働き方改革

どんな法律にも
得をする人 損をする人が生れます

働く人たち どちらになるのでしょうか


 
 
働き方改革関連法案衆院通過 「高プロ」野党、参院も抗戦 6/1
安倍政権が今国会の最重要課題と位置づける働き方改革関連法案は31日、衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で可決された。6月4日にも参院で審議入りする。法案の柱の一つで、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)について、立憲民主党などの野党が反対姿勢を強めるが、政府・与党は20日までの会期を延長する方針で、法案は成立する見通しだ。
立憲の長谷川嘉一氏は本会議で、高プロについて「長時間労働を助長し、過労死が増えるのではないか、対象業務の拡大や年収要件の引き下げが行われるのではないかという懸念は、何一つ払拭(ふっしょく)されないままだ」と与党を批判。自民の後藤茂之氏は「希望する高度専門職の方が、明確な職務範囲で高い年収を確保した上で、自ら仕事の進め方を決めて働くことができる。対象がなし崩しに拡大されることはない」と反論した。
法案の可決を受け、安倍晋三首相は経団連の定時総会のあいさつで「多様な働き方ができる社会を、今こそ作り上げていかなければならない。この国会において、働き方改革を必ずや実現する決意だ」と語った。
一方、連合の相原康伸事務局長はコメントを発表。「(法案には残業時間の)罰則付きの上限規制の導入など、長時間労働の是正に向けた施策が盛り込まれた中で、長時間労働を助長する懸念のある高プロが削除されずに衆院を通過したことは極めて遺憾。参院では与野党の真摯(しんし)な議論を強く望みたい」としている。
働き方改革関連法案は高プロと並び、残業時間の罰則付き上限規制や、正社員と非正規労働者の不合理な待遇差を禁じる「同一労働同一賃金」の導入なども柱になっている。
だが、衆院厚生労働委員会の審議では高プロに質問が集中した上、野党側が野村不動産社員の過労死や、厚生労働省データの異常値問題への追及に時間を割き、他の柱については議論が深まらなかった。残業時間の上限規制を巡っては、政府案は脳・心臓疾患の労災認定基準をベースに「最長で月100時間未満、2〜6カ月の月平均で80時間以下」としているが、これは過労死ラインにあたるとの批判がある。立憲民主党は対案で「月80時間未満、複数月の平均で60時間以下」と厳格化した。政府は「(政府案の上限は)連合と経団連が合意した水準だ」との答弁を繰り返し、上限の妥当性まで議論が及ばなかった。
また同一労働同一賃金に関し、政府が策定したガイドライン案では正社員の待遇が下がらないのかや、退職金の扱いをどうするのかについての言及はなく、議論の余地を残した。
厚労省幹部は「データ問題に時間を費やしたことは、こちらに非があるが、それでも高プロ以外の議論は深まらなかった。参院では有意義な審議が必要だ」と話す。 
 
働き方改革関連法案 高プロ議論「深まらない」 参院厚労委 6/27
参院厚生労働委員会は26日、安倍晋三首相が出席し働き方改革関連法案を審議した。野党からの質問は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)に集中した。安倍首相はこれまでと同様の答弁に終始し、野党議員からは「同じ議論の繰り返しで審議が深まらない」との批判が相次いだ。
立憲民主党の石橋通宏氏は、高プロを「成果で評価される制度」とする政府説明について追及。「法案には、どこにも書いていない。頑張った人が2倍、3倍の成果を出しても処遇する制度になっていない。虚偽答弁だ」とただした。
安倍首相は、法案をそのまま引用する形で答弁。「(法案は)『従事した時間と、従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるもの』としており、条文上、明らかだ」と述べた。
社民党の福島瑞穂氏は「成果に基づいて給与が高くなるなんて委員会では確認されていない。裁量という言葉は条文にはない。誤解を与えるような説明の仕方は間違っている」と指摘した。 
 
 
働き方改革法が成立 脱時間給や同一賃金導入 6/29
政府が今国会の最重要法案とした働き方改革関連法は29日午前の参院本会議で可決、成立した。残業時間の上限規制や、正社員と非正規の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」の導入を柱とする。日本の労働慣行は大きな転換点を迎える。
働き方改革法には与党に加えて、日本維新の会、希望の党、無所属クラブの5会派が賛成した。立憲民主党、国民民主党、共産党などが反対した。加藤勝信厚生労働相は法成立を受けて「改革を通じて生産性向上につなげる。法の趣旨をさらに説明し、一人ひとりが実情に応じて働くことができる社会の実現に努力したい」と述べた。
28日の参院厚生労働委員会では付帯決議を可決した。働き方改革法に関する要望や監督指導の徹底を促す内容で47項目からなる。脱時間給制度を導入した事業所全てに労働基準監督署が立ち入り調査するなど、野党が反対してきた脱時間給制度に関する13項目も盛り込まれた。国民民主党、立憲民主党も付帯決議には賛成した。
働き方改革法は労使の代表が参加した「働き方改革実現会議」の実行計画に沿ってつくった。労働基準法など計8本の法律を一括で改正する。長時間労働を是正するため、残業時間の規制は「原則月45時間、年360時間」と定める。繁忙期に配慮し、上限は年間で計720時間、単月では100時間未満に規定する。違反した企業には罰則を科す。大企業は2019年4月、中小企業は20年4月から適用する。
同一労働同一賃金は、正社員や非正規などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて賃金を決める制度だ。基本給は勤続年数や成果、能力が同じなら同額とする。休暇や研修も同様の待遇を受けられるように改め、通勤・出張手当も支給する。大企業は20年4月、中小企業は21年4月から導入する。
脱時間給制度は、年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなどの専門職に対象を限る。残業代は支給せず、成果で賃金を決める。無駄な残業を減らし、労働生産性の向上につなげる狙いがある。
制度を利用するには、企業の労使で導入に合意し、対象者本人の同意も得る必要がある。健康確保措置として「4週間で4日以上、年104日以上」の休日確保を義務付ける。労使で「労働時間の上限設定」「2週間連続の休日」などから1つ以上の対策を選択する必要もある。対象者が自らの意思で制度から離れることもできる。19年4月から始める。
安倍晋三首相は今国会を「働き方改革国会」と位置づけ、法成立に強い意欲を示してきた。しかし、厚労省の労働時間調査に不備が見つかり、同法案の柱だった「裁量労働制」の切り離しを2月末に決めた。衆院では5月31日に本会議で法案を可決し、参院に送付していた。 
働き方改革法が成立 参院本会議 TPP関連法も 6/29
安倍政権が今国会の最重要法案としてきた働き方改革関連法が、29日の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。国民民主党、立憲民主党、共産党などは反対した。また、米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)の関連法も、参院本会議で与党などの賛成多数で成立した。
働き方改革関連法は、長時間労働を抑制するため、残業時間の罰則付き上限規制を設ける一方、野党が過労死を招きかねないと批判し続けた「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」も2019年4月から導入されることになる。
安倍晋三首相は今国会を「働き方改革国会」と位置づけ、「誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働制度へと抜本的に改革する」と関連法の成立を訴えてきた。ただ、法案を検討する基礎になった労働時間のデータに問題が発覚し、提出が遅れた。森友・加計(かけ)学園問題などの影響で審議も停滞。6月20日までの当初の会期内に成立させられず、会期を7月22日まで延長。成立にこぎ着けた。
最大の焦点になったのは「高プロ」だった。年収1075万円以上の一部専門職について労働時間に関する保護から外されることから、働き過ぎにつながる懸念が繰り返し指摘された。政府は制度の導入理由に「働き手のニーズ」を掲げてきたが、実際には働く人の声を十分に聞いていなかったとして野党は厳しく追及した。
TPP11の関連法は、TPP11の発効で輸入による国産農産物の価格低下で影響が出そうな農家へ補助金を支出することなどが盛り込まれている。
TPP11は6カ国が国内手続きを終えた60日後に発効する。日本の国内手続きは協定の承認と関連法の成立も必要で、協定は6月13日の参院本会議で承認されている。国内手続きを終えるのはメキシコに続き2カ国目になる見込みだ。
重要法案の成立を受け、政府・与党は今後、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案、参院選の定数を「6増」する公職選挙法改正案などの成立を目指す。 
働き方改革関連法 そのポイントは 6/29
○ 関連法とは
働き方改革関連法は、改正された労働基準法や労働契約法など合わせて8本の法律で構成されています。
長時間労働を是正するため「時間外労働の上限規制」が盛り込まれた一方、労働規制を緩和する新たな仕組みとして、高収入の一部専門職を対象に労働時間の規制から外す高度プロフェッショナル制度も導入されます。
また、正社員と非正規労働者の待遇の差をなくすため、同じ内容の仕事に対しては同じ水準の賃金を支払う「同一労働同一賃金」の実現や、労働者の健康を確保するため客観的な記録などによる労働時間の把握をすべての企業に義務づけることなども盛り込まれています。
○ 上限超えたら罰則の対象に
法律のポイントの1つは「時間外労働の上限規制」です。
長時間労働を是正するため、時間外労働の上限を原則として月45時間・年間360時間としています。これには休日労働は含まれません。ただ、臨時に特別な事情がある場合には、年間6か月までは、さらなる時間外労働が認められ、休日労働も含めて、月100時間未満、連続する2か月から6か月のいずれの期間の平均も80時間が上限となります。また、年間では休日労働を除いて720時間が上限となります。
上限を超えた場合には罰則の対象となり、使用者側に、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。
○ 高度プロフェッショナル制度とは
高度プロフェッショナル制度とは、高収入の一部専門職を対象に働いた時間ではなく成果で評価するとして労働時間の規制から外す仕組みです。
制度が適用されると、残業や休日出勤をしても労働者に割増賃金は支払われません。一方で、労働者の健康を確保するため、年間104日以上、4週間で4日以上の休日を確保することなどが義務づけられます。
制度の対象になるのは、年収1075万円以上の証券アナリストや医薬品開発の研究者、それに、経営コンサルタントなどが想定されていますが、最終的に年収要件や対象の職種をどうするかは、今後、労使双方が参加する国の審議会での議論を踏まえ、厚生労働省が省令で定めることになっています。
○ 始まるのは
時間外労働の上限規制は、大企業では来年2019年4月1日から、中小企業では再来年2020年4月1日から始まります。
また、高度プロフェッショナル制度は来年4月1日から、「同一労働同一賃金」の実現に向けた取り組みは、大企業では2020年4月1日から、中小企業では2021年4月1日から、それぞれ始まります。 
残業も年休消化も大きく変化? 働き方改革法を徹底解説 6/29
働き方改革関連法が成立した。労働時間規制の強化や緩和、正社員と非正社員の格差是正など、様々なメニューが盛り込まれている。働く時間の長さはもちろん、休み方、健康、賃金、企業経営などに大きく影響する内容だ。私たちの「働き方」は、どう変わるのか。残業や年次有給休暇(年休)消化など、主な7項目を詳しく解説する。
過労死や過労自殺で労災認定される人は、毎年200人前後で横ばいが続いている。働く人の命や健康を守るために長時間労働を抑える仕組みとして始まるのが、残業時間の罰則つき上限規制だ。今は事実上、青天井になっている残業時間に、初めて法的な拘束力のある上限が設けられる。
労働基準法が定める労働時間は1日8時間、週40時間。これを超えて働かせることは本来は違法だが、経営側と働き手が時間外労働に関する労使協定(36協定)を結べば延長が認められる。その場合も、厚生労働省告示は「月45時間、年360時間」までと基準を定めるが、強制力はない。
今回の残業の上限は、まず原則として「月45時間、年360時間」と明記した。繁忙期などに臨時に超える必要がある場合でも、45時間を超えて働かせられるのは年に6カ月までとし、年間上限は720時間以内としている。
ただこれらは休日労働を含めない場合の上限だ。含めた場合は「月100時間未満」とし、2〜6カ月の平均なら「月80時間」となる。働き過ぎで倒れた人が労災に認定されるかの判断基準となる「過労死ライン」の水準になっている。
こうした上限を超えて働かせた企業には、6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科される。大企業は2019年4月から、中小企業は20年4月からの適用となる。当初は一律に19年4月から施行予定だったが、中小企業は準備が間に合わないとの声が与党から出たため遅らせた。
また、人手の確保が厳しい建設業やドライバーなどは適用を5年間猶予する。ドライバーは年間上限を960時間とするなど上限を緩くするものもある。新技術・新商品などの研究開発は、適用が除外された。
高度プロフェッショナル制度は、年収が高い一部の専門職について、労働時間規制の対象から完全に外すものだ。19年4月に導入され、適用される人は残業時間や休日・深夜の割増賃金といった規定から外れる。 
働き方改革法が成立 罰則付き残業規制や高プロを導入 6/29
安倍晋三政権が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案は29日午前の参院本会議において、与党などの賛成多数で可決、成立した。法案は、時間外労働(残業)に初の罰則付き上限規制を導入した。さらに正規と非正規の労働者の待遇格差を改善する「同一労働同一賃金」など、労働者を保護する施策を多く盛り込んだ。
残業上限規制は、日本で目立つ長時間労働の慣行を是正する狙いで、大企業が平成31年4月、中小企業が32年4月から適用される。
高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」も創設。適用対象を年収1075万円以上の研究職やコンサルタントに限る。与党は日本維新の会など一部野党と修正協議し、高プロ適用後でも労働者本人の意向で撤回できるようにした。
立憲民主や国民民主、共産などの野党は、高プロが「長時間労働や過労死を助長する」として法案からの削除を要求してきた。一方、政府は「高プロは多様な働き方の選択肢となる」と理解を求めた。
28日の参院厚生労働委員会では法案を可決するとともに、高プロの導入にあたって適正な運用を周知徹底し、対象業務を明確に列挙することなどを政府に求める付帯決議も採択した。
法案では当初、裁量労働制の適用業種拡大も盛り込んでいたが、厚労省の労働時間調査にデータの異常値が多数見つかった影響で、国会提出前に全面削除した。 
働き方改革関連法案の可決・成立に対する談話 6/29
日本労働組合総連合会 事務局長 相原康伸
1.時間外労働の上限規制等は評価も、高度プロフェッショナル制度の創設は遺憾
本日、参議院本会議において、働き方改革関連法案(働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律案)が可決、成立した。罰則付の時間外労働の上限規制や中小企業における60時間超の時間外労働の割増賃金率に対する猶予措置の撤廃、雇用形態間における不合理な格差の解消に向けた同一労働同一賃金の法整備など、連合が求めてきた事項が実現する点は評価できる。しかし、「高度プロフェッショナル制度」という、労働基準法上の労働時間規制を適用せず長時間労働を助長しかねない制度が法案から削除されることなく創設されたことは、極めて遺憾である。
2.答弁の引き出しや附帯決議等は、野党の強い意思の表れ
法案の提出以前から国会論戦はスタートし、労働時間に関する調査データや不適切な答弁に対する野党の追及を受け、3月1日には法案から裁量労働制の対象業務拡大部分が削除されるに至った。また、立憲民主党および国民民主党は、高度プロフェッショナル制度の削除を始めとした、「働く環境をより良くしたい」との理念に沿ったそれぞれの対案を5月8日に衆議院に提出するとともに、衆参の厚生労働委員会質疑において、法案では明確にされていない問題点に切り込み、今後の労働政策審議会における議論の糧となる多くの答弁を引き出した。加えて、参議院厚生労働委員会において、法の実効性を高めるため、47項目の附帯決議がなされた。これら一連の取り組みは、何としても働く者のための働き方改革を実現しなければならないという、野党の強い意思の表れであり、その渾身の努力に敬意を表したい。
3.労働政策審議会をはじめとした場で、さらなる取り組みが必要
働き方改革関連法の議論の舞台は、労働政策審議会に移る。条文では明確になっていない、「高度プロフェッショナル制度」の対象業務や年収要件、時間外労働の上限規制の詳細、勤務間インターバル、同一労働同一賃金に関するガイドラインなど、省令・指針等において定めなければならない事項は多数に上る。また、自動車運転業務に関する改善基準告示の見直しや、長時間労働による現場の疲弊が指摘される医師や教員の働き方の見直しなど、過労死等ゼロはもとよりすべての働く者の健康と安全を確保する視点からの引き続きの取り組みが必要である。
4.働く者の働き方改革の実現のためには、労使の取り組みが必要不可欠
法律は各職場で活かされて初めて、働く者の働き方改革が実現する。法の実効性確保のためには、労使がともに法を理解し、運用するための集団的労使関係が必要不可欠である。連合は、労働政策審議会における政省令等の議論に全力を尽くすとともに、労働組合のない職場も含めて、安心して働き続けることのできる職場づくりに向けて構成組織・地方連合会と一体となり、引き続き取り組んでいく。   以上 
 
 
働き方改革法成立 「裁量はない」「非正規に賞与配分」 労働者、困惑と期待 6/30
働き方改革関連法が29日、成立した。残業時間の上限規制や非正規労働者の待遇改善など、企業にとっては規制が強化されるが、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)を導入する規制緩和策も盛り込まれた。労働者はそれぞれの立場から、成立をどう受け止めたのか。
「会社は絶対に高プロを適用してくると思います」。東京都内の外資系IT企業で働くシステムエンジニアの男性(53)は言う。「年収要件が引き下げられ、対象が拡大したら体を壊す人が増えるでしょう。責任感のある誠実な人間ほど、無理をしてしまうんです」
顧客は金融業界や流通業界。常に複数の仕事を抱え、深夜労働が常態化している。新規プロジェクトの開発やシステムの入れ替え時は徹夜になる。裁量労働制を適用され、何時間働いても「みなし労働時間」分の給与しか支払われない。効率的に仕事を進めれば、次の仕事が回ってくる。「裁量はありません」と言い切る。
職場では午後10時に「蛍の光」が流れる。賃金の深夜割り増しの合図だ。働き方改革の一環で始まった。だが、誰も席を立たない。割増賃金の受け取りは上司への事前申請が必要だが、「理由を問い詰められるのが苦痛で、出してません」と話す。
いわゆるバブル世代。何度か大規模なリストラがあり、入社時に200人いた同期は片手で数えられるほどになった。給与も減った。管理職はヘッドハンティングでころころ代わる。若手は「希望を見いだせない」「激務に耐えられない」と辞めていく。病気がちの妻と2人暮らしで、家計は楽ではない。「裁量労働制を適用されたのも、会社のコスト削減のためでしかなかった。高プロを突きつけられたら、首を切られるよりマシだと思ってしまうかもしれません」と弱い立場を口にした。

都内で派遣社員として働く女性(38)は「非正規は、チャンスさえ与えてもらえない。努力だけではどうしようもない理由で差別されているんです」と言う。成立した法律が実効性のあるものになることを願っている。
就職氷河期世代。通信制高校卒業後、フリーターになった。20代後半で簿記の資格を取得し、正社員として零細の輸入販売会社に3年間勤めたが、ドロドロした人間関係に巻き込まれて退職。その後、専門学校の簿記講師として半年ごとの契約更新を繰り返した。学生数の減少に伴う経営悪化で業務委託に切り替えられ、生活が苦しくなったところで再び転職を決意した。
以来、正社員、契約社員、派遣社員……とさまざまな雇用形態で働いてきた。どの企業でも経理の仕事をしたが、非正規は主要な会議に出席できず、意思決定にも関われない。正社員と違いキャリアとして認められないことに不満を感じる。細切れの経歴は転職市場でも不利になる。「ハローワークでやっと正社員の仕事を見つけたら、ブラック企業でした」
正社員との待遇差で納得できないのは賞与だという。働き方改革関連法は同一労働同一賃金で、仕事内容が同じ場合の差別的な扱いを禁じ、仕事内容が同じでなくても「不合理な相違を設けてはならない」とする。基本給の格差解消はハードルが高いというが、手当や賞与にはある程度の効果があると期待される。女性は強調する。「賞与が労働者への利益配分なら、派遣社員や契約社員にも還元してほしい。悔しい思いをしながら、みんな頑張っているんです」
「過労死防止と矛盾する法律だ」。高プロに反対する過労死遺族らは29日、参院議員会館で記者会見を開き、改めて制度を批判した。電通社員だった高橋まつりさん(当時24歳)を過労自殺で亡くした母幸美さん(55)は「命と健康を守る働き方改革を実施してほしい」と訴えた。
幸美さんはこの日、まつりさんの遺影を掲げて本会議を傍聴。法律が成立すると、険しい表情のまま、ハンカチで涙をぬぐった。会見では「長時間労働を認める高プロは絶対に納得できない。私は娘を守れなかったが、これからも働く人たちを守るため取り組みたい」と力を込めた。
「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表(69)は「法律は成立したがあきらめず、過労死を防ぐ健全な社会を目指すために活動していきたい」と話した。
過労死弁護団全国連絡会議の事務局長、玉木一成弁護士は「高プロは制度の詳細がまだ明らかになっていない。制度廃止を求めるとともに、悪用されないように働きかけなければならない」と語った。
解説
働き方改革関連法は誰のための法律なのか。成立した後も、疑問がぬぐえない。それは主要な規定、制度の内容に働き手の視点というよりも、企業の立場に重点が置かれている項目があるからだ。
解決すべきは、長時間労働などあしき日本型の労働慣行だ。電通の女性社員の過労自殺やNHKの女性記者の過労死は、社会的な問題となった。
法律に、これまで事実上、青天井だった残業時間に罰則付き上限規制を設け、非正規労働者の待遇を改善する同一労働同一賃金も盛り込んだのは、労働慣行の是正を図るのが目的だったはずだ。しかし、残業時間規制の上限は「月100時間未満、複数月の平均で80時間」で、過労死ラインの水準を許容している。過労死遺族らが義務化を強く望む勤務間インターバル制度は結局、努力義務にとどまった。
高度プロフェッショナル制度に至っては、安倍晋三首相が国会審議で、経済界からの要請が端緒で導入が検討されたと答弁。長時間労働を助長するとの懸念は消えていない。
人手不足は深刻で、労働環境の整備は個々の企業にとって喫緊の課題だ。今後、制度の運用について議論が進む。「働き手のための改革」という原点を忘れず、その議論や運用に目を光らせる必要がある。 
働き方改革関連法 成立許す 野党亀裂、戦略見直し 6/30
働き方改革関連法が29日成立し、高度プロフェッショナル制度(高プロ)創設を含めて反対してきた野党は、なおあいまいな点が多い同法の運用に対して監視を強める方針だ。ただ政府・与党との対決手法を巡り、立憲民主党などと国民民主党の間に亀裂も発生。カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案や公職選挙法改正案など、延長国会の対応では戦略の見直しを迫られそうだ。
立憲の蓮舫参院幹事長は29日、法律成立を強行した与党を批判。「年収要件や対象職種など(法案に盛り込まれず)政省令に委ねられたことが多すぎる。影響をチェックする」と記者団に強調した。
同法の審議では裁量労働制に関するデータに多数の異常値が、立憲の長妻昭代表代行らの指摘で発見された。政府は裁量労働制の対象拡大を削除した。
法案採決の際には国民、立憲の要求で47項目の付帯決議が行われた。国民の大塚耕平共同代表は党会合で「法案には大反対だが、フェアプレーのおかげで付帯決議ができた」と成果を訴えた。
一方、最終盤で立憲、共産、希望の会(自由・社民)の3会派が提出した参院厚生労働委員長解任決議案に、国民は同調しなかった。国民党内でも疑問が出ており、中堅議員は「最低の対応だ」と酷評。別の議員も「与党の分断工作に乗ってしまった」とつぶやいた。
立憲の福山哲郎幹事長も党会合で「我々の(国民への)アプローチの仕方は、反省も含めて考えなければいけない」と説明。関係修復を試みる考えだ。
ただ、国民執行部は「立ち位置がはっきりした」(幹部)と野党内で一線を画し続ける方針。29日には平野博文総務会長らが首相官邸を訪れ、菅義偉官房長官に大阪北部地震への対応を要望。連合が同日夕、働き方改革関連法に抗議する街頭演説会を東京・新橋で開いたが、立憲の福山氏と国民の古川元久幹事長は、ともに参加を取りやめた。野党の結束は今後も不透明だ。 
 
 


2018/7
 
●働き方改革
[正式名称「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」または「働き方改革」一括法案 ] 8本の労働法の改正を行う法律の通称で、2018年(平成30年)4月6日に第196回国会に提出され、6月29日参議院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。
経緯
2015年(平成27年)4月3日、時間外労働割増賃金の削減、・年次有給休暇の確実な取得・フレックスタイム制見直し・企画業務型裁量労働制見直し・高度プロフェッショナル制度創設などを内容とする労働基準法等改正案が、第189回国会に提出された。
2016年(平成28年)9月26日、働き方改革実現会議が発足し、翌2017年(平成29年)3月28日、第10回同会議において「働き方改革実行計画」が決定された。先の法案は「サービス残業や過労死を助長する」などの反対があって、一度も審議されないまま2年以上に渡り継続審議の状態が続いていたが、同年9月28日の衆議院解散により審議未了、廃案となった。
2018年(平成30年)1月22日、第196回国会における内閣総理大臣安倍晋三の施政方針演説において、働き方改革関連法案は同国会の最重要法案の一つと位置づけられた。1月29日、安倍晋三首相は衆議院予算委員会で「裁量労働制のほうが一般労働者より労働時間が短いというデータもある」旨答弁した。この答弁は、厚生労働省による「平成25年度労働時間等総合実態調査」を根拠にしたものであったが、1カ月のうち「最も残業時間が長い1日」の一般労働者の法定時間外労働の平均時間に8時間を足したものと、裁量労働制で働く労働者の「労働時間の状況」を比較して、後者のほうが短いとしていた。野党議員からの批判を受け、安倍晋三首相は2月14日に謝罪し、答弁を撤回した。
同年2月28日深夜、安倍晋三は今国会に提出予定の「働き方改革関連法案」から「裁量労働制の対象を拡大する部分」を削除するよう厚生労働大臣加藤勝信に指示した。
厚生労働省の毎月勤労統計によると、2017年(平成29年)の1人当たりの1カ月の平均残業代は約19,560円。政府が検討する残業上限規制(年間720時間以内など)で月60時間に抑えると、日本総研の試算では、労働者全体の残業代が年間5兆円、大和総研の試算では8兆5,000億円減少する。
2018年(平成30年)4月6日に政府・第4次安倍内閣(自公連立政権)は、働き方改革関連法案を国会に提出した。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)を盛り込み、野党は過労死や過労自殺を助長すると批判。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)は残業代だけでなく休日労働や深夜労働の割増賃金の支払いまで免れることになるため、過労死遺族からは「働き方関連法案を『過労死促進法』と言われても仕方ない内容で残念だ。政府はどちらの方を向いているのか」と非難が出た。
残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)は定額・働かせ放題で、大阪大学社会経済研究所の小野善康特任教授は「時間ではなく成果に対して賃金を払う考え方は、人手が足りず、もっと一生懸命働かないとならない環境では良い政策だが、(今のような)消費が低迷し物が売れない時代に、生産性を上げても意味がない」と話す。日本総研調査部の山田久理事は「経済界には、逸脱した裁量性で、過労死や長時間労働につながる問題へのルールづくりの視点が欠けている。国任せでなく、ガイドライン策定などをしっかりやる責務がある。」とPTA会長の息子久保ともきが指摘。
共同通信社のアンケートで、残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)に賛成する企業は28%で、裁量労働制の対象拡大も支持が35%にとどまったことが分かった。いずれについても、約6~7割の企業が「どちらとも言えない」と賛否を保留とした。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)は、働き方改革関連法案の柱で、経済界が強く要求していた経緯があるが、政府の説明不足で内容が理解しにくいことや国会での混乱が影響して企業が慎重姿勢に傾いていることがうかがえる。アンケートは2018年2月下旬から3月下旬にかけて112社を対象に実施。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)について回答した100社のうち賛成は28社で、反対は1社、保留は71社。対象となる社員が勤務しているとした29社のうち、成立したら導入すると回答したのは2社のみであった。対象社員が存在しているかを把握していない企業が多く、42社は「分からない」とした。
希望の党と民進党は、2018年(平成30年)4月12日、終業から始業の間に一定の休息時間を設ける「インターバル規制」導入を義務化し、政府が国会提出した働き方改革関連法案の対案をまとめた。インターバル規制を義務化する点が政府案の努力義務との違い。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)も創設しないという点も政府案と相違する。同年4月16日以降に国会提出する。
同年4月27日、自民党・公明党の与党は衆議院本会議で、立憲民主党など野党6党の議員が欠席し審議拒否する中で働き方改革関連法案の趣旨説明と質疑を実施した。同年5月2日衆院厚生労働委員会質疑開始、立憲民主党など野党終日欠席。同年5月9日衆院厚生労働委員会与野党出席質疑、立憲民主党は残業上限80時間未満の案の趣旨説明。
アメリカ合衆国では、高度プロフェッショナル制度のモデルのホワイトカラーエグゼンプションが低賃金労働者まで拡大、長時間労働と健康被害の蔓延により規制強化にうごいている。日本は明らかに逆の方向に進もうとしている。同年5月15日自民党は日本維新の会の求めに応じ働く人が後に高度プロフェッショナル制度を撤回できる制度を盛り込む一部修正を検討。維新は残業時間の上限規制も中小企業経営に影響を及ぼすとして十分な配慮を自民に求めている。
厚労省は衆院厚労委員会理事会にデータの再調査結果を示し、調査対象の11,575事業所のうち、966事業所で異常値や誤記が見つかる。野党6党派は働き方関連法案を労働政策審議会に差し戻すよう求めることで一致した。同年5月16日衆院厚生労働委員会で高度プロフェッショナル制度対象者が過労死した場合、勤め先に「長時間労働は指導できなくなる」と国民民主党の岡本充功氏が指摘。厚労省の山越敬一労働基準局長は「労働時間の上限が無いので長時間労働は指導できない」と答弁で明言した。高度プロフェッショナル制度は法案には仕事の裁量を働く人に委ねる規定がない。
同年5月21日午後、自民、公明、日本維新の会、希望の党は高度プロフェッショナル制度の働く人が制度適用への同意ののちに撤回できる手続きを明記する事を一部修正に正式合意。同年5月22日午後、過労死遺族らでつくる「全国過労死を考える家族の会」は高度プロフェッショナル制度創設に反対する抗議集会を総理大臣官邸前で開いた。家族の会は安倍に面会を求めていた。
日本労働弁護団は日比谷公園で集会を開き、労組や国会議員、過労死遺族ら約1,800人が参加した。同年5月23日午後、衆院厚生労働委員会は安倍も出席し質疑実施。立憲民主党など野党6党は国会運営に反発し衆院厚生労働委員長高鳥修一(自民党)の解任決議案を衆院に提出。これを受け厚生労働委員会は散会、法案採決は持ち越された。
同年5月24日、衆院本会議で野党提出高鳥委員長の解任決議案を与党などの反対多数で否決。同年5月25日院本会議で野党6党派提出の加藤勝信厚労相の不信任決議案が与党の反対多数で否決。衆院厚生労働委員会、自民、公明、維新の会の賛成多数で働き方関連改革法案可決。同年5月31日衆院本会議で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決し、衆議院を通過、参議院に送付される。同年6月7日厚生労働省は、参院厚労委員会で、高度プロフェッショナル制度創設を巡って、ニーズ把握を行った12人への聞き取りのうち、9人は2018年1月に行ったと明らかにした。政府は労働者の中に高度プロフェッショナル制度を求める一定のニーズがあると主張してきた。野党は聞き取りはアリバイづくりと批判。厚労省の山越敬一労働基準局長が12人の聞き取り時期について、3人は2015年3月、9人は2018年1月31日と2月1日に行ったことを明らかにした。社民党の福島瑞穂参院議員は「2018年2月なら高度プロフェッショナル制度創設の方針は固まっている。これを唯一の根拠にするのは茶番だ。」と批判した。同年6月27日参院本会議で野党5会派が提出した加藤勝信厚労相に対する問責決議案を与党などの反対多数で否決。同年6月28日参院厚生労働委員会にて自民、公明、維新の会などの賛成多数で働き方改革関連法案可決。同年6月29日参院本会議で自民、公明、維新の会、希望の党、無所属クラブの賛成多数で可決、成立。
内容
2017年(平成29年)9月8日、厚生労働省が労働政策審議会に諮問し、同月15日に厚生労働大臣加藤勝信から「おおむね妥当」と答申された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の要旨は、以下の通りだ。
第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)
第2の柱:長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等改正)
 1.時間外労働の上限規制の導入
 2.長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策
 3.フレックスタイム制の見直し
 4.企画型裁量労働制の対象業務の追加
 5.高度プロフェッショナル制度の創設
 6.勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法改正)
 7.産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法・じん肺法改正)
第3の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
 1.不合理な待遇差を解消するための規定(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)・労働契約法改正)
 2.派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)の改正)
 3.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
 4.行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備