「安倍3選」に大きく貢献したことからも、党内での論功行賞にもなっている。とりあえずは「三方良し」だったのだろう。
日中会談では、「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」とする3つの新たな原則を確認した。
筆者は、日中会談について、経済分野だけなら、成功とはいいがたいと以前から主張していた。人権と北朝鮮の非核化などの安全保障に関する話がなければいけないという意味だ。
人権への言及がないと、日本は拉致問題を国際社会で正々堂々といえなくなるからだ。ウイグル問題を名指しはないものの、李克強首相に「中国国内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と言及があったのはよかった。
また、安倍首相は、習近平国家主席に対して、北朝鮮の非核化での国連決議の完全履行や拉致問題を説明し、習主席は日本の立場を支持した。
さらに、日中首脳間で、東シナ海を「平和、協力、友好の海」とする決意を改めて確認したのは、中国の海洋進出に釘を刺した格好だ。もっとも表向きは平和な顔をして、水面下では着々と事を進めるのが外交でもある。中国の南シナ海での既成事実化に対抗して、日本も南シナ海での自由航行を確保していくほかない。
長年の懸案だった中国に対する政府開発援助(ODA)について、ようやく今年度の新規案件を最後に終了することとなった。筆者は、ODAのうち円借款が2008年3月までに終了していたのは知っていたが、その後も無償資金協力や技術援助が継続していたのには驚いた。これまでの日本の中国へのODAは、中国の覇権主義に利用されたという意見もあるので、遅きに失したが、ようやく全終了になったのはいいことだ。
首脳の往来をめぐっては、安倍首相は習主席に、19年の日本訪問を実現して首脳間の相互往来を継続し、日中関係を発展させていきたいという考えを提案し、習主席は「真剣に検討する」と応じたという。
今回の「脅威ではなくパートナー」という原則には、お互いに覇権主義をとらないという意味が含まれていると解することができる。
この延長線上には、中国の保有する中距離核について一定の自制が中国に求められている。トランプ大統領は、米ロ中距離核(INF)全廃条約を破棄する考えを示している。これは1987年にできた条約だが、中国が参加しておらず、いまでは意味がなくなったものだ。米中ロで中距離核全廃に動くべき時だと、安倍首相は習主席に促した可能性もあるのではないか。 
パキスタン、中国「一帯一路」関連事業見直し

 

パキスタンは3日までに、中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」による鉄道改修事業について、中国からの融資を20億ドル(約2300億円)削減することを決定した。債務負担を軽減するための措置で、8月発足のカーン新政権による財政再建策の一環。一帯一路への不満が各地で表面化する中、歴史的に中国と親密なパキスタンで見直し作業が始まったことは、影響を広げそうだ。
地元英字紙ドーンなどによると、パキスタン国内では、南部カラチと北西部ペシャワルを結ぶ鉄道の改修事業が計画されている。一帯一路の一部である「中国パキスタン経済回廊」(CPEC)に基づいて、事業費82億ドルは中国の融資でまかなう予定だったという。
パキスタンのラシッド鉄道相は1日、総額を62億ドルに減額したことを発表した。事業の遂行は問題ないことを強調し、さらに20億ドルの圧縮を検討していることを明らかにした。外交筋によると、パキスタンでCPEC関連の事業が見直されるのは初めて。
ラシッド氏は「パキスタンは貧しい国で、莫大(ばくだい)な債務の負担には耐えられない」と発言。さらに「CPECはパキスタンを支える背骨のように思われるが、私たちの目と耳は開いている」とし、見直しを継続する意向を明らかにした。
CPECは中国の習近平国家主席が一帯一路の中核と位置づけており、パキスタンのシャリフ政権時代に推進された。中国からの融資総額は620億ドルに達する。
その一方で、パキスタンの対外債務は今年末には932億ドルに拡大する見通しで、うち3〜4割は中国からの融資によるものだという。カーン首相は総選挙での勝利後、「債務負担が大きすぎる」としてCPEC関連事業の見直しを表明。契約の詳細を検討する専門チームを立ち上げた。
ただ、パキスタンに大規模な融資を行う国は中国以外になく、カーン政権はインフラ整備推進の観点から、CPECの枠組みそのものは歓迎する。契約見直しは、シャリフ政権を批判して求心力を高める方策という側面もあり、どこまで進捗(しんちょく)するかは不透明だ。 
一帯一路で急接近、日本人が知るべき中国の思惑

 

失速する巨大経済圏構想
中国の巨大経済圏構想「一帯一路」における多数の途上国のインフラ整備計画のいくつかが挫折し、一部の参加国は中国に疑念を持ち始めるとともに、対中債務に起因する自国社会・経済の崩壊が現実のものとなってきた。一帯一路構想は、中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)とセットで中国の国家威信をかけて推進されてきたが、この5年の経緯を振り返れば、参加国、周辺国そして国際社会に不安と混乱をもたらした面が強い。
ジャーナリストの福島香織氏が論評しているように、中国にとって本構想は、(1)先進諸国からの新植民地主義との非難、(2)途上国からの悪徳金融業者に例えられる遺恨、そして、(3)中国の銀行や企業の利益回収の見込みがない投資の継続と債務不履行の恐怖、という三重苦の提供元、本音は「厄介者」になりつつあると推察される。
中国指導層も「現下の好ましくない事案の連鎖反応」は承知していると考えられるが、昨年秋に一帯一路構想を党規約にまで盛り込んだ中国共産党と習近平国家主席(党総書記)が、自らの威信を犠牲にしてまで、現在の路線を変更する公算は皆無と言える。その上、現在の米国との厳しい経済と貿易の対立は解決策さえ見いだせないことも影響し、中国経済の将来に暗雲が漂い始めたことは明白である。オウンゴールとも言える一帯一路構想の失速と、米中の厳しい経済対立がもたらす中国経済へのストレスは、中国を抜き差しならない窮地に陥れさせ始めている。最悪の場合、トランプ米政権は、中国経済を再起不能になるまで追い詰める公算さえ否定できない現状である。
米国を孤立させ、覇権狙う
一帯一路構想が行き詰まり、米中貿易摩擦に苦しみ、その影響で人民元が急落する中で中国が起死回生の望みをかけた国が、日本である。それを裏付けるかのように、昨今の日中関係の改善は目覚ましく、両国とも具体的な協力策を模索している。その線上で安倍首相は「今年5月の李克強首相の来日により、日中関係は完全に正常な軌道に戻った」とまで述べている。今月の安倍首相の訪中とあわせ、経済界から大型代表団も訪中するとのことであり、その一部からは我が国企業の一帯一路構想への参画とビジネスチャンス獲得への期待が早くも漏れ聞こえてくる。
仮に、我が国政府が一帯一路構想への参画を決定するとすれば、それは、瀕死とは言わないまでも、三重苦に苦しみ急速に症状の悪化が進んでいる中国自身及び一帯一路双方の窮状を救うカンフル剤になることは確実である。更に「清廉潔白」な我が国の一帯一路構想への参画が、急速に広がった同構想に対する国際社会の不信感の緩和に大きく貢献する公算は大きい。
そのような現状の下で我々が認識すべきは、中国が中華思想の下で「中華民族の偉大な復興」を実現するための手段が一帯一路構想であるという現実であり、その結果、生ずる関係国の債務超過による従属国家化などは意に介さないことも明白である。さらに、開発途上国に対する債務によるコントロールに加え、世界規模の一大経済圏を構築することにより、米国と張り合える経済力を獲得して米国と欧州の分断を図り、米国を孤立させて中国が世界の覇者となる有力な手段が一帯一路構想であることも忘れてはならない。
「急場しのぎに日本を利用」が本音か
中国の一帯一路とは全く異なる、自由と民主主義を共通の価値観とする米国、豪州、インドに代表される国々と手を携え、アジア諸国と共に「自由で開かれたインド太平洋」の構築を目指す我が国は、近視眼的な経済上の利益にのみ目を奪われ、国家の本質と目的が水と油以上に異なる中国、特にその一帯一路構想に肩入れすることは,国家百年の計において取り返しのつかない禍根を残すこととなる。同様に米国は、一連の貿易問題を通して明らかになった中国固有の異質性を強く認識したからこそ、先日のペンス副大統領の演説に代表される、妥協のない新たな対中政策を発表したものと考えられる。
中国の対日接近は、長年の日中対立案件の基本まで立ち返った中国の我が国に対する厳しい立場、つまり、歴史認識や尖閣諸島領有に関わる一方的な主張を根本から変更するものではないことは明白である。それは、中国が陥っている現下の政治と経済の窮状から抜け出るために最も効果的な切り札としての日本を、便宜的かつ一時的に使うことを狙ったもの以外の何物でもない。
最後に、最近筆者が参加した国際会議における経験を紹介すると、ある中国人パネリストは、「中国は一帯一路構想において何ら困っていない。但ただし、日本が構想に参画を希望するのであれば一切拒まない。それは『アベノミクス』の失敗で低迷し、苦しむ日本経済を救済するビジネスチャンスを日本に与える中国の親心と思いやりである」という趣旨の発言をした。「何をかいわんや」であるが、ここに中国の本音が垣間見えるとともに、これが極めて正直な中国の思惑の表れであろう。 
 
 
 2018/ 9

 

「一帯一路」提唱から5年 国内でバラマキ批判の声も
中国の習近平国家主席が現代版シルクロード経済圏構想として「一帯一路」を提唱してから7日で5年となる。一帯一路は中国主導で国際秩序作りを進める道でもあるが、最近、沿線の国々で対中債務拡大により中国支配が強まることへの懸念が高まっている。中国国内でも援助のばらまき批判が表面化するなど、一帯一路は曲がり角を迎えつつある。
習氏は2013年9月7日、中国から中央アジア、中東、欧州へ至る「シルクロード経済ベルト(一帯)」の共同建設構想を発表。翌月には、中国から南シナ海、インド洋を経てアフリカ、欧州へ至る「21世紀の海上シルクロード(一路)」の共同建設を打ち出した。以後、統合され一帯一路構想と呼ばれている。
主な柱は、沿線の国々で鉄道や道路、港湾といったインフラ建設などを中国主導で推進することだ。最近は“脱シルクロード化”が進み、オセアニアや中南米諸国などにも対象地域を拡大している。
習氏は8月下旬に北京で行われた一帯一路の5周年記念会合で、「一帯一路は経済協力だけではない。世界の発展モデルや統治システムを改善する重要なルートだ」と明言、新たな国際秩序作りにも意欲を示す。
しかしマレーシアでは、マハティール首相が対中債務の増大を危惧し中国主導の大型投資案件の中止を表明。インドなどでも中国主導の国際秩序作りへの警戒論が高まっている。一方の中国は「一帯一路は政治・軍事同盟でもなければ『中国クラブ』でもない」(習氏)と強調、国際社会の懸念の打ち消しに懸命だ。
ただ、米国との貿易摩擦が激化し中国経済に影響が出始める中、中国国内でも対外援助拡大を疑問視する声が表面化しつつある。
習氏の母校、清華大の許章潤教授は7月、「無原則にアジアやアフリカを支援していけば中国国民の生活を締め付けることになる」と直言。山東大の孫文広・元教授も8月、「中国国内にも貧しい国民が多いのに外国に金をばらまく必要があるのか」などと批判し、当局に一時拘束された。 
中国・一帯一路の挫折と日中関係
 日本財界に急速に高まる戦略への期待の意味

 

中国国内でも悲観的な見方が多かった一帯一路の挫折がいよいよ表面化してきた。
AFPが9月早々、こんな風に報じている。
“「中国「一帯一路」におけるインフラ建設計画が重大な挫折にあい、一部の参加国は中国に対する恨みを抱きはじめ、中国の提供する債務圧力におしつぶされる心配を始めている。”
2013年に習近平が自らの最重要国家戦略として打ち出した一帯一路戦略は、AIIBという中国主導の国際金融機関の設立とセットで、意欲的に進められてきたが、これまでの5年の経緯を振り返れば、参加国、周辺国に不安を与える以外の何物でもなかった。先進国からは中国版植民地政策と非難され、インフラ建設支援を受けているはずの途上国からは、悪徳金融のようだと恨まれ、中国国内の銀行や企業は経済的利益の見込みが立たない中での投資ノルマと債務不履行に不満が高まっている。
仄聞するところでは、党内にもこの「一帯一路」戦略の棚上げ、縮小を求める声があるが、党の長期戦略として党規約の前文にまで「一帯一路戦略」を明記した習近平が、自分のメンツを犠牲にして、こうした声に耳を傾ける様子はない。一帯一路はどこにいくのか。そして、秋の首相訪中を控えて、日本財界に急に高まる、“一帯一路”への期待は何を意味するのか。
一帯一路の挫折がはっきりしてきたのは今年春以降だろう。米トランプ政権の対中貿易戦争が、単なるディール以上の意味(中国の覇権野望を挫くという意味)を持つのではないか、という観測が出始め、それまで一帯一路に比較的好意的な発言をしていた欧米メディアからも、一帯一路について「債務の罠」「中国版植民地主義」といった批判的な意見が報道され始めた。また、アジアや中央アジアの親中国家に変化がみられるようになった。
マレーシアのマハティールが、圧倒的に有利なはずの親中派現職、ナジブを破って首相に返り咲いたことは大きい。これはマレーシア有権者のチャイナ・マネーにおぼれるナジブ政権に対する明確なノーの意思表示と言えた。マハティールが8月に北京を訪問したときは、南シナ海とマラッカ海峡を結ぶ200億ドルの鉄道計画など一帯一路戦略に含まれる三つのプロジェクトの棚上げを表明。建前上は一帯一路はアジアの発展に必要、積極支持するなどと中国にリップサービスをするも、「新しい植民地主義はのぞまない」と、現行の一帯一路路線に釘を刺した。中国の大手デベロッパー・碧桂園が手掛ける70万人の人工島都市建設計画「フォレストシティー」についても、前政権では中国投資家による物件購入をあてにしており、事実上のチャイナタウン建設との位置づけであったが、マハティールは外国人(中国人)への販売・転入禁止措置を打ち出した。
さらにパキスタンのイムラン・カーンが8月に政権をとると、やはり一帯一路の中核プロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)について、その資金状況の透明性を高める、と約束した。元クリケット選手、実務経験ゼロのカーンが有権者に選ばれたのは、前政権の汚職体質に皆がうんざりしていたことが大きいが、CPEC計画の推進に伴う中国の貿易赤字やローンがかさみ、債務危機に直面していることも大きい。中国への債務返済不能に陥れば、その借金のカタに中国による植民地化が進むのではないか、という危機感も関係している。それでも9月3日に北京で開幕した「中国アフリカ協力フォーラム」では、中国は今後3年間にアフリカ発展支援に600億ドルの拠出を発表している。
CPECの起点の一つとなるグワダル港は、マラッカ海峡の陸路バイパスとして中国のエネルギー輸送の要であり、中国のインド洋進出の軍事拠点としても地政学的要衝の地だが、中国はすでに、この港の43年租借権を確保している。カーン政権は、IMFに支援を求めているが、仮にIMFがパキスタンに支援を行えば、当然、CPECの中身も見直されるだろう。中国が高金利で貸し出す資金で、中国企業によって中国産資材を使って中国人労働者を雇って行われたプロジェクトで、債務返済不能を理由に、出来上がったインフラの権利を奪う悪徳金融のような真似は許されない。
一方で、米国務長官ポンペオは、IMF最大の出資国として、中国の借金返済にIMFを使う道理はない、と強くけん制。米国は、中国に外貨準備を吐き出させて追いつめるつもりかもしれない。IMFが支援しなければ、パキスタンは中国に全面的に救済をもとめる。中国にパキスタンの財政危機を救うための外貨を用立てる余力はあるのだろうか。
一帯一路戦略によって債務危機に陥っている国は、マレーシアやパキスタン以外にも、ラオス、カンボジア、インドネシア、タイ、ベトナムなどの東南アジア、エチオピア、ジンバブエ、カメルーン、ガーナ、ジブチといったアフリカ諸国に広がっている。借金のカタに建設されたばかりのインフラ利権をもぎ取られる側も悲惨だが、建設途中で資金ショートし、現物回収もできない中国側の銀行や企業の状況もかなり深刻である。
中国体制内学者からも不安の声
実は、一帯一路戦略は中国内部の体制内学者からも、かねてから不安視されてきた。たとえば、元人民銀行金融政策委員の余永定は昨年の8月に黒竜江省で開催された金融フォーラムの席で、「パキスタンへの投資で、収益を得られるのか、元金を回収できるのかは、我々は慎重に考えねばならない」と釘をさした。安邦保険傘下の民間シンクタンクは一帯一路戦略について、数年前から一応言葉を選んではいるが、概念・理念先行で、実体的メカニズムの設計を怠けたハイリスクな戦略と言わんばかりの批判をしていた。
「中国には一帯一路戦略を各地で同時進行できるほどの資源はない。…一帯一路は、完全なるハイレベルの政治的要因から決定しており、戦略的地縁政治的意義は大きいかもしれないが、他の中国の多くの政策と同様、戦略から政策への移行のプロセスにおいて、戦略自体が変質してきた。経済利益よりも国家利益を優先させ、“運命共同体”といった理念や協力発展の概念を提唱するだけで、実体的なメカニズムの設計を回避している。…このままでは、中国はASEANや中央アジアの“ATM”になってしまうだろう。…中国の外貨準備高3兆ドルのうち1・6兆を一帯一路に投じるとして、それを補うための“輸出増大”戦略は、ASEAN諸国などから強烈な抵抗が予想される。…一帯一路の資源は、人民元変動とも関係してくる。人民元価値が下がれば、対外投資の元金が増大するだけでなく、キャピタルフライトに歯止めが利かなくなるだろう。…伝統的な対外投資操作モデルや為替操作モデルでは何ともしがたい規模。最終的にはコントロール不可能な債務を抱え込むことになる…」
そもそも、新疆や中央アジアには民族問題、テロ・治安問題といった政治リスクがあり、さらには人口密度的にも交通インフラの商業運営利益が見込めるようなものでもない。砂漠を横断するような高速鉄道や高速道路の機能維持、メンテナンス費用は考えるだけでも、気が遠くなる話だろう。中国の銀行も企業も政権の意思には逆らえず、不良債権を抱えるとわかっていながら、利益が上げられないとわかっていながら、このプロジェクトにかかわってきたかっこうだ。だが、こうした党内部の専門家たちの意見、提言を無視して、党規約に党の重要戦略として一帯一路の名前を盛り込んだ習近平政権は、その挫折の色が濃くなるにつれて、責任が問われることになる。
ボイス・オブ・アメリカによれば、8月下旬に北京で開催された一帯一路建設推進五周年座談会で習近平は一帯一路が「単なる経済協力の提言であって、地縁政治同盟や軍事同盟を作ろうだとか、閉じられた“中国クラブ”を作ろうとしているのではない。イデオロギーで選別するつもりも、ゼロサムゲームの博打をするつもりでもない」と自己弁護した。
また、「対話を堅持し、ともにウィンウィンの協力関係を作り、お互いを鑑とする原則で、沿線国家の最大公約数的利益を求めて、政治的相互信頼を推進し、経済と人と文化の総合交流を図るつもりである。…今後のプロジェクトは、必要とされるところに迅速に行い、現地の民生が受益するプロジェクトであるようにしてきたい」と、これまでとはトーンを変えて神妙に語ったことから、党内でも厳しい批判にさらされて、習近平自身も多少は、一帯一路戦略の中身を調整するつもりではないか、という憶測も流れている。
ただ、中国国内の一帯一路宣伝は堅持されており、初の一帯一路ドキュメンタリー映画「共同運命」がベネチア映画祭で上映されたりもしているところをみれば、この戦略を縮小したり棚上げする気配は、今のところない。
安倍首相の秋の訪中に集まる注目
では、この債務膨張に悩む一帯一路戦略を中国はどう導くつもりなのか。ここでおそらく期待を寄せられているのが日本であろうと思われる。安倍晋三が日中平和友好条約締結日40周年の10月23日を軸に訪中を調整中であり、その地ならしに8月末に北京で財務相対話が開催され、2013年に失効していた日中通貨スワップ協定の再開に大枠合意している。
今回は3兆元規模と、従来の10倍の規模、中英通貨スワップの規模よりは小さく、人民元の安定化や国際化にどれほどの影響力があるものではないかもしれないが、一帯一路が行き詰まり、米中貿易摩擦に苦しみ、その影響で人民元が急落する中で、日本円とのスワップは、中国をかなり勇気づけるものにはなろう。産経新聞の単独インタビューで安倍晋三が「5月に李克強首相が来日し、日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と語ったように、日中関係の回復を象徴する協定といえる。
時期同じくして、外務次官の訪中、日中与党交流協議会の北京での開催と、日中政治交流が続き、9月末には「一帯一路」をめぐる日中官民合同委員会の初会合を北京で開催する。第三国で日中両国企業がともに参加できる一帯一路インフラ案件の整備を進めていると報道されており、具体的には一帯一路の一環であるタイ鉄道計画や、日本が主導する西アフリカに4000キロの道路を建設する「成長の環」計画に中国を参与させることなどが、検討されているようだ。
一帯一路への参加を日本が表明することになれば、地に落ちた一帯一路の評判も、持ち直すかもしれないし、中国はそう期待していると思われる。不透明な一帯一路プロジェクトの資金の流れも、日本が関わることで透明化するのではないか、と言う関係国の期待もある。もちろん中国公式報道では、日本が一帯一路に参与することは日本の衰退を救うことだ、というニュアンスで報じられている。
さて、安倍政権が一帯一路に対して本音ではどのようにアプローチしていくつもりかは、私にはわからない。安倍訪中に同行する経済界訪中団の規模は240人規模に上り、関係者から「一帯一路で、大きなチャンスが日本企業にもたらされる」といった発言を聞くと、本気かと問い直したくなる。いかなる環境でもビジネスチャンスをつかめる企業はあろうが、一帯一路の本質が「偉大なる中華民族の復興」という中華覇権を目的としたものだと考えると、たとえビジネス利益が見いだせても、この戦略の成功に日本として手助けしてよいものかどうか、という気にもなる。
安倍が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は米国、インド、オーストラリアなどともに一帯一路に対抗する中国包囲網戦略と見ていたが、安倍は一帯一路とインド太平洋戦略を連携させるとも発言している。この真意はどこに。
単に、保守政治家のイデオロギーよりも財界の要望を重視しただけなのか。米中対立が先鋭化する中で、日本が独自の存在感や外交を模索しているということなのか。あるいはもっと深い目論見があるのか。様々な予測を念頭に、秋の訪中の行方を注目していこう。 
中国一帯一路の「債務ドミノ」、次に倒れるのはどこか

 

中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」で、次に「債務ドミノ」が倒れるのは太平洋諸島かもしれない。
中国からの債務返済に四苦八苦するトンガのポヒバ首相は、中国が国家資産を差し押さえる可能性について警戒している。それは極端な話のようだが、この地域が抱える中国向け債務13億ドル(約1440億円)を巡る再交渉が始まっている。
ポヒバ首相は8月、太平洋島しょ国が共同で中国に債務の帳消しを巡り協議している、とロイターに語った。対中債務額が1億1500万ドルに上るトンガのような国々は、スリランカのように資産を明け渡すことを余儀なくされるかもしれないと、同首相は示唆した。
スリランカは昨年12月、中国との債務救済取引の一環として、自国の戦略港湾の長期運営権を中国に譲渡している。中国企業が資金提供し建設されたバヌアツのルーガンビル港埠頭を巡って、オーストラリアのメディアも同様の懸念について報じている。
ポヒバ首相はその後、発言を撤回した。だが同首相の発言からは、中国の習近平国家主席が世界的に推進するインフラ構築の真の狙いについて懸念が高まっていることを浮き彫りにしている。
オーストラリアとニュージーランド、そして米国は、中国の影響力に対抗すべく、太平洋諸島地域への支援を強化する計画だと、ロイターは報じた。だが、それにはさほど労力は必要としないだろう。豪シンクタンク、ローウィー研究所の試算によると、同地域が2011─2016年に受けた対外支援のうち、中国が占める割合はわずか8%。一方、オーストラリアとニュージーランドは半分以上を占めている。
また、中国の対トンガ融資は主に、都市部の復興のようなプロジェクトに充てられている。中国が資産をどのように差し押さえるのか、あるいはなぜそのようなことをするのかは定かではないと、同研究所の太平洋諸島プログラムのディレクター、ジョナサン・プライク氏は言う。
トンガ財政は実際に圧迫されている。ロイターの集計によると、同国の対中債務は国内総生産(GDP)の3分の1に上る。元金返済は予算の4%を占める。3日開幕した太平洋諸島フォーラムで債務帳消しの要請が正式に行われるとは限らないが、11月に開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で習主席にこの話題を切り出す可能性はある。
諸外国は中国が支援するプロジェクトに警戒感を募らせ、「債務トラップ」に対する警鐘も聞こえてくる。マレーシアでも中国の一帯一路計画は激しい反発に直面している。
太平洋諸国は、中国に安くイメージ回復ができる機会を提供している。世界第2位の経済大国である中国にとって、13億ドルは「丸め誤差」にすぎない。それでもトンガは感謝するだろう。  
中国またも敗退!モルディブを失い「一帯一路」は崩壊過程に
 ここで北京の甘言に乗ってはいけない

 

選挙結果をインドもアメリカも大歓迎
「これで、またモルディブに行ける」と胸を撫で下ろした人も多いと思う。さる9月23日、「インド洋の楽園」で行われた大統領選は、野党連合のイブラヒム・モハメド・ソリ氏が、2期目を目指す現職アブドラ・ヤミーン氏を破って当選した。
この結果に不満タラタラなヤミーン氏は抗議行動を繰り返したが、選挙管理委員会の結果発表が出て、敗北を受け入れざるをえなくなった。となると、この5年間、中国からのカネで汚染されてきた楽園に平和が戻ってくることになる。
新大統領になったソリ氏は「(モルディブに)平和な瞬間、希望の瞬間が訪れた」と勝利宣言し、インド政府は「民主主義の勝利」とのコメントを発表。また、選挙の不正を懸念していたアメリカも、新政権誕生を歓迎する声明を発表した。
まさかの結果に慌てふためいた北京
前回記事『どうなる? 「中国人の楽園」と化したアイランドリゾート、モルディブの「悪夢」は続くのか?』で書いたように、ヤミーン前大統領は、2013年に就任後、腐敗政治家がよくやるパターンで、巨額の中国マネーを引き入れては私腹を肥やしてきた。そのため、モルディブでは次々と巨大なインフラ建設が始まった。
その目玉が、首都マレと空港島を結ぶ全長2キロの「中国モルディブ友誼大橋」の建設。さらに、空港島の北側にある人工のフルマーレ島では7000戸の住宅団地が造成され、アッドゥ環礁では雑木林を伐採して260戸の集合住宅の造成が進んだ。
いずれも、中国の金融機関が融資し、中国の建設会社が建設し、中国人労働者が現場の仕事を行うプロジェクトだった。その結果、モルディブは中国人であふれ、観光客も中国人が主流となって、まさに「中国人の楽園」と化したのである。
当然だが、今回の選挙結果に慌てふためいたのが北京である。なにしろ、この8月30日、「中国モルディブ友誼大橋」が完成し、盛大なレセプションを行なったばかりだったからだ。
9月25日、中国外務省の耿爽報道官は、「モルディブ国民の選択を尊重する」とタテマエを述べたうえで、新政権に対して「政策の継続と安定を保ち、現地の中国企業のために良好なビジネス環境をつくり出すよう望む」と釘を刺した。
しかし、ソリ新大統領は、すでに新たな中国人労働者のビザ発行を停止する命令を出しており、「脱中国」に大きく舵を切った。
借金のカタに港を奪われたスリランカ
モルディブの親中政権の崩壊は、今後、中国の「一帯一路」構想に、重大な影響を与える可能性がある。すでに、崩壊過程に入ったと思える「一帯一路」から、今後も多くの国が離反していくだろう。
「一帯一路」構想は、2013年に、習近平主席自らが最重要国家戦略として打ち出した。陸と海のシルクロードを中国主導で整備し、周辺国と「ウイン・ウイン」で経済発展を図るという壮大な構想だった。そのため、中国はAIIBという国際金融機関までつくり、世界各国に参加を呼びかけた。
しかし、この構想に参加するとどうなるかは、すぐに判明した。それは、「一帯一路」構想発表以前から中国に大接近し、中国マネーにインフラ整備を託したスリランカが、国家債務を膨らませて、あっけなくパンクしてしまったからだ。
スリランカは2015年まで10年間続いたラージャパクサ政権が、中国マネーでハンバントタ港とラージャパクサ国際空港をつくった。いずれも、大統領の地元への利益誘導だったため、債務返済の目処が立たなくなると、中国は港を借金のカタに取り上げた。国際空港のほうも、世界で唯一、国際線の発着がない空港と化して、現在にいたっている。
次々と頓挫し始めた中国のインフラ建設
このように、中国が各国に持ちかけたインフラ建設は、その後、次々に破綻している。「一帯一路」構想は「ウイン・ウイン」などではなく、中国の覇権拡大戦略にすぎないことがバレたうえ、その進め方があまりに強引で杜撰だったからだ。
その顕著な例が、日本から技術をパクったとされる高速鉄道の建設である。
中国による本格的な高速鉄道輸出の第1弾として、日本と受注を争ったインドネシア新幹線・ジャカルタ─バンドン鉄道は、2016年に着工式をしただけで、いまだに開通の目処が立っていない。同じく、タイ新幹線も、日本と争って受注したが、いつ着工されるのかもわからない状態になっている。これは、タイ政府が日中を天秤にかけたせいもあるが、中国の計画のいい加減さが大きく影響している。
ともかく中国は、「一帯一路」構想を発表してから、なりふり構わずにインフラ建設を持ちかけてきた。パキスタンでは、インダス川流域のディアメル・バハシャダム建設に、140億ドルの資金提供を申し出た。しかし、インダス川の水源を抑えられることを恐れたパキスタンはこれを拒否した。
パキスタンはこれまで、中国パキスタン経済回廊(CPEC)を通じて、620億ドルという巨額の中国マネーを受け入れたため、債務返済に苦しんでいる。すでに、中国のインド洋進出の拠点としてグワダル港を租借権で押えられてしまった。
そんななか、この8月に元クリケット選手のイムラン・カーン氏が新首相になり、親中国路線の転換が注目されている。
ダム建設といえば、ネパールも中国から持ちかけられた25億ドルの水力発電事業を、合弁先の中国企業が信用できないとして事業を取り消している。
マレーシアの政権交代がターニングポイントに
この5月に、マレーシアでマハティール・ビン・モハマド氏が首相に返り咲くと、「一帯一路」の崩壊はよりはっきりするようになった。
マハティール氏は、就任するやいなや、ナジブ・ラザク前首相の親中国政策を次々とひっくり返した。まず、日本と中国が争ってきたクアランプールとシンガポールを結ぶマレー新幹線(2026年開業予定)の建設を中止した。さらに、中国企業によってすでに着工済みの東海岸鉄道も見直すことを発表した。
ナジブ前首相の中国マネー漬けは、スリランカ以上にひどかった。この前首相は、ユネスコからジオパークに指定された南国リゾート、ランカウイ島を中国資本に売り渡してしまっていたのだ。
そのため、ランカウイ島では中国の大連万達集団(ワンダ・グループ)により、自然を破壊した超高層高級マンション2棟と5つ星のラグジュアリーホテルの建設が進んでいる。マハティール氏は、これも見直すと表明した。
中国マネーによるインフラ建設の極め付けは、シンガポールに隣接するジョホールバルに人口300万人規模のメガシティを建設する「イスカンダル計画」である。イスカンダル計画の目玉の「フォレスト・シティ」には、中国から華人60万人が移住する計画になっていた。
もちろん、マハティール氏は、このイスカンダル計画の見直しも表明した。
今回のモルディブの政権交代は、こうしたマレーシアの動きに刺激されたものと言えるだろう。これ以上、中国と付き合うと、国を乗っ取られてしまうという危機意識の現れだ。
米中貿易戦争は世界覇権戦争である
お人好しの欧米メディアが「一帯一路」の危険さを認識したのは、今年になってからである。トランプが中国に対する制裁関税を表明したのと合わせるように、中国に対する批判的論調が目立つようになった。「一帯一路」はじつは拡張政策であり、「中国の植民地政策にすぎない」という趣旨の記事が出るようになった。
「一帯一路」は21世紀のシルクロードではなく「デット(債務)ロード」であることが、彼らにもようやくわかってきたのである。
それとともに、トランプ大統領が始めた「貿易戦争」がじつは「覇権戦争」であるということも、共通認識になっていった。アメリカは、アメリカが持つ世界覇権に挑戦してきた中国を叩き潰そうとしているのである。
となると、「一帯一路」は早晩立ちいかなくなる。南シナ海を首尾よく自分の海にしたような真似は、もう許されない。
いまや、トランプの制裁関税によって、中国は窮地に立たされている。しかし、それを認めるわけにはいかないから、習近平“皇帝”はメンツにかけて報復関税で応酬している。
しかし、北京の内情は、火の車である。
最近は、中国国内からも、「一帯一路」を批判する声が上がっている。計画では中国は外貨準備3兆ドルの約半分を「一帯一路」をつぎ込むことになっている。それが焦げ付いたらどうするのかというのだ。「一帯一路」によって中国は中央アジアや東南アジア、そしてアフリカの国々のATMになっているだけではないかという声も上がっている。
日本抱き込み路線に転換した中国
ところが、こんな窮地にある中国と、友好関係を再構築しようというのが、安倍政権と日本の財界である。すでに安倍首相が、日中平和友好条約締結40周年の記念日、10月23日を目処に訪中することが決まっている。
その地ならしに、8月末に北京で財務相対話が開催され、2013年に失効していた日中通貨スワップ協定の再開に大枠合意している。
さらに、この9月10日からウラジオストクで行われた「東方経済フォーラム」で、安倍首相と習近平主席は会談し、その後、習近平主席のこんな言葉に、安倍首相はうなずいている。
「(中国と日本)双方は多国間主義と自由貿易体制、そしてWTOのルールを守り、開放型の世界経済づくりを推し進めるべきだ」
これでは、日本と中国は自由貿易を守る仲間で、制裁関税を振り回すトランプのアメリカが自由貿易の破壊者のように見えてしまう。
中国高官は、李克強首相以下みな、今日まで「自由貿易を守る」と言い続けてきた。しかし、習近平だけはこの言葉を使わなかった。
なぜなら、中国は自由貿易などしていないからだ。資本移動も禁止され、外資参入には厳しい条件があり、おまけに人民元は「国際通貨」と言いながらいまだに変動相場制に移行していない。したがって、「自由貿易を守る」とトップが言えば、大幅な規制緩和をしなければならなくなる。そうなると、北京は経済をコントロールできなくなり、一党独裁が崩壊してしまう。
しかし、背に腹は代えられない。習近平は「自由貿易発言」をすることで、日本の抱き込みに入ったと言えるだろう。まさかとは思うが、こんな状況で、北京で安倍首相が「一帯一路」への日本の参加を表明したらどなるだろうか?
それこそ、中国の思う壺であろう。
北京政府の甘言に乗るのは危険
トランプの制裁関税第3弾は、関税率10%で実施された。ところが、中国がすぐに報復したため、2019年1月以降は25%に引き上げられるのが確実になった。さらにトランプは、第4弾として2600億ドルを用意していると表明しているので、今後、米中が協議を通じて事態を打開することはありえない。覇権戦争はずっと続く。
問題は、中国がどこで音を上げて、覇権挑戦を諦めるかである。
いずれにしても日本は、こうした状況の推移を注視しながら、次の手を打っていかねばならない。こんな状況で、アメリカの言うことをすべて聞きつつ、中国とも仲良くやっていくなどという選択はない。
日本は、曲がりなりにも資本主義国家、民主体制なのだから、中国の「自由貿易体制を守る」と言うおこがましさを許容してはならない。そこまで言うなら、資本を自由化しろ、人民元を変動相場制にしろと、安倍首相は習近平に言わねばならない。
もはや、この状況では、安倍首相の「世界中とお友達路線」は成り立たない。日中友好は口だけにして、アメリカとともに、中国の力を削ぐことを真剣に検討・実施すべきだろう。日中友好は国民レベルの話であり、北京政府と実現させても意味はない。
安倍政権が北京の甘言に乗らないことを、切に願う。 
「一帯一路」に協力すべきわけ

 

中国は一帯一路に力を注いでいる。高度成長が終わり経済施策として新市場の開拓が必要となったためだ。中央アジアやインド洋沿岸国への投資によりインフラ輸出を振興し同時に新市場を開拓しようとしている。その優先度は中央アジアにある。中国にとっては天然ガスと石油の確保、欧州との鉄道連絡も期待されている。
日本はこの中央アジア開発に協力すべきである。従来の一帯一路への敵対をやめ投資ほかで協力すべきだ。日本の安全保障環境を改善できるためだ。一帯開発により中国の中央アジア支配は日本にとっての利益となる。第一は中国をロシア、インドとの対立に追いやれること。第二は中国の進出方向を内陸に変化させること。第三は中国との過度の対立を緩和できるとだ。
中国の中央アジア支配は日本安全保障の利益
日本にとって中国の中央アジア支配は好ましい。
第一の利益は中国とロシア、インドの対立をもたらすことだ。そしてこれは中国の対日圧力の緩和につながる。
中国は一帯一路により中央アジアへの影響力を増している。天然ガス生産ではすでに最大の輸出先となっている。中国は中亜気道管-西気東輸と呼ばれる複数並行のパイプラインが敷設し中央アジアから上海、広州を結んでいる。中央アジアも乗り気だ。以前はロシアに買い叩かれていた。それを国際価格で輸出できるのだ。
また中央アジアでの鉄道建設も計画している。一帯一路ではCPEC(China-Pakistan Economic Corridor)が有名だ。これは中国から山岳地帯を抜けてパキスタンに向かう道路建設である。だが本命は中央アジア経由の欧州向け鉄道建設だ。特にカスピ海南回り、北回りの欧州向け輸送である。ロシアを経由しない。つまり標準軌で中国と欧州を結ぶためコンテナ積み替えが不要となる。中国は乗り気である。
この中国存在感の拡大はロシアとインドを刺激する。両国にとって中央アジアは自国勢力圏といった感覚を持つためだ。
ロシアは中央アジアを一種の自国領と考えている。ウクライナやベラルーシと同じ感覚だ。このため外国の影響力増大を望まない。各国が旧ソ連ブロックから逸脱すると認識した場合、必要あれば介入も考慮する。例えば鉄道を1520ミリのロシアゲージから1435ミリの標準軌に改める状況である。
インドも同じだ。宿敵パキスタンと中国の鉄道直結は脅威である。また中央アジアに自国権益があるとも考えている。歴史的にみればつい最近まで新疆、西蔵も含めてインド影響圏であった。例えば戦前には新疆は英領インド商圏でありインド人巡査がいた。中国の中央アジア支配はインドにとっても影響圏の蚕食に見えるのだ。
この点で中国の中央アジア支配は日本にとっての利益となる。なぜなら中露、中印対立は好都合だからだ。ロシアやインドと対立した中国は日本に強気には出られず譲歩ベースに後退するからだ。
進出方向が内陸方面にシフトする
第二の利益は中国の進出方向を変えられる点だ。
日本にとって中国の脅威は海洋進出の脅威である。中国が日本より強力な海軍を作った。それが南シナ海に加え太平洋方面にも指向されている。それが日本の不安を掻き立てている。
一帯一路への協力はこれも改善する。一帯への協力は中国のユーラシア内陸進出を促進する。また一路援助も中国のインド洋進出を助ける。そして、その分中国の東シナ海、太平洋方面への進出努力は減らせる。
また、中国軍事力の構成を変えられるかもしれない。中国が中央アジアの自国権益を重視した場合は軍事力整備の力点も変化する。従来の陸軍縮小から更新強化に転じる可能性は大きい。当然ながら海軍力建設はその分減少する。
これも日本にとっては好都合である。日本にとって計画すべき中国軍事力は海軍力だけだ。それ以外はどうでもよい。中国が再び300万人400万人の巨大な陸軍を作ろうが日本にとっては全く脅威ではない。それで中国潜水艦や外洋哨戒機が5隻10機でも減ればそちらのほうよい。
日中の国内世論を抑制できる
第三の利益は中国との過度な対立を緩和できる点だ。
開発協力は日中間にある過度の対立を軟化させる。
まずは政治・経済局面での協力関係を再確認する契機となる。安全保障、軍事で対立していても経済では協力できる。そのような以前の認識に立ち戻らせる。そのような効果を日中双方に期待できる。
また、中央アジアでの中国包囲網の放棄を無難に伝達できる。
日本の中央アジア外交は失敗した。15年に安倍首相は各国を訪問し「中国の中央アジア進出に対抗する」ために3兆円の援助を約束した。森薫による『乙嫁語り』タッチのイラストを取り付けた政府専用機を飛ばした件だ。だが現実的な効果は何も産まず中国との対立だけを強調する結果に終わった。
中央アジアでの協力はその失敗・軋轢を取り消す効果を持つ。国内外に特に何も明言せずに「中国との外交的敵対の一部を取り下げた」と示せるためだ。
いずれにせよ現状は無駄に中国の反発を買っている。安全保障での対立はアメリカ、オーストラリア、インド、アセアン海洋国と同様である。だが日本の対中対峙は突出して強硬である。そのため中国の反発も一手に引き受けている。
中央アジアでの協力はその不利から脱却する契機となる。対中対峙の水準を各国横並び、あるいは一歩下げられれば中国の矛先は変わる。うまくすれば対立を米国やインドに肩代わりさせられる。
もちろん日中は蜜月関係には戻らない。だが、過度な中国との対立といった無駄の緩和に寄与する効果も生む。これも一帯一路への協力のメリットである。 
「一帯一路」鉄道がエチオピアで頓挫した事情

 

エチオピアは、シルクロード経済圏構想「一帯一路」の「モデル国家」として、中国共産党の専門家から称賛されている。中国政府は一帯一路に1260億ドル(約14兆円)を投資して、自国とユーラシア、アフリカ大陸をつなぐ鉄道、道路、海路の構築を目指している。
しかし、「アフリカの角」に位置する人口1億人のエチオピアは債務返済で苦境に立たされており、同国の主な債権者である中国が、一部のインフラ計画の収益性に懸念を強めて融資を鈍化させる兆しが見えている。
中国の対エチオピア投資は減速
「出資者は、エチオピアのGDP(国内総生産)の59%に及ぶ債務の返済リスクが非常に高まっていることを懸念している」と、エチオピアの首都アディスアベバのアフリカ連合(AU)本部への中国代表団は7月、ウェブサイトで表明した。
それによると、中国の対エチオピア投資は減速しており、中国輸出信用保険公司はエチオピアへの投資規模を縮小しているとしている。
アフリカ諸国の債務懸念が高まるなか、エチオピアのアビー首相は中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)に出席するため3日から北京を訪れる。
アビー首相は中国の李克強首相と会談するほか、自国の農工業・製薬ビジネスに中国企業から投資を呼び込もうとするとみられると、中国国営新華社は伝えている。
米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)の中国アフリカ研究所(CARI)によると、エチオピアは天然資源に乏しいにもかかわらず、中国からの融資においてアフリカ諸国のなかでトップを占め、中国国有の政策銀行は2000年以降、121億ドル以上融資を拡大している。
1991年に軍事政権が崩壊後、同国を率いる与党エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)の連立政権は、2025年までに中所得国になることを目指し、道路や鉄道、工業団地の建設など製造業主導の産業国になるという野心的な構想を進めている。だがそれにより、債務は増加の一途をたどっている。
エチオピア中央銀行のYinager Dessie総裁は7月、ロイターに対し、同国政府は中国からの債務を減らしたいと考えていると語った。同総裁によると、エチオピアの2国間債務の大半は中国からのものだという。
「向こう数カ月間にわたり、協議がもたれるだろう。債務返済の選択肢を広げる上で、落としどころがどの辺になるかまだ分からない」と同総裁は語った。
頓挫する鉄道計画
内陸に位置するエチオピアにおける交通整備プロジェクトの収益性に対する中国の懸念は、なかでもアディスアベバとジブチ港を結ぶ標準軌間の鉄道に集中している。
北京にある中国共産党中央党校の趙磊教授は6月、中国が融資するエチオピア首都アディスアベバ周辺の軽量鉄道とエチオピア─ジブチ間の鉄道プロジェクトを挙げ、「プロジェクトの持続可能性は低い」との見方を党機関紙の光明日報で示した。
「追加のインフラ整備やサービス、保守において十分な検討がされていない」と同教授は指摘した。
鉄道プロジェクトの主要部分は2016年に開通したが、ウォルディアからメケレまで北方に路線を拡張するための中国からの融資は度々遅れており、中国輸出入銀行からの完全な融資パッケージはまだ実行されていないと、清華大学のTang Xiaoyang教授は語った。同教授はエチオピアで実地調査を行っている。
同教授によれば、遅れを生じさせている主な懸念は、プロジェクトの経済的な持続性と実行可能性だという。
中国輸出入銀行と中国交通建設(CCCC)はコメント要請に応じなかった。
「中国輸出入銀行は新規プロジェクトに対し、ますますリスクを回避するようになっている」と、前出CARIのYunnan Chen研究員は言う。
エチオピアはFOCACで、プロジェクトの打開を期待していると、同研究員はみている。
「このように突破口を探ることはFOCACの活動の1つであり、同フォーラムへの注目が、エチオピアのようなアフリカの国にとって中国から言質を取る格好の機会となる」と語った。 
世界の形変える「一帯一路」
 開発の先にあるのは創造か破壊か

 

強引な開発の犠牲となったのがクリストファー・フェルナンドさんだ。インド洋に浮かぶ島国スリランカの西海岸、コロンボの北約20マイル(約32キロメートル)の海辺にある自宅が昨年、突然波に襲われ、台所では流し台しか残らなかった。30年間住んだわらぶき屋根の家が壊れた。
漁業で生計を立てているフェルナンドさん(55)は「砂の採取で何もかも破壊されつつある」と言う。波はかつて砂を運んでくれたが、今は砂浜を削っている。それほど遠くない海上には浚渫(しゅんせつ)船が見える。ここで集められる砂は中国交通建設(チャイナ・コミュニケーションズ・コンストラクション)が手掛ける「ポートシティー・コロンボ」の基礎工事に使われる。
中国の習近平国家主席が2013年に提唱した広域経済圏構想「一帯一路」に沿って、シンガポールとアラブ首長国連邦(UAE)のドバイの中間にあるコロンボに新たな金融ハブの建設を目指し、マリーナや病院、ショッピングモール、集合・戸建て住宅2万1000戸を含めた大規模な都市開発が進められている。
このプロジェクトは、貿易拡大と経済関係を支えるとともに、中国の権益を世界中で強化するために投じられる推計1兆ドル(約112兆円)に上るインフラ整備計画の一端だ。
政府・法人顧客向けに中国の海外投資を調査しているRWRアドバイザリー・グループ(ワシントン)によれば、国有の中国交通建設は一帯一路関連の事業を請け負う最大の建設会社だ。中国交通建設によると、同社は海外100カ国余りで700件のプロジェクトに関与しており、そのポートフォリオの価値は1000億ドルを超える。
だが同社とその子会社の事業は多くの国で疑念や論争を引き起こしている。フィリピンでは高速道路入札で不正に関わったとされ、09年に世界銀行のブラックリストに掲載された。前政権の汚職疑惑を受けマレーシアは今年、2つの鉄道事業を中止した。オーストラリアでは3月に出された政府調査報告書で、中国交通建設が所有する企業による小児病院建設の監督が行き届かず、水道水が鉛で汚染され、下請け会社によるアスベストを使った建材の利用が指摘された。中国交通建設は同社の過失ではないとしている。
ポートシティー・コロンボも環境問題で批判を浴びているが、中国交通建設を巡る問題はまだまだある。ケニアでの鉄道建設労働者の酷使とバングラデシュでの賄賂に関する疑惑に加え、カナダは5月、安全保障上の理由から同社による建設会社買収を阻止した。南シナ海の領有権が争われている海域で中国が岩礁を埋め立て軍事拠点を築いていることを手助けしているとして、米国の一部議員は中国交通建設に対する制裁を求めている。
中国交通建設の劉起涛会長は8月、同社の北京本社でブルーバーグテレビジョンのインタビューに答え、同社がプロジェクトを抱える国で政権が交代すると汚職疑惑が取り沙汰されるのはよくあることだと説明した。中国交通建設はビジネスを行っている全ての国で現地の法律と環境規制に従っていると主張。社内ガイドラインの順守も監視していると述べた劉会長だが、同社が南シナ海で何かしているとしても、それについてはコメントしないという。  
 
 
 2018/ 8

 

「一帯一路構想」という野望の末路
去る4月にドイツ紙が報じたところによると、北京に駐在する(ハンガリーを除く)EU27ヵ国の大使が中国政府に連名の書簡を送り、一帯一路構想(BRI)の取り進め方に注文を付けたという。
その注文内容は「BRIの推進に当たっては、透明性、労働基準、債務の持続可能性(サステナビリティ)、オープンな調達手続、環境保護の諸原則を中核とすべし」というものだったらしい。さすがに「国家主権・人権の尊重」の文言まで入れることは控えたようだが、まあ、中国政府への注文としては妥当な内容だろう。
確かに、最近、EU各国は中国による巨大インフラ事業の世界的展開による影響力の拡大に懸念を強め始めている。去る1月に北京を訪問したマクロン仏大統領はBRIについて「この帯と路が通過する国々を属国化し、覇権を確立する新たな手段であってはならない。過去のシルクロードは中国の専有物ではなかったし、一方通行でもなかった。」と警告を発している。
2016年に中国の海運会社COSCOがギリシャのピレウス港について、また、昨年は債務返済不能に陥ったスリランカ政府からハンバントタ港について、それぞれの長期運営権を取得した中国の行為は、安全保障上の問題も絡んで欧米諸国の懸念を呼び起こすことになったようだ。
中国からすれば、これらの行為はすべて関係各国との合意の下で実施されたものであり、BRIに関わる全てのプロジェクトも資金ニーズのあるところに商業ベースの借款を貸与した結果であるので、第三国から文句を言われる筋合いはない、という考えだろう。
他方、プロジェクトの実施国側にも国内の政治・経済運営や人権状況に条件を付けられることなく大金を借りられるのは中国の資金のみであり、かつ、中国との関係強化はインドやロシアを牽制する意味で悪い選択肢ではない、と思っている節がある。
EU諸国は、2014年、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立に大挙して参加した。この銀行が融資するインフラ整備事業に自国業者が参画することでそのおこぼれに預かりたいとの思惑が見え見えだった。ところが、実際には、プロジェクトの90%近くが中国の業者によって落札され、「おこぼれ」は期待したほどではないと判ると失望が広がる。
むしろ欧州企業は「排除されている」のが実態だろう。AIIBは目下のところ国際開発金融機関というよりは中国の専有機関としての性格がむき出しであり、世銀やアジア開銀が積極的に関わらない限りこうした状況を変えるのは難しいのではないか。
しかし、風向きの変化もある。ネパールやミャンマー、直近ではマレーシアにおいてBRIプロジェクトを中止、ないし見直す動きが出ている。パキスタンやラオス、ジブチ、タジキスタン、キルギスタン、モンテネグロといった国々においても、中国からの多額の商業借款によって国の債務残高が著増していることへの懸念の声が出始めている。
また、スリランカの例のように、政治指導者が中国からの借款を利用して自分の地元に不要不急の空港やスポーツ施設などを作り、選挙を有利に運ぼうとする「政治案件」が多くなっていることへの不満もある。
かつて気候変動問題が国際的な重要関心事になり始めた時、中国政府は、地球温暖化は産業革命以来先進国が惹き起こしてきた問題であり、温暖化ガスの排出削減義務はもっぱら先進国が負うべきだと強く主張していた。
特に、2010年、京都議定書(先進国だけが温暖化ガスの排出削減義務を負う合意)の延長問題が議論されたCOP16では、「中国を含む主要排出国の全てが参加する新しい枠組みを創らない限り実効性のある地球温暖化防止は不可能」と主張する日本を口汚く、かつ執拗に非難した。
ところが、今では、その当時のことをすっかり忘れ、温暖化防止に向けた国際努力のけん引役もどきに振舞っている。
一帯一路構想やアジアインフラ投資銀行についても中国はいずれ世界の失望を買い、反発にも遭って、軌道修正を迫られる時が来る。
中国からすれば、19世紀後半に中国大陸を食い物にし、その利権を強奪した欧米諸国に今さらとやかく言われたくない、というのが本音かも知れないが、地球温暖化問題の事例のように、いつの間にか自己主張を引っ込めて「良い子」を演じなければならない時が来るのではないか。 
 
 
 2018/ 7

 

一帯一路 - 中国紙、債務外交批判で日本に矛先
 専門家「日本と中国は違う」 
中国主導の現代版シルクロード構想「一帯一路」は、関係国のインフラ建設で、返済能力を度外視する融資を結ばせているとして、英語圏有力紙は酷評している。中国官製紙は最近、この「債務トラップ外交」と呼ばれる批判をかわすため、発展途上国に借款を結ぶ日本を例にあげ「なぜ西側諸国は日本を責めないのか?」と矛先を日本に向けた。専門家は、「日本と中国の手法は違う」と反論した。
スリランカは、一帯一路構想に基づくインフラ整備を受け入れ、巨額融資を受けて同国第3の国際港コロンボ港を建設した。しかし、国の経済規模にふさわしくない巨大港の未熟な運営計画により、返済目途が立てられない。このため政府は2017年7月、同国主要の国際港であるハンバントタ港を、中国側に99年契約で運営権を貸し出した。
共産党機関紙・環球時報は7月15日、中国国内シンクタンクの中国現代国際関係研究所のワン・シー準研究員のオピニオン記事で、このスリランカの債務過多問題について「西側メディアは誤解を招いている」と反論した。
ワン氏は、インドの戦略研究家ブレーマ・チェラニー氏が、一帯一路は債務トラップ外交だと批判していることを例にあげて、「中国陰謀論は、欧米メディアの根拠のない誇大広告だ」と主張した。負債過多はスリランカの政治的不安定さと低収入、福祉政策などによるもので、「中国はその責任を負えない」とした。
さらに、2017年の同国統計を引用して、スリランカの借款(国家間の融資契約)は日本が12%、中国が10%だが、「日本を批判しない西側メディアはダブルスタンダード(二重基準)だ」と述べた。
中国側の主張には共感が得られていない模様だ。ブレーマ・チェラニー氏は、同日中にSNSで返答した。「環球時報さん、私の名前が挙がった以上、答えますね。あなたはスリランカが中国により背負わされた負担を過小評価しています。日本によるプロジェクトの金利は0.5%に過ぎないのに、中国は6.3%です」。
ほかにも、ワシントン拠点のシンクタンク南アジア遺産基金の研究員ジェフ・スミス氏は、中国の一帯一路に関する問題を列挙した。「日本は(外国における)インフラ計画の取引で、機密を犯したり、主権を侵害したりするような内容を盛り込まない。腐敗を促す違法な政治献金や、債務をほかの港の見返りに差し出させるようなことはしていない。コロンボ港のような高額計画にも、(政治)宣伝に利用したりしない」。
環球時報の記事のコメントには、中国側の意見に反論がほとんどを占めた。「日本は友好を築こうとしている、中国は支配しようとしている」「日本は、植民地主義に基づいて海洋戦略上重要な位置にある地域を借金漬けにし、港を99年契約で貸し出させるよう迫ってない」「普通の融資国なら、情報提供や共有を要求したり、返済できないことが明らかな、腐敗しきった国のリーダーと融資を結んだりしない」。
あるユーザは「中国は、一帯一路の評判が悪くなっていることに焦っているのではないか」と指摘した。
インドのメディア、ポストカードは2017年7月、スリランカの国の債務は6兆4000億円にも上り、全政府収入の95%が、借金の返済にあてられていると伝えた。そのうち中国からの借入は8000億円。同国財務相は「完済に400年かかる、非現実的だ」と同紙に答えた。 
 
 
 2018/ 6

 

 
 
 
 
 2018/ 5

 

世界に巨額のカネをばらまく中国の「一帯一路」
「トランプ大統領のもと、米国が世界経済でリーダーシップを発揮しなくなってきているが、そのリーダーシップの空白を埋めようとしているのが中国の習近平国家主席である。彼が提唱する『一帯一路』構想の国際会議には、約30ヵ国の国家主席、IMF、世界銀行、国連のトップなどが集まった」
このように始まるのは英紙「フィナンシャル・タイムズ」の社説だ。
同紙は、中国が世界中で大量の道路、鉄道、港湾、空港を建設しようとする「一帯一路」構想について、「世界経済に貢献する真のポテンシャルがある」と評価する。
だが、中国の狙いが単にアジア地域で政治力を増すものであるのならば、「貸し付けた資金が、生産的に使われる可能性は低くなる」とも指摘。世界経済を回復させるプロジェクトにはならないかもしれない、と懸念も述べた。
同様に、この巨大インフラ投資計画のリスクについて触れる報道は多い。たとえばフランスの三大日刊紙だ。「フィガロ」は、「地域全体のインフラ整備費用は、中国だけではまかなえないだろう。中国の外貨準備高は急激に減少し、2030年までに1兆7000億ドルと見積もられる」と書く。
「ル・モンド」も、計画の計画合理性自体が怪しいとして、こう述べる。
「融資する中国の金融機関にとって、融資に見合った見返りは期待できないだろう。中央アジアでは投資のだいたい30%が損失、パキスタンでは80%が損失だと見込まれていると、中国政府関係者も認めている。パキスタンへの投資は、中国のインド洋へのアクセスを可能にするものだが、そもそも実現が専門家から疑問視されているのだ」
さらに「リベラシオン」は、以下のように関係諸国の不安にまで踏み込んで分析している。
「パートナーの国には、財政的に信頼できなかったり、政治的に不安定だったりする国が少なくなく、赤字と未完成の計画だけが残る危険は少なくない。また、中国は『ウィンウィン』の関係をうたうが、小国は中国が自国の資源に手をつけることだけが目的ではないかという警戒感も存在する。国によっては、中国が完成したインフラを自らの軍事目的に使用するのではないかという危惧も持っている」
一方、英誌「エコノミスト」は、これらの疑義について触れながらも、「この構想が破綻すると見込むのは、間違いかもしれない」として、このように書く。
「習近平は、この構想を強力に推進してきたので、いまさらやめることはできないだろう。また、中国が抱える多くの経済問題を解決するためにも、この構想は必要だ。アジア諸国も、インフラの整備を熱望している。一帯一路構想には問題が山積みだが、習近平は、この構想を引き続き推進していく決意である」
米「ブルームバーグ」も、計画のスケールを小さくしていけば、「目玉のプロジェクトも減るが、そうすることで『一帯一路』構想も、中国も、より堅実になっていける」と指摘。アジアインフラ投資銀行(AIIB)同様に、厳格な審査基準を設ければ展望が開けるとする。 
実際に「一帯一路」に関係する国ではどのような報道が出ているのか。オーストラリア紙「オーストレイリアン・ファイナンシャル・レヴュー」は、計画のリスクを承知の上で、「私たちは、この構想を両手を広げて受け入れ、積極的に関与していくべき」として、以下のように積極的な論を展開する。
「ウィンウィンの結果を得ることは不可能ではない。中国は、世界経済のリーダー役に慣れていない。中国の指導者は、世界の舞台でどのように振る舞うべきなのかを学びはじめたばかりだ。その点では、いまの中国は、20世紀初頭の米国に似ている。
中国の政策立案者のなかには、自国のためだけでなく、世界経済のためになりたいと考えている人が少なくない。そうした中国の政策立案者に何をすればいいのかを教えることこそ、いま世界各国がすべきことである」
逆に厳しく批判を浴びせているのは、インド誌「アウトルック」だ。同紙は中国が口先では平和目的を語りながら、実際には軍事的な野望を隠さないことを厳しく批判している。
だが、単に「一帯一路」を拒否するだけでは先が開けない。どうすればいいのか、日本にも言及する同誌の提言を以下に引用しておこう。
「インドは、もっとポジティブなメッセージを発信していかなければならない。インドには、『一帯一路』構想に対抗できる構想を推し進めることはできないが、『一帯一路』に関してインドと近い考えを持つ日本などと協力して、アジア諸国やインド洋の島国のインフラを整備していくことは可能だ。
中国の『一帯一路』構想を帝国主義的だと感じる国は、ほかにも出てくるはずだ。そんなとき、インドが真に協調的な選択肢を用意することができれば、中国の構想からほかの国々を引き離していくことができるだろう」 
 

 

 
 
 
 
 

 



2018/11
 

 

●一帯一路 / シルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロード
2014年11月10日に中華人民共和国北京市で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、習近平総書記が提唱した経済圏構想である。 略称は一帯一路。
中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画であり、それぞれ2013年に習総書記がカザフスタンのナザルバエフ大学とインドネシア議会で演説したものである。
一帯一路構想のルートである中欧班列は、中国大陸とヨーロッパを繋ぐ世界最長の鉄道路線の義烏・ロンドン路線と義烏・マドリード路線であり、2017年には列車は3673本運行された。基本的にユーラシアランドブリッジ(亞歐大陸橋、Eurasian Land Bridge)の浜州線や集二線を経由するトランス・ユーラシア・ロジスティクスなどが代表的だが、厳冬期での輸送などに適してないロシアを迂回するルートとして新ユーラシアランドブリッジ(新亞歐大陸橋、New Eurasian Land Bridge)の北疆線やアゼルバイジャン、ジョージア、トルコを通るルートも開発されており、テヘラン、マザーリシャリーフとも結ばれてる。ヒューレット・パッカードやBMWといった欧米企業、伊藤忠商事や日本通運など日本企業もこれを活用してる。
海洋では北極海航路、北米航路も第三のルートとして含まれている。ロシアのムルマンスクの埠頭を開発して、ヨーロッパ - ロシア - 日本 - 中国というルートである。これはロシアの大統領ウラジミール・プーチンが一帯一路と北極海航路の連結という形で提唱し、中国は「氷上シルクロード」と呼んでいる。とりわけ日本の釧路港をアジアの玄関口、北のシンガポール港という位置づけで強い関心があることも公表されている。中国遠洋海運集団はドイツから釧路港に穀物を輸送した他、日本の商船三井は中国企業と合弁して北極海航路でロシアのLNGを運んでいる。
貨物輸送だけでなく、旅客輸送のためのインフラストラクチャーも重視されており、日本の奄美大島の大型クルーズ客船寄港地計画にも、一帯一路の後押しがあるとされる。また、さらに北京・モスクワ高速鉄道からアメリカ大陸と繋ぐ、高速鉄道構想もある世界的な物流網戦略でもあり、南米大陸横断鉄道などの構想がある中南米諸国とは「太平洋海上シルクロード」の構築で合意している。
中国政府の李克強国務院総理は、沿線国を訪問し、支持を呼び掛けている。100を超える国と地域から支持あるいは協力協定を得ており、さらに国際連合安全保障理事会、国際連合総会、東南アジア諸国連合、アラブ連盟、アフリカ連合、欧州連合、ユーラシア経済連合、アジア協力対話(Asia Cooperation Dialogue, ACD)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体、上海協力機構など多くの国際組織が支持を表明している。李克強首相は「『一帯一路』の建設と地域の開発・開放を結合させ、新ユーラシアランドブリッジ、陸海通関拠点の建設を強化する必要がある」としている。
そのため、諸国の経済不足を補い合い、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や中国・ユーラシア経済協力基金、シルクロード基金(丝绸之路基金、Silk Road Fund)などでインフラストラクチャー投資を拡大するだけではなく、中国から発展途上国への経済援助を通じ、人民元の国際準備通貨化による中国を中心とした世界経済圏を確立すると言われている。
2017年5月14日から15日にかけて北京では一帯一路国際協力サミットフォーラムが開催された。
2017年10月の中国共産党第十九回全国代表大会で、党規約に「一帯一路」が盛り込まれた。
 
近年の動向

 

上海協力機構参加国との協力
2015年5月8日には習総書記はロシアのプーチン大統領と会談し、一帯一路をユーラシア経済連合と連結させるとする共同声明を発表した。同年11月17日にロシアのプーチン大統領は、アメリカ合衆国の主導する環太平洋パートナーシップ協定を批判し、中国のシルクロード経済ベルトとロシアのユーラシア経済連合の連結がアジア太平洋の繁栄をもたらすとする寄稿文を世界のメディア各紙に行った。
2016年6月17日のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムでプーチン大統領が中国・パキスタン・インド・イランなど上海協力機構の参加国を中心に進めるとする「大ユーラシア・パートナーシップ」構想とその第一段階として中国のシルクロード経済ベルトとユーラシア経済連合の統合を発表し、25日のプーチン大統領の訪中から同構想が中露共同声明に盛り込まれて共同研究の準備と経済連携協定の交渉協議が開始された。
2017年5月14日に、北京での一帯一路国際協力サミットフォーラムの開幕式でプーチン大統領は一帯一路、上海協力機構、ユーラシア経済連合などは同構想の基礎となると演説し、同年7月には同構想の共同研究が開始され、同年10月に経済連携協定の交渉は完了した。
同年11月には、APECに向けてプーチン大統領が発表した論文でもユーラシア経済連合と中国の経済連携協定交渉の完了や大ユーラシア・パートナーシップは中国の一帯一路を基礎にすることが述べられ、2018年5月17日に中国との経済連携協定とイランとの暫定自由貿易協定が締結された。
2016年6月24日の中露蒙首脳会談では、モンゴルのツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領が掲げる草原の道構想と一帯一路とユーラシア経済連合の連結を謳った「中国・モンゴル・ロシア経済回廊建設計画綱要」が調印され、エルベグドルジの後任のハルトマーギーン・バトトルガ大統領も中国・モンゴル・ロシア経済回廊の建設で中露と一致してる。
2017年6月のカザフスタンのアスタナの上海協力機構の首脳会議で、一帯一路への支持などを掲げるアスタナ宣言が採択された。習総書記は「カザフスタン訪問の際に自ら打ち出した構想が今や100を超える国の賛同を得た」としてカザフスタンとの関係を重視しており、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領も自らの掲げるヌルリ・ジョーリ(光明の道)構想は、シルクロード経済ベルトの一部と認めて一帯一路と連結するとしてる。
一帯一路国際協力サミットフォーラム
2017年2月、北京市で一帯一路国際協力サミットフォーラムを5月に開催すると発表し、アントニオ・グテーレス国際連合事務総長ら70を超える国際機関代表団やロシアのプーチン大統領ら29カ国の首脳が出席を表明したのをはじめとして、世界130カ国超の政府代表団が参加を決定した。しかし、主要7か国(G7)は閣僚級などを出席させて首脳のほとんどは欠席し、出席したのはイタリアのパオロ・ジェンティローニ首相だけとなった]。
一帯一路を中国主導の巨大経済圏構想と警戒してAIIB参加を見送ってきた日米も、米国のドナルド・トランプ政権は同サミットにマット・ポッティンガーNSCアジア上級部長を団長とする代表団を派遣させており、同サミットでポッティンガーは米国企業の参加準備と一帯一路の作業部会設置を表明しつつ透明性と民間資本の活用を主張した。トランプ大統領の上級顧問で元中央情報局(CIA)長官のジェームズ・ウールジーはAIIBへの米国の不参加を前任のバラク・オバマ政権の「戦略的失敗」と批判してトランプ政権は中国の一帯一路に「ずっと温かくなる」との見通しを述べていた。トランプの支援者であり、民間軍事会社のブラックウォーターUSAで有名な元アメリカ海軍特殊部隊SEALsのエリック・プリンスは中国政府系(中国中信集団公司)の警備・流通会社フロンティア・セキュリティ・グループの会長としてアフリカなどで一帯一路戦略を支援している。トランプ政権になってから北京のアメリカ大使館などで米国企業と中国国有企業を集めた一帯一路での米中協力を謳う会合が行われるようになった。トランプ大統領自身も一帯一路への協力について米国はオープンであると述べてる。トランプ大統領の訪中の際は習総書記と一帯一路への協力で一致し、成立した約28兆円の商談の中にはシルクロード基金とGEの共同投資プラットフォームなど一帯一路関連のものもあった。米国内ではカリフォルニア州知事のジェリー・ブラウンなどが独自に一帯一路構想への参加を表明しており、カリフォルニア州は作業部会を設立してる。
日本国政府も安倍晋三内閣総理大臣は、今井尚哉内閣総理大臣秘書官、松村祥史経済産業副大臣、二階俊博自民党幹事長、榊原定征経団連会長ら約50人規模の官民代表団を出席させ、団長の二階幹事長は「日本も積極的に協力をする決意をもってうかがってる」「日本は一帯一路に最大限協力する」としつつ同サミットではインフラの開放性と公平性を主張した。同行した松村経産副大臣もオープンかつ公正なインフラ整備を訴えた。二階幹事長はAIIBについて「参加をどれだけ早い段階で決断するかだ」と発言し、安倍首相はAIIBの日本参加について「公正なガバナンスが確立できるのかなどの疑問点が解消されれば前向きに考える」と述べ、一帯一路については「国際社会共通の考え方を十分に取り入れる観点から協力したい」と述べ、日中首脳会談でも習総書記に協力を表明してる。中国政府は日本政府の一帯一路への協力的な姿勢を歓迎することを表明している。2017年8月には自民党・公明党と中国共産党の間で行われた第6回日中与党交流協議会は一帯一路への協力を積極的に検討するとする共同提言をまとめた。民間でも経団連と経済同友会は「AIIBへの参加を前向きに検討すべき」と主張しており、2017年11月に史上最大規模の財界訪中団が中国を訪れた際に経団連などは一帯一路への協力のための窓口設置や共同研究体制を提言しており、中国の日系企業は一帯一路連絡協議会を設置している。中国からも経団連や安倍首相の一帯一路への協力に前向きな姿勢を歓迎され、同年12月には安倍首相は自らの「自由で開かれたインド太平洋戦略」と一帯一路の連携を推進する意向を固め、「一帯一路に大いに協力できる」「自由で開放的なインド太平洋戦略を推進するとともに中国の一帯一路により広範に協力する」などとも述べており、軍事利用されかねない港湾開発は対象外に指定しつつ日本政府は一帯一路に関する第三国での日中民間経済協力指針を策定した。2018年1月22日に安倍首相は施政方針演説でアジアのインフラ整備で中国と協力することを表明して中国政府から歓迎され、一帯一路について「地域の平和と繁栄に貢献することを期待する。日本としてはこうした観点から協力していく」と述べ、同年5月9日の李克強首相と安倍首相の会談で一帯一路に関する第三国でのインフラ整備協力を具体化させる官民合同委員会など官民協議体の設置で合意し、翌6月に第三国での日中インフラ整備協力をインフラシステム輸出戦略に盛り込み、同年9月25日に北京で官民合同委員会の初会合を開催し、同年10月の日本の首相では7年ぶりの安倍首相の公式訪中での官民フォーラムで第三国でのインフラ共同投資などを行うための52件の協力文書が交わされ、習総書記は「一帯一路を共に建設することは、中日協力の新たなプラットフォーム」と述べた。
AIIBへの参加申請を拒否されるなど核実験をめぐり中国と関係冷却化が伝えられる北朝鮮からも金英才(キム・ヨンジェ)対外経済相が出席したが、AIIBに参加した一方でTHAADミサイル配備をめぐって蜜月ではなくなったとされる韓国から参加するのは駐中国大使と対外経済政策研究院院長ら3名のみで閣僚級の招待状すら送られなかった。しかし、2017年大韓民国大統領選挙でTHAADに批判的な文在寅政権が誕生した同サミット直前になって中国から正式な招待状がおくられたため、韓国政府は代表団の派遣を急遽決定した。文在寅政権では初となる韓国と北朝鮮の要人接触も同サミットで行われた。中国がこの会議に国際社会から経済制裁を受けている北朝鮮を招いたことに対し、アメリカ合衆国政府は北京のアメリカ大使館を通じて強い懸念を表明した。北朝鮮は5月14日、サミット開幕に合わせて弾道ミサイルを発射し、日本の安倍首相はこれを強く批判、出席した二階幹事長も安倍首相と電話で対応を協議してサミットで抗議文を読み上げ、フランスのメディアは北朝鮮のミサイル発射をサミット開幕への「祝砲」と報道した。
上海協力機構とAIIBの加盟国でもあるインドは2017年5月13日、一帯一路の一部である中国・パキスタン経済回廊が係争地のカシミールを通るとして「主権と領土保全における核心的な懸念を無視した事業計画を受け入れる国は1つもない」と批判する外務省声明を発表し、一帯一路国際協力サミットフォーラムからのナレンドラ・モディ首相らへの招待を拒否して世界で唯一公式にフォーラムをボイコットした国となった。また、「支えきれない債務負担を地域に作り出す事業は行わないようにするという財務上の責任の原則に従うべきだ」とも述べ、中国がスリランカを借金漬けにしてることなどを念頭に牽制している。同じく上海協力機構とAIIBの加盟国で一帯一路に参加するロシアは「個別に問題があっても政治的解決を他の全ての分野に結び付けてはならない。一帯一路からメリットを得る道を探せるだけの非常に賢明な政治家や外交官がインドにいると信じる」として友好国のインドに対して中国の一帯一路に協力するよう求めている。2018年6月の青島での上海協力機構の首脳会議ではインドのモディ首相のみ一帯一路に支持を表明しなかった。
なお、この会議には、シリア内戦中のアサド政権の閣僚級も招待されたことも注目された。
アジア金融協力協会
2016年7月のボアオ・アジア・フォーラムで李克強首相が提唱し、2017年5月11日に北京で設立された「アジア金融協力協会」は一帯一路構想との関連があるとされており、邦銀からは三大メガバンクの三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行が加盟した。
 
問題点

 

中国から融資を受けても財政の健全性や透明性といったガバナンスとコンプライアンスが無いために、莫大な債務を発展途上国が負わされて、土地を代わりに取り上げられることが問題になっている。
マレーシアは、中国の国営企業から受けた融資が国営ファンドに利用された可能性と、過剰なコストの問題から4つ中3つを中断した。
パキスタンは、2015年に中国が世界に披露する一帯一路の象徴的プロジェクトとして始まった620億ドル規模の事業に公的資金が投入されなければ継続不可能な莫大な借金をきたして、国際通貨基金(IMF)に救済金融を申請する危機に追い込まれている。
スリランカは、建設費のほとんどを中国からの融資受け完成させたインフラに赤字が続き、中国への11億2000万ドルの借金帳消しの条件で、2017年12月に株式の70%を引き渡して、南部のハンバントタ港に99年間の港湾運営権を中国企業に譲渡する事態に追い込まれた。獲得した港の軍事目的が指摘されている。
ミャンマーの港湾事業も、中国の軍事的目的が疑われる事例として指摘されている。ウォールストリート・ジャーナルは、中国の大規模な資金支援で、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、ジブチが大規模な負債の返済リスクに直面している状態だと報道している。
キルギスの場合、一帯一路のために国債の国内総生産(GDP)の割合が62%から78%に、ジブチは82%で91%に急騰と推定した。これらの問題の背景として、建設中のインフラは完成した後に中国に返済義務化されているが、事業採算性を判断する能力やノウハウが不足している途上国は、負債が積み重なっている事がある。
韓国の国民日報によると、中国の利益優先主義が背後にあることによって、中国の銀行から事業へ融資契約をしなければならないため透明性がなく、施工まで中国企業が行うために、中国にますます借金を負う仕組みになっている。中国国営の環球時報に名指しで批判されたインドの戦略研究家ブレーマ・チェラニーは、スリランカが中国に背負わされた負担を過小にしていること、日本によるプロジェクトの金利は0.5%なのに対して一帯一路など中国人によるものは6.3%もするスリランカの例を上げて、一帯一路は『債務のワナ』と指摘している。