お金バラマキ政権

耳触りの良いキーワード 羅列好きの安倍総理

所信表明演説
税金に関わる「財政」「お金」 のキーワードなし

財政健全化  経済・景気対策 
打つ手なし あとは野となれ山となれ 先送り
これから3年間 お金バラマキ政権を目指します


 
 
「財政」 のキーワード
言葉なし
「金」 のキーワード
地方創生交付「金」  資「金」繰り確保  グループ補助「金」  「金」正恩委員長 
「アベノミクス」 
過去のキーワード 死語
●第百九十七回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説
一 はじめに
まず冒頭、本庶佑(たすく)特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞を心よりお慶び申し上げます。日本で生まれた研究成果が、世界中のがんで苦しむ人々に大きな希望の光をもたらしている。同じ日本人として、大きな誇りであります。
「定説を覆すことで、新たな世界が広がる」
この世界的な偉業をもたらしたのは、本庶先生の、これまでの「常識」にとらわれない、全く新しいアプローチでありました。
世界は、今、かつてないスピードで、変化しています。
この、わずか五年余りの間に、人工知能は急速な進歩を遂げ、様々な分野で人間の能力を凌駕(りょうが)しようとしています。膨大なデジタルデータが、世界を瞬時に駆け巡り、全く新しい価値を生み出す時代となりました。
次の五年、いや三年もあれば、世界は、私たちが今想像もできない進化を遂げるに違いない。そうした時代にあって、私たちもまた、これまでの「常識」を打ち破らなければなりません。私たち自身の手で、今こそ、新しい日本の国創りをスタートする時であります。
強い日本。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。
激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の三年間、私はその先頭に立つ決意です。私たちの子や孫の世代のために、希望にあふれ、誇りある日本を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
二 強靱(じん)な故郷(ふるさと)づくり
(復旧・復興の加速)
この夏、大きな自然災害が相次ぎ、日本列島に甚大な被害をもたらしました。お亡くなりになられた方々に、衷心より哀悼の意を表します。全ての被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。
九千三百五十六億円の補正予算により、道路や河川の改修、ため池の補修など、災害復旧を加速してまいります。子どもたちの命を守るため、ブロック塀の安全対策を進めます。熱中症対策として、全国の公立小学校・中学校にエアコンを設置します。
被災者の皆さんの心に寄り添いながら、住まいをはじめ、生活再建を加速します。ハウスの再建や果樹の植え替えなど営農再開に向けた支援、中小・小規模事業者の皆さんの資金繰り確保、グループ補助金による設備再建など、生業(なりわい)の復興に全力を尽くしてまいります。
北海道の大自然、美しい倉敷の街並み。観光名所に、多くの皆さんに足を運んでいただくことが、復興の大きな力となります。政府も「ふっこう割」で後押ししてまいります。災害情報の外国語による提供など、外国人観光客の皆さんの安全、安心の確保にも取り組みます。
(震災からの復興)
熊本を訪れる外国人観光客は、昨年、熊本地震発生前の水準を回復しました。来年秋に向けて熊本城天守閣の再建を進め、この流れを加速してまいります。
東北の被災地でも、震災前の二倍近い観光客が海外から訪れるようになりました。本年も全国平均を上回る伸びとなっており、東日本大震災からの復興は、一歩一歩、着実に進んでいます。
原発事故で大きな被害を受けた福島では、避難指示が解除された五つの町や村で、この春、小学校・中学校が再開しました。帰還困難区域でも、間もなく、葛尾村で除染が始まり、全ての復興再生拠点の整備がスタートします。南相馬市では、この夏、最先端のロボットテストフィールドが動き始めました。
東北の復興なくして、日本の再生なし。この決意の下に、「創造と可能性の地」としての東北を創り上げてまいります。
(国土強靱化)
記録的な集中豪雨、経験したことのない暴風や大雨を伴う台風、異常なまでの猛暑。自然環境の異変に、多くの皆さんが、大変な不安を抱いておられます。
電力や交通など、生活に欠かせないインフラの総点検を進めます。その結果を踏まえ、災害時にしっかりとライフラインが維持されるよう、強靱なインフラを創り上げてまいります。
更には、治山・治水、ため池の改修など、防災・減災、国土強靱化のための対策を年内に取りまとめ、三年間集中で実施いたします。強靱な故郷、誰もが安心して暮らすことができる故郷を創り上げてまいります。
三 地方創生
(農林水産新時代)
伝統ある故郷、美しい棚田、田園風景を守ってきたのは、農林水産業。農こそ、国の基(もとい)であります。
しかし、農家の平均年齢が六十六歳を超えてしまった現在、守るためにこそ攻めなければなりません。
四十年以上続いてきたいわゆる減反政策を、今年度から完全に廃止しました。需要のある作物を作り、水田のフル活用を進めることで、コメの取引価格は着実に回復しています。生産農業所得は、この十八年間で最も高い、三・八兆円まで拡大しました。
農林水産物の輸出も、五年連続で過去最高を更新し、昨年は八千億円を超えました。本年五月、中国への精米輸出施設の追加で合意し、コメの更なる輸出拡大にも取り組んでいます。
こうした攻めの農政改革を進める中で、四十歳代以下の若手就農者は、初めて、四年連続で二万人を超えました。
次は水産業改革。七十年ぶりに漁業法を抜本的に改正いたします。
漁獲量による資源管理を導入し、船のトン数規制から転換する。大型化を可能とすることで、漁業の生産性を高めます。漁業権の新たな付与について、法律で優先順位を定めた現行制度を廃止し、養殖業の新規参入、規模拡大を促してまいります。
若い人たちが、自らの意欲とアイデアで、新しい農林水産業に挑戦ができる。自分たちの未来を託すことができる「農林水産新時代」を切り拓いてまいります。
(全世代型社会保障改革)
高齢化率三十六・五%。過疎化。限界集落。このピンチを、島根県雲南市は思い切って、若者たちに託しました。
「日本で一番、若者がチャレンジしやすい町を目指す」
空き家をシェアオフィスに利用する。耕作放棄地で育てた作物から新しい特産品を開発する。若者たちからは、社会的課題の解決につながる新しいアイデアが次々と生まれました。
過疎地を訪問し、看護サービスを提供する。三人の若者たちが始めたチャレンジは、地方創生交付金を活用し、行政や地域の支えも受け、町の病院や診療所の新しいネットワークを作り上げることに成功しました。活動の輪は広がり、今、七人の若者たちが、中山間地域の医療を支える大きな力となっています。
ピンチもチャンスに変えることができる。
この四年間で、五十件近いアイデアが起業につながりました。地方にこそチャンスがある。雲南市には、今、二百五十人近い若者たちが移住し、地域の新しい活力となっています。
少子高齢化という我が国最大のピンチもまた、チャンスに変えることができるはずです。
この五年間、生産年齢人口が四百五十万人減る中でも、女性活躍の旗を高く掲げることで、女性の就業者は、逆に、二百万人増やすことができました。
元気で、意欲あふれる高齢者の皆さんの経験や知恵をもっと活かすことができれば、日本はまだまだ成長できる。人生百年時代の到来は大きなチャンスです。いくつになっても、学び直しのチャンスがあり、生きがいを持って働くことができる。これまでの働き方改革の上に、生涯現役社会を目指し、六十五歳以上への継続雇用の引上げや中途採用・キャリア採用の拡大など雇用制度改革に向けた検討を進めます。
消費税率引上げが経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員することと併せ、来年十月から幼児教育を無償化します。更に、再来年四月から真に必要な子どもたちへの高等教育を無償化する。安倍内閣は、未来を担う子どもたち、子育て世代に、大胆に投資してまいります。
子どもから現役世代、お年寄りまで、全ての世代が安心できる社会保障制度へと、今後三年かけて改革を進めます。女性も男性も、若者も高齢者も、障害や難病のある方も、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を、皆さん、共に、創り上げようではありませんか。
(外国人材)
この春、高校、大学を卒業した若者たちの就職率は過去最高水準となりました。有効求人倍率は、二年近くにわたり、全国四十七全ての都道府県で一倍を超えています。こうした中で、全国の中小・小規模事業者の皆さんが、深刻な人手不足に直面しています。
このピンチも、チャンスに変えることができる。
IoT、ロボット、人工知能、ビッグデータ。第四次産業革命のイノベーションを取り入れることで生産性の向上につなげます。その活用を阻む規制や制度を大胆に改革していきます。本年度から、固定資産税ゼロのかつてない制度がスタートしました。中小・小規模事業者の皆さん、地域を担う中堅企業の皆さんの生産性革命に向けた投資を力強く後押しします。
同時に、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れる。入国管理法を改正し、就労を目的とした新しい在留資格を設けます。出入国在留管理庁を新たに設置し、受入企業の監督に万全を期します。社会の一員として、その生活環境の確保に取り組んでまいります。更に、日本人と同等の報酬をしっかりと確保いたします。
半年前に来日されたばかりの、ベトナムのクアン国家主席が先般お亡くなりになられました。心から御冥福をお祈りします。
来日の際訪れた群馬の中小企業では、ベトナム人の青年が、日本人と同じ給料をもらいながら、一緒に働いていた。そのことを、クアン主席は大変うれしそうに、私に語ってくださいました。
「彼にとって、大きな誇りとなっている」
これは、私たちにとっても誇りであります。世界から尊敬される日本、世界中から優秀な人材が集まる日本を創り上げてまいります。
四 外交・安全保障
(戦後日本外交の総決算)
ASEAN、豪州、インドをはじめ、基本的価値を共有する国々と共に、日本は、アジア・太平洋からインド洋に至る、この広大な地域に、確固たる平和と繁栄を築き上げてまいります。
しかし、北東アジアでは、冷戦時代の構造が、今なお残されたままとなっている。「戦後」が、そのまま置き去りとなってきました。
六月の歴史的な米朝首脳会談によって、北朝鮮をめぐる情勢は、大きく動き出しています。この流れに更なる弾みをつけ、日米、日米韓の結束の下、国際社会と連携しながら、朝鮮半島の完全な非核化を目指します。
次は、私自身が金正恩委員長と向き合わなければならない。最重要課題である拉致問題について、御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、あらゆるチャンスを逃さないとの決意で臨みます。相互不信の殻を破り、拉致、核、ミサイルの問題を解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します。
ロシアとは、戦後七十年以上、平和条約が締結されていない異常な状況にあります。航空機による元島民の皆様のお墓参りは二年目となり、共同経済活動も実現に向け、動き出しました。長門合意は着実に前進しています。私とプーチン大統領との信頼関係の上に、領土問題を解決し、日露平和条約を締結する。日露新時代を切り拓いてまいります。
日中平和友好条約締結四十周年の節目に当たり、私は、明日、中国を訪問いたします。日中両国は、この地域の平和と繁栄に大きな責任を有しています。首脳間の往来を重ねると同時に、ビジネス協力、スポーツなどあらゆるレベルで両国民の交流を飛躍的に強化し、日中関係を新たな段階へと押し上げてまいります。
今こそ、戦後日本外交の総決算を行う。新しい時代のアジア・太平洋地域の平和と繁栄の礎を築くため、日本外交の新たな地平を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
(強固な日米同盟)
その基軸は、日米同盟です。
三月、一部返還が実現した沖縄の牧港補給地区では、県内最悪と言われる渋滞の解消に向けて、道路の拡幅を進めます。今後も、抑止力を維持しながら、沖縄の皆さんの心に寄り添い、安倍内閣は、基地負担の軽減に、一つひとつ、結果を出してまいります。
日本と米国は、戦後一貫して、強固な同盟国であるとともに、経済大国として、世界の自由貿易体制を共に牽(けん)引してきました。この土台の上に、先月、日米物品貿易協定の交渉を開始することで合意しました。
農産品については、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である。この大前提を米国と合意しました。同時に、協議が行われている間は、日本の自動車に追加関税が課されないことも確認しました。
自由で公正な貿易を一層促進し、双方に利益が得られるような結果を出してまいります。
(新たな時代のルールづくり)
TPPは、その先駆けであります。世界で保護主義への懸念が高まる中で、世界のマーケットに、新たな時代の公正なルールを打ち立てることが必要です。
欧州との経済連携協定の早期発効を目指します。人口六億人、世界経済の三割を占める巨大な経済圏が生まれます。
和牛、ぶり、日本酒の輸出に対する関税が即時に撤廃され、おいしい日本の農林水産物にチャンスが広がります。農家の皆さんの不安にもしっかり向き合い、安心して再生産できるよう、十分な対策を講じてまいります。
RCEP交渉を早期に妥結することで、中国、インドを含むアジアの国々とも協力し、自由で公正な国際経済秩序を更に進化させてまいります。これからも、日本は、自由貿易の旗手として、新しい時代の世界のルールづくりを力強くリードしていく決意であります。
五 平成の、その先の時代の新たな国創り
来年、トランプ大統領、プーチン大統領、習近平主席をはじめ世界のリーダーたちを招き、日本が初めて議長国となり、G20大阪サミットを開催します。その翌年には、東京オリンピック・パラリンピック。世界中の注目が日本に集まります。
歴史的な皇位継承まで、残り、半年余りとなりました。国民がこぞって寿(ことほ)ぎ、世界の人々から祝福されるよう、内閣を挙げて準備を進めてまいります。
まさに歴史の転換点にあって、平成の、その先の時代に向かって、日本の新たな国創りを、皆さん、共に、進めていこうではありませんか。
国の理想を語るものは憲法です。憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆様の理解を深める努力を重ねていく。そうした中から、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信しています。
そのあるべき姿を最終的に決めるのは、国民の皆様です。制定から七十年以上を経た今、国民の皆様と共に議論を深め、私たち国会議員の責任を、共に、果たしていこうではありませんか。
六 おわりに
「国民一致の力でなければ、到底国家の進運を図ることはできぬ」
戊辰戦争から五十年。南部藩出身の原敬は、我が国初の本格的な政党内閣を樹立しました。
議会の多数に基盤を得て、力強い政権運営が可能となった。総選挙でも大きな勝利を得て、衆議院の三分の二近い議席を占めるに至りました。強固な政治基盤の上に、高等教育の充実、地方のインフラ整備、安全保障の強化。明治の、その先の時代の国創りを強力に進めるに当たり、原敬はこう語っています。
「常に民意の存するところを考察すべし」
私もまた、次の三年、国民の皆様と共に新しい国創りに挑戦する。六年前、国民の皆様と共に政権奪還を成し遂げた時の初心、挑戦者としての気迫は、いささかも変わるところはありません。
しかし、長さゆえの慢心はないか。そうした国民の皆様の懸念にもしっかりと向き合ってまいります。むしろ、その長さこそが、継続こそが、力である。そう思っていただけるよう、一層、身を引き締めて政権運営に当たる決意であります。
少子高齢化、激動する国際情勢に真正面から立ち向かい、私たちの子や孫の世代のために、今日、ここから、希望にあふれ、誇りある日本を、皆さん、共に、創り上げようではありませんか。
御清聴ありがとうございました。 
●安倍首相の所信表明演説要旨
はじめに
激動する世界をど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の3年間、その先頭に立つ決意だ。
強靱(きょうじん)な故郷づくり
自然災害が相次ぎ、日本列島に甚大な被害をもたらした。生活に欠かせないインフラの総点検を進める。災害時にライフラインが維持されるよう強靱なインフラを創り上げていく。防災・減災、国土強靱化のための対策を年内に取りまとめ、3年間集中で実施する。
地方創生
生涯現役社会を目指し、65歳以上への継続雇用の引き上げや中途採用・キャリア採用の拡大など雇用制度改革に向けた検討を進める。消費税率引き上げが経済に影響を及ぼさないようあらゆる施策を総動員することと併せ、来年10月から幼児教育を無償化する。さらに再来年4月から高等教育を無償化する。全ての世代が安心できる社会保障制度へと、今後3年かけて改革を進める。入国管理法を改正し、就労を目的とした新しい在留資格を設ける。
外交・安全保障
私自身が金正恩朝鮮労働党委員長と向き合わなければならない。拉致問題の解決に向け、あらゆるチャンスを逃さないとの決意で臨む。ロシアとは戦後70年以上、平和条約が締結されていない異常な状況にある。プーチン大統領との信頼関係の上に領土問題を解決し、平和条約を締結する。私はあす中国を訪問する。首脳間の往来を重ねると同時に、あらゆるレベルでの交流を飛躍的に強化し、日中関係を新たな段階へ押し上げる。今こそ、戦後日本外交の総決算を行う。基軸は日米同盟だ。日本と米国は、戦後一貫して強固な同盟国であるとともに、世界の自由貿易体制を共にけん引してきた。先月、日米物品貿易協定の交渉を開始することで合意した。自由で公正な貿易を一層促進し、双方に利益が得られる結果を出していく。
平成の、その先の時代の新たな国創り
来年、20カ国・地域(G20)大阪サミットを開催する。その翌年には東京五輪。皇位継承まで残り半年余りとなった。歴史の転換点にあって、平成の先の時代に向かって、新たな国創りを共に進めていこうではないか。国の理想を語るものは憲法だ。憲法審査会で政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく。与野党の政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信している。国民と共に議論を深め、国会議員の責任を共に果たしていこうではないか。
おわりに
政権奪還を成し遂げた時の初心はいささかも変わるところはない。長さゆえの慢心はないか。そうした国民の懸念にもしっかりと向き合っていく。長さこそ力だと思ってもらえるよう、一層身を引き締めて政権運営に当たる決意だ。 
●所信表明評価 諸話
改憲姿勢など批判 野党 所信表明演説で 10/24
24日の安倍晋三首相の所信表明演説に野党は一斉に批判した。立憲民主党の枝野幸男代表は消費増税や米軍普天間基地(宜野湾市)の移設などの問題について説明が足りないと指摘。首相が憲法改正案の提示に期待感を示したことに「首相は憲法改正の権限を持っていないので意味が無い妄言だ」と語った。
国民民主党の玉木雄一郎代表は憲法改正に関して「首相の改憲案には反対だ。何も変わらないと言いながら自衛権を広げていく中身は非常に問題がある」と述べた。共産党の志位和夫委員長は「国会に対して憲法改正の号令をかけるに等しく、立法府に対する介入だ。言語道断だ」と語った。
社民党の吉川元幹事長は、首相が米国との2国間協議を物品貿易協定(TAG)交渉と呼んだことを批判した。「日本は聞いたことのない名前を出して、自由貿易協定(FTA)ではないと言っている。チャーハンを焼き飯と言えば中身が変わるのか」と述べた。
首相、外国人受け入れ拡大に意欲 野党は「拙速」と批判 10/24
第4次安倍改造内閣が発足して初の国会論戦となる第197回臨時国会が24日召集された。安倍晋三首相は所信表明演説で、外国人労働者の受け入れを拡大する在留資格の創設や自民党改憲案の憲法審査会への提示に意欲を示した。野党は閣僚の資質を追及するなど対決姿勢を強めている。
会期は12月10日までの48日間。会期中に外交日程が立て込んでいることから、政府・与党は審議時間の確保をにらんで提出法案を絞り込む。災害対応を盛り込んだ総額9356億円の第1次補正予算案は、11月上旬の成立をめざす。
安倍首相は所信表明演説で、提出を予定する出入国管理法(入管法)改正案など外国人労働者の受け入れ拡大策について、「全国の中小・小規模事業者が深刻な人手不足に直面している」と強調。「世界中から優秀な人材が集まる日本を創りあげる」と必要性を訴えた。
憲法改正については「政党が具体的な改正案を示すことで国民の理解を深める努力を重ねていく」として、9条への自衛隊明記など党の改憲案提示に意欲を示した。そのうえで「与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信している」と述べ、与野党の議論を促した。
この臨時国会から、立憲民主党会派が衆参両院で野党第1会派になり、対決色がさらに強まるのは必至だ。入管法改正案では、新しい在留資格制度の来年4月からの導入をめざす政府に対して「拙速」との批判を強めている。
所信表明演説「美辞麗句」「気合だけ」=野党批判−自公、維新は評価 10/24
安倍晋三首相の所信表明演説に対し、主要野党は24日、「美辞麗句だけ並べて中身が伴っていない」(枝野幸男立憲民主党代表)などと厳しく批判した。与党などからは評価する声が上がった。
枝野氏は国会内で記者団に「政治の役割は影になっている部分に光を当てて全体を明るくすることだ。光の部分だけ強調するのは政治の責任放棄だ」と演説内容を批判。「『青年の主張』なら立派だ」と皮肉った。
国民民主党の玉木雄一郎代表は記者会見で「心に残るところがなかった。『気合だけ』という感じ」と酷評。衆院会派「無所属の会」の岡田克也代表は会見で、財政健全化への言及がなかったことを「残念だ」と述べた。
共産党の志位和夫委員長は会見で「空疎な中に危険な毒がちりばめられた演説だ」と指摘。消費税増税や日米貿易交渉に関する詳しい説明を意図的に避けたと非難した。
一方、日本維新の会の馬場伸幸幹事長は会見で、首相が教育無償化に意欲を示した点を評価。「われわれが結党以来取り組んできた。上手に安倍政権に抱きつかれた」とも述べた。
自民党の岸田文雄政調会長は会見で「首相の気力や決意を感じる演説だった」と語り、公明党の山口那津男代表は憲法改正に触れた部分について「抑制的に言及していた」との見方を記者団に示した。
首相所信表明 野党が批判 美辞麗句だけ/不都合な話せず 10/24
安倍晋三首相の24日の所信表明演説には、先の通常国会で批判を浴びた公文書改ざん問題や、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設に関する言及がなく、野党は批判を強めている。首相訪中後の29日から始まる論戦で、政府の姿勢を厳しく追及する構えだ。
立憲民主党の枝野幸男代表は「美辞麗句だけ並べてまったく中身が伴っていない。いま国民から問われていることについて何も話していない」と切り捨てた。首相が「継続こそが力」と長期の政権運営に意欲を示したことには「長い短いはあまり意味のある議論とは思わない」と述べた。
首相は、外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正に取り組むと表明した。ただ、入管法改正案は自民党内にも慎重意見があり、党内手続きは終わっていない。国民民主党の玉木雄一郎代表は記者会見で「業種も入ってくる規模も分からない。まずそこを政府に示してもらう」と述べ、国会審議を通じて制度の問題点を明らかにする考えを示した。
首相が「長さゆえの慢心はないかという国民の懸念にしっかりと向き合う」と約束したことについて、共産党の志位和夫委員長は、学校法人「森友学園」「加計学園」問題に触れていないと指摘。「自分にとって都合の悪いことは一切説明しない。消費税の問題も一言入っているだけだ」と批判した。
衆院会派「無所属の会」の岡田克也代表は「これから3年間、国民をリードしていく意気込みはおよそ感じられない薄味の演説だった」と酷評した。
対照的に、自民党の二階俊博幹事長は「新たな3年間のスタートにふさわしい演説だった。スピードアップは国会審議でも極めて重要な意味を持っている」と述べ、2018年度補正予算案などの早期成立を目指す考えを強調した。
公明党の山口那津男代表は「(首相は)政権を奪還した初心を保ち、緊張感を持った政権運営を心がける姿勢を示した。私も同感だ」と述べ、政権に緩みが生じないよう注文をつけた。
安倍首相、所信表明演説で「強い日本」を強調 10/24
安倍晋三首相は24日の所信表明演説で、「強い日本」をキーワードに災害対応と少子高齢化、厳しさを増す安全保障環境という荒波を乗り越えて未来への海図を描き、平和で豊かな日本を次世代に引き継ぐ決意を表明した。首相にとって臨時国会は、9月の自民党総裁選で連続3選し「最後の3年間」に向けたスタートラインともなる。
「強い日本。それを創るのは、他の誰でもない。私たち自身だ」
首相が演説冒頭、口にしたのは強い危機感だった。
来年は皇位継承に伴う一連の式典や、日本が議長国を務める6月の20カ国・地域(G20)首脳会議など大きな国際行事が続く。首相が最初に訴えた防災と国土強靱(きょうじん)化は「誰もが安心して暮らすことができる故郷(ふるさと)」に不可欠だ。
外国人材の積極活用に舵を切るのも、少子高齢化というわが国最大のピンチを克服するためだ。15歳から64歳の生産年齢人口は全体の6割を切った。団塊世代が75歳以上となる2025(平成37)年以降はさらに急減し、慢性的な人手不足は成長の足かせとなる。
一方で、外国人の受け入れは、治安悪化などの懸念が根強い。政府が出入国在留管理庁を新設するのは、外国人の生活環境の確保など支援体制の整備を進めるためだ。政府には、懸念を払拭する努力と丁寧な説明が求められる。
「戦後外交の総決算」と位置づける日露関係では、「領土問題を解決し、平和条約を締結する」と宣言し、ロシアのプーチン大統領が9月に提案した「前提条件なしの平和条約締結」を一蹴した。任期中に北方領土問題の解決に道筋をつけるという国民との約束を果たせるか。重責が首相の双肩にのしかかる。
ただ、演説には一部で違和感も覚えた。大正7年、初めて爵位(しゃくい)のない平民として首相になり「平民宰相」と称された原敬元首相の言葉に言及した部分だ。
「長さゆえの慢心はないか。そうした国民の皆様の懸念にも向き合っていく」
謙虚さを示したのは、来年の参院選を見据えたものだろう。国民感情を大切にするのはいいが、一国のリーダーが、根拠のない政権批判にまで過度に配慮する必要はないのではないか。
平成24年12月の政権奪還から約6年。国際社会で日本の存在感は飛躍的に高まった。首相自身が自覚する「継続こそが力」を武器に、今後も堂々と国を率いてもらいたい。
首相の所信表明演説 問題から目を背けるのか 10/25
当面の政治課題への基本姿勢とはいえ総花の感が否めず、それぞれ内在する問題には一切触れない―。安倍晋三首相が臨時国会で行った所信表明演説にはそんな印象が拭えない。
自民党総裁選で声高に提唱した憲法改正は末尾でわずかに触れただけ。残る3年で「やり遂げる」といった意気込みは見えない。今国会にも自民党の改憲案を提出するとしていたはずだ。連立を組む公明党のつれない対応に行き詰まっているのが現状だろう。
消費税増税に関しても「あらゆる施策を総動員する」と、従来の主張を繰り返すにとどまった。これまで「リーマン・ショック級の出来事がない限り増税する」と説明してきたが、ここに来て、米中貿易摩擦の激化やイラン、サウジアラビア情勢などに伴い、世界同時株安の様相が強まっている。増税分の一部を幼児教育などに充てるとする首相は悩ましさを募らせていないか。
臨時国会の焦点に浮上してきたのが、外国人労働者の受け入れ拡大に伴い新しい在留資格を設ける出入国管理法改正案。移民政策の解禁と受け取る与党議員からも性急な制度設計を危ぶむ声が出ている。首相は演説で「日本人と同等の報酬をしっかりと確保する」と確約したものの、安価な労働力としての実態がある技能実習生制度とどう整合性を図るのかも見えない。
北朝鮮の拉致問題や、沖縄の辺野古新基地建設問題にも言及した。ただ「私自身が金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と向き合わなければならない」「沖縄の皆さんの心に寄り添う」は国民の多くが聞き飽きたと感じているのではないか。両問題は同列には扱えないが、そうした文言がいつまでも繰り返されるようでは、首相のリーダーシップが問われる事態だということを自覚すべきだ。
外交や貿易問題もしかり。「戦後日本外交の総決算」「自由貿易の旗手」をうたったが、結局は対米関係を追従一辺倒から、もの申す関係に変えられるかにかかる。核兵器や貿易摩擦など世界を引っかき回すトランプ米大統領をいかにいさめられるか。蜜月関係にあるならば、そこを国民は期待してやまない。だが、演説からはそうした気概は一向にうかがえない。
総裁選で地方からの批判が高まったことを意識したのだろう、「強靱(きょうじん)な故郷づくり」「地方創生」に演説の多くを割いた。ただ、災害からの復旧復興は政府として当然の責務だし、創生の中身は1月の施政方針演説の域を超えるものではなかった。
政権運営への批判に対しては、本格的な政党内閣を樹立した原敬の「常に民意の存するところを考察すべし」を引用。「長さゆえの慢心はないか」と投げ掛けた上で「その長さこそが、継続こそが、力である」と切り返した。演説では森友、加計学園や障害者雇用水増し問題には一切言及しなかった。都合の悪いことには目を背け続ける長期政権であってはならないはずだ。
所信表明演説 決意ばかり強調しても 10/25
安倍晋三首相が所信表明演説を行った。国内外の重要課題に取り組む決意を強調したものの、具体性は乏しく疑問に十分答えていない。国会審議で掘り下げなくてはならない。
自民党総裁選で連続3選を果たし、改造内閣を発足させてから初の国会である。首相は、総裁選で訴えた全世代型の社会保障制度への改革、朝鮮半島の非核化やロシアとの領土問題の解決を含む「戦後日本外交の総決算」などへの意欲をアピールしている。
今国会の焦点の一つは、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法などの改正案だ。演説では、全国の中小・小規模事業者が深刻な人手不足に直面しているとして、ロボットなどの活用による生産性の向上とともに、外国人材の受け入れを対策に挙げた。
政府がまとめた改正案骨子によると、単純労働分野も対象に二つの在留資格を新設する。一定技能が必要な業務に就く「特定技能1号」と熟練技能が必要な「特定技能2号」である。2号は家族帯同を認め、条件を満たせば永住できる可能性もある。
高度な専門人材に限っていた受け入れ政策の転換だ。「移民とは異なる」とする政府の説明は妥当なのか。野党は「事実上の移民政策だ」と批判する。政府は今国会に改正案を提出し、来年4月に導入することを目指している。拙速に進めてはならない。
低賃金で働く外国人を増やそうとしているなら安易である。首相は、出入国在留管理庁を新設して受け入れ企業の監督に万全を期すとした。社会の一員として生活環境や日本人と同等の報酬を確保すると言う。共生を実現できるのか国会でただす必要がある。
政治に対する信頼の回復も重い課題だ。在職日数が歴代トップの最長政権をにらむ首相は「長さゆえの慢心はないか。そうした国民の懸念にもしっかりと向き合っていく」「一層、身を引き締めて政権運営に当たる」と述べた。
殊勝な姿勢を見せつつも、相次ぐ不祥事には具体的に触れていない。森友学園、加計学園の問題を巡り、行政がゆがめられたとの疑惑は残ったままだ。不透明な決定のいきさつを政府自ら解明しなければ、信頼は取り戻せない。
内閣改造では麻生太郎財務相を続投させた。決裁文書改ざんという前代未聞の問題まで起きたのになぜ責任を問わないのか。新閣僚の「政治とカネ」の問題も浮上している。閣僚の任命についても説明する必要がある。
首相の所信表明演説 安倍政治大破綻 ごまかし終始 10/25
国民にはまともな説明もなしに、失政とさらなる悪政のごまかしに終始した24日の安倍晋三首相の所信表明演説。安倍政権が進める政治路線があらゆる面で大破綻していることが明白になっているにもかかわらず、それにまともに向き合わず、取り繕うだけの政治姿勢はもはや限界です。安倍政権の足元は、すでに土台から揺らいでいます。
強権政治 沖縄の審判に反省なし
沖縄県知事選挙では、玉城デニー氏の歴史的圧勝で、名護市辺野古の米軍新基地建設反対の民意が示されました。数におごり民意を踏みつけにしてきた安倍政権の強権政治はもはや通用しなくなっています。
所信表明演説では、安倍首相がこれまで触れてきた辺野古新基地建設には触れず、「沖縄の皆さんの心に寄り添い、安倍内閣は、基地負担の軽減に、一つひとつ結果を出していく」と力なく述べるだけでした。しかし、安倍政権は、行政不服審査法を悪用して、辺野古埋め立て承認撤回への対抗措置を取り続けるなど、民意を無視した新基地建設を諦めようとはしていません。
安倍首相は、森友・加計問題でも、国政私物化疑惑に対する国民の怒りを理解せず、「長さこそが、継続こそが、力である。そう思っていただけるよう、一層、身を引き締めて政権運営に当たる」と無反省の態度を取り続けています。
安倍首相は、原敬元首相の「常に民意の存するところを考察すべし」との言葉を引用しましたが、その言葉と一番遠いところにあるのが安倍首相の政治姿勢です。
安倍首相が本当に「民意」を「考察」するというなら、権力を私物化し、情報を隠蔽(いんぺい)、改ざんしてきた自らの強権政治の破綻を認め、真摯(しんし)に反省することこそ必要です。
外交 安保 北朝鮮も領土も大失態
安倍首相は北東アジアに残る「冷戦時代の構造」を解決するために「戦後日本外交の総決算を行う」と打ち上げました。所信表明演説はこれまでの外交上の大失態を成果としてごまかすばかりで、議場では非難の声が噴出しました。
安倍首相は米朝首脳会談を評価し「金正恩(キム・ジョンウン)委員長と向き合わなければならない」と、北朝鮮との国交正常化と拉致問題の解決を目指すと述べました。
圧力の必要性や「脅威論」を封印した背景には、各国が北朝鮮との対話や信頼醸成を進める中で日本だけが取り残された焦りがみえます。朝鮮半島の緊張をあおるばかりだった態度への無反省ぶり、「脅威」を口実とした軍事費の増額やミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入といった軍事政策の破綻が浮き彫りになりました。
安倍首相はロシアとの領土問題を解決し、日ロ平和条約を締結すると明言。先月の首脳会談でプーチン大統領が領土問題を棚上げに年末までの平和条約締結を迫ったのに対し、安倍首相はその場で反論しませんでした。領土要求の全面放棄に突き進む危険があります。
外交の基軸は日米同盟で、日米物品貿易協定「TAG」が交渉開始を合意したと誇りました。「TAG」がトランプ米政権にFTA(自由貿易協定)交渉を押し切られた実態を隠すための造語にすぎないことは、国内外で周知の事実です。日本の食料主権、経済主権を投げ捨てた安倍首相に外交を語る資格はありません。
経済政策 消費税10%に非難の嵐
大企業には減税をばらまきながら、その穴埋めに消費税増税をあてる安倍政権の経済政策の破綻は明瞭です。
安倍首相は来年10月から強行しようとしている消費税10%増税について「経済に影響をおよぼさないよう、あらゆる施策を総動員する」と述べるだけ。しかし、そもそも安倍政権の経済政策のもとで、いま労働者の実質賃金は18万円も減っており、消費不況が続いています。
安倍首相が10%増税に伴う「景気対策」の目玉として打ち出したクレジットカードによる「ポイント還元」には“高齢者や子どもなど利用できない人がいる”などの非難がごうごう。複数税率にあわせて「インボイス」(適格請求書)を導入することも、500万を超える事業者が大打撃となるもので、中小企業などがこぞって反対しています。
安倍首相は経済への影響を心配するのなら、きっぱり増税中止こそ決断すべきです。
一方、社会保障について安倍首相は「子どもから現役世代、お年寄りまで、全ての世代が安心できる社会保障制度へと、今後3年かけて改革を進めます」と語りました。
ただ安倍政権はこの6年間、高齢化などに伴う社会保障費の自然増分だけで計1兆6千億円も削減してきた政権です。さらに最近も財務省が、医療や介護、子育て分野で給付抑制・削減する改悪メニューを示しており、「安心」どころか、全世代に痛みを押し付けようとする「改革」にほかなりません。
改憲固執 国会論議に露骨な介入
安倍首相は「憲法審査会において、政党が具体的な改正案を」と立法府に対し、号令をかけました。国会での改憲論議について各党に号令をかけるなど、三権分立に対する露骨な介入です。
そもそも、改憲論議の中身以前の問題として、安倍首相自身が憲法99条が定める憲法尊重擁護義務を果たしていません。安倍首相は、自衛隊の幹部を前に公然と9条改憲の持論を主張。実力組織を自らの野望実現の道具にする危険性すら自覚していない安倍首相には、そもそも憲法を語る資格すらありません。
ましてや、どの世論調査でも、今国会に自民党の改憲案を提出することに反対する声が多数を占めています。国民多数が反対しているのに無理やり改憲を進めるのは、立憲主義を踏みにじる憲法破壊の策動に他なりません。
首相所信表明 民意に向き合う政治こそ 10/25
臨時国会がきのう召集され、安倍晋三首相が所信表明演説をした。先の自民党総裁選で連続3選を果たし、内閣改造も行った首相にとって「最後の3年」に臨む最初の国会である。
衆参両院の巨大与党に支えられ、「1強政治」を築き上げた首相は、長期政権をどう締めくくるつもりか。
案の定、首相は悲願の憲法改正に照準を定めた。その決意を改めて力説することが演説の眼目だったとさえ言えよう。
演説の最終盤で「国の理想を語るものは憲法です」と切り出した首相は、「憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆さまの理解を深める努力を重ねていく」と宣言した。
どの条項をどう変えるのか。具体的な提示こそなかったが、首相が自ら提唱した9条への自衛隊明記▽緊急事態条項▽参院選「合区」解消▽教育充実‐の4項目で構成する自民党の改憲案が想定されるのは言うまでもない。
しかし、ちょっと待ってほしい。自民党内でさえ、改憲論議は活発だとは言い難い。先の総裁選では9条への自衛隊明記に真っ向から反論した石破茂元幹事長が地方票で善戦した。
連立を組む公明党は改憲に慎重な姿勢を崩していない。野党は安倍政権の改憲志向そのものに強い警戒感を抱いている。
世論も同様だ。内閣改造直後に共同通信社が実施した世論調査では、この臨時国会に自民党の改憲案提出を目指す首相の意向について、賛成は36%にとどまり、反対は48%に及んだ。
党内外の情勢や国民の意識に比べ、首相の改憲論がいかに突出しているか‐ということだ。
憲法論議は私たちも大切だと考える。しかし、多くの国民は今、改憲が最優先課題とは考えていない。その現実を首相は冷静に判断してほしい。
無論、改憲は演説の一節であり、首相は内政外交の基本方針を語った。災害復旧・復興の加速、国土強靱(きょうじん)化、地方創生、全世代型の社会保障改革、激動する国際情勢に応じた戦後日本外交の総決算に意欲を示した。
ただ、その中身は総裁選から内閣改造にかけて、首相が繰り返し表明してきた方針や政策の域を出ず、新味に乏しい。
他方で、多くの国民が説明責任を果たしてほしいと望む森友・加計(かけ)学園問題には触れず、障害者雇用の水増し問題など官の不正にも言及しなかった。なぜか、と問いたい。
「常に民意の存するところを考察すべし」という平民宰相、原敬の言葉を首相は引いた。まさに至言である。民意に向き合う政治を首相に求めたい。
「慢心」戒め議論深めよ 10/25
臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。
憲法改正に向けた議論を与野党に呼びかけ、社会保障制度改革、外国人労働者の受け入れ拡大など、内政と外交の重要政策推進を強調した。
目立ったのは、改憲に前のめりな姿勢を一層明確にしたことだ。
安倍首相は改憲について「与野党の立場を超え、幅広い合意が得られると確信する」と述べた。前回国会の「期待する」から、一段と踏み込んだ印象である。
自ら提起した9条への自衛隊明記などを盛り込んだ自民党改憲案を今国会に提示したい、という意図が透けて見える。
首相は憲法を「国の理想を語るもの」と述べた。さらに「あるべき姿を最終的に決めるのは国民だ」と語り、国民投票実施に踏み出すよう呼びかけた。
違和感が残る発言だ。憲法は国民に対する権力のあり方を規定するものではないのか。国民投票実施に関する呼びかけも、憲法順守義務がある行政府の長として、適切とは思えない。
自民党は、これまで重視してきた与野党一致の憲法審査会の運営を見直す姿勢を見せている。
政府・与党が改憲問題でも「安倍1強」を貫こうとすれば、野党だけでなく、国民からの反発も免れまい。
共同通信の最新の世論調査では、自民党改憲案を国会に提出するよう取りまとめを加速すべきだという首相の意向に対し、賛成は約36%、反対は約49%だった。
内政、外交ともに、重要な課題が他にも山積していることを、国民は冷静に見ている。
政府・与党が最重要課題とする入管難民法の改正については、首相は短く触れただけだった。外国人受け入れ政策の大転換となるだけに、深い議論が必要だ。
今国会から衆参両院の野党第1会派が立憲民主党になった。先の通常国会までは、衆院第1会派の立民と参院第1会派だった国民民主の戦術が異なることがあった。分かりにくかっただけに、立民は野党勢力をうまくまとめ、明確な対立軸を示すことが必要だ。
首相は、演説の締めくくりに、大正時代の首相、原敬の言葉「常に民意の存するところを考察すべし」を引き、「長さゆえの慢心」を自ら戒めた。
森友、加計問題を意識しているのだろう。もちろん国民は忘れていない。首相は謙虚に説明してほしい。
首相の所信表明 6年間の総括はどこに 10/25
「強い日本」「強靱(きょうじん)な故郷(ふるさと)」「ど真ん中でリードする日本」。きのうの安倍晋三首相の所信表明演説では、いつにも増して威勢のいい言葉が続いた。
その割に、首相が「わが国最大のピンチ」とする少子高齢化など山積する問題への具体策は述べられなかった。未来を語るのであれば、自身の6年に及ぶ政権運営についても総括が必要だったのではないか。
「新しい日本の国創り」として、首相が最初に挙げたのが「強靱な故郷づくり」だった。道路や河川の改修、ため池の補修など災害復旧を加速させるという。防災・減災のための事業は急いでほしい。だが「強靱な故郷」とは何か。イメージも湧かなかった。
「ピンチもチャンスに変えることができる」との文句も繰り返し使われた。少子高齢化や地方の過疎化を「ピンチ」と位置付けているようだ。
少子化で生産年齢人口が減る中、自ら掲げた「女性活躍の旗」が、女性の就労を増やしたと誇った。だが依然として待機児童は解消されず、就労環境は不十分だ。そこには触れないで「女性活躍」を成果のように持ち出すのは筋が違う。
「1億総活躍」も掲げた。「女性も男性も、若者も高齢者も、障害や難病のある方も、誰もがその能力を存分に発揮できる1億総活躍社会を」とも訴えた。しかし、政府による長年の障害者雇用水増しが発覚した後ではしらじらしい。
来年10月に引き上げる消費税については、「経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員する」と述べた。一方で、あれほど胸を張ってきた自らの経済政策アベノミクスに、今回は全く言及がなかった。デフレ脱却への目標が達成できないことを認めたのだろうか。
北朝鮮やロシアとの諸問題を解決して「戦後日本外交の総決算」を実現するとも打ち出した。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談にも意欲を示したが、核・ミサイル問題と拉致問題をどう包括的に解決するのか見えないままだ。
対ロシアでは「私とプーチン大統領との信頼関係の上に領土問題を解決し、日ロ平和条約を締結する」と述べた。だがプーチン氏は先月、いきなり前提条件なしの平和条約締結を提案しており、本当に信頼関係があるのか心もとない。
憲法改正についても、改めて意欲を示した。しかし現時点で「政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信しています」と述べるのは理解に苦しむ。今月初めの世論調査では、自民党の改憲案を国会に提出する首相の意向について、国民の約半数が反対している。
「安倍1強」「最長政権」への慢心が批判されることを意識したのかもしれない。演説の締めくくりには、日本で初めて本格的な政党内閣を築いた原敬の「常に民意の存するところを考察すべし」を引用していた。
だが最近だけでも森友・加計学園問題や陸自の日報問題を巡る公文書管理に対する姿勢など、国民の信頼を裏切るような不祥事は少なくない。
「民意」というならば、聞こえのいい言葉をひねり出すばかりではなく、総括も必要である。臨時国会では内容を伴った論戦を、与野党に求めたい。
首相所信表明 空疎な言葉もういらぬ 10/25
安倍晋三首相は、きのう召集された臨時国会で所信表明演説を行い、政権運営への決意を語った。
今回も目立ったのは「新しい日本の国創り」という抽象的なスローガンや、「ピンチをチャンスに変える」の繰り返しに象徴される根拠に乏しい楽観論だ。
空疎な言葉は実態を覆い隠す。現実を見据えて課題に取り組む誠実な姿勢こそが求められる。
最後の自民党総裁任期となる3年間で首相に課された最大の課題は、急速な少子高齢化に対処する道筋を着実に付けることだろう。
その政策として、首相は「全世代型社会保障改革」や外国人労働者の受け入れ拡大を挙げた。
「全世代型」の柱には、来年10月の消費税率引き上げに伴う幼児教育無償化と、65歳を超えての継続雇用など高齢者の人材活用を想定しているようだ。
「人生百年時代の到来は大きなチャンス」だと言う。
高齢者の全てが元気で意欲的に働ける人では無論ない。膨らむ医療、介護費の財源をどう確保し、財政再建と両立させるか。社会保障の「本丸」を語ろうとしない。
外国人労働者の受け入れ拡大に関し首相は「世界から尊敬され、世界中から優秀な人材が集まる日本を創り上げる」と意気込んだ。
拡大には、生活環境の整備や職を失った場合の対応など詰めるべき課題が山積している。ばら色の言葉は何の解決にもならない。
外国人との共生を図る視点が大事だが、政府が提出予定の入管難民法などの改正案は人手不足の穴埋めとみなすような側面が色濃い。拙速な対応は認められない。
「戦後日本外交の総決算」も、言葉だけが踊る典型の一つだ。
進展の見えない北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの北方領土交渉に加え、米国の強硬姿勢がのぞき始めた新たな貿易交渉など、まずは厳しい現実を国民に率直に語るべきだ。
改憲への意欲は、皇位継承、東京五輪と続く「平成の、その先の時代の新たな国創り」をうたった文脈に続いて示された。
与野党の「幅広い合意が得られると確信している」と述べたが、自民党内にも冷めた声のある現状とあまりにかけ離れている。
演説の最後に取り上げたのは、初の本格的な政党内閣を組織した原敬の「常に民意の存するところを考察すべし」との言葉だった。
それが心構えであるなら、国民が緊急性を感じていない改憲に前のめりになる理由は何もない。 
●原敬 (はらたかし 1856-1921) 
日本の外交官、政治家。位階勲等は正二位大勲位。幼名は健次郎。号は一山、逸山。外務次官、大阪毎日新聞社社長、立憲政友会幹事長、逓信大臣(第11・16代)、衆議院議員、内務大臣(第25・27・29代)、立憲政友会総裁(第3代)、内閣総理大臣(第19代)、司法大臣(第22代)などを歴任した。郵便報知新聞記者を経て外務省に入省。後に農商務省に移って陸奥宗光や井上馨からの信頼を得た。陸奥外務大臣時代には外務官僚として重用されたが、陸奥の死後退官。その後、発足時から政友倶楽部に参加して政界に進出。大正7年(1918年)に総理大臣に就任。爵位の受け取りを固辞し続けたため「平民宰相」と渾名された。大正10年(1921年)11月4日、東京駅丸の内南口コンコースにて、大塚駅の駅員であった右翼青年・中岡艮一に襲撃され、殺害された。満65歳没。墓所は岩手県盛岡市の大慈寺。
生涯
原敬は、安政3年(1856年)2月9日、盛岡藩盛岡城外の岩手郡本宮村(現在の盛岡市本宮)で盛岡藩士原直治の次男として生まれた。後に「平民宰相」と呼ばれる敬だが、原家は祖父・直記が家老職にあったほどの上級武士の家柄で、敬は20歳のときに分家して戸主となり、平民籍に編入された。徴兵制度の戸主は兵役義務から免除される規定を受けるため分籍した。彼は家柄についての誇りが強く、いつの場合も自らを卑しくするような言動をとったことがなかったとされる。
明治3年(1870年)、原は再開された藩校「作人館」(現・盛岡市立仁王小学校)に入り、さらに翌年、上京して南部家が盛岡藩出身の青年のために設立した「共慣義塾」に入学したが、途中で学費が途絶えて数か月で辞めた。ついで明治5年(1872年)には費用のかからないカトリック神学校に入学した。翌明治6年(1873年)には横浜に移って神父宅に寄寓し、ここで受洗して「ダビデ」の洗礼名を受けている。明治9年(1876年)、司法省法学校を受験したところ、受験者中2番の成績で合格したが、学業途中で寄宿舎の待遇改善行動に関係したという理由で退校処分にあっている。法学校を追放された原は、中江兆民の仏学塾に在学の後、明治12年(1879年)、郷里の先輩のつてで、郵便報知新聞社に入社した。入社当初はフランス語新聞の翻訳を担当していたが、次第に論文も執筆するようになった。しかし、明治十四年の政変をきっかけに大隈重信の一派が同社に乗り込んでくると、彼らと反りが合わず退社した。また、明治12年3月に山梨県甲府市で創刊された『峡中新報』へも「鷲山樵夫」の筆名で寄稿している。
郵便報知新聞社を辞めた原に政府の高官が目をつけ、御用政党の機関紙『大東日報』の主筆とした。しかし、経営不振のため8か月目で同社を離れた。この『大東日報』が縁で政府に接する機会を得た原は明治15年(1882年)、外務省に採用され外務省御用掛兼務になり、入省の翌年には天津領事に任命されて同地に赴いた。次いで明治18年(1885年)には外務書記官に任ぜられてパリ駐在を命じられた。そして、およそ3年余りパリ公使館に勤務し、帰国後は農商務省参事官、大臣秘書官となった。駐米公使だった陸奥宗光が明治23年(1890年)に農商務大臣になると、陸奥の引きで原の運命が拓けることになる。すなわち、第2次伊藤内閣が発足すると陸奥は外務大臣に就任し、彼の意向で原は通商局長として再び外務省に戻った。さらに日清戦争後の明治28年(1895年)には、外務次官に抜擢された。当時、陸奥外相は病気療養中であったため、文部大臣・西園寺公望が外相臨時代理を兼任したが、実務は原がとることとなった。翌・明治29年(1896年)、陸奥が病気のため外相を辞任すると、原も朝鮮駐在公使に転じた。しかし、間もなく第2次伊藤内閣が崩壊し、第2次松方内閣が成立すると、大隈が外相となって入閣したため、大隈嫌いの原は見切りをつけて帰国し、外務省も辞めた。明治30年(1897年)には大阪毎日新聞社に入社し、翌・明治31年(1898年)には社長に就任した。
明治33年(1900年)に伊藤博文が立憲政友会を組織すると、原は伊藤と井上馨の勧めでこれに入党し、幹事長となった。同年12月、汚職事件で逓信大臣を辞職した星亨に代わって伊藤内閣の逓信大臣として初入閣する。原は政友会の結党前と直後の2度、貴族院議員になろうとして井上に推薦を要請している。一般には原は生涯爵位などを辞退し続け、その身を最期まで衆議院に置いてきたとされている。また、後年には貴族院議員を指して「錦を着た乞食」とまで酷評している。その原が貴族院議員を目指したのは、無官でいることからくる党内の影響力低下を懸念してのことといわれる。結局、星亨の後任となって入閣したため、貴族院入り問題は立ち消えになった。また、爵位授与に関しても実はこの時期に何度か働きかけを行っていた事実も明らかになっている(原自身が「平民政治家」を意識して行動するようになり、爵位辞退を一貫して表明するようになるのは、原が政友会幹部として自信を深めていった明治末期以後である)。
明治34年(1901年)6月、桂太郎が組閣し原は閣外へ去るが同月に星が暗殺され、その後は、第1次桂内閣に対する方針を巡る党内分裂の危機を防ぎ、松田正久とともに政友会の党務を担った。また、地方政策では星の積極主義(鉄道敷設などの利益誘導と引換に、支持獲得を目指す集票手法)を引き継ぎ、政友会の党勢を拡大した。党内を掌握した原は、伊藤や西園寺を時には叱咤しながら、融和と対決を使い分ける路線を採って党分裂を辛うじて防いだ。
しかし、原の積極主義は「我田引鉄」と呼ばれる利益誘導型政治を生み出し、現代に繋がる日本の政党政治と利益誘導の構造を作り上げることとなった。明治末期には原のこうした手法を嫌う西園寺との間で確執が生じている。
明治35年(1902年)に行われた第7回衆議院議員総選挙で、盛岡市選挙区から立候補して衆議院議員に初当選。
日露戦争が始まった明治37年(1904年)12月、桂首相は政局の安定を図るため、政友会との提携を希望して原と交渉を行い、政権授受の密約を結ぶ。翌・明治38年(1905年)、桂内閣は総辞職し、明治39年(1906年)になって約束通りに西園寺公望に組閣の大命が下ると、原は内務大臣として入閣した。これ以降、桂と政友会との間で政権授受が行われ、「情意投合の時代」とか「桂園時代」と呼ばれる政治的安定期を迎えることになるが、原は出来る限り山縣有朋との関係を調整することに努力する一方で、徐々に山縣閥の基盤を切り崩して、政友会の勢力を拡大することも忘れなかった。
明治44年(1911年)8月から鉄道院総裁。
なお、原は後に第2次西園寺内閣と第1次山本内閣でも内相を務めている。内務大臣時代、藩閥によって任命された当時の都道府県知事を集めてテストを実施し、東京帝国大学卒の学歴を持つエリートに変えていった。大正3年(1914年)6月18日には大正政変の道義的責任を取るとして辞任した西園寺の後任として第3代立憲政友会総裁に就任した。
首相就任
シベリア出兵に端を発した米騒動への対応を誤った寺内内閣が内閣総辞職に追い込まれると、ついに政党嫌いの山縣も原を後継首班として認めざるをえなくなった。こうして、大正7年(1918年)に成立した原内閣は、日本初の本格的政党内閣とされる。それは、原が初めて衆議院に議席を持つ政党の党首という資格で首相に任命されたことによるものであり、また閣僚も、陸軍大臣・海軍大臣・外務大臣の3相以外はすべて政友会員が充てられたためであった。
原内閣の政策は、外交における対英米協調主義と内政における積極政策、それに統治機構内部への政党の影響力拡大強化をその特徴とする。原は政権に就くと、直ちにそれまでの外交政策の転換を図った。まず、対華21ヶ条要求などで悪化していた中華民国との関係改善を通じて、英米との協調をも図ろうというものである。そこで、原は寺内内閣の援段政策(中国国内の軍閥・段祺瑞を援護する政策)を組閣後早々に打ち切った。
さらに、アメリカから提起されていた日本・アメリカ・イギリス・フランス4か国による新4国借款団(日本の支那への独占的進出を抑制する対中国国際借款団)への加入を、対英米協調の観点から決定した。第一次世界大戦の後始末をするパリ講和会議が開かれたのも、原内閣の時代だった。この会議では、アメリカ大統領ウッドロウ・ウィルソンの提唱によって国際連盟の設置が決められ、日本は常任理事国となった。しかし、シベリア出兵についてはなかなか撤兵が進まず、結局撤兵を完了するのは、原没後の大正11年(1922年)、加藤友三郎内閣時代のこととなった。
内政については、かねてから政友会の掲げていた積極政策、すなわち、教育制度の改善、交通機関の整備、産業及び通商貿易の振興、国防の充実の4大政綱を推進した。とりわけ交通機関の整備、中でも地方の鉄道建設のためには公債を発行するなど極めて熱心であった。
また、教育政策では高等教育の拡張に力を入れた。大正7年(1918年)、原内閣の下で「高等諸学校創設及拡張計画」が、4,450万円の莫大な追加予算を伴って帝国議会に提出され可決された。その計画では官立旧制高等学校10校、官立高等工業学校6校、官立高等農業学校4校、官立高等商業学校7校、外国語学校1校、薬学専門学校1校の新設、帝国大学4学部の設置、医科大学5校の昇格、商科大学1校の昇格であり、その後この計画はほぼ実現された。これらの官立高等教育機関の大半は、地方都市に分散設置された。
また私立大学では大正9年(1920年)に大学令の厳しい要件にも関わらず、慶應義塾大学、早稲田大学、明治大学・法政大学・中央大学・日本大学・國學院大學・同志社大学の旧制大学への昇格が認可され、その後も多くの私立大学が昇格した。
この高等教育拡張政策は第一次世界大戦の好景気を背景とした高等教育への、求人需要、志願需要の激増に応えたものである。そして「高等教育拡散は高等遊民の増加を招き、皇室への危険思想につながる」としてこれに反対した山縣有朋を説得したものであった。
さらに、軍事費にも多額の予算を配分し、大正9年(1921年)予算は同6年(1917年度)予算の2倍を超える15億8,000万円にまで膨れ上がった。多額の公債発行を前提とする予算案には野党憲政会、貴族院から多くの反対意見が上がった。
また原は、地方への利益還元を図って政友会の地盤を培養する一方で、同党の支持層に見合った規模での選挙権拡張を行っている。大正8年(1919年)には衆議院議員選挙法を改正し、小選挙区制を導入すると同時に、それまで直接国税10円以上が選挙人の資格要件だったのを3円以上に引き下げた。翌年の第42帝国議会で、憲政会や立憲国民党から男子普通選挙制度導入を求める選挙法改正案が提出されると、原はこれに反対して衆議院を解散し、小選挙区制を採用した有利な条件の下で総選挙を行い、単独過半数の大勝利を収めた。
首相就任前の民衆の原への期待は大きいものだったが、就任後の積極政策とされるもののうちのほとんどが政商、財閥向けのものであった。また、度重なる疑獄事件の発生や民衆の大望である普通選挙法の施行に否定的であったことなど、就任前後の評価は少なからず差がある。普通選挙法の施行は、憲政会を率いた加藤高明内閣を待つこととなる。
原は政友会の政治的支配力を強化するため、官僚派の拠点であった貴族院の分断工作を進め、同院の最大会派である「研究会」を与党化させた。このほか、高級官僚の自由任用制の拡大や、官僚派の拠点であった郡制の廃止、植民地官制の改正による武官総督制の廃止などを実施し、反政党勢力の基盤を次第に切り崩していった。しかし、一方で原は反政党勢力の頂点に立つ元老山縣との正面衝突は注意深く避け、彼らへの根回しも忘れなかった。このように、原は卓越した政治感覚と指導力を有する政治家であった。
帝国議会の施政方針演説などにおける首相の一人称として、それまでの「本官」や「本大臣」に変わり「私」を使用したのは原が最初である。それ以後、現在に至るまで途絶えることなく引き継がれている。
大正10年(1921年)11月4日、関西での政友会大会に出席のため側近の肥田琢司らと東京駅に到着直後、国鉄大塚駅転轍手であった中岡艮一により殺害されほぼ即死。享年66。戒名は大慈寺殿逸山仁敬大居士。
原の政治力が余りに卓抜していたために、原亡き後の政党政治は一挙にバランスを失ってしまった。病床にあった山縣も嘆きが大きく、翌年2月に病没した。

政友会の前総裁で、原との間にも確執があった西園寺公望は、原の死の一報を請け「原は人のためにはどうだったか知らぬが、自己のために私欲を考える男ではなかった」と述べている。
山縣有朋は原の死に衝撃を受けたあまり発熱し、夢で原暗殺の現場を見るほどであった。その後「原という男は実に偉い男であった。ああいう人間をむざむざ殺されては日本はたまったものではない」と嘆いている。 
 
 


2018/10-
 
●衆院予算委員会・初日 (11/1)
衆院第1委員室で予算委員会が始まった。10月24日に召集された臨時国会で、初めての開催。安倍晋三首相ら全閣僚が出席し、与野党が質疑する。自民党総裁選と内閣改造を受けた臨時国会。1日の衆院予算委員会で、安倍内閣の閣僚の資質などをめぐって論戦が交わされました。
自民は全質問者が被災地選出 「赤坂自民亭」出席の岸田氏ら
「今年も本当に多くの大型の災害が連続して発生しました」。トップバッターの自民党・岸田文雄政調会長はこう質問を切り出した。午前中は自民、公明両党の質問時間となっており、自民からは岸田氏(広島1区)、橋本岳氏(岡山4区)、堀井学氏(北海道9区)、坂本哲志氏(熊本3区)の4人が順に登板する。2014年の広島土砂災害、一昨年の熊本地震、今年の西日本豪雨と北海道胆振(いぶり)東部地震。4氏はそろって、最近の自然災害で被災した道県から選出された議員たちだ。今年7月の西日本豪雨では、災害が迫る中で首相や岸田氏を含む自民議員が、赤坂の議員宿舎で「赤坂自民亭」と称して酒宴を開いていたことが批判を受けた。災害対策を前面に出したラインナップとすることで、負のイメージを改善する狙いがありそうだ。
外国人材の受け入れと「移民政策」の違い、岸田氏にもゼロ回答
自民・岸田氏が、外国人労働者の受け入れ拡大に論点を移した。政府は「移民政策」について「国民の人口に比して一定程度の規模の外国人と家族を期限を設けず受け入れ、国家を維持していく政策」と定義し、今回は違うと説明している。岸田氏は「もう少し国民に分かりやすい説明を」と注文した上で、こんな提案をした。「例えばこういう聞き方ならどうか。政府は移民政策と違うと言う。では移民政策を導入した場合と、政府の取り組みを導入した場合、10年後、それぞれ日本の国はどう変わるか。これにお答え頂くことで、移民政策との違いを説明することはできないか」ところが、答弁した山下貴司法相は、例の「定義」を読み上げた上で、「将来にわたって適切な制度運用が期待できる」と述べるばかりで、与党に対しても「ゼロ回答」。ヤジが飛ぶ中、岸田氏は「ぜひ国民に分かりやすい説明をこれからも心がけて頂きたい」と苦笑いするしかなかった。
   寸評 委員長デビューの野田氏、首相ら閣僚の答弁をどう差配
1日の衆院予算委員会では、野田聖子氏が委員長としての初仕事に挑んでいます。野田氏は1年2カ月務めた総務相を10月に退任したばかり。内閣改造で女性閣僚が1人にとどまったため、政権の掲げる「女性活躍」を国会でアピールするねらいで起用されました。午前9時に始まった予算委で、委員長席から「内閣総理大臣、安倍晋三さん」と指名するなど、落ち着いた出だしに見えます。野田氏は朝日新聞のインタビューで「予算委は与野党の主戦場と言われるが、国民のための委員会でもある。国民目線からそれることがあれば、速やかに軌道修正するのが私の役割」と意気込んでいました。質問に真正面から答えようとしない姿勢への批判が続く安倍首相ら閣僚の答弁をうまく差配できるでしょうか。
安倍首相「判決に対する韓国政府の前向きな対応を期待」 元徴用工訴訟
続いて自民・岸田氏は、韓国大法院(最高裁)が元徴用工への賠償を日本企業に命じた問題を取り上げ、「日韓関係、どのようにマネージしていくのか」と首相に問うた。首相は「今般の判決は国際法に照らせばあり得ない判断」と厳しく批判。一方で「日韓間の困難な諸課題をマネージしていくためには、日本側のみならず韓国側の尽力も必要不可欠」と指摘し、「判決に対する韓国政府の前向きな対応を強く期待している」と踏み込んだ。政府はこれまで、西村康稔官房副長官が31日の記者会見で「韓国政府がどのような対応をするのか、しっかりと見極めたい」と述べるにとどめていた。
地元や業界の要望を取り上げがち…与党の質問、腕の見せどころは
自民・橋本岳氏が2人目の質問者。西日本豪雨での避難所の環境整備を取り上げ、「雑魚寝」をやめて「段ボールベッド」を導入する意義を訴えた。「避難所の景色を変えれば災害関連死や二次被害を防ぐことができる。それをやるのはいつですか、今でしょう」3人目の自民・堀井学氏も、北海道胆振(いぶり)東部地震への対応をただした。安倍晋三首相に「復旧復興への決意をお願いします」と尋ね、首相は「政府一丸となって全力を挙げる」と応じた。与党議員の質問はどうしても、地元の話題や業界の要望を取り上げて政府の「決意」を求めることが多く、緊張感が薄れがち。地元に立脚しつつ、どうすれば意義あるやりとりになるか、腕の見せどころだ。
社民・吉川氏「野党が一致結束して徹底追及したい」
社民党の吉川元・幹事長は国会内で記者会見し、「今日は午後から野党の質問。片山さつき地方創生相はいくつもいくつも疑惑が出てきたし、辺野古(への米軍普天間飛行場の移設)の問題もある。野党が一致結束をして徹底的に政権を追及したい」と語った。10月31日までの各党の代表質問に対する安倍晋三首相の答弁について、吉川氏は「自分の都合の悪いことは一切触れなかった」と批判。「首相は『丁寧な説明』と言いながら、加計(かけ)問題にしろ森友問題にしろ、まったく何の説明もしていない。予算委員会はやりとりができるので、やりとりの中で問題を明らかにしたい」と述べた。
   寸評 「答えなさい」「何を聞きたいんだ」 かじ取りで変わる論戦の魅力
質問に対して1回答弁すれば済む本会議の代表質問とは違って、質問回数に制限がなく丁々発止の攻防が繰り広げられる予算委員会は国会論戦の主戦場です。委員長は「行司役」。そのかじ取り一つで、論戦の魅力は大きく変わってきます。2010年から約1年間、自民党の国会対策委員会担当だった私にとっての名委員長は、民主党の故・中井洽(ひろし)氏。当時の菅直人首相ら閣僚の答弁が不十分だと思えば「聞いたことに答えなさい」といさめる。意図が不明確な質問に対して「君は何を聞きたいんだ」と諭す――。与野党問わず平等に差配する姿に、ベテランのすごみを感じたものです。審議時間などをめぐって与野党の折り合いがつかない時には、自民党の筆頭理事だった武部勤氏がキャラを生かして与党側をしかりつける「見せ場」をつくるのがうまかったのを覚えています。野田聖子さんはどんな「落としどころ」の探り方を見せるのでしょう。
10時過ぎから目立つ防衛相の中座 辺野古工事の対応か
1日の衆院予算委は全閣僚の出席が求められているが、午前10時過ぎから、岩屋毅防衛相が中座する姿が目立っている。同省は1日朝、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする名護市辺野古での工事を再開したばかり。対応に当たっているとみられる。沖縄県は8月、故・翁長雄志前知事の方針に従って辺野古の埋め立て承認を撤回。10月31日、国交相が防衛省の申し立てに従って承認撤回の効力を停止した。法的には工事が再開できる状況となったが、同日には野党7党・会派が岩屋氏に対し、工事再開前に県と協議するよう要請した。効力停止からわずか1日での工事再開が、県や野党の批判を招くのは必至だ。
   寸評 石破派唯一の閣僚、政府見解の棒読みで終了 委員会ざわつく
この日、当選3回ながら石破派から「一本釣り」されて初入閣した山下貴司法相が答弁デビューしました。派閥の親分である石破茂氏が、自民党総裁選で安倍晋三首相に真っ向から論戦を挑んだばかり。さて山下氏は、担当の外国人労働者受け入れ拡大について質問されると、「政府としては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人、その家族を期限を設けることなく受け入れることで国家を維持する政策をとることを考えていない、ということで説明しており……」と政府見解の棒読みで終了。委員会がざわつきました。与野党の攻防が予想される重要法案の責任者として、首相の代わりに矢面に立たされる役回りです。山下氏は元検事。今後の審議でどのような答弁で国民を納得させられるか、手腕が問われています。
   寸評 石破派の4人、論客ぞろいだが出番なし
9月の自民党総裁選で善戦したものの敗北し、党の総務会に主要派閥で唯一、一人もメンバーを出せなかった石破派。党の要職から派閥議員が外されていますが、衆院予算委員会の名簿には31人の自民委員のうち4人が名を連ねました。石破茂氏本人に加え、ベテランの山本有二元農水相、伊藤達也元金融相、若手の石崎徹氏が、首相と質問者のやりとりを見守っています。論客ぞろいですが、この日の質問者には選ばれていません。内閣改造後から石破派を担当する私にとっては歯がゆく、首相に遠慮しない的確な質問でいずれ論戦を盛り上げてほしいものです。
竹下氏「午後はたぶん、片山劇場になるんじゃないか」
「午前中は落ち着いた感じですが、午後はたぶん…。片山劇場になるんじゃないかと思います」。自民党の竹下亘前総務会長は竹下派の会合でこうあいさつし、午後の衆院予算委では週刊文春で「口利き疑惑」が報じられた片山さつき地方創生相への野党の追及が激しくなるとの見通しを示した。竹下氏は「激しい議論もありますが、政権を担当する我々は批判も含めて全部受け止めることが、政権を担当する責任だ」と続けた。自民党の各派閥は毎週木曜昼に会合を開いており、会長らのあいさつが、その後の政治の流れに影響を与えることも多い。
野田委員長の指名、「君」「さん」 岡田氏「どちらでもいい」
衆院予算委員長として始動した野田聖子氏が指名の際に「君」ではなく「さん」と読んだことについて、無所属の会・岡田克也代表は1日の記者会見で「どちらでもいいと思う。『君』から『さん』(に変わったこと)で野田カラーというのは違和感がある」と述べた。そのうえで岡田氏は、今後の野田氏の委員会運営について「野党に対して6、7割を傾ける運営をしてほしい」と注文を付けた。
公明・石田氏「現実の政治できるかが大事」と野党批判
公明党の石田祝稔氏が、野党批判を始めた。立憲民主党の枝野幸男代表が10月29日の衆院代表質問で、公明党の推す軽減税率制度を「天下の愚策」と批判したことに触れ、「じゃあそれに代わるものがあるのか。現実の政治でできるかが大事だ」「(他の制度を)具体的にこうすればできる、と聞いたことがない」と語気を強めた。ここまで与党の質問が続き和やかなやりとりだったが、突然飛んできた「矢」に野党席もざわついた。この後は立憲民主党の長妻昭代表代行が登場。委員室に緊張感が漂い始めた。
立憲・長妻氏「デマ飛ばすのやめて」 首相の野党批判にクギ
午後、野党の質問が始まり、冒頭から激しいやりとりになった。トップバッターの立憲民主党の長妻昭代表代行は、首相が野党の姿勢を批判していることにかみついた。立憲が先の通常国会に25本の議員立法を提出し、内閣が提出した法案のほとんどに賛成していることを挙げ、「あんまり『何でも反対』『対案がない』とデマを飛ばすのはやめてもらいたい」と述べ、首相にクギをさした。
長妻氏「適材適所だと思うか」 麻生氏「自分で判断するほどうぬぼれていない」
立憲・長妻氏が麻生太郎財務相の続投を批判した。麻生氏に対し、自身を「適材適所だと思うか」とただすと、麻生氏は「自分の能力が適材か否かにつきましては、自分で判断するほどうぬぼれていない。後世の歴史家の判断を待たねばならないと思っている」とかわした。また、公文書改ざん問題を巡って発言している財務省OB職員と意見交換したとして、「麻生大臣が政治責任を一切取らないことについての憤りが、彼らが声を上げることになった」と指摘した。これに対し麻生氏は「退官されたOBの方々の発言に、いちいちコメントするのはいかがなものか」。「いちいち」に野党席がざわつくと、「一つ一つってのを、いちいちって言うんじゃないんですか?」と、変わらぬ「麻生節」。「ひとつひとつ丁寧に言った方がよろしいんですか。今申し上げたとおり、(意見を)拝聴させて頂く」と続けた。長妻氏は「現役の方が言えるはずがない。役所を変えないと、とOBが言わざるを得ない状況だ」と反論した。
「大臣、簡潔に」 野田氏、しびれきらして山下法相に3回
政府が臨時国会で成立を目指す出入国管理法(入管法)改正案が取り上げられた。立憲・長妻氏が「結局この法案で、何人、外国人労働者が増える見込みなのか」とただした。ところが、答弁に立った山下貴司法相は「まず移民ということについて」と、移民の定義を巡る説明を読み上げ始めた。予算委の野党理事が委員長席に詰め寄り、「何を答えているんだ」と野党席からヤジが飛ぶ。それでも山下氏は「前提を答えています」と答弁を続けた。長妻氏は手を振って制止しながら、「委員長、止めて下さい」と野田聖子衆院予算委員長に注意を求めた。野田氏は当初、議場に「静粛に」と呼びかけていたが、しびれをきらし「大臣」と呼びかけ、「簡潔に答えてください」と3回繰り返した。注意に気づいた山下法相は「(数値を)お示しできるように、精査しているところであります」と結んだ。山下氏の暴走ぎみの答弁は2分近くに及んだ。
片山氏に「しゃべらないのは責任逃れ」 口利き疑惑で立憲・逢坂氏
立憲民主党の2人目は逢坂誠二氏。さっそく、片山さつき地方創生相の「口利き疑惑」を取り上げた。片山氏は週刊文春が報じた金銭授受を否定した上で「随所に事実と異なる記事がある。こうした記事を前提に質問頂いても困惑している」と全面否定した。一方で、記事で口利きを依頼したとされる経営者との面会について「正確な期日は訴訟上の問題なので控える」と説明を控える場面も。逢坂氏に「週刊誌が誤認だと言うならきっちり説明すればよい。大臣が訴えられているなら、不用意なことを言えない場面はある。今回は逆。大臣が訴えている。だから正当性をどんどん主張すればよい。訴訟中だからしゃべらないのは責任逃れ、説明逃れだ」と批判されると、片山氏は「説明責任は誠実に果たしたい」と神妙に応じた。
逢坂氏、片山規制改革担当相に加計学園問題も追及
立憲・逢坂氏は加計学園問題をめぐり、規制改革担当相を兼務する片山さつき氏を再び攻め立てた。逢坂氏は獣医学部新設に向けて政府が開いた会議の議事録の公開を要求。「加計学園関係者がどう関わったかが多くの人の疑問。一番肝心なところを隠すからいつまで経っても(この問題を)やらなければいけない」と詰め寄った。片山氏は「加計学園の関係者は提案者である今治市の独自の判断で同席させた『説明補助者』に過ぎない。議事録の掲載対象とならない」と繰り返し、「いずれにしても謙虚に丁寧に説明責任を果たしていくことは重要だ」と発言を締め、議論はかみ合わなかった。自身の「口利き疑惑」を意識してか、自席からしおらしく時間をかけて答弁席に向かう片山氏。逢坂氏は片山氏が歩いている間も矢継ぎ早に質問を繰り返したが、答弁は変わらなかった。
立憲・川内氏「防衛省は国民になりすますのが得意技」 辺野古問題で指摘
立憲の3番手は川内博史氏。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を取り上げた。8月に沖縄県が埋め立て承認を撤回。防衛省は撤回の効力を停止させるよう、行政不服審査法に基づいて石井啓一国土交通相に申し立てた。国交相が認め、10月31日に効力が停止。防衛省は翌日の今日午前に工事を再開した。個人の権利を守るための同法を用いた政府のやり方を、川内氏は「自作自演」「アンフェア」と指摘。今回と同様に、国が国に申し立てて認められた事例をただすと、石田真敏総務相は「3件」と答えた。内訳は、「すべて辺野古の問題です」。川内氏は「執行停止が決定された3件全て、辺野古の問題。要するに沖縄防衛局、防衛省は、一般国民になりすますのが得意技だってことだ」。発言を自席で聞いていた岩屋毅防衛相は苦笑いしていた。
「関係あれば首相も議員も辞める」は「もう使わない」
「総理も議員も辞める」はもう使いません――。安倍晋三首相は森友学園問題で追及を受けた答弁との「決別」を宣言した。立憲の4番手、本多平直氏は、首相が昨年2月に訪米した際、トランプ大統領が自身の大口献金者が会長を務めるカジノ運営大手の日本参入を働きかけたとの報道の真偽について尋ね、首相は「一切ない」と否定した。続けて本多氏が「後で違うとわかれば、総理大臣も国会議員も辞めていただけますか」と問うと、首相は「今のフレーズ、私はもう使わないことにしているわけであります」とし、改めて報道を否定した。野党の委員からは「えー」との驚きの声が上がった。首相は森友問題で「(学園への国有地売却に)私や妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」と答弁したために、財務省による公文書改ざんにつながったとの批判がある。答弁の「封印」は、こうした「手痛い経験」をふまえた対応とみられる。午後5時過ぎ、1日の質疑が終了した。
   寸評 野党がスルー、首相「炎上」せず
安倍晋三首相が質問の集中砲火を浴び、ムキになって反論して火に油を注ぐ――。昨年、森友・加計学園問題が浮上してからの予算委員会では、この「炎上パターン」が定着していました。それに比べて今日は、首相が「炎上」する場面はありませんでした。大きな理由は、野党の質問相手が分散したことです。立憲民主党の4氏が質問しましたが、逢坂誠二氏は加計学園問題を片山さつき地方創生相にただす一方、首相には聞きませんでした。本多平直氏も昭恵夫人の言動を取り上げましたが、仏頂面した首相は「スルー」し、原田義昭環境相に尋ねたのです。野党は通常国会で、長々と答弁され、はぐらかされ、逆批判される、といった首相の答弁姿勢に悩まされてきました。真摯(しんし)に答えないから聞き続けているつもりなのに、「スキャンダルばかり」と批判される。私も野党担当記者として、ジレンマを募らせる議員たちの姿を見てきました。「『何でも反対』『対案がない』とデマを飛ばすのはやめてもらいたい」。長妻昭氏は今日の質問の冒頭、首相に投げかけました。同党は政府提出法案の大半に賛成しており、対案も出していることをアピールする中での発言です。追及はしたいが、前向きな部分も国民に訴えたい。こうした野党心理が、「首相スルー」につながったのではないでしょうか。ただ、森友・加計学園問題は終わっていません。野党が結局「虻蜂(あぶはち)取らず」に陥ることのないよう、明日からの論戦にも注目したいと思います。 
●どの新聞も批判した安倍首相の"所信表明" 2017/11/23
 分量は前回の半分、「謙虚」はナシ
安倍晋三首相が11月17日、国会で所信表明演説を行った。翌日の新聞各紙は社説で、左派の朝日から右派の読売まで一斉に「物足りない」と批判した。どこが物足りなかったのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が読み解く――。
巨大与党トップの横柄さと驕り
安倍晋三首相が11月17日、国会で所信表明演説を行った。翌18日の新聞各紙は社説で、左派の朝日から右派の読売まで一斉に「物足りない」と批判した。
実際、演説の中身は具体性に乏しく、分量的にも昨秋の所信表明演説の半分にも満たなかった。これではとても謙虚な姿勢とはいえない。衆院選で大勝したことで、巨大与党トップの横柄さと驕りが見え隠れする。
残念ながら首相の所信表演説に興味をもたない読者も多いかもしれない。しかし日本の舵を握る安倍首相が日本をどこに向かわせようとしているのかをしっかり見極める貴重な機会だ。じっくり読み込んでほしい。
「5カ月ぶり」「放置」と批判する朝日
その主張と訴えに思わず「その通り」とうなずいてしまう。「首相こそ『建設的』に」との見出しを付けた朝日新聞の社説である。
見出しと次の冒頭部分は朝日らしい皮肉がにじみ、鼻にはつくが、社説の中身は評価できる。
「建設的な議論を行い、政策をともに前に進めていこう――。安倍首相はきのうの所信表明演説で、野党に呼びかけた。ならば首相にも求めたい。首相こそ、この特別国会での議論に建設的に臨むべきである」
こう書き出したうえで朝日社説は以下のように論を展開している。
「忘れたわけではあるまい。この特別国会は6月に通常国会を閉じて以降、約5カ月ぶりの本格論戦の舞台である。この間、野党は憲法に基づき臨時国会を求めてきたが、首相は3カ月も放置したあげく、召集直後に衆院解散の挙に出た」
安倍首相に対する呼びかけも手厳しい。「5カ月ぶり」「放置」という言葉も安倍首相には痛く響くに違いない。
最後の主張はだれに呼びかけているのか?
朝日社説は「森友・加計学園をめぐる問題で、国民に約束した『丁寧な説明』を今度こそ果たす重い責任が首相にはある」と主張する。これもその通りだ。
「(演説)内容もあっさりしていた」と指摘し、「北朝鮮情勢の緊迫と少子高齢化を『国難』と強調し、トランプ米大統領の来日など外交成果を誇る。その大半が、衆院選や一連の外交行事ですでに語ったことの繰り返しに過ぎない」と書く。
次の指摘は朝日の憶測だが、遠からずそうなのだろう。
「先の通常国会では、森友・加計や陸上自衛隊の日報問題で野党の追及を受け、内閣支持率が下落した。その二の舞いを避けるためにも、野党の質問の機会を少しでも削りたい。そんな狙いがうかがえる」
最後に朝日社説は「巨大与党に『多弱野党』が対峙する。その最初の場となるこの国会のありようは、年明け以降の国会運営にも影響する可能性がある。国会審議を形骸化させてはならない」と主張する。
この主張は弱い。なぜならだれに呼びかけているかが不明確だからだ。国会審議を形骸化させないためには国民一人ひとりが関心を持って国会を監視する必要がある。社説ならそこまで書くべきだ。
「将来展望を示せ」と読売社説
次に読売新聞の社説。見出しで「長期展望がないのは物足りぬ」と明確に訴えている。安倍政権を擁護する「御用新聞」とばかり思っていたが、きちんと書ける能力があるわけだ。社説全体の中身もしっかりしている。社説を担当する論説委員はこの調子で書き続けてほしい。
「衆院選大勝で得た政権基盤の安定を生かし、政策課題を着実に前進させる。そのためには、野党とも丁寧に合意形成を図ることが重要である」
この書き出しも実にいい。いまの安倍政権には「野党との丁寧な合意形成」が必要なことはいうまでもない。
読売社説は「衆院選で『国難』と位置付けた北朝鮮問題と少子高齢化対策に重点を置いている」と書いた後、ズバリ安倍首相に要求している。
「安倍内閣では最も短い演説だった。年明けに施政方針演説を控えているとしても、長期政権が視野に入った今、将来展望を示さなかったのは物足りない。今後の審議でより具体的に語ってほしい」
これも正しい主張である。10年以上、新聞社で論説委員を続けてきた沙鴎一歩としても、褒めたくなるような書きっぷりだ。
謙虚に野党との議論を重ねよ
読売社説の以下の指摘も肯ける。
「日中韓首脳会談を早期に開催し、対『北』圧力のカギを握る中国にさらなる対応を促すことが求められる」
「19年10月の消費税率引き上げに触れ、『財政健全化も確実に実現する』と述べたが、依然、具体性に欠ける。財政再建の新たな道筋を早期に明確にすべきだ」
「希望の党や日本維新の会とは、憲法改正や安全保障政策などで協調できる余地が大きいはずだ。立憲民主党も、憲法改正自体は否定していない。大いに議論を重ねたい」
最後に読売社説はこう安倍首相に要求して筆を置いている。
「安倍首相は、『自民1強』の驕りを排し、選挙戦で訴えた『謙虚さ』をきちんと行動に移さねばならない。野党にも譲るべきは譲る姿勢が、大きな成果を生むことにつながるのではないか」
沙鴎一歩の拙い取材経験からすると、歴代の首相に比べ、安倍首相は新聞の社説をよく読んでいる。とくに読売社説と産経新聞の社説(主張)には毎朝、目を通していると聞く。
この読売社説もしっかり読んでいるはずだ。謙虚に野党との議論を重ね、「日本丸」の舵をとってほしい。
「防衛力強化は評価する」と産経
安倍政権好きの記者が多い産経新聞の社説も、読売同様にこう批判、要求する。
「どこまで肉付けされていたかといえば、極めて物足りない。選挙中の演説内容と、さほど変わらないではないか」
「特別国会や来年の通常国会は、危機を実際に乗り越えるために必要な議論、立法を積み重ねるためにある。政策の深化、具体化へ大きく踏み込んでほしい」
こうした安倍首相に対する批判や要求はうなずける。
しかし次のくだりは首をひねってしまい、とても残念である。
「もし、外交努力が実を結ばなかったらどうなるか。万一の北朝鮮有事への備えも、もう先送りできない」
「国民保護やテロ対策、在韓邦人の退避、難民対処など課題は多い。政府が国民に協力を求める点があるはずだ。事が始まってからでは遅いのである」
「首相が『防衛力の強化』を約束したのは評価するが、その方向性が見えない。ミサイル防衛体制だけでは十分でなく、敵基地攻撃能力の整備も欠かせない」
「敵基地攻撃能力」は必要か?
読んでいて納得できない。「北朝鮮に対する外交が失敗したら」とか「事が始まってからでは遅い」と読者に脅しをかけ、最近の産経社説が主張するお得意の「敵基地攻撃能力」を持ち出す。
簡単にいえば、核・ミサイル開発を止めない北挑戦に対し、軍事的圧力をかけ、有事の際には攻撃しようというのである。
「目に目を」では事態を悪化させるだけである。そのことを産経の論説委員たちはどう考えているのか。論説委員の中には穏健派もいるはずだ。バランスのとれた格調の高い論を展開してほしい。
一触即発の危機があるなか、軍事的整備を新聞の社説で訴えるのは間違いだ。
鍵握るトランプ氏の本音を聞きたい
北朝鮮の問題に対する安倍首相の所信表明演説は具体的な政策が欠けているから、産経のような過激な社説が出てくるのだろう。
毎日社説は北朝鮮問題についてこう指摘する。
「首相は地域情勢について『戦後、最も厳しい』との認識を示し、北朝鮮に政策変更を迫る国際圧力を一層強化するとした。トランプ米大統領の来日で確認した強固な日米同盟のもとで『具体的行動を取っていく』と軍事的圧力もにおわせた」
そのうえで「では、圧力強化の先にどのような解決の道筋を描くのか。そこが見えてこないことに国民の不安も募る」と訴える。
まさにその通りである。
北朝鮮問題を解決する鍵を握るトランプ大統領と安倍首相は親密な関係にある。「ドナルド・シンゾウ」ラインもすっかり出来上がっている。
わずかでいい。外交秘密とはいえ、トランプ氏の本音を国民に分りやすく伝えてほしい。  
●改憲戦略を吹き飛ばせ 2017/2/6
 安倍首相の施政方針演説批判
「新しい国づくり」とは?
一月二〇日、米大統領の就任式と同じ日付だが、時差の関係で半日以上先だって、二〇一七年の通常国会(第一九三通常国会)が始まった。会期は六月一八日までの一五〇日間である。
同日に行われた安倍首相の施政方針演説は冒頭で、天皇の「生前退位」問題(「天皇陛下のご公務の負担軽減等」)について言及し、「近々論点整理が行われる」と語った。その上で、年末にオバマ米大統領と行ったハワイ真珠湾での「追悼」式典について語り、「戦後七〇年」の「その先」の「新しい国づくり」へのスタートを切る、とアピールしている。
短い「はじめに」と「おわりに」を除くと五章立てで構成された二〇一七年施政方針演説の見出しは、いずれも「国づくり」という言葉で統一されている。「世界の真ん中で輝く国づくり」「力強く成長し続ける国づくり」「安全・安心の国づくり」「1億総活躍の国づくり」「子どもたちが夢に向かって頑張れる国づくり」である。そして「おわりに」の項では「憲法施行七〇年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、さらなる七〇年に向かって、日本をどのような国にしていくのか、その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と、改憲へのメッセージを鮮明な形で打ち出したのである。
2020年を見据えながら
安倍首相の施政方針演説は、毎回一つないし二つのキーワードを多用してイメージ操作を行うという手法で貫かれている。二〇一三年二月の通常国会施政方針演説では「世界一」、同年一〇月の臨時国会所信表明では「意思の力」、二〇一四年九月の臨時国会では「地方創生」と「女性が輝く社会」、戦争法を強行した二〇一五年通常国会施政方針では「改革」、二〇一六年の通常国会では「挑戦」、そして同年一〇月の臨時国会では再び「世界一」だった。
今回の施政方針演説のキーワードは、章見出しに使われた「国づくり」、ならびに二四回使われた「未来」、一二回使われた打ち破るべき対象としての「壁」である。
ここで施政方針演説冒頭の天皇「生前退位」問題、末尾の改憲論議加速化の宣言、そして多用される「未来」のための「壁」の破壊と新しい「国づくり」といった言葉をつなげて考えれば、今回の施政方針演説を貫く安倍政権の戦略は、天皇「代替わり」をも組み込んだ改憲プログラムを二〇二〇年に向けて具体的に発動する、という明白なメッセージと捉えることができるだろう。
安倍政権は、この戦略を着実に現実化させるために与党・公明党と「準与党」とも言うべき「維新」をてんびんにかけている。昨年のカジノ法をめぐっては、安倍政権は「維新に恩を売り、公明を不安にさせる」手法を使って、改憲「三分の二」勢力の強化を図ってきた。各紙の報道によれば、昨年安倍首相は自民党の保岡改憲推進本部長に対し、改憲案に盛り込む内容として「維新」の看板的主張である「教育の無償化」を検討するよう指示したとされる。
「働き方改革」の現実は
今回の施政方針演説も、「アベノミクス」による「経済の好循環」なるものをベースにして「一億総活躍」を基軸にした「力強く成長し続ける国づくり」をうたいあげている。しかしそこでは、米国のトランプ新政権がTPPからの不可逆的離脱を宣言したことの影響、EUからの英国の離脱、そして米国や欧州諸国における保護主義の拡大がもたらす影響については全く触れられていない。
さらに重大なことは、自民党が安倍首相の下で政権に復帰して以後、毎回の施政方針演説で必ず言及してきた「二〇二〇年度までに基礎的財政収支を黒字化する」という目標が今回は消えてしまったことである。一月二六日の日本経済新聞は、一月二五日の経済財政諮問会議で示された中長期の財政試算で、二〇一九年一〇月に一〇%への消費増税を行ったとしても二〇二〇年度の「黒字化実現」は困難になったとする記事を一面トップで報道した。ただその数字も二%以上の高成長を前提にしたものである。
「働き方改革」についてはどうか。今回の施政方針演説で、安倍首相は超長時間労働によって自殺に追い込まれた入社一年目の電通の女性労働者のケースに言及し、「二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、作業を加速します」と強調した。
実際はどうか。朝日新聞一月二九日の一面トップ記事は、政府の「働き方改革」で、残業時間の上限を「月平均六〇時間、年間七二〇時間」、繁忙時には「月最大一〇〇時間、二か月平均で八〇時間」とする方向で調整に入ったと報じている。しかし過労死の労災認定基準とされているのは一カ月一〇〇時間、二〜六カ月の月平均八〇時間であり、政府案自体が「過労死」レベルに達している。
ところがこうした政府案に対しても、資本家たちは「新たな制限を例外なく当てはめることに反発」があり、「調整次第では残業時間の上限をさらに見直す可能性がある」と報じられている。
沖縄の闘いと連帯を
安倍首相は施政方針演説で「抽象的なスローガンを叫ぶだけでは、世の中は変わりません。重要なことは、何が不合理な待遇差なのか、時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定めることです」と息巻いた。その言葉はそっくりそのまま安倍首相に投げ返されるべきである。そして雇用と労働条件、生活と健康を守るための保障は、何よりも労働者自身の団結した闘いであることを、改めて確認しなければならない。
安倍首相の施政方針演説は、全体の章立ての二つ目に位置づけられた「世界の真ん中で輝く国づくり」を「日米同盟」、「地球儀を俯瞰する外交」、「近隣諸国との関係改善」、「積極的平和主義」の四項目に分けて論じている。その第一に置かれているのは言うまでもなく「日米同盟」である。
「これまでも、今も、そしてこれからも、日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸である。これは不変の原則です。できるかぎり早期に訪米し、トランプ新大統領と同盟の絆を更に強化する考えであります」。
「先月、北部訓練場、四〇〇〇ヘクタールの返還が、二〇年越しで実現しました。沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後、最大の返還であります」「更に、学校や住宅に囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の全面返還を何としても成し遂げる。最高裁判所の判決に従い、名護市辺野古沖への移設工事を進めてまいります」。
昨年一一月、大統領選に勝利したトランプと、各国首脳としては初めて会談した安倍首相は二月一〇日にトランプ大統領と初めての首脳会談に臨むことになる。ここでは、辺野古新基地建設を最大の焦点とする米軍基地機能の再編・強化、朝鮮半島と東シナ海、南シナ海を焦点にした対中国・対北朝鮮の実戦的戦略が最大のテーマにならざるを得ない。そしてトランプ政権との関係で言えば、この日米共同戦略における日本の実戦的な役割分担の拡大が焦点になっていくだろう。
われわれは沖縄の「島ぐるみ」闘争との連帯をかけて、トランプ政権下での沖縄・「本土」米軍基地撤去のための闘いに全力で取り組もう。
戦争法案反対闘争以来の「総がかり」大衆行動、「野党共闘」を軸にした国政・地方の選挙共闘を労働者・市民の運動として発展させ、憲法改悪阻止・安倍政権打倒の展望を切り開こう。三・一一以後六年を経過した現在、「帰還」強制、「住宅補償」打ち切りなどを通じて切り捨てられていく福島の被災者を支え、原発再稼働を阻止する運動を強めよう。
それとともに、あらためて「天皇生前退位」をめぐる論議と「特例法」などの中で、「天皇制廃止」の主張と運動を広げること、二〇二〇年東京五輪に異議を突きつける主張と運動を持続的に広げていくことも、左派にとって避けることのできない闘いである。(純)
1/20 野党は共闘し安倍打倒へ
一月二〇日、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会は、衆議院第二議員会館前で「安倍政権の暴走止めよう! 1・20国会開会日行動」を行い、六〇〇人以上が参加した。
この日、通常国会が召集され、安倍首相は、施政方針演説で一六年度第三次補正予算案とともに二〇一七年度政府予算案(民衆生活破壊を強め、大資本奉仕、軍拡、原発再稼働予算)を早期成立させ、憲法施政七〇年の「節目」として憲法改悪に向けて憲法審査会の論議を加速させていくことを強調した。さらに米軍との共同実戦態勢の強化を柱にしたグローバル派兵国家建設の一環として対テロ治安弾圧にむけた新共謀罪の制定を打ち出した。安倍政権の野望を許さず、六カ月にわたる国会審議、悪法制定にむけた悪行を厳しく監視し、成立阻止にむけたスタートを取り組んだ。
沖縄への弾圧今すぐやめろ
集会は、国会に向けて「戦争法の発動止めよう!今すぐ廃止!共謀罪の新設反対!人権抑圧絶対反対!憲法破壊絶対反対!高江ヘリパッド建設反対!沖縄弾圧今すぐやめろ!安倍政権の暴走止めよう!」のシュプレヒコールから始まった。
福島みずほ参議院議員(社民党)、井上哲士参議院議員(共産党)、福山哲郎参議院議員(民進党)、玉城デニー衆議院議員(自由党)は、南スーダン自衛隊派兵反対、沖縄・高江ヘリパッド建設と辺野古新基地反対、共謀罪反対、労基法改悪反対、憲法改悪反対、安倍政権打倒、野党と市民の共闘強化をアピールした。
伊波洋一参議院議員(沖縄の風)は、「今国会で戦争法廃案、共謀罪NO!を取り組んでいく。多くの機動隊が派遣され、辺野古新基地工事が再開されている。宮古島、石垣島には自衛隊基地が建設されようとしている。昨年の参院選で野党共闘候補が当選したが、来る衆院選に対しても統一して、共闘で声を出していこう。安倍政権退陣に向けて頑張っていこう」と訴えた。
福山真劫さん(戦争をさせない一〇〇〇人委員会)は、「総がかり行動実行委員会は、今年も毎月の『一九日』行動を行い、南スーダンからの自衛隊撤退を要求していく。貧困と格差を許さず、雇用・賃上げを要求していく。山城博治さん(沖縄平和運動センター)が九〇日も不当勾留されている。早期釈放を実現しよう。野党共闘の選挙体制を作り、安倍政権の暴走を止めるために奮闘していこう」と呼びかけた。
謀罪新設を絶対許すな!
連帯あいさつが海渡雄一弁護士(秘密保護法廃止実行委)から行われ、「共謀罪新設を絶対に許されない。政府は、テロ対策のために共謀罪が必要だと繰り返しているがウソばかりだ。国連の組織犯罪条約は、テロ対策ではなく、経済的な組織犯罪の取り締まりだ。すでに国連のテロ対策条約は批准しており、国内法を作っている。組織犯罪集団に限定したと言っているが、二人以上の団体が六〇〇以上の刑法に触れれば適応する。また、準備罪、予備罪を導入し、二人で相談のレベルから適応しようとしている。自民党と公明党で修正協議をしているが、懲役四年以上の六七六法を半分にするなどと言っているが、全て茶番だ。しかもマスメディアが正しい報道をしていない。反対運動を広げていこう」と発言した。
最後に行動提起が行われ、再度、国会に向けて抗議のシュプレヒコールを行った。 
●「戦後以来の大改革」の名で戦争国家へ 2015/2/23
 安倍首相「施政方針」演説批判
「2020年の日本」とは?
本来ならば通常国会の冒頭に行われる安倍首相の施政方針演説が、開会してから二週間以上たった二月一二日に行われた。今国会の大きな焦点が、四月の統一地方選後に決定される予定の日米新ガイドラインや、昨年七月に閣議決定された「集団的自衛権」行使容認関連の海外での「戦争遂行」関連の法案であることは間違いない。
「イスラム国」(IS)に囚われた二人の日本人(湯浅遥菜さんと後藤健二さん)が極めて残虐な方法で殺されたことを利用して、安倍政権が海外での「邦人人質救出」作戦に自衛隊を派兵する法改悪を持ちだし、さらに二〇一六年の参院選以後に、いよいよ改憲国民投票に踏み込む意思を政権として明らかにしたことにより、そのことを多くの人が実感している。
しかし「施政方針演説」そのものの中身は「アベノミクス」に体現された「戦後以来の大改革」の断行や、「経済再生と社会保障改革」、「誰にでもチャンスに満ち溢れた日本」、そして「地方再生」を前面に押し出して、人びとに「チャレンジ」を求め、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」(これは、「世界で最も企業が活動しやすい国」という露骨なフレーズの言いかえだろう)にしようというものになっており、それに続いて「外交・安全保障の立て直し」=「あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備」を打ち出す組み立てになっている。これについてマスメディアでは「安保・改憲踏み込まず」、「『安倍色』抑え改革連呼」(朝日新聞 二月一三日朝刊)といった見出しで性格づけている。ここでは「改革」と改憲戦略が切り離されている。
だがわれわれは、安倍首相の語る「戦後以来の大改革」と「戦争国家法制整備」や改憲が切り離すことのできない一体のものであることを改めて強調しなければならない。
安倍は冒頭の「戦後以来の大改革」の項で岩倉具視の言葉を引き合いに出したのを皮切りに、「改革断行」の項で岡倉天心と吉田松陰を、そして最後の「二〇二〇年の日本」の項で吉田茂の言葉を引用して「改革」への施政方針アジテーションを締めくくった。被災地・福島の「復興」、昨年末に小惑星に向けて飛び立った「はやぶさ2」の帰還、そして東京オリンピックの開催と結びつけた「二〇二〇年の日本」とは、「戦後レジーム」を転換し、「九条」を改悪して改憲をやりとげた「新しい日本」になっている――安倍の施政方針演説はまさにそうした構成になっているのである。
「やるかやらぬか」の突きつけ
バブル崩壊後の一九九〇年代からリーマンショックを経て現在にいたるまでの二〇年以上におよぶ新自由主義的グローバル資本主義は、「規制緩和」を掲げた権利の剥奪と貧困・格差がかつてない規模で進行した過程だった。日本では企業中心で不十分きわまるものだった「福祉国家」の諸制度も解体されていった。とりわけ若い世代や高齢者、そして女性の格差・貧困は急速に拡大し、もはや支配階級の側にとっても無視できない状況となっている。ピケティの『二一世紀の資本』が日本でも大きな注目を集めていることは、その現れである。
安倍首相が今回の施政方針演説で、「若者への雇用対策」「すべての学生が、無利子奨学金を受けられるようにしてまいります」と言及せざるをえなかったこと、また「子どもたちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。子どもの貧困は、頑張れば報われるという真っ当な社会の根幹に関わる深刻な問題です」と語ったことは、支配階級にとっても新自由主義的資本主義の二〇年間が「社会の解体」をもたらす「真っ当」ならざる現実を作りだしてしまったとの危機感を示している。
しかし言うまでもなく資本主義支配階級の政治的エリートである安倍は、この現実の是正、格差の解消をもたらす政策ではなく、「チャンス」を与えるための「改革」、すなわちグローバル資本にとっての活動しやすい部門を作り上げる対処方針で、展望を与えようとするのである。
農協・農業委員会制度の改革、「農業生産法人の要件緩和」すなわち企業の農業経営への参入、TPP交渉の妥結、法人実効税率の大幅引き下げ、医療制度の改革と混合診療、原発依存政策の継続――これらに関して安倍の所信表明演説は「経済のグローバル化は一層進み、国際競争に打ち勝つことができなければ、企業は生き残ることができない。政府もまた然り。オープンな世界を見据えた改革から逃れることはできません」との恫喝で、あらゆる抵抗を突破しようとする決意表明を行っている。
安倍は「知と行は二つにして一つ」という吉田松陰の言葉なるものを引用しながら野党に次のように突きつけている。
「成長戦略の実行。大胆な規制改革によって、生産性を押し上げ、国際競争力を高めていく。オープンな世界に踏み出し、世界の成長力を取りこんでいく。なすべきことは明らかです。要は、やるか、やらないか」「この国会に求められているのは、単なる批判の応酬ではありません。『行動』です。『改革の断行』であります」。
「言葉ではなく行動」。この突きつけで安倍首相は批判を封じ、新自由主義的「改革」路線を強行し、「雇用破壊」・「残業代ゼロ」法案を押し付けるとともに、まさにそれと表裏一体である「積極的平和主義」の名の下での「戦争国家」法案の成立に突進しようとしているのだ。
「積極的平和主義」と戦争国家
安倍は施政方針演説の第6項「外交・安全保障の立て直し」の項を、海上自衛隊の練習艦隊がガダルカナル島で収容された一三七柱の遺骨とともに昨年一〇月に帰還したというエピソードから説き起こしている。「戦死者たちの尊い犠牲の上に、私たちの現在の平和がある」といういつもの文脈においてである。「戦後七〇年」にあたり「『積極的平和主義』の旗を一掃高く掲げ、日本が世界から信頼される国となる。戦後七〇年にふさわしい一年としていきたい」と続けるおなじみの論法だ。
そして戦後の「平和国家としての歩み」を「更に力強いものとする」ために「国民の命と幸せな暮らしは、断固として守り抜く。そのために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進めてまいります」として、「集団的自衛権」行使容認と日米ガイドライン改定に対応した一連の「戦争国家」法案を意味づける。
安倍はそのために「日米同盟」が「基軸」であることを強調して、在日米軍再編を進めながら「学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の返還を、必ずや実現する」と強調し、「引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、名護市辺野古沖への移設を進めてまいります」と述べ「裏付けのない『言葉』ではなく実際の『行動』で、沖縄の基地負担の軽減に取り組んでまいります」と強調する。
そう。沖縄の人びとは、「言葉」ではなく、実際の「行動」で「ヤマト」政府の真意を見抜いてきた。そして「ヤマト」政府の「実際の行動」とは、沖縄の総意で選ばれた翁長新知事に会うことすら拒否することであり、辺野古現地で住民に対してふるわれる海上保安庁などの暴力なのである。
安倍の「地球儀俯瞰外交」の内実も、湯川さん・後藤さんが「イスラム国」に拘束されている時、二人の身柄の解放にまったく無為無策であったこと、それどころか「イスラム国」に対する「対テロ作戦支援」のために二億ドルを拠出すると公言して、かれらに口実を与えてしまったことに示されるように、ただただ米国の世界軍事戦略につき従うだけのものに過ぎないことがはっきり示されている。
問題は、安倍政権が今回の惨劇を「邦人救出」の軍事作戦や、対テロ「有志連合」への参加、さらには戦闘行為への支援を正当化するために利用していることである。「ODA(政府開発援助)大綱」に代わる「開発協力大綱」閣議決定(二月一〇日)で、「我が国の平和と安全の維持、繁栄の実現といった国益の確保に貢献する」と明記し、他国軍への支援(軍事目的は除くとしているが、それはきわめてあいまいである)を認めたことも、安倍の「積極的平和主義」が、軍事・非軍事の垣根を乗り越えた(これもシームレス、つまりすべてに「切れ目」がなくなっている!)国家戦略であることを明らかにするものだ。
そしてこのような戦略の延長線上に「憲法改正に向けた国民的な議論を深めていこうではありませんか」という所信表明演説での呼びかけが発せられているのだ。
「世界の中心が日本」なのか!
安倍は、戦後七〇年にあたって日中・日韓そして日ロ関係の改善についても呼びかけている。安倍は戦後五〇年にあたっての「村山談話」は「引き継ぐ」と主張している。しかし「村山談話」の個々の「キーワード的」文言を継承するかどうかについては言及を避けた。
「積極的平和主義」についての安倍の歴史観は、むしろ昨年五月にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)での安倍本人の基調演説の中に示されている。
「自由と人権を愛し、法と秩序を重んじて、戦争を憎み、ひたぶるに、ただひたぶるに平和を追求する一本の道を、日本は一度としてぶれることなく、何世代にもわたって歩んできました。これからの、幾世代、変わらず歩んで行きます」。
「何世代にもわたって」。つまり安倍の祖父である岸信介元首相(東条英機内閣商工相)やさらにそれ以前から、という含意がここには当然ある。すなわち安倍首相にとっては中国侵略や「大東亜戦争」は「ひたぶるに平和を追求する一本の道」に沿ったものなのである。
こうしたウルトラな「大東亜戦争肯定論」に立つ安倍は、「世界の真ん中で輝くことができる。その『自信』を『確信』へと変えていこうではありませんか」と施政方針演説の最後で呼びかけている。「世界がうらやむ日本」といった巷にあふれる「自己肯定・自己賛美」的気分に同化することによって、「戦後レジーム」を払拭した「新憲法」へのイデオロギー的土台を確固たるものにすることを安倍政権は狙っているのだ。
この流れを逆転させる労働者・市民の共同行動を、大きく作りあげよう。